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EARNINGS REVIEW

東京エレクトロン

2027年3月期 第1四半期 決算レビュー

証券コード 8035(東証)/ 対象期間 2026年4月〜6月 / 決算発表 2026年7月30日

売上高7,323億円、営業利益2,114億円、経常利益2,156億円、純利益1,643億円。東京エレクトロンの2027年3月期第1四半期は、主要4項目がそろって前年同期を3割以上上回った。売上高の伸び+33.3%に対し、営業利益は+46.1%、経常利益は+46.3%。増収率を上回る増益率という、質を伴った伸び方になっている。 前年同期(2026年3月期1Q)は実のところ、売上高△1.0%・営業利益△12.7%という減収減益の四半期だった。その反転を後押ししたのがデータセンター向けAIサーバーの需要拡大で、短信は半導体製造装置市場について「AI用途の半導体向け設備投資が顕著に伸長」したと記す。同じ7月30日、会社は中間期(第2四半期累計)の業績予想も上方修正している。

売上高

7,323億円
+33.3%前年同期比

営業利益

2,114億円
+46.1%利益率 28.9%

経常利益

2,156億円
+46.3%前年同期比

純利益

1,643億円
+39.5%純利益率 22.4%
経常利益とは ── 営業利益に金融収支などを加減した日本基準の利益区分
営業利益に、受取配当金や補助金収入などの営業外収益を加え、為替差損などの営業外費用を差し引いた利益です。本業の儲けに、財務活動や為替といった経常的な収支を加味した段階にあたります。当1Qは営業利益2,114億円に営業外収益49億円を加え、営業外費用7億円を差し引いた2,156億円でした。
包括利益とは ── 純利益に、保有株式の評価差額などを加えたもの
四半期純利益に、その他有価証券評価差額金など、損益計算書を通らず直接純資産に計上される項目(その他の包括利益)を加えた利益です。当1Qは純利益1,643億円に、保有株式などの時価変動を映すその他有価証券評価差額金+806億円(算出)などが加わり、包括利益は2,491億円になりました。
前受金とは ── 製品の引き渡し前に受け取った代金。受注の強さを示す
顧客との契約に基づき、製品の引き渡しが完了する前に受け取った代金です。装置ビジネスでは受注や生産の進捗に応じて前受金を受け取ることが多く、残高の増加は受注が積み上がっているサインとして読めます。当1Qは前受金が238億円(算出)増加し、営業活動によるキャッシュ・フローを押し上げました。
自己資本比率とは ── 総資産に占める株主資本の割合
総資産のうち、返済不要の自己資本(株主資本+その他の包括利益累計額など)が占める割合です。比率が高いほど負債への依存度が低く、財務の安全性が高いとされます。当1Q末の自己資本比率は71.7%(前期末71.5%)でした。
配当性向とは ── 純利益のうち配当に回す割合
親会社株主に帰属する当期純利益に対して、配当金として株主に支払う金額の割合です。東京エレクトロンは配当性向50%を目処とする業績連動型の方針を掲げています。修正後の中間純利益予想767円51銭に対し、中間配当予想384円00銭の比率は50.0%(算出)でした。
単一セグメントとは ── 開示上、事業を1つの区分として扱うこと
複数の事業を営む会社は通常、事業ごとにセグメント別の売上・利益を開示しますが、東京エレクトロンは半導体製造装置事業のみで構成される単一セグメントとして開示しており、決算短信にセグメント別の内訳はありません。会社全体の業績が、そのまま半導体製造装置市場の動向を映す構造になっています。
進捗率とは ── 四半期実績を計画値で割った割合
四半期の実績を、会社が示す予想値で割った値です。通期予想に対する進捗率であれば1年の1/4=25%が目安になりますが、東京エレクトロンは通期予想を開示しておらず、今回開示されているのは中間期(半年)予想のみです。分母が半年になるため、目安は折り返しの50%になります。当1Qの進捗率は売上高45.2%など(算出)で、この50%を基準に評価します。

01 ── PERFORMANCE

売上高7,323億円、営業利益2,114億円。主要4項目がそろって3割超の伸び

売上高は前年同期の5,495億円から7,323億円へ、+33.3%増えた。売上原価は2,956億円から3,896億円へ+31.8%(算出)の増加にとどまり、売上総利益は2,539億円から3,427億円へ+34.9%(算出)。原価の伸びより粗利の伸びが大きく、売上総利益率は46.2%から46.8%へ改善した。販管費は1,092億円から1,313億円へ+20.2%(算出)増えたが、売上の伸び率には届いていない。この結果、営業利益は1,446億円から2,114億円へ+46.1%、経常利益は1,473億円から2,156億円へ+46.3%、純利益は1,178億円から1,643億円へ+39.5%となった。

売上高と営業利益 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 2026年3月期1Q vs 2027年3月期1Q

8,000 4,000 0 5,495 7,323 1,446 2,114 売上高 営業利益
2025年4-6月 2026年4-6月
決算短信の百万円単位の開示値を億円に丸めて表示(売上高549,586→732,388百万円、営業利益144,694→211,407百万円)。
連結損益(単位:百万円)当1Q前1Q前年同期比
売上高732,388549,586+33.3%
売上原価389,676295,616+31.8%(算出)
売上総利益342,712253,970+34.9%(算出)
販売費及び一般管理費131,304109,275+20.2%(算出)
├ 研究開発費72,04662,141+15.9%(算出)
└ その他59,25747,134+25.7%(算出)
営業利益211,407144,694+46.1%
営業外収益4,9474,432+11.6%(算出)
営業外費用7281,779△59.1%(算出)
経常利益215,626147,347+46.3%
特別利益154,873△99.7%(算出)
特別損失145254△42.9%(算出)
税金等調整前四半期純利益215,495151,966+41.8%(算出)
法人税等51,15334,165+49.7%(算出)
四半期純利益164,341117,801+39.5%
1株当たり四半期純利益361円36銭257円13銭+40.5%(算出)

特別利益・特別損失の△は減少率、営業外費用の△59.1%も同様に費用が減ったことを示す。1株当たり利益の伸び率が純利益の伸び率をわずかに上回るのは、自己株式の取得により期中平均株式数が458,132千株から454,785千株へ減っているため。

02 ── PROFIT QUALITY

増えた売上の36.5%が営業利益に転化。販管費率の低下がその主因

この増益を支えているのは需要そのものの強さだ。短信の定性情報が記す通り、データセンター向けAIサーバーの需要拡大が半導体市場全体の成長を牽引しており、半導体製造装置市場でも前年同期と比べてAI用途の半導体向け設備投資が顕著に伸長した。東京エレクトロンは事業を半導体製造装置の単一セグメントで営んでおり(詳細は次章)、この需要の波を業績にほぼそのまま映す構造にある。

数字で見ると、増収額は1,828億円(算出)、これに対して営業増益額は668億円(算出)。増えた売上の36.5%(算出)が、そのまま営業利益として残った計算になる。押し上げたのは主に販管費率の低下だ。売上高販管費比率は19.9%から17.9%へ2.0ポイント下がった。研究開発費そのものは621億円から720億円へ+15.9%増やしており、開発投資を絞って比率を下げたわけではない。売上高研究開発費比率は11.3%から9.8%へ下がっており、増収が固定費的な支出を薄めた形だ。

利益率の改善 ── 前年同期との比較

単位:% / 売上総利益率と営業利益率

80 40 0 46.2 46.8 26.3 28.9 売上総利益率 営業利益率
2025年4-6月 2026年4-6月
開示数値からの算出(売上総利益率=売上総利益÷売上高、営業利益率=営業利益÷売上高)。営業利益率は26.3%から28.9%へ2.6ポイント改善、純利益率は21.4%から22.4%へ改善している。

利益の伸び方は、下段に行くほど少しずつ鈍る。経常利益は+46.3%だが、税引前四半期純利益は+41.8%(算出)にとどまり、四半期純利益では+39.5%まで落ちる。理由の一つは特別利益だ。前年同期は付加価値税還付金48億円を特別利益に計上していたが、当1Qにはこの一過性の益がなく、特別利益は15百万円(前年同期4,873百万円)まで縮小した。もう一つは税負担で、法人税等は341億円から511億円へ+49.7%(算出)と利益の伸びを上回って増え、実効税率(税金等調整前四半期純利益に対する法人税等の比率)は22.5%から23.7%(算出)に上昇している。

この伸びは、前年の落ち込みからの反動でもある

前年同期(2026年3月期1Q)は、その前の期に対して売上高△1.0%、営業利益△12.7%、経常利益△12.0%、純利益△6.6%という減収減益の四半期だった。今回の3割超の増益は、この落ち込みからの反動という側面も込みで見る必要がある。

03 ── SEGMENT

セグメント別の内訳がない理由 ── 業績のすべてが半導体製造装置1本にかかる

東京エレクトロンは事業セグメントを半導体製造装置の単一セグメントとして開示しており、決算短信にセグメント別の売上・利益の内訳は記載されていない。事業部門ごとの強弱を比較する材料はなく、会社の業績はそのまま半導体製造装置市場の設備投資サイクルを映す一本足の構造になっている。

短信の定性情報が描く外部環境はおおむね良好だ。世界経済は中東の地政学的緊張の高まりに伴うエネルギー価格の上昇などを背景に欧米でインフレが加速しているとしつつも、景気は総じて底堅く推移しているとする。エレクトロニクス産業ではデータセンター向けAIサーバーの需要拡大が市場全体の成長を牽引しており、中長期的にはデータ社会への移行やAIの進化、脱炭素の実現に向けた取り組みを背景に、半導体製造装置市場はさらなる成長が期待されるという見立てを示している。

セグメント別の比較ができない代わりに、売上高から営業利益までの分解を前年同期と当1Qで並べてみる。

損益構造の分解 ── 売上高に対する原価・販管費・営業利益の比率

単位:構成比(%) / 売上高を100とした内訳

2025年4-6月 2026年4-6月 53.8% 19.9% 26.3% 53.2% 17.9% 28.9%
売上原価 販管費 営業利益
開示数値からの算出(各項目÷売上高)。売上原価比率53.8%→53.2%、販管費比率19.9%→17.9%、営業利益率26.3%→28.9%。

売上原価の比率は53.8%から53.2%へ、販管費の比率は19.9%から17.9%へ、それぞれ縮小した。空いた分がそのまま営業利益の比率に積み上がり、26.3%から28.9%まで伸びている。単一セグメントであることは、裏を返せばこの伸び縮みが市況の振れをそのまま受けるということでもある。次章で見る中間期見通しも、この構造を前提に読む必要がある。

04 ── GUIDANCE

中間期予想を上方修正。売上+3.2%より利益+6.2〜6.4%の引き上げ幅が大きい

東京エレクトロンは通期の連結業績予想を開示しておらず、今回開示されたのは第2四半期(中間期)累計の予想のみだ。通期予想は中間決算発表時に開示するとしている。この中間期予想を、4月30日公表の前回予想から今回修正した。

2027年3月期 中間期累計予想前回予想
4/30公表
今回修正
7/30公表
増減額増減率前年同期実績前年同期比
売上高1兆5,700億円1兆6,200億円+500億円+3.2%1兆1,796億円+37.3%
営業利益4,310億円4,580億円+270億円+6.3%3,031億円+51.1%
経常利益4,370億円4,640億円+270億円+6.2%3,068億円+51.2%
中間純利益3,280億円3,490億円+210億円+6.4%2,416億円+44.4%

中間期予想の修正幅 ── 前回予想からの増減率

単位:% / 4月30日公表の前回予想 → 7月30日公表の今回修正

8% 4% 0% +3.2% +6.3% +6.2% +6.4% 売上高 営業利益 経常利益 中間純利益
前回予想(4月30日公表)から今回修正(7月30日公表)への増減率。売上の修正幅+3.2%に対し、利益はいずれも+6.2%以上引き上げられている。

修正理由として会社が挙げるのは「最新の顧客設備投資動向を踏まえ」という一文で、売上より採算の見立てを大きく引き上げていることがわかる。前年同期実績との比較では、売上+37.3%・営業利益+51.1%という伸びを見込む計画になった。

この中間期予想に対する1Q実績の進捗率は、売上高45.2%、営業利益46.2%、経常利益46.5%、純利益47.1%(いずれも算出)。ここで注意したいのは、分母が通期予想ではなく中間期(半年)予想だという点だ。通期予想であれば1年の1/4=25%が目安になるが、中間期予想を分母にする場合、目安は半年の折り返し=50%になる。

中間期予想(修正後)に対する第1四半期の進捗率

単位:% / 点線=中間期の半分(50%)。通期予想は今回まだ開示されていない

50%(中間期の半分) 売上高 営業利益 経常利益 純利益 45.2% 46.2% 46.5% 47.1%
第1四半期実績÷中間期修正予想の算出値。4項目とも50%の目安をやや下回っており、2四半期目により重心を置いた計画になっている。

中間期予想から1Q実績を差し引くと、2Q単独の想定が見えてくる。売上高は8,876億円(算出)で1Q比+21.2%(算出)、営業利益は2,465億円(算出)で1Q比+16.6%(算出)。2Q単独の想定営業利益率は27.8%(算出)で、1Q実績の28.9%よりわずかに保守的だ。売上はさらに伸びる前提を置きながら、利益率は1Qほど強気には見ていないことになる。

05 ── BALANCE SHEET

自己資本比率71.7%。棚卸資産を積み増し、営業CFも改善

総資産は前期末の2兆8,609億円から2兆9,554億円へ、944億円(算出)増えた。伸びの主因は投資その他の資産で、3,986億円から5,032億円へ+1,046億円。一方、流動資産は1兆8,354億円から1兆8,030億円へ324億円(算出)減っている。内訳を見ると、有価証券が550億円減って残高ゼロになり、現金及び預金も416億円減った半面、棚卸資産は384億円増え、受取手形・売掛金及び契約資産も181億円増えた。有価証券を取り崩しながら、需要増に備えた在庫と受注債権を積み増した形だ。

自己資本は2兆462億円から2兆1,180億円へ増加し、自己資本比率は71.5%から71.7%へ0.2ポイント上昇した。純資産の増減を見ると、四半期純利益+1,643億円とその他有価証券評価差額金+806億円がプラスに働き、前期の期末配当の実施△1,660億円と自己株式取得△114億円がマイナスに働いている。

キャッシュ・フロー3区分 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 営業活動・投資活動・財務活動によるCF

1,400 0 △1,400 749 1,187 △541 △385 △1,511 △1,784 営業活動 投資活動 財務活動
2025年4-6月 2026年4-6月
決算短信の百万円単位の開示値を億円に丸めて表示。第1四半期は連結キャッシュ・フロー計算書を作成しておらず、短信内の要約数値に基づく。

営業活動によるCFは749億円から1,187億円へ改善した。税金等調整前四半期純利益2,154億円に加え、前受金の増加236億円がプラスに寄与した一方、棚卸資産の増加363億円と法人税等の支払1,002億円が資金を圧迫している。投資活動によるCFは△541億円から△385億円へ支出が縮小し、有形固定資産の取得は510億円から343億円へ減った。財務活動によるCFは△1,511億円から△1,784億円へ支出が拡大しており、これは後述する株主還元の強化が主因だ。営業CFと投資CFを合算したフリーCF(算出)は207億円から802億円へ拡大している。

1四半期で1,775億円を株主に還元

財務CFの支出拡大は、株主還元の強化を映している。配当金の支払166,041百万円と自己株式の取得11,478百万円を合わせ、1四半期で1,775億円(算出)を株主に還元した計算になる。

06 ── DIVIDEND

中間配当を384円へ増額。配当性向50%の方針とちょうど一致

配当については、業績連動型の配当が基本で、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向50%を目処とする方針をとっている。2027年3月期の中間配当予想は361円00銭から384円00銭へ、+23円00銭(+6.4%)引き上げられた。前年同期の中間配当264円00銭と比べると+45.5%になる。期末配当は未定で、中間決算発表時に通期予想と併せて開示するとしている。

修正後の中間純利益予想767円51銭に対し、中間配当384円00銭の比率は50.0%(算出)。会社が掲げる配当性向50%の方針と、小数点以下までぴったり一致する水準に設定されていることになる。

1株当たり配当金中間期末年間
2026年3月期(前期実績)264円00銭364円00銭628円00銭
2027年3月期(当期予想)384円00銭未定

07 ── SUMMARY

強みと留意点

評価できる点

  • 売上高・営業利益・経常利益・純利益の主要4項目がそろって3割超の伸び。
  • 営業利益率26.3%→28.9%。増収の36.5%(算出)が営業増益に転化。
  • 販管費率19.9%→17.9%へ低下する一方、研究開発費は+15.9%増額
  • 中間期予想を上方修正(営業利益+6.3%)。需要は前回想定を上回るペース。
  • 自己資本比率71.7%、営業CF749億円→1,187億円へ改善。1四半期で1,775億円を株主還元
  • 中間配当を384円へ増額。配当性向50%の方針とぴったり整合

見ておきたい点

  • 通期予想は未開示。中間決算発表まで通期の絵姿は見えない。
  • 単一セグメントのため、半導体設備投資サイクルの振れをそのまま受ける構造。
  • 今回の伸び率は、前年同期が減収減益だった反動という側面を含む。
  • 中間期予想に対する進捗率は45〜47%で50%の目安をやや下回る(2Qにペースアップが前提)。
  • 令和8年熊本地震(7月28日発生)が発生。現時点で業績への影響は軽微と判断されているが、今後の状況次第の面がある。
  • 中東情勢に伴うインフレ加速など、為替・地政学リスクは残る。

総括 ── AI設備投資の追い風を、単一セグメントで丸ごと受け止めた四半期

今回の決算は、前年同期の落ち込みからの反動と、AIサーバー向け設備投資という需要そのものの強さが重なった四半期だった。増収率を上回る増益率、販管費率の低下と研究開発費の増額を両立させた収益構造は評価できる。一方で通期予想はまだ示されておらず、単一セグメントの会社であるだけに、この先も需要サイクルの振れが業績にそのまま表れる構造は変わらない。中間決算発表で通期の絵姿がどう示されるかが、次の確認ポイントになる。

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