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イタリア料理のイメージ

EARNINGS REVIEW

サイゼリヤ

2026年8月期 第3四半期 決算レビュー

証券コード 7581(東証プライム)/ 対象期間 2025年9月〜2026年5月(3Q累計)/ 決算発表 2026年7月15日

第3四半期累計は増収増益で、本業のもうけが売上を上回って伸びました。売上高は2,213億円と前年同期を17.5%上回り、 営業利益は25.6%増、経常利益も24.9%増と大きく伸びています。牽引したのは国内で、既存店の客数・客単価が増加し、DX(QR注文)による効率化で日本セグメントの営業利益は約2.2倍に。 あわせて年間配当を30円→35円へ増配する予想も発表しました。一方で、純利益の伸びが営業・経常より鈍い点と、アジアの採算には目配りが要ります。

売上高

2,213億円
+17.5%前年 1,883億円

営業利益

133億円
+25.6%前年 106億円

経常利益

136億円
+24.9%前年 109億円

純利益

87億円
+11.8%前年 78億円
サイゼリヤとは ── 低価格イタリアンの外食チェーン
サイゼリヤは、イタリア料理を手ごろな価格で提供するファミリーレストランチェーンです。国内だけでなく中国(上海・広州・北京など)や香港・台湾・シンガポールにも展開し、当四半期末の総店舗数は1,738店、うち海外が675店(全体の38.8%)を占めます。食材の内製化(豪州やイタリアでの製造)を強みに、低価格でも一定の利益を確保するビジネスモデルが特徴です。決算は日本基準・8月決算で、この第3四半期は2025年9月〜2026年5月の9か月累計です。
決算でよく使う「利益の4段階」を押さえておく
利益は上から順に費用を差し引きながら4段階で示されます。売上高から食材費などの原価を引くと売上総利益(粗利)。そこから人件費・家賃などの販売管理費を引いたものが営業利益(本業のもうけ)。さらに受取利息や為替差損益などを加減したものが経常利益、最後に特別損益と税金を差し引いて残るのが純利益です。下の段ほど「実際に会社へ残る利益」に近づきます。
3つの事業セグメント(日本/豪州/アジア)
サイゼリヤの事業は3区分です。日本は国内の店舗運営。アジアは中国・香港・台湾・シンガポールなどの店舗運営で、利益面では現在グループ最大の稼ぎ頭です。豪州は店舗ではなく、当社で使う食材の製造を担う拠点で、売上の多くはグループ内取引です。このため店舗売上の構成では、実質的に日本とアジアが中心になります。

01 ── PERFORMANCE

本業の利益は増収を上回って伸びた

営業利益・経常利益はともに前年同期を25%前後上回りました。売上の増加(+17.5%)を利益の伸びが上回っており、規模拡大と同時に稼ぐ効率が高まったことを示しています。ただし最終的な純利益の伸びは+11.8%と、営業・経常より小幅にとどまりました(理由は次章)。

利益の前年同期比較

単位:億円 / 前年同期(2024年9月〜2025年5月)と当期(2025年9月〜2026年5月)の比較

150億 100億 50億 0 106 109 78 +25.6% 133億 +24.9% 136億 +11.8% 87億 営業利益 経常利益 純利益
前年同期 当期
売上高は前年1,883億円→当期2,213億円(+17.5%)。営業利益率は5.6%→6.0%へ改善。1株当たり四半期純利益は158.58円→177.17円(+11.7%)。

02 ── DRIVERS

国内の収益改善が全体を押し上げた

増益の主役は国内事業です。日本セグメントの営業利益は前年同期の約2.2倍(+120.7%)へ拡大しました。値上げに頼るのではなく、既存店の客数・客単価の増加と、効率化によるコスト構造の改善が同時に効いています。

① DX(QR注文)で費用構造が改善した

国内単体では、売上に対する販売管理費の比率が前年の51.9%から48.7%へ、3.2ポイント改善しました。QRコードと来店客の携帯端末を使った注文方式を2025年12月末に全店へ導入し終え、省人化と接客効率が進んだことが大きな要因です。既存店の客数・客単価が増え、固定費が売上に対して相対的に軽くなったことも寄与しました。この結果、国内単体の営業利益率は2.0%から3.7%へ改善しています。

原価は上がったが、それを上回る効率化

円安による食材価格の上昇で、国内単体の売上原価率は前年から1.4ポイント悪化しました。それでも、販管費率の3.2ポイント改善がこれを上回り、営業利益率は差し引き1.7ポイント改善。コスト増を効率化で吸収した点に、今四半期の質の高さがあります。

② なぜ純利益の伸びは鈍かったのか

営業利益・経常利益が25%前後の増益だった一方、純利益は+11.8%にとどまりました。営業・本業の実力とは別に、以下の3点が最終利益を圧縮しています。

純利益の伸びを抑えた3つの要因

  • 前年の特別利益の反動:前年同期にあった固定資産売却益などがなくなり、特別利益は6.3億円→0.6億円へ減少。
  • 特別損失の増加:店舗の減損損失などが3.1億円→5.0億円へ拡大。
  • 税負担の上昇:実効税率が30.6%→33.9%へ上昇し、税引後の利益をさらに圧縮。

これらは本業の収益力とは別の一時的・構造的要因です。税引前利益の伸び(+17.5%)まで戻せば、本業の好調さがより明確に見えてきます。

03 ── SEGMENTS

利益の柱はアジア、ただし今期は明暗

店舗売上の内訳は、実質的に日本が約7割、アジアが約3割です(豪州は食材製造が中心でグループ内取引が大半)。利益面では、アジアの営業利益がグループ最大で、日本がこれに次ぎます。ただし今四半期は、日本・豪州が大幅増益となった一方、アジアは増収でも減益となりました。

店舗売上の構成(日本・アジア)

外部顧客向け売上の比率 / 豪州は食材製造でグループ内取引が中心のため除外

日本 約68% アジア 約32%
日本 1,498億円 アジア 715億円 豪州 98億円(食材製造・大半がグループ内)
セグメント売上高前年比営業利益前年比店舗数
日本1,498億+19.6%55.9億+120.7%1,063
アジア715億+13.4%73.0億△6.3%675
豪州98億+19.5%4.6億+70.6%
セグメント売上は内部取引を含む。豪州は食材製造拠点のため店舗数なし。営業利益はアジア73.0億>日本55.9億>豪州4.6億で、利益面ではアジアが最大の柱。

アジアの「明暗」── 中国本土の採算と新規出店の先行赤字

アジアは増収(+13.4%)でも営業利益は6.3%減となりました。好調なのは香港(営業利益+20.2%)・シンガポール(+23.5%)・台湾(+10.5%)で、堅調に増収増益です。一方、減益の主因は中国本土で、上海は増収でも営業利益が24億→18億へ約6億円減少、広州も小幅減益となりました。加えて、武漢(中国)・ベトナム・マレーシアといった新規出店エリアが先行投資で赤字を計上し、アジア全体の利益を押し下げています。

積極出店は続く ── 総店舗数1,738店、海外比率38.8%

当四半期末の総店舗数は前期末から56店増えて1,738店。内訳は国内1,063店・海外675店で、海外比率は38.8%に高まりました。この9か月の純増56店のうち46店が海外で、成長の軸足を海外出店に置いていることがわかります。アジアの一部で出た先行赤字は、この積極出店の裏返しでもあります。

04 ── OUTLOOK

通期予想は据え置き、進捗はほぼ想定線

会社が公表する通期予想(〜2026年8月)は、2026年4月に公表した内容から変更していません。第3四半期までで1年の4分の3(75%)が経過しており、その目安に対する進捗率を示したのが下図です。売上・各利益とも73〜74%台で、ほぼ計画どおりに進んでいます。

通期予想に対する第3四半期累計の進捗率

点線 = 1年の4分の3(75%)の目安ライン

75% 売上高 74.5% 営業利益 73.2% 経常利益 74.4% 純利益 73.8%
通期予想:売上高2,970億円(+15.7%)/営業利益182億円(+17.4%)/経常利益183億円(+15.8%)/純利益118億円(+5.7%)。進捗率は3Q累計実績÷通期予想の算出値。

純利益の通期進捗も、営業・経常と足並みがそろう

3Q累計の純利益が営業・経常より伸び悩んだのは前述の一時要因によるものですが、通期予想に対する進捗率で見ると4指標とも73〜74%台にそろっています。通期の純利益予想(+5.7%)自体が営業利益予想(+17.4%)より控えめに置かれており、会社が最終利益をやや保守的に見込んでいることがうかがえます。

05 ── BALANCE SHEET

財務は健全、配当は増配へ

総資産は前期末から283億円増えて2,077億円。増加の主因は、店舗や工場への投資による有形固定資産の増加(+171億円)と、手元資金の増加(+47億円)です。自己資本比率は62.9%と高水準を保っています。あわせて、年間配当を前期の30円から35円へ引き上げる増配を発表しました。

自己資本比率 62.9%

総資産に占める返済不要の自己資本の割合。60%超は財務的にかなり安定した水準です。積極出店にともなう資産の増加で前期末(65.0%)からわずかに下がったものの、健全性に懸念はありません。

年間配当 30円 → 35円(増配)

株主還元の強化として、2026年8月期の年間配当を前期比5円の増配とする予想を発表。配当の実施は、12月開催予定の定時株主総会での承認が条件となります。

財政状態(主要項目)当3Q末前期末
総資産2,077億円1,794億円
うち有形固定資産855億円684億円
現金及び預金719億円672億円
純資産1,314億円1,172億円
当3Q末=2026年5月31日、前期末=2025年8月31日。有形固定資産の増加は国内外の出店・広州新工場(2026年1月竣工)などの成長投資による。

06 ── SUMMARY

評価と、見ておくべき論点

評価できる点

  • 増収(+17.5%)を上回る営業利益+25.6%の高い効率。
  • 国内はDX(QR全店導入)で営業利益が約2.2倍
  • 全セグメント増収、海外へ積極出店(海外比率38.8%)。
  • 財務は自己資本比率62.9%と健全、増配(30→35円)

留意すべき点

  • 純利益は+11.8%と伸びが鈍い(特別損益・税率の影響)。
  • アジアは増収も営業利益は減益(中国本土+出店先行赤字)。
  • 円安による食材・エネルギーコスト増は継続。
  • 通期予想は据え置き、下期の持続力は次の決算で確認

成長投資と効率化の両輪

今四半期は、国内の効率化(QR注文の全店導入・既存店の客数客単価増)で足元の利益を伸ばしつつ、海外(中国広州の新工場、武漢・ベトナムなどへの出店)に先行投資を続ける姿が数字に表れました。効率化が生む利益で成長投資をまかなう構図であり、アジアの先行赤字が将来の収益に転じるかが、次の注目点になります。

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