EARNINGS REVIEW
2026年7月期 通期 決算レビュー
証券コード 8057(東証プライム) / 対象期間 2025年7月21日〜2026年7月20日 / 決算発表 2026年9月2日
売上高4,257億2,900万円、営業利益156億3,100万円。売上は前期比+26.3%、営業利益+28.4%、経常利益+27.8%、親会社株主に帰属する当期純利益は124億8,600万円で+27.1%。売上も4つの利益もすべて2期連続で過去最高を更新した。 伸びた場所ははっきりしている。公共関連事業が売上928億円から1,610億3,800万円(+73.6%)へ、営業利益は52億4,000万円から89億7,400万円(+71.2%)へ。5年前に全国の小中学校へ一斉配備されたGIGAスクールの1人1台端末が、この期に本格的な更新期を迎えた。会社はキッティングセンターを前年に増強しており、その処理能力で受け止めた。 一方で会社は、来期の予想を売上高4,000億円(△6.0%)・営業利益150億円(△4.0%)と減収減益に置いている。特需は終わるという前提だ。それでも中期経営計画の当初計画(3期目に売上3,400億円・営業利益115億円)は大きく上回る。今回の決算で確かめたいのは、特需の大きさそのものより、特需が引いたあとに残る水準のほうだ。
売上高
営業利益
経常利益
親会社株主帰属 当期純利益
01 ── PERFORMANCE
売上高は3,370億5,500万円から4,257億2,900万円へ、886億7,400万円の増加。伸び率にして+26.3%は、この会社としては異例の大きさだ。ところが売上総利益の増加は523億8,700万円から592億4,000万円へ68億5,300万円(+13.1%)にとどまる。売上の伸び率のちょうど半分だ。売上総利益率は15.5%から13.9%へ1.6ポイント落ちた(算出)。端末という薄利の商材が売上の中で膨らんだ分、率は下がる。
それを利益に変えたのは販管費のほうだった。販売費及び一般管理費は402億1,300万円から436億900万円へ33億9,600万円(+8.4%)の増加。会社は人材採用、ベースアップを含む処遇改善、職場環境の整備、グループ共通販売管理システムの導入と、増やすべきところは増やしたと書いている。それでも売上の伸びに対して販管費の伸びは3分の1以下で、売上に対する販管費の比率は11.9%から10.2%へ下がった(算出)。結果、営業利益は121億7,400万円から156億3,100万円、営業利益率は3.6%から3.7%へわずかに上がった。
売上高の推移 ── 5年で1.9倍、そして来期は初めて減る計画
単位:百万円 / 2027年7月期は会社計画(9月2日発表)
| 連結(2026年7月期) | 前期 | 当期 | 増減額 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 337,055百万円 | 425,729百万円 | +88,674 | +26.3% |
| 売上総利益 | 52,387百万円 | 59,240百万円 | +6,853 | +13.1% |
| 売上総利益率 | 15.5% | 13.9% | ─ | △1.6pt(算出) |
| 販売費及び一般管理費 | 40,213百万円 | 43,609百万円 | +3,396 | +8.4% |
| 販管費比率 | 11.9% | 10.2% | ─ | △1.7pt(算出) |
| 営業利益 | 12,174百万円 | 15,631百万円 | +3,457 | +28.4% |
| 営業利益率 | 3.6% | 3.7% | ─ | +0.1pt |
| 経常利益 | 13,126百万円 | 16,770百万円 | +3,643 | +27.8% |
| うち投資有価証券売却益(特別利益) | 1,353百万円 | 1,279百万円 | △74 | △5.5%(算出) |
| 税金等調整前当期純利益 | 14,479百万円 | 18,009百万円 | +3,530 | +24.4%(算出) |
| 親会社株主帰属当期純利益 | 9,825百万円 | 12,486百万円 | +2,661 | +27.1% |
| 1株当たり当期純利益 | 199円45銭 | 253円23銭 | +53円78銭 | +27.0%(算出) |
| 包括利益 | 8,144百万円 | 18,052百万円 | +9,908 | +121.6% |
利益率・販管費比率・EPS増減率は算出値。1株当たり当期純利益は2026年1月21日の株式分割(1株→5株)を前期の期首に遡って適用した値。減価償却費は1,950百万円→2,244百万円。特別損失は関係会社株式評価損39百万円のみ。
包括利益は81億4,400万円から180億5,200万円へ+121.6%。当期純利益125億4,100万円に、退職給付に係る調整額+34億3,100万円と、保有する上場株式の時価評価に伴うその他有価証券評価差額金+16億5,400万円、為替換算調整勘定+4億2,500万円が上乗せされた。いずれも本業の稼ぎではないが、純資産を708億円から860億円へ21.4%押し上げ、自己資本比率を40.3%から45.8%へ引き上げた実体はここにある。退職給付に係る資産は51億8,900万円増えた。
02 ── SEGMENT
セグメントの数字は、この1年に何が起きたかをそのまま語っている。公共関連事業の売上は927億8,100万円から1,610億3,800万円(+73.6%)、営業利益は52億4,000万円から89億7,400万円(+71.2%)。GIGAスクール端末の更新に加えて、学習系と校務系を統合するネットワーク更新の大型案件、県単位の校務システム構築、大学の理系学部新設に伴う環境構築、学校の改築・改修まで、複数の需要が同じ期に重なった。自治体システムの標準化は、翌期以降へ延伸する自治体の数が想定を上回ったが、当期分の作業と福祉系システムは完了させたとしている。
情報関連事業は売上2,044億4,700万円(+11.3%)と伸びながら、営業利益は42億9,300万円(△6.5%)と減った。伸びたのは大手民間向けだ。オフィス内の位置情報や各種データをリアルタイムで可視化する大型システム案件、会議室運用支援サービスの契約増、Windows 10のサポート終了に伴うIT更新需要、クラウド型サブスクリプションのライセンス契約。減った理由は逆側にある。相対的に利益率の高い中小企業向けSI案件が、半導体不足によるサーバやPCの供給遅延で商談が後ろにずれ、業務システムの更新需要も端境期にあった。売上の構成が薄利側へ寄って、利益が削られた形だ。
オフィス関連事業は売上591億7,200万円(△0.4%)とほぼ横ばい。シェアオフィスやレンタルオフィスのハイグレード案件、東名阪のオフィス移転やレイアウト変更、地方の拠点リニューアル、福祉施設や庁舎の案件と需要そのものは取れているが、前期に計上した大型案件の反動で増収には届かなかった。それでも営業利益は21億3,200万円(+7.3%)と増えている。海外市場の回復とオフィス周辺事業の収益性改善によるもので、売上高営業利益率は3.3%から3.6%へ上がった(算出)。
売上構成の変化 ── 公共関連が27.5%から37.8%へ
単位:% / 外部顧客への売上高ベース
営業利益の増減 ── 前期121億7,400万円から当期156億3,100万円へ
単位:百万円 / セグメント利益の増減で分解
| セグメント(百万円) | 売上高 前期 | 売上高 当期 | 増減率 | 営業利益 前期 | 営業利益 当期 | 増減率 | 利益率 当期(算出) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 公共関連事業 | 92,781 | 161,038 | +73.6% | 5,240 | 8,974 | +71.2% | 5.6% |
| オフィス関連事業 | 59,419 | 59,172 | △0.4% | 1,987 | 2,132 | +7.3% | 3.6% |
| 情報関連事業 | 183,661 | 204,447 | +11.3% | 4,591 | 4,293 | △6.5% | 2.1% |
| その他(教育研修・人材派遣) | 1,192 | 1,071 | △10.2% | 290 | 174 | △39.9% | 2.4% |
| 調整額(セグメント間取引消去) | △6,234 | △6,485 | ─ | 64 | 56 | ─ | ─ |
| 連結 | 337,055 | 425,729 | +26.3% | 12,174 | 15,631 | +28.4% | 3.7% |
売上高は外部顧客への売上高。利益率は各セグメントの売上高(内部売上高を含む合計)に対するセグメント利益の比率で算出。セグメント資産は公共関連48,063→53,391、オフィス関連28,725→31,018、情報関連67,183→65,729(百万円)。情報関連は売上が2割近く大きい事業だが、資産は公共関連より減っている。
情報関連事業の営業利益率は2.5%から2.1%へ下がった(算出)。売上は204億円増えたのに利益は3億円近く減っている。会社が挙げた理由は2つで、いずれも公共の特需とは独立している。1つは中小企業向けSI案件の延伸。半導体不足によるサーバ・PCの供給遅延で商談が後ろにずれ、業務システムの更新需要も端境期にあった。もう1つは、伸びた領域がソフトウェアライセンスの再販という薄利側だったこと。会社は来期について「中小企業の業務システム案件の回復を見込む」と書いており、延伸した商談が戻るかどうかは、来期の利益率を左右する。
03 ── GUIDANCE
2027年7月期の会社計画は、売上高4,000億円(当期比△6.0%)・営業利益150億円(△4.0%)・経常利益160億円(△4.6%)・親会社株主に帰属する当期純利益105億円(△15.9%)。1株当たり当期純利益は212円89銭になる。減収減益の計画だが、その理由は会社の言葉で明確だ。Windows 10のサポート終了に伴う更新需要は収束し、GIGAスクール端末の更新案件も残りの一部となる。特需の2本が同時に細る前提を置いている。
数字の読みどころは、減益幅の差にある。売上は△6.0%、営業利益は△4.0%。売上の落ち幅より利益の落ち幅が小さいということは、営業利益率が3.7%から3.75%へ上がる前提で組まれている(算出)。薄利の端末が減り、その分だけ利益率の高い領域の構成比が戻るという読みだ。会社は民間市場でDX投資とオフィス環境構築の伸長、大手民間ICT、中小企業の業務システム案件の回復を見込み、公共市場では自治体システム標準化の延伸分と、GIGA後のデータ活用に向けたネットワーク構築を挙げている。
純利益だけが△15.9%と落ち幅が大きいのは、当期の特別利益に投資有価証券売却益12億7,900万円が乗っていて、来期はこれを見込んでいないためだ。当期の実効税率30.4%(算出)で税引後に直すと約8億9,000万円にあたる。減益額19億8,600万円のうち、半分近くはこの一過性の要因で説明がつく。
来期計画は、中期経営計画の当初想定をどれだけ上回るか(売上高)
単位:億円 / 第17次中期経営計画は2025年7月期〜2027年7月期の3か年
| 2027年7月期 連結業績予想(百万円) | 2025年7月期実績 | 2026年7月期実績 | 2027年7月期計画 | 当期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 337,055 | 425,729 | 400,000 | △6.0% |
| 営業利益 | 12,174 | 15,631 | 15,000 | △4.0% |
| 営業利益率(算出) | 3.6% | 3.7% | 3.8% | +0.1pt |
| 経常利益 | 13,126 | 16,770 | 16,000 | △4.6% |
| 親会社株主帰属当期純利益 | 9,825 | 12,486 | 10,500 | △15.9% |
| 1株当たり当期純利益 | 199円45銭 | 253円23銭 | 212円89銭 | △15.9%(算出) |
| 年間配当(分割後ベース) | 60円(分割前300円) | 76円(分割前380円) | 76円 | 据置 |
決算短信の連結業績予想より。2027年7月期は通期のみの開示で、第2四半期累計の予想は開示されていない。2025年7月期の年間配当60円は、2026年1月の株式分割(1株→5株)を遡って適用した換算値(算出)。会社は配当性向を当期30.0%、来期予想35.7%としている。
04 ── BALANCE SHEET & DIVIDEND
この期の財務でいちばん動いたのは営業キャッシュ・フローだ。前期の5億4,900万円から当期130億6,900万円へ、125億2,000万円の増加。前期は売上債権が145億5,500万円、棚卸資産が131億1,800万円増えて資金を吸い上げていた。GIGA案件の仕込みで在庫と未回収の売上が膨らんだ局面だ。当期はそれが逆回転し、棚卸資産が24億1,400万円、売上債権が19億4,900万円減った。加えて契約負債(前受け)が67億8,300万円増えている。仕入債務は120億5,100万円減ったが、それを吸収してなお大きく資金が入った。
現金及び現金同等物は230億7,100万円から313億6,400万円へ。総資産は1,871億7,600万円(+7.0%)に対し、純資産は708億500万円から859億8,200万円(+21.4%)と伸び、自己資本比率は40.3%から45.8%へ5.5ポイント上がった。純資産の増加151億7,600万円のうち、当期純利益124億8,600万円と配当29億5,700万円の差し引きが95億2,800万円、残りは退職給付に係る調整累計額34億3,100万円と保有株式の評価差額16億5,400万円である。
配当は分割後ベースで76円。6月3日時点で予定していた普通配当72円から4円積み増した。分割前に換算すると380円で、前期の300円から80円の増配にあたる。配当性向は30.0%、配当総額は37億5,000万円。来期も76円を継続する予定で、こちらは配当性向35.7%になる。会社は利益配分の基本方針に「水準の維持または引き上げを基本とする累進的な配当」と明記している。自己資本当期純利益率(ROE)の目標は「安定的に10%以上」で、当期の実績は16.0%だった。
| 財政状態・CF(百万円) | 2025年7月20日 | 2026年7月20日 |
|---|---|---|
| 流動資産 | 131,642 | 136,431 |
| 固定資産 | 43,274 | 50,744 |
| 総資産 | 174,917 | 187,176 |
| 流動負債 | 92,319 | 87,302 |
| 純資産 | 70,805 | 85,982 |
| 自己資本比率 | 40.3% | 45.8% |
| 営業活動CF | 549 | 13,069 |
| 投資活動CF | △1,027 | △1,331 |
| 財務活動CF | △2,751 | △3,466 |
| 現金及び現金同等物(期末) | 23,071 | 31,364 |
| 配当・経営指標 | 2025年7月期 | 2026年7月期 |
|---|---|---|
| 年間配当(分割後) | 60円 | 76円 |
| 年間配当(分割前換算) | 300円 | 380円 |
| 配当金総額 | 2,957百万円 | 3,750百万円 |
| 連結配当性向 | 30.1% | 30.0% |
| 純資産配当率 | 4.4% | 4.8% |
| 自己資本当期純利益率(ROE) | 14.5% | 16.0% |
| 総資産経常利益率 | 8.1% | 9.3% |
| 1株当たり純資産 | 1,431円86銭 | 1,737円66銭 |
| 時価ベースの自己資本比率 | 56.1% | 55.4% |
| CF対有利子負債比率 | 9.1年 | 0.4年 |
決算短信のサマリー情報・連結貸借対照表・連結キャッシュ・フロー計算書およびキャッシュ・フロー関連指標の推移より。年間配当の分割後・分割前の対応は決算短信の注記による。CF対有利子負債比率は有利子負債÷営業キャッシュ・フローで、前期の9.1年から0.4年へ改善したのは営業CFが24倍になったため。インタレスト・カバレッジ・レシオは6.9倍から125.6倍。
会社が目標に掲げるROEは「安定的に10%以上」。当期の16.0%はそれを6ポイント上回るが、分子の純利益には特需と投資有価証券売却益12億7,900万円が乗っている。来期計画の純利益105億円を、当期末の自己資本857億200万円で単純に割ると12.3%(算出)。純資産がさらに積み上がることを考えれば実際はこれより低くなる。それでも目標の10%は上回る計算で、特需が引いたあとも二桁ROEが残る前提で会社は数字を置いている。ここが今回の決算のいちばん重要な含意かもしれない。
05 ── SUMMARY
この1年の内田洋行を一言でいえば、5年に一度の波を、準備していた体制で受け切ったということになる。2020年前後に全国の学校へ配られた端末が、5年後の今期にまとめて更新期を迎えることは、誰にでも分かっていた。分かっていたことを実際に取るには、調達からキッティング、全国展開までを一体で回す能力が要る。会社が前年度にキッティングセンターを増強していたのは、その波に合わせた投資だ。結果として「前回のGIGAスクール端末整備時を上回る導入実績」が残り、公共関連事業の売上は73.6%増えた。
ただし波は引く。会社はそれを隠さずに、来期を減収減益で置いた。読むべきは減益そのものではなく、引いたあとの水位のほうだ。第17次中期経営計画の当初、会社は3期目に売上3,400億円・営業利益115億円へ落ちると見ていた。実際に置いた来期計画は4,000億円と150億円。特需を除いたベースラインが、この3年で確実に上がっている。教育ICTで得た自治体との接点、県単位の校務システム、大学の学部新設案件、大手民間の位置情報・データ可視化システム、会議室運用支援のサブスクリプション。どれも端末のように一度で終わる商売ではない。
次の決算で確かめたい点は3つ。延伸した自治体システム標準化の作業がどれだけ売上に変わるか。半導体の供給遅延で後ろにずれた中小企業向けSI案件が戻り、情報関連の利益率が2.1%から改善するか。そして、来期が最終年度となる第17次中計のあと、会社が次の3年をどこに置くか。116年の会社が「働く」と「学ぶ」で積んだノウハウを、特需のない年にどう利益へ変えるか。答えはそこに出る。