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夕暮れの空へ上昇する迎撃ドローンのイメージ

号外EXTRA EDITION

テラドローン

防衛採択で急騰 ── 材料の段階を読む

東証グロース 278A / 2026年7月22日 終値 15,550円(採択発表前比 +45.3%)/ IR・防衛装備庁公表資料に基づく号外レポート

発表から5営業日で、株価は4割半上がりました。 7月15日正午、テラドローンは防衛装備庁の「迎撃ドローン早期取得プログラム」で、38社の提案の中から実証試験の機材に選ばれたと発表。発表前日に10,700円だった株価は、22日の終値で15,550円。連休明けには一時16,560円まで買われました。 ただし、今回の採択は「量産受注」ではありません。防衛装備庁の公表資料には「実証試験の結果によっては、実施しないことがある」と明記されています。 この号外では、この材料がいまどの段階にあるのかを、公表資料の原文にさかのぼって整理します。

7月22日 終値

15,550
+45.3%採択発表前(7/14終値 10,700円)比

年初来の上昇倍率

約7.6
2,055円 →1/5 年初来安値から(算出)

時価総額

約1,530億円
前期売上の約32倍売上高47.8億円(算出)
「迎撃ドローン」とは ── ミサイルより安く、数で守る
攻めてくる無人機を、無人機で撃ち落とす。それが迎撃ドローンです。防衛装備庁の公表資料では「概ね高度18,000ft未満、速度250kt程度で飛行する無人航空機(重量600kg以下)、特に長射程自爆型UAV(例えばシャヘド型、HARPY型等)に対処する無人航空機」と定義されています。シャヘド型とは、ウクライナ侵攻で大量投入されているイラン設計の安価な自爆型無人機のこと。1発数億円の対空ミサイルで1機数百万円級の無人機を落とし続けると費用が釣り合わないため、安価な迎撃ドローンで数に数で対抗する発想が世界的に広がっています。
「採択」と「量産契約」の違い ── 供試器材とは何か
今回テラドローンが選ばれたのは「供試器材」、つまり実証試験のために調達される試験用の機材です(弾火薬類は搭載しない、と資料に明記されています)。採択は「試験に使う機材として選ばれた」段階であり、部隊配備のための量産契約はその先。実証試験で部隊運用に適すると判断された機種だけが、量産調達に進みます。受注の規模も、この段階では確定していません。
行使価額修正条項付新株予約権とは ── 株価に連動する資金調達
新株予約権は「あらかじめ決めた価格で新株を買える権利」で、行使価額が株価に合わせて見直されるタイプは通称MSワラントと呼ばれます。企業は株価が上がる局面で効率よく資金を調達でき、引き受けた側は権利を行使して受け取った新株を市場で売るのが基本の動きです。株主から見ると、行使が進むほど株式数が増えて1株の価値が薄まる(希薄化)ため、上昇局面の勢いを吸収する要因になります。テラドローンは7月6日にこのタイプの新株予約権を発行しており、今回の急騰と行使が同時に進んでいます(詳細は04章)。
グロース市場の「テーマ株」 ── 赤字でも買われる理由
東証グロース市場は成長途上の企業が集まる市場で、足元が赤字でも、将来の成長ストーリーに対して値段が付きます。防衛・宇宙・AIのような国策テーマに乗った銘柄は、ニュース1本で数十%動くことも珍しくありません。期待で買われた株は、期待の前提が崩れたときも同じ速さで動きます。値動きの荒さは、この市場の性質そのものです。

01 ── WHAT HAPPENED

正午の発表から5営業日で+45.3%

動き出したのは7月15日の後場です。この日の正午、テラドローンは防衛装備庁「迎撃ドローン早期取得プログラム」への採択を発表し、株探は「後場一段高」と報じました。16日終値は12,120円、17日は前日比+13.6%の13,770円。海の日の連休をはさんだ21日には15,370円まで上げました。

そして連休明けの21日には、もう1本の発表が重なります。自律迎撃ドローン「Terra A1 Autonomous」の市場展開開始です。AIがカメラ映像をリアルタイムで解析して標的を捕捉し、7kmから200mまで自律航行で接近、800m以内で自律追尾する。ウクライナの提携企業と連携して実戦環境で評価・改良を重ねる、という内容でした。22日は朝方に16,560円まで買われる場面があり、終値は15,550円。発表前日の10,700円からの上昇率は45.3%に達しています。

採択発表をはさんだ株価の動き ── 7月14日〜22日

単位:円 / 各営業日の終値

1.6万 1.4万 1.2万 1.0万 7/15 正午 採択発表 10,700円 13,770円 15,550円 7/14 7/16 7/17 7/21 7/22
終値ベースの概略図(縦軸は1万円起点)。7/15の終値は確認できる公表値がなく、7/14と7/16を直線で結んでいる。7/20は祝日で休場。

02 ── THE PROGRAM

38社から選ばれた。ただし「試験の機材」として

買い材料の実像を、防衛装備庁が6月5日に公表した実施要領で確かめます。プログラムの目的は、シャヘド型のような長射程自爆型無人機への対処器材を「より迅速に、より実効性のある」形で獲得すること。6月に公募を開始し、38社の提案を比較検討した上で、実証試験に使う迎撃ドローンを調達する、という建て付けです。テラドローンは提案から選ばれた実証企業となり、同社は「国産であり、国内生産基盤が整備されていること」が明確な要件として定められていた点を強調しています。防衛領域への本格参入から約4か月での選定でした。

時期段階状況
6月5日公募開始(実施要領の公表)
6月29日提案締切 ── 38社が提案
7月上旬供試器材の選定(複数機種の可能性あり)済(テラドローンは7/15発表)
7月下旬〜8月上旬実証試験 ── 海上自衛隊での運用を想定し、飛行性能・自律性能・艦上運用性・通信管制性能を検証これから
8月下旬量産調達契約(納期9月目途)未定 ── 実証結果しだい

実施要領の原文 ── 量産は約束されていない

スケジュール表の「量産調達契約」の項には、こう注記されています。「※ 実証試験の結果によっては、実施しないことがある。」つまり8月下旬の量産契約は、7月末からの実証試験に合格した機種だけに開かれる扉です。さらに提案段階の予算規模も、10機・20機・30機・40機・50機の刻みで「粗見積もり(精度目安:−50%〜+150%)」を出す段階とされており、調達の規模感すらまだ固まっていません。株価が織り込みつつある「量産」は、現時点では可能性であって契約ではない。ここがこの材料を読むときの起点になります。

一方で、このプログラム自体の設計は異例です。公募から量産契約まで約3か月。通常は年単位かかる防衛調達を、実証さえ通れば9月納入目途まで一気に短縮する枠組みで、防衛省がドローン対処を急いでいることの表れでもあります。実証に通った場合の展開が速いことも、期待買いを勢いづかせた要素と言えます。

03 ── THE COMPANY

測量ドローンの会社が、4か月前に防衛へ踏み込んだ

テラドローンは2016年創業。もともとはドローンによる測量や設備点検を主力とする会社で、2024年11月29日に東証グロース市場へ上場しました。公開価格2,350円に対して初値は2,162円と、船出はむしろ公開価格割れ。今年1月5日には年初来安値2,055円を付けており、株価の急変はすべてこの半年の出来事です。

転機は3月23日の防衛事業参入の発表でした。ウクライナの迎撃ドローン開発企業アメイジング・ドローンズへの出資を軸に、迎撃・FPV・偵察の各ドローンを国産で開発・提供する戦略を打ち出し、株価は5月12日に上場来高値19,610円まで駆け上がります。その後は調整していましたが、迎撃ドローン「Terra A1」がウクライナで実運用を始め、固定翼型「Terra A2」(最高312km/h・飛行40分超)も実戦環境に納品されるなど、装備の実績は積み上がってきました。7月8日には「国産防衛機を年数万台規模で量産へ」という社長インタビューも報じられています。

年初来の株価の軌跡 ── 2,055円から15,550円へ

単位:円 / 安値・高値・直近終値など節目の値をつないだ概略図

2万 1万 0 3/23 防衛事業参入を発表 1/5 安値 2,055円 5/12 高値 19,610円 7/14 10,700円 7/22 15,550円 1月 3月下旬 5月12日 7月14日 7月22日
年初来安値(1/5)・上場来高値(5/12)・採択発表前(7/14)・直近終値(7/22)を直線でつないだ概略図で、日々の値動きを再現したものではない。

7月21日の「Terra A1 Autonomous」発表には、会社自身の但し書きがある

自律迎撃ドローンの市場展開開始を告げた21日のリリースには、「2027年1月期の当社連結業績への影響は軽微と考えております」という一文があります。各国政府機関や防衛プライム企業への展開はこれからで、売上への寄与はまだ先。材料の派手さと業績への効き方には時間差があることを、会社自身が明記している形です。なお同社は7月27日18時から、オンラインで防衛事業戦略発表会を開く予定です。

04 ── VALUATION

売上48億円の赤字企業に、1,530億円の値札

期待の大きさを測るために、直近の業績と株価を並べます。2026年1月期の通期決算は、売上高47億8,200万円(前期比+7.8%)に対して営業損益は11億4,300万円の赤字。純損益は24億9,700万円の赤字でした。赤字が膨らんだのは、米国の持分法適用会社の子会社化を中止して株式を譲渡した際の損失と、2025年12月にインドネシア子会社で起きた火災事故の対応・補償費用が重なったためです。

2026年1月期(通期・連結)実績前期との比較
売上高47億8,200万円+7.8%
営業損益▲11億4,300万円赤字拡大(前期 ▲6億2,700万円)
純損益▲24億9,700万円赤字拡大(株式譲渡損・火災対応費用)

この会社に、市場はいま約1,530億円の時価総額を付けています。前期売上高の約32倍。利益がまだ無いのでPERは計算できず、株価を支えているのは「防衛調達の量産にどれだけ食い込めるか」という将来のシナリオそのものです。逆に言えば、実証試験の結果や調達規模といった今後の発表しだいで、この評価は上にも下にも大きく動きます。5月の高値19,610円から7月14日の10,700円まで、材料の空白だけで45%調整した値動きが、それを先に示しています。

急騰の裏で、新株も出ている ── 7月22日夕方の適時開示

大引け後には、需給を読むうえで見逃せない開示が出ました。テラドローンが7月6日に発行した第20回新株予約権(行使価額修正条項付)について、7月21日〜22日の2日間で650個が行使され、新株65,000株が交付されたという内容です。行使価額は15,000円。発行総数2,133個の30.47%が、この2日間で一気に行使された計算になります。

会社側から見れば、この2日間でおよそ9.75億円の資金が入り、防衛事業の投資原資になります。一方で市場から見れば、株価が上がるほど新株が供給される仕組みが動き出したということでもあります。未行使はまだ1,483個、株数にして148,300株分。前月末の発行済株式数9,827,800株の約1.5%に相当します。

急騰と資金調達は、セットで動く

行使価額修正条項付の新株予約権は、株価が高い局面ほど行使が進みやすい設計です。実際、防衛採択で株価が跳ねた直後の2日間に、発行総数の3割が行使されました。急騰局面の需給を見るときは、買い手の勢いだけでなく、この「上から降ってくる株」も勘定に入れる必要があります。伸びるテーマの会社が上昇局面で資金を調達するのは合理的な経営判断ですが、株価の上値を重くする要因として同時に働きます。

05 ── SUMMARY

分かっていること、まだ分からないこと

現時点で分かっていること

  • 38社の提案から実証試験の供試器材に採択された(7/15発表)。
  • 「国産・国内生産基盤」が明確な要件とされたプログラムである。
  • 実証は7月下旬〜8月上旬、海上自衛隊での運用を想定。量産契約の判断は8月下旬。
  • 迎撃ドローンはウクライナで実運用が始まっており、装備の実績は積み上がりつつある。
  • 7/6発行の新株予約権の行使が始まり、7/21〜22で新株65,000株が交付された(会社には約9.75億円の資金)。

まだ分からないこと

  • 実証試験に合格するか。「結果によっては量産調達を実施しない」と要領に明記。
  • 量産に進んだ場合の契約金額・機数(提案段階の見積精度は−50%〜+150%)。
  • 複数機種選定の可能性があり、他社と分け合う形になるかも不明。
  • 防衛売上がいつ・どれだけ損益に効くか。会社は直近発表の業績影響を「軽微」としている。
  • 未行使の新株予約権148,300株分が、今後どのペースで行使・売却されるか。

号外の視点 ── 材料は「段階」で読む

テーマ株の材料には段階があります。参入表明、採択、実証、契約、納入、そして売上計上。同じ「防衛」のニュースでも、どの段階の話かで重みはまるで違います。今回の急騰が織り込んでいるのは3段階目の手前、これから始まる実証への期待です。発表資料の本文だけでなく、役所の実施要領の但し書きまで読むと、期待と確定の境界線が見えてくる。株価が動いた日ほど、その線を引き直すことが、この号外から持ち帰れる教訓です。

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