号外EXTRA EDITION
初回の定期入替が確定 ── 全市場へ拡大、流動性で選ぶ(2026年10月7日公表・10月30日実施)
株式会社JPX総研/JPX Market Innovation & Research, Inc. 発表 / 2026年10月7日
10月7日、JPX総研がTOPIX(東証株価指数)の初回定期入替の結果を公表しました。2022年の市場区分再編を起点に進めてきた第二段階の見直しの山場で、実際の入れ替えは10月30日。これまでプライム市場に限っていた対象をスタンダード・グロース市場まで広げ、「どれだけ活発に売買されているか」で銘柄を選ぶ仕組みへ切り替わります。
数字の見た目はほとんど動きません。浮動株時価総額の合計も市場カバー率もほぼ据え置きで、指数の連続性は保たれる。変わるのは中身です。スタンダード・グロース市場から46銘柄が新たに採用され、基準を満たさなかった683銘柄は即時退場ではなく、四半期ごとに8段階でウエイトを落として2028年にゼロへ向かいます。
そして超大型30銘柄「Core30」では、フジクラ・村田製作所・パナソニックHD・住友商事が新たに名を連ね、入れ替わりにセブン&アイ・本田技研工業・ダイキン工業・第一三共が外れました。会社の大きさではなく、市場でどれだけ取引されているか。その物差しが、日本株の屋台骨の顔ぶれを静かに書き換えています。
構成銘柄数(入替後・10月30日)
スタンダード・グロース市場からの新規採用
1銘柄あたり売買代金の中央値(移行完了時)
01 ── THE REFORM
見直しの柱は2つです。1つは対象市場の拡大。これまでプライム市場に限っていた選定対象を、スタンダード・グロース市場まで広げました。もう1つは選定基準の切り替え。従来は市場区分に紐づいて機械的に決まっていた構成銘柄を、流動性基準(売買代金回転率と浮動株時価総額の累積比率)で選び直します。「上場している市場」ではなく「どれだけ取引されているか」が、これからの入場券です。
| 項目 | 見直し前 | 見直し後 |
|---|---|---|
| 対象市場 | プライム市場のみ | プライム・スタンダード・グロース |
| 定期入替 | なし | 年1回・10月最終営業日(基準日8月末) |
| 選定基準 | 市場区分に紐づく | 流動性基準(回転率+累積比率) |
| 継続基準 | ── | 回転率0.14以上・累積上位97%以内 |
| 非定期の追加 | プライム新規上場・区分変更 | 全市場の新規上場で累積上位95%超の規模 |
TOPIXの見直しは二段構えです。第一段階(2025年1月完了)では、市場区分との紐づけを切り離し、政策保有株を浮動株から除くなど「ウエイトの測り方」を改めました。今回の第二段階は、そこに流動性で銘柄を選び直す定期入替を加えるもの。約160兆円(2026年6月時点)という巨額の連動資産に配慮し、周知と移行の期間を十分にとって段階的に進めます。
02 ── THE NUMBERS
入れ替えと聞くと指数が大きく動く印象を持ちますが、JPX総研が強調するのは連続性です。浮動株時価総額の合計も市場カバー率も、入替前後でほとんど変わりません。一方で、1銘柄あたりの規模や売買代金の中央値は、移行が完了する2028年に向けて大きく切り上がっていきます。小さく薄い銘柄が抜け、残った銘柄がより取引しやすくなる、という方向です。
| 指標 | 入替前 (26年8月末) | 入替後 (26年10月末) | 移行完了時 (28年7月末) | 向き |
|---|---|---|---|---|
| 浮動株時価総額の合計 | 775兆円 | 778兆円 | 766兆円 | ほぼ維持 |
| 市場カバー率 | 97.4% | 97.9% | 96.4% | ほぼ維持 |
| 浮動株時価総額の中央値 | 約590億円 | 約610億円 | 約1,600億円 | 2倍超へ |
| 1日あたり売買代金の中央値 | 約4.8億円 | 約5.0億円 | 約15.4億円 | 3倍超へ |
| 構成銘柄数 | 1,636 | 1,669 | 約986 | 絞り込み |
構成銘柄数は、入替後はいったん1,669へと増えます。これは683の移行措置銘柄を残したまま46の新規採用を加えているためで、見かけ上はふくらむ。移行措置銘柄が8段階で抜けきる2028年には、約986銘柄まで絞り込まれる見込みです。「薄く広く」から「厚く選ぶ」へと、数年をかけて重心を移していく設計になっています。
03 ── THE CORE 30
規模別区分でもっとも目を引くのが、最上位のCore30です。市場を代表する超大型30銘柄に、フジクラ・村田製作所・パナソニックHD・住友商事が新たに昇格。入れ替わりでセブン&アイ・第一三共・ダイキン工業・本田技研工業・ソニーフィナンシャルグループがCore30を外れました。AI・データセンター需要で株価を伸ばした電線・電子部品勢が、日本株の最前列に並んだ格好です。
| 区分 | コード | 銘柄 | 主な事業 |
|---|---|---|---|
| 追加 | 5803 | フジクラ | 電線・光ファイバ(AI・データセンター需要) |
| 追加 | 6981 | 村田製作所 | 積層セラミックコンデンサ(電子部品) |
| 追加 | 6752 | パナソニックHD | 電機・車載電池 |
| 追加 | 8053 | 住友商事 | 総合商社 |
| 除外 | 3382 | セブン&アイ・ホールディングス | 小売(コンビニ・GMS) |
| 除外 | 4568 | 第一三共 | 医薬品 |
| 除外 | 6367 | ダイキン工業 | 空調 |
| 除外 | 7267 | 本田技研工業 | 自動車・二輪 |
| 除外 | 8729 | ソニーフィナンシャルグループ | 保険・金融 |
Core30の区分は浮動株時価総額の順位で決まります。ここを外れたからといって業績が悪化したわけではなく、より浮動株ベースの規模が大きい銘柄に席を譲った、という意味です。持ち合い株の多い会社は浮動株が小さく測られる一方、個人・機関が活発に売買する銘柄は上位に来やすい。顔ぶれの変化は、各社のIRや需給の違いを映す鏡でもあります。
04 ── THE LARGE 70
大型区分Large70には10銘柄が加わり、8銘柄が抜けました。Core30から押し出されたセブン&アイ・第一三共・ダイキン工業・本田技研工業がここに降りてくる一方、中型のMid400からIHI・イビデン・JX金属・キオクシアHD・レゾナックHD・INPEXなどが昇格。半導体・AI・資源関連の存在感が、大型の階層でも増しています。入れ替わりでLINEヤフー・SUBARU・ユニ・チャーム・西日本旅客鉄道などが大型区分を外れました。
| 区分 | 主な銘柄(コード) |
|---|---|
| 追加(10) | IHI(7013)、イビデン(4062)、JX金属(5016)、キオクシアHD(285A)、レゾナックHD(4004)、INPEX(1605)、セブン&アイ(3382)、第一三共(4568)、ダイキン工業(6367)、本田技研工業(7267) |
| 除外(8) | フジクラ(5803)、村田製作所(6981)、パナソニックHD(6752)、住友商事(8053)、LINEヤフー(4689)、SUBARU(7270)、ユニ・チャーム(8113)、西日本旅客鉄道(9021) |
除外側のうちフジクラ・村田・パナHD・住友商事の4社は、Core30へ昇格したことでLarge70を"卒業"したものです。残るLINEヤフー・SUBARU・ユニ・チャーム・JR西日本は、浮動株時価総額の順位が下がり中型区分へ移りました。中型・小型の入れ替えも規模が大きく、Mid400は追加21・除外14、Smallは追加41・除外14。スタンダード・グロース市場から新たに入った銘柄の多くが、まずはSmall区分に加わっています。
05 ── THE DRIFT
規模別のウエイトを入替前と移行完了時で比べると、重心が上位へ寄るのが分かります。Core30が+2.2ポイントと最も伸び、小型のSmallが-1.7ポイントで最も縮む。流動性の高い大型銘柄に比重を移す、という設計の狙いがそのまま数字に表れています。
規模別ウエイトの変化(入替前 → 移行完了時)
浮動株時価総額ベースのウエイト集計。移行完了時は2028年7月末時点の試算(移行措置銘柄を除く分布)。
一方、指数全体のファンダメンタルズはほとんど動きません。顔ぶれは入れ替わっても、市場全体の「割高・割安」や利回りの水準は連続します。
| 特性 | 入替前 | 移行完了時 | 影響 |
|---|---|---|---|
| PER(加重) | 21.1倍 | 21.2倍 | +0.1 |
| PBR(加重) | 1.88倍 | 1.90倍 | +0.02 |
| 配当利回り(加重) | 1.85% | 1.83% | -0.02% |
業種構成の揺れも小さく、ウエイトの増加が最も大きいのは銀行業(+0.2%)、減少が最も大きいのはサービス業(-0.1%)にとどまります。広く日本株を映すベンチマークとしての性格は、見直し後も保たれる設計です。
06 ── THE TRANSITION
新基準で継続採用されなかった683銘柄は、一度に外されるわけではありません。市場への影響を和らげるため、2026年10月を起点に四半期ごと12.5%ずつ、8回でウエイトを低減します。急な売り圧力を分散させる仕組みです。
移行措置銘柄のウエイト低減スケジュール(移行係数)
初回定期入替(2026年10月)を100%とし、四半期ごとに12.5ポイントずつ低減。2027年10月の再評価で継続基準を満たした銘柄は、この低減が停止する。
683という数字だけを見ると大量の除外に映りますが、実際には時間をかけた緩やかな退場です。第一段階の見直しでも同様の移行措置がとられ、円滑に進みました。投資家にとっては、連動ファンドの売買が特定の一日に集中しにくく、該当銘柄の株価も段差を作りにくい。指数の作り替えを、市場に波を立てずに行うための装置だと捉えると分かりやすいでしょう。
07 ── SUMMARY
今回の見直しは、TOPIXという物差しの「選び方」を、市場区分から流動性へと切り替えるものです。指数の値そのものは連続し、合計規模もカバー率もほぼ据え置き。それでも中を開けると、超大型の最前列にフジクラや村田が並び、長く日本株の顔だったホンダやセブン&アイが一歩下がる。会社の規模と、指数のなかでの重さは別物だという事実が、はっきり表に出てきました。 もう一つ見逃せないのが、スタンダード・グロース市場の46銘柄が初めてTOPIXの仲間入りをしたことです。これまで「プライムの指数」だったTOPIXが、市場全体を映す器へと広がる。連動する約160兆円の資金が、どの銘柄にどう配分されるかも静かに変わっていきます。派手な値動きのニュースではありませんが、日本株のインフラが数年がかりで組み替わる、その第一歩の記録です。