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EARNINGS REVIEW

セブン&アイ・ホールディングス

2027年2月期 第1四半期 決算レビュー

証券コード 3382(東証プライム)/ 対象 2026年3月〜5月(第1四半期)/ 開示 2026年7月9日

減収なのに、本業のもうけは6割増えた。第1四半期の営業収益は2兆3,788億円と前年同期を14.3%下回った一方、営業利益は1,050億円まで伸び、前年のおよそ1.6倍になっている。 数字が逆を向いた理由ははっきりしている。セブン銀行やヨーク・ホールディングス傘下の会社を連結から外し、事業をコンビニへ絞り込んだからだ。 売上の目減りは会計上の話で、残った事業の稼ぐ力はむしろ上がっている。

営業収益

2.38兆円
−14.3%前年 2.78兆円

営業利益

1,050億円
+61.4%前年 651億円

経常利益

1,007億円
+89.1%前年 533億円

純利益

606億円
+23.6%前年 490億円
決算でよく使う「4つの利益」を押さえておく
利益は上から順に費用を差し引きながら4段階で示されます。営業収益(本業で得た総額。小売業では売上高にあたる)から原価や人件費などを引くと営業利益(本業のもうけ)。そこに受取利息や持分法投資損益などを加減したものが経常利益(財務活動まで含めた通常のもうけ)。さらに税金などを差し引いて最終的に残るのが純利益です。下の段ほど「実際に会社へ残る利益」に近づきます。
「実質ベース」とは ── 連結範囲の変更をならした比較
今期は、セブン銀行やヨーク・ホールディングス傘下の会社が連結から外れました。単純に前年と比べると、外れた会社のぶんだけ売上や利益が減って見えます。そこで会社は、外れた会社の影響を前年側から取り除き、コンビニ事業を主体に組み替えた数値との比較を「実質ベース」として示しています。会計上の見かけではなく、いま残っている事業がどれだけ伸びたかを測るための物差しです。
「のれん償却前」「EBITDA」って何?
北米の7-Elevenは買収で取得した事業で、買収額のうち帳簿価値を超えて払った部分がのれんとして計上され、毎期少しずつ費用(のれん償却)になります。これは現金の支出をともなわない会計上の費用のため、事業の実力を見るときはのれん償却前の利益で比べることがあります。EBITDAは営業利益に減価償却費とのれん償却費を足し戻した指標で、設備投資や買収の影響を除いた「本業の現金を生む力」の目安です。

01 ── PERFORMANCE

利益は3段階そろって大きく伸びた

営業利益は前年比+61.4%、経常利益は+89.1%、純利益は+23.6%。売上が減るなかで利益の3指標がそろって伸びるのは珍しい形です。本業の利益率(営業利益÷営業収益)は前年の2.3%から4.4%へ改善し、売上の規模ではなく中身で稼ぐ体質に切り替わりつつあります。

利益の前年同期比較

単位:億円 / 前年(2025年3〜5月)と当期(2026年3〜5月)の比較

1,200億 800億 400億 0 651 533 490 +61% 1,050億 +89% 1,007億 +24% 606億 営業利益 経常利益 純利益
前年同期 当期
営業収益は前年2兆7,774億円→当期2兆3,788億円(−14.3%)。上図は利益3指標を同一スケールで比較したもの(営業収益はスケールが異なるため割愛)。金額は百万円単位の開示値を億円に四捨五入。

減収の中身は「事業を手放したこと」

売上が14.3%減ったのは、店舗が売れなくなったからではありません。2025年にセブン銀行(6月)とヨーク・ホールディングス傘下の会社(9月)を連結から外したため、その分の売上がまるごと消えました。前年側からこれらの影響を取り除いた「実質ベース」で比べると、営業収益は逆に+2.4%。見かけの減収と、事業の実態は別ものです。

02 ── DRIVERS

なぜ減収でここまで増益できたのか

理由は3つに整理できます。手放した事業のぶん利益率の低い売上が消え、残った海外コンビニが利益を大きく伸ばし、国内も客単価と粗利率を積み上げました。とくに効いたのは北米です。

① 事業をコンビニへ絞り込んだ

2025年8月に公表した「7-Elevenの変革」に沿って、金融(セブン銀行)や国内スーパー・専門店(ヨーク・ホールディングス傘下)を切り離しました。祖業に近い低採算の事業が連結から外れたことで、グループ全体の利益率がかさ上げされています。

② 海外コンビニの利益が跳ねた

海外コンビニ事業の営業利益は655億円と、前年の87億円から約7.6倍に急増しました。中核の北米7-Eleven, Inc.は、直営店のフランチャイズ化や店舗刷新、コスト管理の徹底で、のれん償却前の営業利益が880億円(前年比+135.2%)まで回復。オーストラリアなどを束ねる7-Eleven Internationalも、日本発の商品やフレッシュフードの拡充で利益を伸ばしました。

③ 国内は先行投資で利益が微減

国内コンビニ事業(セブン-イレブン・ジャパン)は、客単価の上昇と粗利率の改善で既存店売上が前年を上回りました。一方、店内調理設備「セブンカフェ ベーカリー」や次世代店舗システムへの先行投資、物価上昇による販管費の増加が重く、営業利益は522億円(前年比−4.2%)とわずかに減っています。攻めの投資が利益を一時的に押し下げた構図です。

実質ベースなら営業利益は約2.2倍

連結範囲の変更をならした実質ベースで見ると、営業利益は前年の472億円から+122.4%、経常利益は+120.0%、純利益は+95.3%。手放した事業を除いても、残った本業がしっかり伸びていることがわかります。今四半期の増益は、会計上の見かけだけで説明できるものではありません。

03 ── SEGMENTS

売上も利益も、海外コンビニが柱

今期からセグメントの区分を「国内コンビニ」「海外コンビニ」「その他」の3つに変えています。営業収益の約9割を海外コンビニが占め、利益面でも全体を牽引しました。前年の数値は新しい区分に組み替えて比較しています。

セグメント別の営業収益構成

当期営業収益 2兆3,788億円の内訳(調整額を除く)

海外コンビニ 89.8%
海外コンビニ 2兆1,358億(89.8%) 国内コンビニ 2,302億(9.7%) その他 162億(0.7%)
セグメント営業収益前年比営業利益前年比
海外コンビニ2兆1,358億+2.0%655.9億+655.0%
国内コンビニ2,301.6億+3.0%522.4億−4.2%
その他162.4億−96.5%15.1億−92.3%
セグメント営業収益・利益は内部取引を含む数値。上記のほか調整額(消去及び全社)として営業損失143億円(前年176億円の損失)があり、これらを合算して連結営業利益1,050億円となる。「その他」の大幅減は、セブン銀行・ヨーク・ホールディングス傘下の会社が連結から外れたことによるもの。

牽引役は北米の7-Eleven

海外コンビニの営業利益655.9億円のうち、大半を北米7-Eleven, Inc.が稼いでいます。低所得者層を中心に節約志向が続くなかでも、オリジナル商品の拡充と徹底したコスト管理で収益を立て直しました。北米の宅配サービス「7NOW」の拡大も、自律的な成長の軸として位置づけられています。国内は投資が先行しているものの、既存店売上と粗利率はどちらも前年を上回っており、足元の地力は落ちていません。

04 ── OUTLOOK

会社は通期予想を上方修正した

好調な立ち上がりを受けて、会社は4月時点の通期予想を引き上げました。営業利益は前回予想の4,050億円から4,250億円へ、経常利益は3,670億円から3,900億円へ。据え置きが多い1四半期時点で予想を上げてきたのは、経営の手応えの表れといえます。

通期予想に対する第1四半期の進捗率

点線 = 1年の4分の1(25%)の目安ライン

25% 営業収益 22.8% 営業利益 24.7% 経常利益 25.8% 純利益 21.8%
通期予想:営業収益10兆4,300億円(前期比±0.0%)/営業利益4,250億円(+0.5%)/経常利益3,900億円(+3.3%)/純利益2,780億円(−5.0%)。進捗率は第1四半期実績÷通期予想の算出値。

売上予想は据え置きに近く、利益で稼ぐ計画

通期の営業収益は前期比ほぼ横ばいの計画で、進捗も4分の1の目安(25%)をやや下回る22.8%。一方、純利益の通期予想は前期比−5.0%と減益を見込みます。これは第1四半期の勢いが弱いからではなく、下期にかけて事業の入れ替えや投資の影響を保守的に織り込んでいるためです。第1四半期の利益進捗(営業24.7%/経常25.8%)は目安どおりで、計画に対して順調な出だしといえます。

05 ── BALANCE SHEET

財務は安定、配当は10円増やす

総資産は前期末から4,227億円増えて9兆5,657億円。増加のほとんどは円安による為替換算の影響です。自己資本比率は38.6%と前期末(39.6%)からわずかに下がったものの、健全な水準を保っています。年間配当は前期の50円から60円へ引き上げる予想です。

営業キャッシュ・フロー 3,435億円

本業で稼いだ現金は前年の2,353億円から大きく増えました。手元の現金及び現金同等物は6,486億円。事業の入れ替えを進めながらも、現金を生む力はしっかり働いています。

年間配当 60円(前期50円)

中間30円+期末30円で、前期から10円の増配予想。あわせて自己株式の取得を進めており、発行済株式数の期中平均は前年の約25億9千万株から約23億1千万株へ減っています。1株あたりの価値を高める還元です。

増益でも純利益の伸びは控えめ

営業利益が+61.4%伸びた一方、最終的な純利益は+23.6%にとどまりました。事業構造改革にともなう費用や、持分法適用会社への組み替えの影響が下の利益段階で効いているためです。増益の勢いがそのまま最終利益まで届いているわけではない点は、見ておきたいところです。

06 ── SUMMARY

評価と、見ておくべき論点

評価できる点

  • 減収でも営業利益+61.4%・経常利益+89.1%の大幅増益。
  • 北米を中心に海外コンビニの利益が約7.6倍に急伸。
  • 1四半期時点で通期予想を上方修正する手応え。
  • 年間配当を50円→60円へ増配、自己株買いも継続。

留意すべき点

  • 減収の主因は事業の非連結化という会計上の要因。実力は実質ベースで見る必要。
  • 実質ベースの営業収益は+2.4%と、売上の伸び自体は緩やか。
  • 国内コンビニは先行投資で営業利益が微減、北米は節約志向が継続。
  • 純利益の通期予想は前期比−5.0%の減益計画。

中期戦略「7-Elevenの変革」

同社は、金融や国内小売を切り離してコンビニ事業に集中し、北米を軸にグローバルで成長する方針を掲げています。今四半期は、その入れ替えの効果が利益の数字に表れた決算でした。次に問われるのは、身軽になった事業でどれだけ売上そのものを伸ばせるか。実質ベースの成長率が加速していくかどうかが、これからの見どころです。

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