号外EXTRA EDITION
こどもNISA専用「信託報酬0.00%」の全世界株インデックスファンドが登場
SBIグローバルアセットマネジメント 4765 が開示 / 設定・運用:SBIアセットマネジメント / 販売:SBI証券 / 2026年10月1日発表・11月17日設定
10月1日、SBIグループが「信託報酬0.00%」の投資信託を出すと発表しました。名前は「SBI・ゼロ・オールカントリー・インデックス・ファンド」、愛称ゼロカン。2027年1月に始まる「こどもNISA」の専用商品で、全世界の株式に分散投資しながら、保有中にかかる信託報酬をゼロにしたのが売りです。SBI証券がこれまで売買手数料を無料化してきた「ゼロ革命」の第4弾にあたり、今回は「取引」ではなく「保有」のコストに手をつけました。設定は11月17日。ただし信託報酬0.00%は「完全無料」とは少し違い、監査報酬などの実費は別にかかります。何がゼロで、何はゼロではないのか。そして、なぜ運用会社がわざわざ報酬ゼロの商品を作るのかを読み解きます。
信託報酬(年率・税込)
設定・運用開始日
こどもNISA つみたて枠(年間)
01 ── WHAT HAPPENED
10月1日、SBIグループが新しい投資信託の設定を発表しました。こどもNISA専用の全世界株インデックスファンド「SBI・ゼロ・オールカントリー・インデックス・ファンド(愛称:ゼロカン)」で、信託報酬は年0.00%。設定・運用はSBIアセットマネジメント、販売はSBI証券が担い、設定日は11月17日です。適時開示は、両社を傘下に持つ上場会社のSBIグローバルアセットマネジメント(証券コード4765)が同日の午前10時に出しました。
SBI証券は2023年9月から「ゼロ革命」を掲げ、国内株式のオンライン売買手数料、NISAでの米国個別株・海外ETFの売買手数料、米ドル/円のリアルタイム為替手数料と、取引にかかるコストを次々と無料にしてきました。今回のゼロカンはその第4弾。これまでと違うのは、無料にしたのが取引のコストではなく、投資信託を保有し続けるあいだずっとかかる信託報酬だという点です。買うときでも売るときでもなく、「持っている間」の費用に手が伸びた、という順番の進化です。
名前が似た会社が並ぶので整理します。適時開示を出したのは上場会社のSBIグローバルアセットマネジメント(4765)。実際にファンドを設定・運用するのは、その傘下のSBIアセットマネジメント(代表取締役社長・谷一司)。そしてこどもNISA専用ファンドとして投資家に販売するのがSBI証券(代表取締役社長・髙村正人)です。開示する会社・作る会社・売る会社がグループ内で分かれており、今回の発表はその三者がそろって動いた形です。
02 ── WHAT IT IS
ゼロカンが投資するのは、世界の株式です。目標とする指数はMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み・円換算ベース)で、日本を含む先進国と新興国の株式に広く分散します。いわゆる「オルカン」「全世界株」と同じ系統の商品で、1本で世界中の株式市場の値動きに連動することを狙います。運用は、株式売買を直接こなすのではなく、「SBI・オールカントリー・インデックス・マザーファンド」という共通の器にまとめて任せるマザーファンド方式を採ります。
ここで押さえたいのが、同じマザーファンドを使う兄弟商品が同時に設定されることです。一般向けの「SBI・オールカントリー・インデックス・ファンド(愛称:SBIオールカントリー)」がそれで、NISA口座・課税口座など幅広い口座で買えます。こちらの信託報酬は年0.055%(税込)で、会社は「MSCI ACWIに連動する公募投資信託の中で業界最低水準」としています。中身(マザーファンド)は同じで、入り口と報酬率だけが違う——これが今回の設計の肝です。
03 ── WHAT “ZERO” MEANS
「信託報酬0.00%」が指すのは、信託財産から日々差し引かれる委託会社・受託会社・販売会社への運用の対価です。この主要なコストを会社は年0.00%に設定しました。長期で持つほど効いてくる保有コストの中心を、文字どおりゼロにしたわけです。会社自身、信託報酬は「保有期間が長期にわたるほど運用成果への影響が大きくなる」と説明しており、こどもNISAという0歳から始められる超長期の器にこそ効く設計と言えます。
ただし総コストが無料になるわけではありません。会社は注記で、信託報酬とは別に監査報酬や、有価証券を売買するときの売買委託手数料などが信託財産から間接的に発生すると明記しています。これらは事前に率が確定しない実費で、金額はそのときの運用状況によります。「0.00%」は保有コストの主要部分を極限まで抑えた、という意味に受け取るのが正確です。
信託報酬(年率・税込)の比較
同じマザーファンドを使う2本の報酬率を並べて見る
信託報酬の差を、イメージしやすい形で単純計算してみます。仮に残高を600万円で一定とし、値動きも複利も無視して信託報酬率だけを比べると、0.055%なら年に約3,300円、ゼロカンなら0円。こどもNISAを0歳から18歳まで18年持ったとすると、料率だけの単純な差は累計でおよそ5.9万円になります(算出・実際は残高が毎年変わるため金額は増減します)。わずかな率の差でも、超長期では無視できない大きさになる——これが「保有コスト」に手をつけた狙いどころです。
04 ── KODOMO NISA
ゼロカンは、どの口座でも買えるわけではありません。積立購入はこどもNISAに限られます。2027年1月に始まる予定のこどもNISAは、0歳から17歳までの未成年者が対象で、年間60万円・非課税保有限度額600万円まで投資でき、得た利益は非課税、保有期間に期限はありません。教育資金づくりや、子どもへの金融教育の入り口として使える制度として設計されています。
18歳になると、こどもNISAで持っていた残高は通常のNISAへ引き継がれ、その後も信託報酬0.00%のまま継続して保有できます。ただし成人後に新しく同じ対象へ積み立てたい場合は、別途、信託報酬0.055%のSBIオールカントリーで積立設定をすることになります。ゼロカンの0.00%は「子どものうちに積み立てた分を、大人になってからも低コストで持ち続けられる」点に意味がある設計です。
05 ── THE STRATEGY
運用会社にとって信託報酬は収入源です。それをゼロにして、どうやって成り立たせるのか。鍵は、ゼロカンを単体の儲けではなく入り口として位置づけている点にあります。こどもNISAで子ども名義の口座を開けば、その手続きや管理は多くの場合、親の口座とつながります。家族を丸ごとSBIの証券口座に取り込み、親は通常のNISAや課税口座で、子どもはゼロカンで——という形で、グループ全体の顧客基盤を厚くする狙いが読み取れます。信託報酬0.055%のSBIオールカントリーを同時に用意しているのも、18歳以降の受け皿を先に敷いておくためです。
運用の中身を支えるのは外部の大手です。ゼロカンが投資するマザーファンドは、株式運用の指図権限の一部をステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(ブランド名:ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント)に委託します。同社は40年以上のインデックス運用の経験を持ち、グローバルで6.28兆米ドル(2026年6月30日時点)を運用する世界最大級の運用会社です。SBIグループは2026年5月に同社と、日本でのインデックス投資ソリューションを広げる合弁会社設立の基本合意を結んでおり、今回のゼロカンはその提携を具体的な商品に落とし込んだ第一歩でもあります。
06 ── SUMMARY
ゼロカンの発表は、単に「安いファンドが出た」という話にとどまりません。SBIは取引手数料の無料化で顧客を集め、今度は保有コストのゼロで、0歳から始まる超長期の口座を家族ぐるみで取り込もうとしています。報酬ゼロで運用会社が損をしないのは、ゼロカンが収益源ではなく顧客基盤をつくる入り口だからです。だからこそ、18歳以降の受け皿となる0.055%のSBIオールカントリーがセットで用意されています。「信託報酬0.00%」という見出しを見たら、ゼロではない費用は何か、なぜ企業はそれでも成り立つのか、までセットで読むと、商品の本当の狙いが見えてきます。次に確かめたいのは、2027年1月に始まるこどもNISAの制度の最終的な中身と、ゼロカンがどれだけの資金を集めるかです。