号外EXTRA EDITION
外債1.75兆円、7.5年債に「利回り10%」の値札 ── 行き先はOpenAIの第3弾
東証プライム 9984 / 2026年9月24日 条件決定予定 / 9月18日 終値 6,315円(+1.09%)/ 報道に基づく号外レポート
日本が5連休に入っていた9月21日、ソフトバンクグループがドルとユーロで総額1兆7,500億円規模の社債を出す準備に入ったことが分かりました。日本経済新聞が入手したタームシートによると、ドル建てが3本で100億ドル、ユーロ建てが2本で10億ユーロ。格付は投機的等級の最上位にあたるBB+の予定です。 翌22日、Bloombergは初期需要が200億ドルを超えたと伝えました。同じ記事には、ドル建て7.5年債の利回りを約10%で検討しているとも書かれています。この水準で決まれば、その通貨・年限で過去最高の利回りになるとも書いています。 集めたお金は、10月1日に払い込むOpenAIへの追加出資の第3弾に回ります。発行条件が決まるのは今日24日。東京市場も今日が連休明けの初日です。条件決定の前夜に分かっていることと、まだ分かっていないことを分けて整理します。
発行予定額(円換算・報道)
初期需要(関係者・拘束力なし)
ドル建て7.5年債の検討利回り
01 ── THE DEAL
タームシートに書かれた構成は5本です。ドル建てが3.5年・5.5年・7.5年の3本で合計100億ドル(約1兆5,700億円)、ユーロ建てが4年・6年の2本で合計10億ユーロ(約1,800億円)。金額でみると9割がドルです(算出)。年限は最長でも7.5年で、9月に個人向けに出した7年の円建て社債とほぼ同じ長さです。
| 通貨・年限 | 発行予定額 | 検討利回り(報道) | 補足 |
|---|---|---|---|
| ドル建て 3.5年 | 3本で100億ドル | ── | 年限ごとの配分は非公表 |
| ドル建て 5.5年 | ── | 同上 | |
| ドル建て 7.5年 | 約10% | 決まれば同じ通貨・年限で過去最高 | |
| ユーロ建て 4年 | 2本で10億ユーロ | ── | 年限ごとの配分は非公表 |
| ユーロ建て 6年 | 8%台半ば | 同上 |
日程は24日に発行条件を決め、29日に決済します。ドル建てはシティグループが主幹事で、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、モルガン・スタンレーが共同グローバル・コーディネーターに入ります。ユーロ建ての主幹事はJPモルガンです。米欧の大手がそろって並ぶ、この会社としても大きな案件です。
今年の主な社債と、今回の需要(円換算)
需要は22日時点の初期の購入意向で、最終の注文額ではない
並べると規模の感覚がつかめます。4月の外債の3倍、9月の個人向け社債の1.75倍(いずれも算出)。そして需要は、その1兆7,500億円をさらに1.8倍ほど上回って集まっています。Bloombergは今回を「過去最大級のジャンク債発行になる可能性がある」と書きました。高い利回りを払う会社であることと、買い手が列を作る会社であることが、同時に成り立っています。
02 ── THE PRICE
9月4日、この会社は個人向けの円建て7年債を年4.75%で決めました。その3週間後、ドル建ての7.5年債は約10%で検討されています。年限はほぼ同じで、貸す相手も同じ会社です。それでも利回りは倍以上離れています。
ソフトバンクグループの社債利回り(年率)
今回の2本は決定前の検討水準(報道)。ユーロ6年債の「8%台半ば」は8.5%の位置に置いた
差の理由は、主に2つに分けられます。1つはその通貨の金利そのもの。ドルの金利は円より高いので、同じ会社でもドル建ての利回りは高く出ます。もう1つは誰が値段を付けるかです。円建ての個人向け社債はJCRのAを前提に国内の個人が買い、ドル建て債はBB+を前提に海外の機関投資家が買う。後者はこの会社をハイイールドの物差しで測っていて、その評価がそのまま利回りに乗ります。
4月の外債で付けたドル債8.5%は、当時「過去最高」と報じられました。今回それをさらに1.5ポイントほど上回る水準が検討されています(算出)。半年で、この会社がドルで借りる値段はここまで上がりました。
年限ごとの配分が非公表なので、正確な利払額はまだ出せません。そこで上限側で見積もります。ドル建て100億ドルが仮に全額10%なら年10億ドル、報道の換算で約1,570億円。ユーロ建て10億ユーロが全額8.5%なら年8,500万ユーロ、約153億円。合わせて年1,700億円強です(算出)。3.5年や5.5年の短い債券は利回りが低めになるはずなので、実際の額はこれより小さくなります。それでも9月の個人向け社債1兆円の年475億円と比べれば、3倍を超える固定費です。
03 ── THE USE
今回の外債の行き先ははっきりしています。ソフトバンクグループは2月27日、OpenAIに300億ドルを追加出資すると発表しました。100億ドルずつ3回に分けて払い込む約束で、第3弾の期日が10月1日です。その払込資金に充てる、と日経は報じています。
| 日付 | 出来事 | お金の出どころ |
|---|---|---|
| 2月27日 | OpenAIに300億ドルの追加出資を発表 | 100億ドル×3回の分割払い |
| 3月27日 | 最大400億ドルのブリッジローン枠 | 国内外の銀行から |
| 4月1日 | 第1弾 約1.5兆円を払込 | ブリッジローンなど |
| 7月1日 | 第2弾 約1.6兆円を払込 | ブリッジローンなど |
| 9月15日 | ブリッジローン259億ドルを期限前に返済 | マージンローンと別の銀行ローン |
| 9月24日 | 外債の発行条件を決定(予定) | ドル・ユーロの社債 約1兆7,500億円 |
| 9月29日 | 外債の決済 | ── |
| 10月1日 | 第3弾 100億ドルを払込(予定) | 今回の外債を充てる |
流れを追うと、借り方が段階的に長くなっているのが分かります。最初は銀行のつなぎ融資で払い、9月にはそれを保有株を担保にしたマージンローンと別の銀行ローンに置き換えた。そして第3弾は、3.5〜7.5年の社債で払う。タームシートには、400億ドルの枠のうち残る100億ドル分は使わない方針だとも書かれています。短い借金で先に払い、あとから長い借金に組み替えていく、という順番です。
今月は社債以外の調達の話も続いています。Bloombergは9月17日、米投資会社アポロ・グローバル・マネジメントが、ビジョン・ファンド2の資産を裏付けにした融資を54億ドルから90億ドルに引き上げる方向で協議していると報じました(金額は最終決定していない)。9月17日には個人向け社債1兆円の払込もありました。銀行、個人、海外の機関投資家、投資ファンドと、借りる相手を広げながらOpenAIへの払込を回している構図です。
第3弾を払い終えると、300億ドルの追加出資は完了します。Bloombergは、同社がOpenAIに650億ドル近く投資する方針を示し、ほかのAI分野と合わせて世界最大級のAI投資家になっていると書いています。今回の1兆7,500億円は、その最後の1ピースです。
04 ── THE STOCK
今回の外債の話が出たのは21日と22日。東京市場は19日から23日まで5連休で、株価はまだこのニュースに一度も反応していません。直近の終値は連休前の9月18日、6,315円(前日比+68円、+1.09%)です。条件決定と連休明けの取引が、同じ24日に重なります。
| 日付 | 終値 | 9月18日との差(算出) | その日の出来事 |
|---|---|---|---|
| 8月24日 | 4,975円 | +26.9% | 個人向け社債1兆円を発表。安値引け |
| 9月4日 | 5,590円 | +13.0% | 個人向け社債の利率4.75%を決定 |
| 9月18日 | 6,315円 | ── | 連休前の最終取引日 |
| 9月24日 | ── | ── | 連休明け。外債の条件決定日 |
個人向け社債を発表した8月24日から数えると、株価は約1か月で3割近く上がりました(算出)。借金を重ねるたびに株が下がる、という形にはなっていません。この会社の株価は、社債の条件よりも保有するアームやOpenAIの価値、AI関連の相場全体で動いています。
8月6日の決算説明会で示された6月末の数字は、保有資産の価値から負債を引いたNAVが72.3兆円、資産に対する純負債の比率であるLTVが13.0%でした。これだけ見ると借入の余地は大きく見えます。ただ、分母の資産は上場株やOpenAIの評価額で、相場が下がれば同じ日にLTVは上がります。9月に置き換えたマージンローンも、保有株を担保にした借入です。株価が上がっている今は余裕があり、下がったときに余裕が縮む。7.5年という年限は、その上下を何度もまたぐ長さです。
05 ── SUMMARY
3週間前、同じ会社は国内の個人から4.75%で1兆円を借りました。今回は海外の機関投資家から、長いほうの債券で10%近くを払って借りようとしています。高い金利を受け入れる理由は、払込期日が先に決まっているからです。OpenAIとの約束は10月1日で、それまでに100億ドルを用意しなければならない。 それでも200億ドルを超える買い手が集まりました。投機的等級の値段で貸すことを承知のうえで、これだけの資金が並ぶ。市場はこの会社を「危ないが、返す会社」と見ているということです。その見立てが正しいかどうかは、OpenAIの価値が7年後にどうなっているかにかかっています。24日に出る利率は、その見立てに市場が付けた値段です。本誌は条件が決まりしだい、続報で確定値を整理します。