号外EXTRA EDITION
初心者向け ── 何がどう変わるのか
JPX総研「TOPIX等の見直しの概要」(2026年5月)をもとに/初回の入れ替えは2026年10月の最終営業日
TOPIXは、日本の株式市場の「通知表」のような数字です。ニュースで毎日のように出てくる、あのTOPIXが今月末、はじめて定期的に銘柄を入れ替えます。 これまでのTOPIXは、ほとんど入れ替えがありませんでした。それが、売買が活発な会社を残す新しいルールに切り替わり、プライムだけでなくスタンダードとグロースの会社も対象になります。 元の資料はJPXが出した専門的なスライド9枚で、読み解くのに骨が折れます。この号では、難しい言葉を日常の例えに置き換えながら、変わること・変わらないこと・今後の予定に絞ってまとめました。
初回の入れ替え
TOPIXの銘柄数(試算)
外れる銘柄の猶予
01 ── WHAT CHANGES
これまでのTOPIXは、2022年4月に市場区分が再編されたとき、プライム市場にいた会社を中心に組まれていました。一度入った会社は、ほとんど入れ替わりません。次のTOPIXでは、ここが3か所変わります。
| 項目 | 現行TOPIX | 次期TOPIX |
|---|---|---|
| 対象の市場 | プライム市場(再編時にスタンダード・グロースを選んだ会社も含む) | プライム・スタンダード・グロースの全部 |
| 入れ替え | 定期的な入れ替えはなし | 年1回、10月の最終営業日(基準日は8月の最終営業日) |
| 合格ライン | なし(流通株式時価総額100億円未満の銘柄のウエイトを段階的に下げている最中) | 売買の活発さ(流動性)で決める。基準は次の章で |
今回の見直しは、2段階の改革の2段階目にあたります。1段階目(2022年4月〜2025年1月)では、TOPIXと市場区分の結びつきを外し、政策保有株(持ち合い株)を浮動株から除くなどの調整を行いました。2段階目は、「プライムにいるかどうか」ではなく「売買が活発かどうか」で選ぶという考え方への転換です。プライムの会社でも基準を満たさなければ外れ、グロースの会社でも基準を満たせば入る可能性があります。
02 ── THE NEW RULE
新ルールの選び方は、2つの条件で決まります。1つ目は、先ほど出てきた年間の売買代金回転率。2つ目は、会社の大きさの上位何%までに入っているか(浮動株時価総額の累積比率)です。
| 条件 | 新しく入る場合 (追加基準) | すでに入っている場合 (継続基準) |
|---|---|---|
| 年間の売買代金回転率 | 0.2以上 | 0.14以上 |
| 大きさの順位(累積比率) | 上位96%以内 | 上位97%以内 |
注目してほしいのは、新しく入る会社より、すでに入っている会社のほうが基準がやさしいことです。0.2と0.14、上位96%と97%。この差は、資料でも「バッファ・ルール」と呼ばれています。合格ラインぎりぎりの会社が毎年入ったり外れたりすると、TOPIXに連動するファンドは売買を繰り返すことになり、効率が悪くなります。入るときは少しきびしく、残るときは少しやさしくして、ばたばた入れ替わらないようにしているわけです。
外れる基準はあくまで売買の活発さです。業績が悪いから外れる、という仕組みではありません。株主が長く持ち続けるタイプの会社は、売買が少なく見えて外れることがあります。ここは当方の補足ですが、ニュースで「TOPIXから外れる銘柄」と出ても、会社の価値の話とは分けて読むほうが安全です。
03 ── TRANSITION
10月の初回入れ替えで基準を満たさなかった会社は、その日にTOPIXから消えるわけではありません。ウエイト(TOPIXの中での影響の大きさ)を四半期ごとに8回に分けて、少しずつ下げていきます。階段を一段ずつ降りるイメージです。
初回入れ替えで継続されない銘柄の「移行係数」
ウエイトの残り割合・% / 2026年10月から四半期ごとに12.5%ずつ低下
しかも途中でチャンスがあります。2027年10月に「再評価」が行われ、そこで継続基準を満たした銘柄は、ウエイトを下げる動きが止まります。外れかけた会社が経営を改善して売買が増えれば、元に戻れるということです。資料には「上場会社の経営改善の取組みを反映」と書かれています。ウエイトは「急にゼロになる」のではなく「時間をかけて決まる」と覚えておくと、ニュースの見方が変わります。
04 ── SCHEDULE
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 2026年10月 最終営業日 | 初回の定期入れ替え。基準を満たさない銘柄は、この日にウエイトが87.5%へ下がる(低下の開始)。TOPIX Next-tier(次章)の算出も始まる |
| 2027年1月〜7月 | 四半期ごとにウエイトを下げていく(75.0%→62.5%→50.0%) |
| 2027年10月 | 再評価。継続基準を満たした銘柄は、ウエイトの低下が止まる |
| 2028年7月 | 低下が続いた銘柄のウエイトが0%になる。資料では「第二段階の見直し完了」の時期 |
| 2028年10月 | 2回目の定期入れ替え。以後は毎年10月に実施。再評価の効果で、入れ替わる銘柄の数や回転率が抑えられる見込み |
05 ── ESTIMATE
JPXは、2026年3月最終営業日の数字を使って、新ルールで組んだらどうなるかの試算を公開しています。結論は「指数の連続性は保たれ、売買のしやすさは上がる」です。数字で見ると、銘柄数は減るのに、市場全体のカバー率はほとんど落ちません。
TOPIXの銘柄数(2026年3月末基準)
銘柄数 / 現行=ニュートラル、次期(試算)=アクセント
| 項目(2026年3月末) | 現行TOPIX | 次期TOPIX(試算) | 見方 |
|---|---|---|---|
| 浮動株時価総額の合計 | 691兆円 | 684兆円 | ほぼ維持 |
| 市場カバー率 | 約97.5% | 約96.6% | ほぼ維持 |
| 浮動株時価総額(中央値) | 約526億円 | 約1,360億円 | 約2.6倍(算出) |
| 1日あたり売買代金(中央値) | 約4.2億円 | 約11.8億円 | 約2.8倍(算出) |
| 銘柄数 | 1,654 | 約1,050 | スタンダード・グロースから約50銘柄が採用 |
読み方のコツは、中央値の行です。中央値は、銘柄を大きい順に並べたときの真ん中の会社の数字を指します。真ん中の会社の大きさと売買代金が、どちらも2倍以上になる。つまりTOPIXの中身が「小さくて売買の少ない会社を多く含む状態」から「そこそこ大きく、よく売買される会社が中心の状態」に変わる、ということです。市場カバー率が約97.5%から約96.6%に落ちるだけで済んでいるのは、外れる会社の時価総額が合計では小さいからです。
業種別のウエイトで最も増えるのは電気機器(+0.2%)、最も減るのはサービス業(-0.2%)。規模別では超大型のTOPIX Core30が41.6%から42.8%に、小型のTOPIX Smallが7.2%から5.7%に動きます。いずれも試算です。入れ替えでTOPIXの顔つきが急に変わることはない、というのがJPXの説明です。PER・PBR・配当利回りといった指標も、ほとんど動いていません。
06 ── ALSO CHANGING
TOPIXに入らない会社(移行措置で外れていく会社を含む)の中で、一定の売買が認められる会社を集めた新しい指数が、初回の入れ替えと同じ2026年10月から計算されます。条件は、売買代金回転率が0.1以上で、浮動株時価総額の累積比率が上位99%以内。銘柄数は約800(試算)と資料にあります。TOPIXから外れても、その外側にもう1つの指数がある、という作りです。
グロース市場の上場時価総額の上位250銘柄で作る指数です。現行ルールでは、TOPIXに入っている銘柄は構成銘柄から除かれています。見直し案では、TOPIXと重なっていても構わないことになります。グロース市場の会社がTOPIXに採用される道が開けるので、それに合わせた変更です。
07 ── SUMMARY
10月が近づくと、「TOPIXから外れそうな銘柄」「新たに入りそうな銘柄」という記事が増えるはずです。そのとき確かめたいのは、外れる理由が会社の業績ではなく、売買の少なさだという点です。外れかけた会社でも、2027年10月の再評価で挽回できます。 ご自身の投資信託やNISAの商品がTOPIX連動型なら、中身の入れ替えは運用会社が自動で行うのが一般的です。ただ、「なぜ今月、あの会社の株が動いたのか」という疑問が湧いたときに、この仕組みを思い出せるようにしておくと、ニュースの読み方が変わります。