SAKURA CAFE ・ 決算分析← レポート一覧
夕暮れの東京のオフィス街と藍色の空

号外EXTRA EDITION

TOPIX、10月に入れ替わる

初心者向け ── 何がどう変わるのか

JPX総研「TOPIX等の見直しの概要」(2026年5月)をもとに/初回の入れ替えは2026年10月の最終営業日

TOPIXは、日本の株式市場の「通知表」のような数字です。ニュースで毎日のように出てくる、あのTOPIXが今月末、はじめて定期的に銘柄を入れ替えます。 これまでのTOPIXは、ほとんど入れ替えがありませんでした。それが、売買が活発な会社を残す新しいルールに切り替わり、プライムだけでなくスタンダードとグロースの会社も対象になります。 元の資料はJPXが出した専門的なスライド9枚で、読み解くのに骨が折れます。この号では、難しい言葉を日常の例えに置き換えながら、変わること・変わらないこと・今後の予定に絞ってまとめました。

初回の入れ替え

2026年10月
最終営業日2回目は2028年10月、以後は毎年

TOPIXの銘柄数(試算)

約1,050銘柄
現行1,654銘柄から減る2026年3月末基準

外れる銘柄の猶予

8回に分けて
四半期ごとに少しずつ急にゼロにはならない
TOPIX ── 日本株全体の「通知表」
東証に上場する会社の株価を、会社の大きさ(時価総額)に応じて合成した数字です。1969年から計算されていて、日本株が全体として上がったのか下がったのかを一言で表します。大きな会社ほど数字への影響が大きく、小さな会社の影響は小さい。TOPIXと同じ値動きをするように作られた投資信託やETFなどの運用額は、約110兆円(2024年3月)に上ります。だから、ルールを変えるときは慎重に、時間をかけて進めています。
流動性 ── 「売りたいときに売れる、買いたいときに買える」度合い
人気のお店には毎日お客さんが来ますが、閑散としたお店では取引がほとんど成立しません。株も同じで、毎日たくさん売買される株は流動性が高く、ほとんど売買されない株は低い。TOPIXに連動するファンドは大量の株を売買するので、売買が少ない会社を多く含むと、動かすだけで株価が乱れやすくなる。新ルールが「流動性重視」と言っているのは、この問題を減らすためです。
売買代金回転率 ── 株が1年でどれだけ「入れ替わったか」
1年間に売買された金額を、その会社の「市場に出回っている株の時価総額(浮動株時価総額)」で割った数字です。例えば回転率0.2なら、1年間で市場に出回る株の2割分の金額が取引されたことになります。数字が大きいほど、よく売買されている株。JPXが新ルールの合否ラインに使うのが、この数字です。
浮動株時価総額 ── 市場で実際に売買される分だけの時価総額
会社の株のうち、創業家や取引先が長く持ち続けている分を除いた、実際に市場で売買される株の時価総額です。TOPIXはこの数字を使って「その会社の影響の大きさ」を決めています。

01 ── WHAT CHANGES

変わるのは3つ。「対象」「入れ替え」「合格ライン」

これまでのTOPIXは、2022年4月に市場区分が再編されたとき、プライム市場にいた会社を中心に組まれていました。一度入った会社は、ほとんど入れ替わりません。次のTOPIXでは、ここが3か所変わります。

項目現行TOPIX次期TOPIX
対象の市場プライム市場(再編時にスタンダード・グロースを選んだ会社も含む)プライム・スタンダード・グロースの全部
入れ替え定期的な入れ替えはなし年1回、10月の最終営業日(基準日は8月の最終営業日)
合格ラインなし(流通株式時価総額100億円未満の銘柄のウエイトを段階的に下げている最中)売買の活発さ(流動性)で決める。基準は次の章で

市場区分とTOPIXが「切り離される」

今回の見直しは、2段階の改革の2段階目にあたります。1段階目(2022年4月〜2025年1月)では、TOPIXと市場区分の結びつきを外し、政策保有株(持ち合い株)を浮動株から除くなどの調整を行いました。2段階目は、「プライムにいるかどうか」ではなく「売買が活発かどうか」で選ぶという考え方への転換です。プライムの会社でも基準を満たさなければ外れ、グロースの会社でも基準を満たせば入る可能性があります。

02 ── THE NEW RULE

合格ラインは「売買の活発さ」と「会社の大きさ」の2本立て

新ルールの選び方は、2つの条件で決まります。1つ目は、先ほど出てきた年間の売買代金回転率。2つ目は、会社の大きさの上位何%までに入っているか(浮動株時価総額の累積比率)です。

条件新しく入る場合
(追加基準)
すでに入っている場合
(継続基準)
年間の売買代金回転率0.2以上0.14以上
大きさの順位(累積比率)上位96%以内上位97%以内

注目してほしいのは、新しく入る会社より、すでに入っている会社のほうが基準がやさしいことです。0.2と0.14、上位96%と97%。この差は、資料でも「バッファ・ルール」と呼ばれています。合格ラインぎりぎりの会社が毎年入ったり外れたりすると、TOPIXに連動するファンドは売買を繰り返すことになり、効率が悪くなります。入るときは少しきびしく、残るときは少しやさしくして、ばたばた入れ替わらないようにしているわけです。

「TOPIXから外れる」は「会社が悪い」ではない

外れる基準はあくまで売買の活発さです。業績が悪いから外れる、という仕組みではありません。株主が長く持ち続けるタイプの会社は、売買が少なく見えて外れることがあります。ここは当方の補足ですが、ニュースで「TOPIXから外れる銘柄」と出ても、会社の価値の話とは分けて読むほうが安全です。

03 ── TRANSITION

外れる会社も、急にゼロにはならない

10月の初回入れ替えで基準を満たさなかった会社は、その日にTOPIXから消えるわけではありません。ウエイト(TOPIXの中での影響の大きさ)を四半期ごとに8回に分けて、少しずつ下げていきます。階段を一段ずつ降りるイメージです。

初回入れ替えで継続されない銘柄の「移行係数」

ウエイトの残り割合・% / 2026年10月から四半期ごとに12.5%ずつ低下

100% 75% 50% 25% 0% 87.5% 75.0% 62.5% 50.0% 37.5% 25.0% 12.5% 0.0% 26年10月 27年1月 4月 7月 10月 28年1月 4月 7月 ▲ 2027年10月に再評価
JPX総研の資料の移行係数の表を図にしたもの。2027年10月の再評価で継続基準(回転率0.14以上、上位97%以内)を満たした銘柄は、ウエイトの低下が止まる。

しかも途中でチャンスがあります。2027年10月に「再評価」が行われ、そこで継続基準を満たした銘柄は、ウエイトを下げる動きが止まります。外れかけた会社が経営を改善して売買が増えれば、元に戻れるということです。資料には「上場会社の経営改善の取組みを反映」と書かれています。ウエイトは「急にゼロになる」のではなく「時間をかけて決まる」と覚えておくと、ニュースの見方が変わります。

04 ── SCHEDULE

今月末から2028年まで。日程はこの5つ

時期起きること
2026年10月
最終営業日
初回の定期入れ替え。基準を満たさない銘柄は、この日にウエイトが87.5%へ下がる(低下の開始)。TOPIX Next-tier(次章)の算出も始まる
2027年1月〜7月四半期ごとにウエイトを下げていく(75.0%→62.5%→50.0%)
2027年10月再評価。継続基準を満たした銘柄は、ウエイトの低下が止まる
2028年7月低下が続いた銘柄のウエイトが0%になる。資料では「第二段階の見直し完了」の時期
2028年10月2回目の定期入れ替え。以後は毎年10月に実施。再評価の効果で、入れ替わる銘柄の数や回転率が抑えられる見込み

05 ── ESTIMATE

銘柄は減るが、市場の「ほぼ全体」はカバーされたまま

JPXは、2026年3月最終営業日の数字を使って、新ルールで組んだらどうなるかの試算を公開しています。結論は「指数の連続性は保たれ、売買のしやすさは上がる」です。数字で見ると、銘柄数は減るのに、市場全体のカバー率はほとんど落ちません。

TOPIXの銘柄数(2026年3月末基準)

銘柄数 / 現行=ニュートラル、次期(試算)=アクセント

現行TOPIX 次期TOPIX(試算) 1,654 約1,050
JPX総研「TOPIX等の見直しの概要」p.6。次期TOPIXの値は試算で、2024年8月末基準の試算(約1,150銘柄)からさらに減っている。相場の上昇と上場銘柄数の減少が理由とされている。
項目(2026年3月末)現行TOPIX次期TOPIX(試算)見方
浮動株時価総額の合計691兆円684兆円ほぼ維持
市場カバー率約97.5%約96.6%ほぼ維持
浮動株時価総額(中央値)約526億円約1,360億円約2.6倍(算出)
1日あたり売買代金(中央値)約4.2億円約11.8億円約2.8倍(算出)
銘柄数1,654約1,050スタンダード・グロースから約50銘柄が採用

読み方のコツは、中央値の行です。中央値は、銘柄を大きい順に並べたときの真ん中の会社の数字を指します。真ん中の会社の大きさと売買代金が、どちらも2倍以上になる。つまりTOPIXの中身が「小さくて売買の少ない会社を多く含む状態」から「そこそこ大きく、よく売買される会社が中心の状態」に変わる、ということです。市場カバー率が約97.5%から約96.6%に落ちるだけで済んでいるのは、外れる会社の時価総額が合計では小さいからです。

業種や会社の規模のバランスは、ほとんど変わらない

業種別のウエイトで最も増えるのは電気機器(+0.2%)、最も減るのはサービス業(-0.2%)。規模別では超大型のTOPIX Core30が41.6%から42.8%に、小型のTOPIX Smallが7.2%から5.7%に動きます。いずれも試算です。入れ替えでTOPIXの顔つきが急に変わることはない、というのがJPXの説明です。PER・PBR・配当利回りといった指標も、ほとんど動いていません。

06 ── ALSO CHANGING

TOPIXから外れた会社の「受け皿」と、グロース250の変更

TOPIX Next-tier ── 10月から新しく計算が始まる指数

TOPIXに入らない会社(移行措置で外れていく会社を含む)の中で、一定の売買が認められる会社を集めた新しい指数が、初回の入れ替えと同じ2026年10月から計算されます。条件は、売買代金回転率が0.1以上で、浮動株時価総額の累積比率が上位99%以内。銘柄数は約800(試算)と資料にあります。TOPIXから外れても、その外側にもう1つの指数がある、という作りです。

東証グロース市場250指数 ── TOPIXとの重複が可能に

グロース市場の上場時価総額の上位250銘柄で作る指数です。現行ルールでは、TOPIXに入っている銘柄は構成銘柄から除かれています。見直し案では、TOPIXと重なっていても構わないことになります。グロース市場の会社がTOPIXに採用される道が開けるので、それに合わせた変更です。

07 ── SUMMARY

分かっていること、まだ分からないこと

現時点で分かっていること

  • TOPIXが初めて定期入れ替えを行う。初回は2026年10月の最終営業日、2回目は2028年10月、以後は毎年。
  • 対象がプライム・スタンダード・グロースの全部になり、売買代金回転率と大きさの順位で選ぶ。
  • 入るときより残るときの条件がやさしい(回転率0.2以上と0.14以上、上位96%と97%)。ばたばた入れ替わらない仕組み。
  • 外れる銘柄のウエイトは、四半期ごとに8回に分けて下がる。2027年10月の再評価で止まる場合もある。
  • 銘柄数は1,654→約1,050(試算)に減る一方、市場カバー率は約96.6%で、ほぼ維持される。

まだ分からないこと

  • 初回の入れ替えで、具体的にどの銘柄が外れ、どの銘柄が入るか。試算はあるが、確定は基準日(8月最終営業日)のデータによる。
  • 入れ替えの前後で、個別の株価がどれだけ動くか。資料に株価への影響の予測は書かれていない。
  • TOPIX Next-tierが、どれだけ使われる指数になるか。算出が始まったばかり。
  • 2028年10月以降、入れ替わる銘柄の数が本当に抑えられるか。資料の言葉は「期待される」。

号外の視点 ── ニュースで見たら、まず「理由」を確かめる

10月が近づくと、「TOPIXから外れそうな銘柄」「新たに入りそうな銘柄」という記事が増えるはずです。そのとき確かめたいのは、外れる理由が会社の業績ではなく、売買の少なさだという点です。外れかけた会社でも、2027年10月の再評価で挽回できます。 ご自身の投資信託やNISAの商品がTOPIX連動型なら、中身の入れ替えは運用会社が自動で行うのが一般的です。ただ、「なぜ今月、あの会社の株が動いたのか」という疑問が湧いたときに、この仕組みを思い出せるようにしておくと、ニュースの読み方が変わります。

レポート一覧へ戻る →