EARNINGS REVIEW
2027年3月期 第1四半期 決算レビュー
証券コード 8136(東証プライム) / 対象期間 2026年4月〜6月 / 決算発表 2026年8月10日
売上高520億円、営業利益224億円。どちらも第1四半期として過去最高で、Q1ベースの増収増益は6期連続になった。ただし数字の伸び方はそろっていない。売上が+20.7%なのに対して営業利益は+11.1%で、伸び率がほぼ半分に落ちている。 この段差の大半は、事業が失速したせいではない。サンリオの海外子会社は12月決算で、日本の親会社と3か月ずれている。そのズレを連結でならす調整額が、前年は営業利益を20億円押し上げ、今期は3億円押し下げた。会社がそれを外して開示している調整後営業利益で見ると、220億円の+21.8%。売上とほぼ同じ歩幅になる。
売上高
営業利益
調整後営業利益
親会社株主帰属 四半期純利益
01 ── PERFORMANCE
売上高520億3,500万円は前年同期の430億9,700万円から89億円の増加。営業利益は201億9,800万円から224億3,500万円へ22億円増えた。経常利益226億円、親会社株主に帰属する四半期純利益155億円。すべて第1四半期として過去最高になる。
気になるのは利益率だ。売上総利益率は80.7%から78.2%へ2.5ポイント、営業利益率は46.9%から43.1%へ3.8ポイント下がっている。売上原価が83億円から113億円へ+36.3%、販売費及び一般管理費が145億円から182億円へ+25.3%(いずれも算出)。どちらも売上の伸び+20.7%を上回った。
売上高と営業利益 ── 前年同期との比較
単位:億円 / 2026年3月期1Q vs 2027年3月期1Q
| 連結(2026年4-6月) | 前年同期 | 実績 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 43,097百万円 | 52,035百万円 | +20.7% |
| 売上総利益 | 34,765百万円 | 40,683百万円 | +17.0% |
| 売上総利益率 | 80.7% | 78.2% | △2.5pt |
| 販売費及び一般管理費 | 14,567百万円 | 18,248百万円 | +25.3%(算出) |
| 営業利益 | 20,198百万円 | 22,435百万円 | +11.1% |
| 営業利益率 | 46.9% | 43.1% | △3.8pt |
| 調整後営業利益 | 18,126百万円 | 22,077百万円 | +21.8% |
| EBITDA | 20,829百万円 | 23,348百万円 | +12.1% |
| 経常利益 | 20,205百万円 | 22,624百万円 | +12.0% |
| 親会社株主帰属四半期純利益 | 14,190百万円 | 15,516百万円 | +9.3% |
| 1株当たり四半期純利益 | 11円96銭 | 12円80銭 | +7.0%(算出) |
| 四半期包括利益 | 11,755百万円 | 16,619百万円 | +41.4% |
EBITDAは営業利益に減価償却費を加えた値で、決算説明資料の開示による(減価償却費は631→913百万円)。1株当たり四半期純利益は、2026年4月1日付の1株→5株の分割が前期首にあったものとして両期とも算定されている。
四半期純利益155億円に対して、包括利益は166億円で+41.4%。差を作っているのは為替換算調整勘定で、前年の△22億円から当期は+14億円へ36億円動いた。海外子会社の資産・負債を円に換算し直すときに出る差額で、損益計算書の利益とは別枠で純資産に積まれる。円安が進んだ期に増える性質のもので、事業が急によくなったという話ではない。
02 ── ADJUSTMENT
サンリオの連結営業利益には、親会社(4-3月)と海外子会社(1-12月)の期間差を埋めるための調整が入っている。前年同期はこの調整が営業利益を20億7,200万円押し上げ、今期は逆に3億5,800万円押し下げた(いずれも算出)。振れ幅は24億円。営業利益の増加額22億円とほぼ同じ規模になる。
つまり、営業利益+11.1%という数字は、事業の勢いに調整の振れが重なった結果だ。調整を外した調整後営業利益は181億円から220億円へ+21.8%で、売上の+20.7%とほぼ並ぶ。会社が説明資料の1ページ目でこの指標を前に出しているのは、そのためである。ちなみに調整後営業利益率は42.1%から42.4%へ、わずかに上がっている(算出)。
営業利益と調整後営業利益 ── 伸び率が倍ちがう
単位:億円 / 調整後=決算期相違による連結調整を反映する前の営業利益
会社の通期見通しは、営業利益895億円(+15.0%)に対して調整後営業利益888億円(+13.2%)。前期は営業利益778億円に対して調整後784億円だった。つまり通期では調整が営業利益を前期は6億円引き下げ、今期は7億円引き上げる形で置かれている(算出)。四半期ごとの振れは大きいので、1Qだけを取り出して前年と比べる読み方は、この会社では外しやすい。四半期の実力を見るなら調整後で追うほうが安全になる。
03 ── SEGMENT
報告セグメントは日本・欧州・北米・南米・アジアの5つ。外部顧客への売上高は日本294億円(+20.2%)、アジア120億円(+19.8%)、北米61億円(+6.0%)、欧州33億円(+56.0%)、南米10億円(+70.0%)で、全地域が伸びた。伸び率でいちばん高いのは南米、次いで欧州。金額で最大の増加は日本の49億円になる。
ところがセグメント利益は割れる。日本149億円(+25.0%)と欧州8億円(+38.9%)が伸びた一方、北米は27億円から22億円へ△19.9%、アジアは57億円から55億円へ△4.9%。会社は北米について「売上高は増加したもののマーケティング費用等の増加により減益」、アジアについて「売上高は増加したものの販売費及び一般管理費が増加した」と、いずれも費用を理由に挙げている。
セグメント別の外部顧客向け売上高 ── 前年同期との比較
単位:億円 / 海外セグメントの対象期間は2026年1〜3月
| セグメント | 外部売上(前年) | 外部売上(当期) | 前年比 | 利益(前年) | 利益(当期) | 前年比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 24,468 | 29,420 | +20.2% | 11,927 | 14,915 | +25.0% |
| アジア | 10,065 | 12,061 | +19.8% | 5,794 | 5,510 | △4.9% |
| 北米 | 5,788 | 6,133 | +6.0% | 2,750 | 2,202 | △19.9% |
| 欧州 | 2,145 | 3,346 | +56.0% | 616 | 855 | +38.9% |
| 南米 | 631 | 1,073 | +70.0% | 251 | 280 | +11.7% |
| 調整額 | ─ | ─ | ─ | △1,141 | △1,330 | ─ |
| 連結 | 43,097 | 52,035 | +20.7% | 20,198 | 22,435 | +11.1% |
単位:百万円。決算短信のセグメント注記より。当1Qから、従来「調整額」に含めていた社長室に係る費用を日本セグメントに含める変更があり、前年同期は組み替え後の数値。売上のうちロイヤリティは、外部顧客向けで21,826→26,838百万円(+23.0%)、物販その他が21,271→25,197百万円(+18.5%・算出)。
報告セグメントの利益は、海外子会社が本社に払うロイヤリティを原価として引いた後の数字だ。これを足し戻した貢献利益では、絵が変わる。日本38億円→54億円(+43.5%)、アジア80億円→91億円(+13.7%)、米州48億円→52億円(+7.1%)、欧州15億円→23億円(+56.6%)。北米を含む米州も、アジアも増益になる。
報告セグメントで北米が減益に見え、貢献利益では増益になるのは、ロイヤリティの計上期間の食い違いが北米に集中しているからだ。会社は「事業基盤の強化に向けた人件費等の販管費増も、円安効果もあり増益」と説明している。どちらの見方が正しいかではなく、報告セグメントは会計上の姿、貢献利益は事業の姿、と割り切って両方見るのが実際的だと思う。
地域別の貢献利益 ── 本社へのロイヤリティ支払いを足し戻した実力値
単位:億円 / 日本は海外からのロイヤリティ収入を控除した後
04 ── JAPAN
日本セグメントの売上高(内部取引を含む報告ベース)は316億円から385億円へ+21.8%。内訳を開くと、物販が147億円→166億円、ロイヤリティが63億円→90億円、サンリオエンターテイメント(ピューロランドとハーモニーランド)が41億円→50億円、その他が63億円→76億円になる。増加額69億円のうち27億円がロイヤリティで、いちばん大きい(算出)。
物販は客数が押し上げた。国内のサンリオショップ直営店・委託店・消化店の合計で、客数が前年同期比+17%。会社はインバウンド売上比率が中国からの渡航者減少で下がった一方、日本人顧客の来店が増えたと説明している。訪日客に頼った伸びではない、という点はこの四半期の日本を読むうえで効いてくる。
テーマパークは2つ合わせて客数51万4千人、前年から3万4千人増えて+7%。ピューロランドは平日の来場も伸びて第1四半期として過去最高の来場者数になった。ハーモニーランドは35周年イベントを回した一方、人員体制の強化と修繕で販管費が増えている。
日本セグメントの売上内訳
単位:億円 / 報告セグメントの売上高(内部取引を含む)
05 ── COST
販売費及び一般管理費の増加額は36億8,100万円。売上の伸びを上回ったので、売上に対する販管費比率は33.8%から35.1%へ1.3ポイント上がった。中身で最も大きいのは人件費で、54億9,900万円から65億3,200万円へ10億3,300万円の増加(+18.8%・算出)。会社は事業基盤の強化・拡大のための人件費と、グローバルで幅広いキャラクターを浸透させるための戦略的マーケティング投資を理由に挙げている。
ここで1つ、次の四半期の見え方に効く注記がある。会社は1Qで計上を想定していた販管費のうち約20億円が2Q以降に期ずれすると書いている。裏を返せば、1Qの営業利益224億円には本来この四半期に出るはずだった費用20億円が乗っていない。会社自身が「想定よりは若干上振れ」と表現しているのはこの意味で、通期の販管費見通しに変更はない。
| 販売費及び一般管理費の内訳 | 前年同期 | 当1Q | 増減 | 増減率(算出) |
|---|---|---|---|---|
| 人件費 | 5,499 | 6,532 | +1,033 | +18.8% |
| 諸経費 | 3,512 | 4,674 | +1,162 | +33.1% |
| 使用資産費 | 1,968 | 2,558 | +590 | +30.0% |
| 販売費 | 1,614 | 1,940 | +326 | +20.2% |
| 宣伝費 | 1,282 | 1,616 | +334 | +26.1% |
| 物流費 | 689 | 925 | +236 | +34.3% |
| 販管費 合計 | 14,567 | 18,248 | +3,681 | +25.3% |
単位:百万円。決算説明資料P.13の内訳より。各項目は百万円未満切り捨てのため、内訳の単純合計(14,564/18,245)は合計欄と3百万円ずれる。売上に対する販管費比率は33.8%→35.1%。
売上原価は83億3,100万円から113億5,200万円へ+36.3%(算出)。売上総利益率が2.5ポイント下がったのはこのためだ。物販とロイヤリティの構成で言えば、原価のかからないロイヤリティの比率はむしろ50.6%から51.6%へ上がっているので、構成の悪化だけでは説明がつかない。会社の説明どおり、決算期相違に基づく子会社の売上原価の調整がここに乗っている。調整後営業利益が売上並みに伸びている事実と合わせて読むと、粗利率の低下を事業の採算悪化と受け取るのは早い。
06 ── GUIDANCE
2027年3月期の通期見通しは、6月23日に公表した売上高2,298億円(+18.4%)、営業利益895億円(+15.0%)、経常利益902億円(+13.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益638億円(+16.8%)から変更なし。調整後営業利益888億円(+13.2%)も同じだ。前提為替は1米ドル155円、1ユーロ185円、1人民元22.5円。
1Qの進捗率は売上22.6%、営業利益25.1%、経常利益25.1%、純利益24.3%(いずれも算出)。売上だけ25%に届いていないが、これは会社の想定でもある。第2四半期累計の見通しは売上1,072億円・営業利益423億円なので、差し引いた2Q単独の想定は売上551億円・営業利益198億円。1Qの224億円より26億円少ない置き方になっている(算出)。1Qに乗らなかった販管費20億円が2Qに回ることを踏まえると、この置き方はつじつまが合う。
通期見通しに対する第1四半期の進捗率
単位:% / 点線=1年の1/4(25%)
| 2027年3月期 | 前期実績 | 2Q累計予想 | 通期予想 | 通期の前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 194,088 | 107,200 | 229,800 | +18.4% |
| 売上総利益 | 150,062 | ─ | 178,600 | +19.0% |
| 売上総利益率 | 77.3% | ─ | 77.7% | +0.4pt |
| 営業利益 | 77,859 | 42,300 | 89,500 | +15.0% |
| 営業利益率 | 40.1% | ─ | 38.9% | △1.2pt |
| 調整後営業利益 | 78,453 | 42,400 | 88,800 | +13.2% |
| 経常利益 | 79,335 | 42,600 | 90,200 | +13.7% |
| 親会社株主帰属当期純利益 | 54,608 | 30,600 | 63,800 | +16.8% |
| 1株当たり当期純利益 | ─ | 25円24銭 | 52円62銭 | ─ |
単位:百万円(1株当たりを除く)。決算短信および決算説明資料P.15より。2Q累計予想の前年同期比は売上+22.3%、営業利益+8.0%、経常利益+7.3%、純利益+11.2%。前提為替は155円/USD・185円/EUR・22.5円/CNY(前期実績150円・169円・20.9円)。
07 ── BALANCE SHEET
6月末の総資産は2,477億円で、3月末から130億円の増加。増えたのはほぼ現金及び預金で、1,254億円から1,360億円へ106億円積み上がった。負債側は843億円で56億円の増加。支払手形及び買掛金が20億円、契約負債が18億円増えた一方、未払法人税等が45億円減っている。
有利子負債は139億円から125億円へ減り、現預金から差し引いたネットキャッシュは1,114億円から1,235億円へ120億円増えた(会社開示値)。純資産は1,633億円で74億円の増加。自己資本比率は66.4%から65.9%へ0.5ポイント下がったが、これは分母の総資産が増えたことによる。無借金に近い状態で、投資の余地は広い。
| 財政状態 | 3月末 | 6月末 |
|---|---|---|
| 総資産 | 2,346億円 | 2,477億円 |
| 現金及び預金 | 1,254億円 | 1,360億円 |
| 固定資産 | 661億円 | 685億円 |
| 有利子負債 | 139億円 | 125億円 |
| ネットキャッシュ | 1,114億円 | 1,235億円 |
| 純資産 | 1,559億円 | 1,633億円 |
| 政策保有株式 | 73億円 | 74億円 |
| 自己資本比率 | 66.4% | 65.9% |
| 配当・その他 | 前期 | 今期 |
|---|---|---|
| 中間配当 | 31円00銭 | 8円00銭 |
| 期末配当 | 38円00銭 | 8円00銭 |
| 年間配当 | 69円00銭 | 16円00銭 |
| 分割調整後の前期年間配当 | 13円80銭 | ─ |
| 実質の増配率(算出) | ─ | +15.9% |
| 減価償却費(1Q) | 631百万円 | 913百万円 |
| 期中平均株式数(1Q) | 11.87億株 | 12.12億株 |
| 政策保有株式/純資産 | 4.7% | 4.6% |
財政状態は決算説明資料P.14および決算短信より。ネットキャッシュは現金及び預金から有利子負債(転換社債型新株予約権付社債を含む)を差し引いた会社開示値。前期の配当69円は2026年4月1日付の1株→5株分割前の実額で、分割調整後は13円80銭(算出)。今期予想16円は配当予想の修正なし。期中平均株式数は分割調整後。
08 ── SUMMARY
この四半期のサンリオは、キャラクターの人気が売上に変換される回路が太くなっていることを示した。ポムポムプリンの30周年、過去最多7,064万票のキャラクター大賞、グローバル1億を超えたSNSフォロワー。それが日本では客数+17%に、欧州ではファストファッションや文具のライセンス契約に、南米では子供服と衛生商品に姿を変えている。ハローキティ1本に寄りかからない構造への移行が、地域別の数字で確認できるようになった。
一方で、この決算は費用の四半期でもある。人件費が10億円、諸経費が11億円増え、販管費比率は1.3ポイント上がった。北米はマーケティング費用で減益、アジアも販管費で減益。会社はこれを将来の利益成長につなげる投資だと説明していて、通期の見通しも変えていない。ただし1Qには本来出るはずだった20億円が乗っていない。費用が予定どおり乗った状態の利益は、次の四半期で初めて見えることになる。
確認したい点は2つ。2Q単独の営業利益が、会社の置いた198億円をどう上回るか。そして、通期の売上進捗22.6%を後半でどう埋めるか。答えは11月の第2四半期決算に出る。