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号外EXTRA EDITION

ソフトバンクグループ

個人向け社債1兆円 ── 国内最大の「ホークスボンド」、利率は4%台へ

東証プライム 9984 / 2026年8月24日 発表 / 8月24日 終値 4,975円(▲5.33%・算出)/ プレスリリース・決算資料・報道に基づく号外レポート

8月24日、ソフトバンクグループは第70回無担保普通社債、愛称「福岡ソフトバンクホークスボンド」の発行を発表しました。発行総額は1兆円。1口100万円、年限7年、募集の対象は「主に個人投資家」。利率は9月4日に決まりますが、仮条件は年4.30〜4.90%です。 日本経済新聞やBloombergは、国内企業の個人向け社債として過去最大と報じています。前回の個人向け、2025年12月の第67回は5,000億円で利率3.98%。それでも同社の円建て普通社債では過去15年で最高でした。今回は額が2倍、利率は下限でも0.32ポイント上です。 同じ日、株価は前週末比▲280円の4,975円で引けました。安値引けです。

発行総額

1兆円
前回(第67回)の2倍国内の個人向け社債で過去最大(報道)

利率(仮条件)

4.30〜4.90%
第67回 3.98% から +0.32〜0.92pt(算出)9月4日に決定・税引前

年限

7
償還 2033年9月16日申込 9/7〜9/16・払込 9/17
無担保普通社債 ── 会社が「返します」と約束するだけの借用証書
社債は会社が投資家からお金を借りる証書です。「無担保」は、返せなくなったときに差し押さえられる資産が特に決まっていないという意味。「普通」は、劣後債やハイブリッド債と違って、返済順位が他の一般債権と同じという意味です。今回の社債は担保も保証もありません。代わりに、担保提供制限条項・担付切換条項・純資産額維持条項という3つの財務上の特約が付いています。他の社債に担保を付けるなら本社債にも付ける、純資産が一定水準を割らない、といった約束事で、無担保債の持ち主を守る仕組みです。
仮条件 ── 利率の「幅」を先に示し、投資家の需要を見て決める
個人向け社債は、募集開始前に利率の範囲を示して、証券会社が投資家の反応を集めます。その需要の強さを見て、発表日(今回は9月4日)に1本の利率に決めます。買い手が多ければ幅の下寄り、慎重なら上寄りになるのが一般的です。第67回のときは仮条件3.50〜4.10%に対して決定利率3.98%、幅の上から2番目くらいの水準でした。今回の仮条件は4.30〜4.90%。下限の4.30%でも、第67回の決定利率を上回ります
格付「A」(JCR)と「BB+」(S&P)── 同じ会社に、2つの評価
今回の社債の取得予定格付は日本格付研究所(JCR)のA。JCRの区分では投資適格の中で上から3番目のレンジです。一方、米S&Pグローバルのソフトバンクグループの長期発行体格付はBB+で、投機的等級の最上位。7月16日にS&Pは見通しを「ネガティブ」から「安定的」に戻しましたが、格付そのものは据え置いています。国内と海外で評価が1ノッチどころか3〜4ノッチ違う会社の社債である、という点は、利率の高さの理由のひとつとして知っておくべきことです。
買入消却 ── 会社が市場で自社の社債を買い戻して消す
償還方法は満期一括、つまり2033年9月16日に元本をまとめて返します。ただし「買入消却は、払込期日の翌日以降、いつでも実施可能」と書かれています。会社が市場で自らの社債を買い戻して消却できる、という条項です。投資家側から途中で会社に返済を求めることはできません。途中で現金化したい場合は証券会社を通じて市場で売ることになり、そのときの価格は金利水準や会社の信用状況で元本を割ることがあります。

01 ── THE OFFER

1口100万円、7年、年2回利払い。9月4日に利率が決まり、9月7日から申込

プレスリリースの19項目を、投資家の目線で並べ直します。発行総額1兆円、各社債の金額は100万円。払込金額も償還金額も100円につき100円なので、額面どおりに買って額面どおりに戻ってくる設計です。利払日は毎年3月17日と9月17日の年2回。申込期間は2026年9月7日から16日まで、払込期日が9月17日。償還期限は2033年9月16日です。

募集の方法は「国内での一般募集」、対象は「主に個人投資家」。引受会社は野村證券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SBI証券、岡三証券、岩井コスモ証券、東海東京証券、水戸証券、西日本シティTT証券の11社。社債管理者はあおぞら銀行です。

項目内容補足
名称第70回無担保普通社債(愛称:福岡ソフトバンクホークスボンド)訂正発行登録書を8月24日提出
発行総額1兆円各社債の金額 100万円
利率未定(仮条件 年4.30〜4.90%)2026年9月4日に決定予定
年限・償還期限7年・2033年9月16日満期一括償還。買入消却は払込期日の翌日以降いつでも可
利払日毎年3月17日および9月17日年2回
申込期間・払込期日2026年9月7日〜9月16日・払込 9月17日国内での一般募集・主に個人投資家
担保・保証いずれも無し財務上の特約:担保提供制限・担付切換・純資産額維持
取得予定格付A(日本格付研究所)S&Pの発行体格付は BB+(別途)
引受会社・社債管理者11社・あおぞら銀行主幹事は野村證券ほか

発表から償還まで ── 7年間の時計

プレスリリース記載の日程 / 利払いは毎年3月17日・9月17日(初回は2027年3月17日と読める)

8/24 9/4 9/7〜16 9/17 3/17・9/17 2033/9/16 発表 仮条件 4.30〜4.90% 利率決定 1本の利率に 申込期間 証券会社11社 払込 社債の効力発生 利払い(年2回) 2027年3月から 満期償還 額面100円で返還 ── 途中は市場売却のみ(価格変動あり)── 2026年 2027〜2033年
ソフトバンクグループ「第70回無担保普通社債の発行に関するお知らせ」(2026年8月24日)による。初回利払日は利払日の定めから当方が読み取ったもので、正式には発行条件決定時の目論見書で確認が必要。

02 ── THE RATE

3.03%から4%台へ。ホークスボンドの利率は3年で1.3ポイント以上上がった

ソフトバンクグループは個人向け社債を年に1〜2回、ほぼ定期的に出しています。証券会社の案内資料に載っている過去の条件を並べると、第63回が7年で年3.030%、第64回が7年で3.150%、2025年5月払込の第65回が5年で3.34%、2025年12月の第67回が7年で3.98%。そして今回の第70回は7年で仮条件4.30〜4.90%です。同じ7年の社債で、第63回から仮条件の下限まで1.27ポイント、上限なら1.87ポイント上がったことになります(算出)。

背景は2つあります。ひとつは日本の金利そのものの上昇です。新発10年物国債の利回りは8月中旬に一時2.95%と、報道によれば約30年ぶりの高水準に達しました。もうひとつは、同社が投資を続けるために調達を増やしていること。買い手に多く来てもらうには、それだけ利率を乗せる必要があります。ただし国債10年物との差、つまり信用リスクの対価は、仮条件の下限でも1.4ポイント前後、上限なら2ポイント前後あります(年限が違うので目安)。

個人向けホークスボンドの利率(税引前・年率)

第70回は仮条件の幅(濃い部分) / 第65回のみ年限5年、他は7年

5% 4% 3% 2% 1% 参考:新発10年国債 約2.8%(8月中旬) 3.030 3.150 3.34 3.98 4.30〜4.90 第63回 第64回 第65回 第67回 第70回 7年 7年 5年・2025/5 7年・2025/12 7年・2026/9 仮条件
第63〜65回・第67回の利率は岩井コスモ証券・楽天証券・SBI証券の販売案内、Bloomberg(2025年11月26日)による。第63・64回の発行時期は当方で一次確認できていないため省略。第66・68・69回は機関投資家向け等のため除外。新発10年国債利回りはTrading Economicsの8月18日時点の記述(一時2.95%→約2.83%)を丸めたもので、日付を特定した公式値ではない。

100万円を7年間預けると、いくら受け取れるか

利率が決まった場合年間の利息(税引前)年間の利息(税引後・算出)7年間の利息合計(税引前・算出)
仮条件の下限 4.30%43,000円約34,265円301,000円
仮条件の上限 4.90%49,000円約39,046円343,000円
参考:第67回 3.98%39,800円約31,715円278,600円

税引後は源泉分離課税20.315%を差し引いた単純計算です。満期まで持てば、会社が約束を守る限り元本100万円が戻ります。裏返すと、この社債の損益を決めるのは利率ではなく、7年間ソフトバンクグループが約束を守れるか、それに尽きます。

03 ── WHY ONE TRILLION

手元流動性は3か月で1.2兆円減った。OpenAIには残り100億ドルの出資が控える

資金使途について、日本経済新聞は「9月に償還を迎える4,000億円分の社債償還」と「フィジカルAIなどへの投資」に充てると報じています。共同通信はAI関連の投資などに充当、と伝えています。会社のプレスリリース自体には使途の記載はありません。

もう少し会社の財布の中を見ます。8月6日発表の2027年3月期第1四半期決算によると、6月末のNAV(保有株式価値から純負債を引いた額)は72.3兆円で過去最高。3月末の40.1兆円から3か月で32兆円増えました。LTV(保有株式価値に対する純負債の比率)は17.0%から13.0%に下がっています。これは会社が「通常時25%未満」と定める財務方針の中で、かなり余裕のある水準です。一方で手元流動性は3.5兆円から2.3兆円へ、1.2兆円減りました。四半期でOpenAIに200億ドルを出資したこと(4月と7月)が主な理由で、会社はこの年度中に残り100億ドルの追加出資を予定し、完了すれば累計646億ドル、持分約13%になると説明しています。

ソフトバンクグループ 2027年3月期 第1四半期(8月6日発表)数値補足
投資利益1兆8,594億円前年同期4,869億円。Intelの公正価値増加 1兆3,329億円が主因
純利益(親会社所有者帰属)3,473億円前年同期4,218億円から ▲745億円(▲17.7%・算出)
NAV(6月末)72.3兆円3月末40.1兆円。過去最高。8月5日時点の株価・為替で試算した「プロフォーマ」は足元で調整と会社が注記
LTV(6月末)13.0%3月末17.0%。財務方針は通常時25%未満・異常時でも35%上限
手元流動性(6月末)2.3兆円3月末3.5兆円。借入枠の未使用分4,895億円を含む
今後2年間の社債償還額1.5兆円1年後(〜2027年6月)0.9兆円、2年後(〜2028年6月)0.6兆円
OpenAIへの出資今年度 200億ドル実行済み残り100億ドルの追加出資後、累計646億ドル・持分約13%へ

手元流動性と、これから返す社債、これから借りる社債

兆円 / 会社の財務方針は「少なくとも2年分の社債償還資金を保持」

2.0 1.5 1.0 0.5 2.3 0.9 0.6 1.0 手元流動性(6月末) 償還 〜2027年6月 償還 〜2028年6月 第70回 発行額
ソフトバンクグループ「2027年3月期 第1四半期 決算説明会」資料(2026年8月6日)の手元流動性・社債償還スケジュール、および8月24日のプレスリリースによる。手元流動性2.3兆円は6月末時点で、7月のOpenAI出資分などは反映されていない。左端の棒は縦軸の上限を超えるため頂点を切っている。

1兆円は、時価総額の3.5%、NAVの1.4%

8月24日終値ベースの時価総額は約28.4兆円(4,975円 × 発行済株式数57億1,184万株・算出)。1兆円はその3.5%、6月末NAV72.3兆円に対しては1.4%です(いずれも算出)。会社の規模からすると大きな借入ではありません。それでも国内の個人向け社債として過去最大になるのは、この規模の資金を個人の預金から直接集める会社が他にないからです。日経は見出しに「AI投資へ預金に照準」と付けました。金利が上がって預金から資金が動き出した局面で、4%台の看板を掲げて1兆円を取りにいく。発行側の狙いはそこにあります。

04 ── WHAT YOU ARE LENDING TO

4%台の利率は、S&Pが投機的等級と評価する会社に7年貸す対価

利率が高い社債には、高い理由があります。ソフトバンクグループの場合、それは事業会社ではなく投資会社であることです。売上や利益よりも、保有するArm、OpenAI、Intelなどの株式の時価で財務が決まる。NAVが3か月で32兆円増えたのは株価が上がったからで、逆回転もありえます。会社が「NAVは足元で調整」と自ら注記しているとおり、8月5日時点の株価・為替で計算し直した値は6月末より下がっています。

格付機関の見方が割れているのはそのためです。JCRはA、S&PはBB+。S&Pは3月にOpenAIへの巨額出資を理由に見通しをネガティブに引き下げ、7月16日に安定的へ戻しました。7年の間には、こうした見直しが何度か来ると考えておくのが自然です。格付が下がれば市場での社債価格は下がり、途中で売る人は損をします。満期まで持つ人には、格付の上下は直接関係しません。関係するのは2033年9月に会社が返せるかどうかだけです。

持ち主が負うリスク

  • 信用リスク:無担保・無保証。会社の支払いが滞れば元本も利息も戻らない可能性がある。
  • 価格変動リスク:途中で売る場合、金利上昇や格付見直しで元本を割ることがある。日銀の9月利上げ観測が報じられており、金利は上がりやすい局面。
  • 投資会社特有のリスク:財務指標(NAV・LTV)が保有株の時価で動く。OpenAIは非上場で、評価額の妥当性は外から検証しにくい。
  • 買入消却:会社側は買い戻せるが、投資家側から途中償還は求められない。

持ち主を守っているもの

  • 財務上の特約:担保提供制限条項・担付切換条項・純資産額維持条項。
  • 財務方針:LTV通常時25%未満(6月末13.0%)、2年分の社債償還資金を保持(6月末は2.3兆円 vs 1.5兆円)。
  • 社債管理者:あおぞら銀行が社債権者のために債権の保全・管理を行う。
  • 返済順位:普通社債なので、劣後債・ハイブリッド債(第8回4.97%、第9回5.12%)より先に返済される。

05 ── THE STOCK

発表当日は▲5.33%の安値引け。ただし1兆円の観測は前週から出ていた

8月24日のソフトバンクグループ株は、始値5,240円、高値5,260円から売られ、安値の4,975円で引けました。前週末21日終値5,255円から▲280円、▲5.33%(算出)。出来高は3,512万株で、前営業日の2,883万株から2割強増えています。

ただ、この下げを社債発表だけに結びつけるのは急ぎすぎです。時事通信は8月20日に「個人向け社債で1兆円調達へ」と観測を報じており、株式市場向けの速報でも8月19日の段階で「売り気配」と伝えられていました。市場は1兆円の数字を先に知っていた。24日に新しく出たのは仮条件の4.30〜4.90%と正式な日程です。年初来高値9,074円(6月2日)から見ると、24日終値は45.2%下の位置にあり(算出)、株価はこの夏、社債とは別の理由で大きく調整してきました。

ソフトバンクグループ(9984)の位置数値補足
8月24日 終値4,975円前週末比 ▲280円(▲5.33%・算出)。高値5,260円・安値4,975円の安値引け
8月21日 終値5,255円出来高 2,883万株。24日は3,512万株
時価総額(24日終値ベース・算出)約28.4兆円発行済株式数 5,711,848,120株
年初来高値9,074円6月2日。24日終値はそこから ▲45.2%(算出)
年初来安値3,365円3月23日。24日終値はそこから +47.8%(算出)
PBR・配当利回り1.53倍・0.22%Yahoo!ファイナンス(8月25日朝時点)

株主にとっての1兆円社債 ── 希薄化はない。代わりに利払いが年430億〜490億円増える

増資と違い、社債は株式数を増やしません。株主の持分は薄まらない。その代わり会社は毎年、仮条件の下限で430億円、上限で490億円の利息を払います(算出)。第1四半期の純利益3,473億円と比べれば、四半期換算で1割前後の重さです。それでも会社が社債を選ぶのは、株価が年初来高値から半分近くに落ちた場面で新株を出すより、4%台で借りるほうが安いと判断しているからでしょう。この判断が正しいかどうかは、調達した1兆円で買うものの値段がどう動くかで決まります。

06 ── SUMMARY

分かっていること、まだ分からないこと

現時点で分かっていること

  • 第70回無担保普通社債(ホークスボンド)、発行総額1兆円、1口100万円、年限7年、償還2033年9月16日。国内の個人向け社債で過去最大(報道)。
  • 利率の仮条件は年4.30〜4.90%。9月4日決定、申込9月7〜16日、払込9月17日。利払いは3月17日・9月17日。
  • 前回の個人向け第67回(2025年12月)は5,000億円・3.98%。仮条件の下限でもそれを上回る。
  • 格付はJCRがA(取得予定)、S&Pの発行体格付はBB+(7月16日に見通し安定的)。
  • 6月末のNAV72.3兆円、LTV13.0%、手元流動性2.3兆円(3月末から▲1.2兆円)。今後2年の社債償還1.5兆円。
  • 株価は24日に▲5.33%の4,975円。1兆円の観測は8月20日に報道済み。

まだ分からないこと

  • 決定利率。仮条件の幅0.6ポイントのどこに落ちるか。9月4日。
  • 売れ行き。第67回は完売したが、1兆円は前回の2倍。売れ残りが出れば引受証券が抱える。
  • 使途の内訳。日経報道の「9月償還4,000億円の借換」と「フィジカルAI投資」の配分は会社から公表されていない。
  • 日銀の9月会合。利上げがあれば、発行直後から社債価格には下押し要因。
  • OpenAI残り100億ドル出資の時期と、それを反映した9月末の手元流動性・LTV。

号外の視点 ── 4%台の数字だけを見ないこと

個人向け社債の広告は利率が主役です。4.30〜4.90%という数字は、預金金利や国債と比べれば目を引きます。ただ、この社債で1兆円を集める会社は、同じ四半期に200億ドルをOpenAIに出し、手元資金を1.2兆円減らし、S&Pからは投機的等級と評価されている。利率が高いのは、その全部の対価です。
満期まで持つなら、問いはひとつに絞られます。2033年9月のソフトバンクグループは、いま貸した100万円を返せる会社か。7年前の2019年、この会社はWeWorkで大きな損失を出し、2020年3月にはムーディーズに2段階格下げされ、それでも社債は一度も飛んでいません。過去の実績は将来を保証しませんが、少なくとも「返してきた会社」ではある。買うかどうかより先に、自分がこの7年をどう見ているかを言葉にしてみる。それがこの社債の正しい読み方だと思います。

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