号外EXTRA EDITION
10月1日、3銘柄が入れ替わる ── JX金属・KOKUSAI ELECTRIC・カプコンを採用
日本経済新聞社 インデックス事業室 発表 / 2026年9月4日 / 実施は10月1日の算出から / 9月4日の日経平均終値 65,020.94円
9月4日の取引が終わったあと、日本経済新聞社が秋の定期見直しを発表しました。10月1日の算出から、JX金属・KOKUSAI ELECTRIC・カプコンが日経平均株価に入り、コニカミノルタ・ARCHION・カナデビアが外れます。 数だけ見れば3対3の等価交換です。ところが指数への効き方は釣り合っていません。入る3社の合計ウエートは0.833%、出る3社は0.108%(いずれも算出)。約7.7倍の差があります。 日経平均は株価をそのまま足して割る指数なので、時価総額の大きさではなく株価の高さが重みになる。この号外では、誰が入れ替わったかだけでなく、その差がどこから来て、除数という分母がどう吸収するのかまで追いかけます。
入れ替え(10月1日の算出から)
採用3社の合計ウエート(算出)
株価換算係数を変える銘柄(9月29日)
01 ── THE SWAP
発表文は、6銘柄それぞれに理由を1行ずつ添えています。読み分けると、動いた枚数は2つの理由にきれいに割れます。市場流動性を理由に動いたのがJX金属・KOKUSAI ELECTRIC(採用)とカナデビア(除外)の3枚。セクター間の過不足調整で動いたのがカプコン(採用)とコニカミノルタ・ARCHION(除外)の3枚です。
| 銘柄 | コード | 9/4終値 | セクター | 日経が挙げた理由 |
|---|---|---|---|---|
| JX金属 | 5016 | 3,619円 | 素材 | 採用 ── 市場流動性 |
| KOKUSAI ELECTRIC | 6525 | 8,295円 | 技術 | 採用 ── 市場流動性 |
| カプコン | 9697 | 4,248円 | 情報通信 | 採用 ── セクター間の過不足調整 |
| コニカミノルタ | 4902 | 658.5円 | 技術 | 除外 ── セクター間の過不足調整 |
| ARCHION | 543A | 280円 | 技術 | 除外 ── セクター間の過不足調整 |
| カナデビア | 7004 | 1,155円 | 資本財・その他 | 除外 ── 市場流動性 |
セクターごとの増減を並べると、調整の意図が見えます。技術は1つ入って2つ抜けるので純減1。素材と情報通信がそれぞれ1つ増え、資本財・その他が1つ減る。合計はゼロで、225という数は保たれます。半導体製造装置の会社を入れるかわりに、複合機とトラックの会社を技術セクターから抜いたという形です。
| セクター | 採用 | 除外 | 純増減 |
|---|---|---|---|
| 技術 | KOKUSAI ELECTRIC | コニカミノルタ、ARCHION | ▲1 |
| 素材 | JX金属 | ── | +1 |
| 情報通信 | カプコン | ── | +1 |
| 資本財・その他 | ── | カナデビア | ▲1 |
| 合計 | 3銘柄 | 3銘柄 | ±0 |
同じ9月4日、日経は関連指数の変更も出しています。日経平均気候変動1.5℃目標指数からコニカミノルタとARCHIONを除外。日経平均外需株50からコニカミノルタを除外し、こちらは補充せずに10月の定期入れ替えで50銘柄に戻すとしています。どちらも日経平均の構成銘柄から選ぶ指数なので、親のほうで外れれば連動して外れる。1つの入れ替えが、いくつかの指数に同時に効くという構造です。
02 ── THE WEIGHT
入る3社と出る3社を、指数への効き方で並べ直します。日経平均のウエートは「株価×株価換算係数÷(日経平均×除数)」で決まる。採用3社の係数は発表文に1と書かれているので、みなし株価は株価そのままです。9月4日の終値と除数29.83110217を使うと、次のようになります。
6銘柄が日経平均に持ち込む/持ち出す指数ポイント
株価 ÷ 除数29.83110217。9月4日終値による算出 / 除外3社の換算係数は非公表のため1と仮定
KOKUSAI ELECTRICが1社で278ポイント。カプコンとJX金属を足しても264ポイントですから、この1社が採用側の半分を占めます。株価8,295円という水準がそのまま重みになる、というのが株価平均型の指数です。逆に、外れる3社は合わせて70ポイントしかありません。採用側541.8ポイントに対して、除外側70.2ポイント(算出)。差は471.6ポイントです。
ここで会社の規模を並べると、話がねじれます。同じ6銘柄を時価総額で見たのが次の図です。
同じ6銘柄を時価総額で並べ直すと、順番が入れ替わる
2026年9月4日時点 / 銘柄の並び順は上の図と同じ
会社としていちばん大きいのはJX金属の3兆4,351億円です。それでも指数への効き方はKOKUSAI ELECTRICの半分以下。株価が3,619円と8,295円だからで、会社の規模はここに入ってきません。除外される側でも同じことが起きています。ARCHIONの時価総額7,227億円はカナデビアの1,966億円の3.7倍(算出)ですが、株価は280円と1,155円。指数ポイントで見ると9.4対38.7で、逆に4分の1以下です。
TOPIXは時価総額の加重平均、日経平均は株価の単純平均(に係数と除数を掛けたもの)です。ARCHIONのように株数が多くて株価の低い会社は、TOPIXでは相応の存在感を持ちますが、日経平均ではほとんど重さがない。逆に発行株数が少なく株価の高い会社は、日経平均でだけ大きく効きます。どちらが正しいという話ではなく、指数の作り方が違うというだけのことです。ニュースで「日経平均採用」と聞いたときに、その銘柄の株価水準を見る癖をつけておくと、インパクトの見当が早くつきます。
03 ── THE DIVISOR
入る側が541.8ポイント、出る側が70.2ポイント。何もしなければ10月1日の朝に指数が471.6ポイント、率にして0.725%だけ勝手に浮き上がります(算出)。実際にはそうならない。分母である除数を付け替えて、入れ替えの前と後で指数の値が続くようにするからです。
| 項目 | 数値 | 計算 |
|---|---|---|
| みなし株価の合計(入れ替え前) | 約1,939,646円 | 65,020.94 × 29.83110217 |
| 採用3社ぶんの増加 | +16,162円 | 3,619 + 8,295 + 4,248 |
| 除外3社ぶんの減少 | ▲2,093.5円 | 658.5 + 280 + 1,155 |
| みなし株価の合計(入れ替え後) | 約1,953,715円 | 差し引き +14,068.5円 |
| 除数はどう動くか | 29.831 → 約30.05 | 29.83110217 × 1,953,715 ÷ 1,939,646 |
除数が0.22ほど大きくなる、という試算です。ここで注意したいのは、実際の付け替えに使われるのは9月30日の終値だという点。9月4日の株価で計算したこの数字は、あくまで今の水準で見たらこうなるという目安です。株価が動けば除数も変わります。
除数は分母です。29.83が30.05になるということは、同じ1円の株価変動が指数に与える影響が0.7%ほど小さくなるということでもあります。株価換算係数1の銘柄が1,000円動いたときの指数への影響は、いま約33.5ポイント。除数が30.05になれば約33.3ポイントです(算出)。1回の入れ替えで見れば誤差ですが、こうした調整が年に何度も積み重なって、除数は長い時間をかけて動いてきました。指数の値は連続していても、その作り方は少しずつ変わっている。
04 ── THE FLOW
日経平均に連動するインデックスファンドやETFは、指数と同じ中身を持たなければいけません。10月1日から構成が変わるのなら、その直前、つまり9月30日の取引終了時点で保有銘柄を入れ替えることになります。運用の現場では、この日の引け値で売買を成立させるやり方が一般的です。だから入れ替えにともなう売買は、1か月かけて分散するのではなく特定の1点に集まりやすい。
どれくらいの金額が動くかは、日経平均に連動している資産がいくらあるかで決まります。その総額は公表された単一の数字がないので、ここでは連動資産1兆円あたりという形で置きます。自分が想定する金額を掛けて読んでください。
| 銘柄 | ウエート(算出) | 連動資産1兆円あたり | 方向 |
|---|---|---|---|
| KOKUSAI ELECTRIC | 0.428% | 約42.8億円 | 買い |
| カプコン | 0.219% | 約21.9億円 | 買い |
| JX金属 | 0.187% | 約18.7億円 | 買い |
| カナデビア | 0.060% | 約6.0億円 | 売り |
| コニカミノルタ | 0.034% | 約3.4億円 | 売り |
| ARCHION | 0.014% | 約1.4億円 | 売り |
買い側の合計は連動資産1兆円あたり約83.3億円、売り側は約10.8億円(算出)。ただし、この金額をそのまま株価インパクトと読むのは早すぎます。実際に効くのはその銘柄の平常時の売買代金に対してどれだけ大きいかで、1日に数百億円動いている銘柄なら数十億円の買いは吸収されますし、そうでなければ動きます。今回の除外3社はいずれも流動性か業種バランスを理由に外れており、除外側の金額そのものは小さい。
発表は9月4日、実施は10月1日です。この間に、入れ替えを見越した売買が先回りで入ります。過去の定期見直しでも、採用銘柄が発表直後に買われて実施日前後で伸び悩む、という値動きは繰り返し観測されてきました。需給要因の買いは、事業の中身が変わったから起きるものではありません。会社の利益も製品も、9月4日の前後で1円も変わっていない。指数に採用されたという事実だけで動く価格は、その事実が織り込まれきったところで根拠を失います。この号外は特定の売買を勧めるものではありませんが、ニュースを見て動くなら、自分が買おうとしているのは会社なのか需給なのかを分けて考えたほうがいい場面です。
05 ── ARCHION
今回の6銘柄で、いちばん異例なのはARCHION(543A)です。日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの経営統合で生まれた持株会社で、東証プライムへの新規上場は2026年4月1日。同じ日に日野自動車が日経平均から外れ、入れ替わりでARCHIONが採用されました。統合前の日野が持っていた席を引き継いだ形です。
その席を、半年で手放すことになりました。理由はセクター間の過不足調整。株価は上場初日の終値431円に対して9月4日が280円で、35.0%下げています(算出)。時価総額は7,227億円で、除外3社のなかではいちばん大きい。それでも株価280円という水準では、日経平均のなかで9.4ポイントぶんの重さしか持てませんでした。
| 日付 | 出来事 | 補足 |
|---|---|---|
| 2026年3月30日 | 日野自動車が上場廃止 | 売買最終日は3月27日 |
| 2026年4月1日 | ARCHIONが東証プライムに新規上場 | 始値400円・終値431円。同日、日経平均に採用(日野自動車は除外) |
| 2026年10月1日 | 日経平均から除外 | セクター間の過不足調整。9月4日終値は280円 |
会社が悪いという話ではありません。日野とふそうの統合はトラック業界では10年に一度の再編ですし、事業の統合作業はまだ始まったばかりです。ただ、指数の採用基準は事業の将来性を測るものではない。流動性と業種バランスという2つのものさしだけで決まります。4月に採用されたのは統合による席の承継であって、その席にふさわしいと積極的に評価されたわけではなかった、と読むこともできます。
採用されると株が買われ、除外されると売られる。この値動きが目立つせいで、指数への出入りが会社の格付けのように見えることがあります。実際は、売買のしやすさと業種の頭数の問題です。ARCHIONは半年で出入りしましたが、その間に会社の中身が半年で良くなったり悪くなったりしたわけではない。指数は会社を評価する道具ではなく、市場全体を測る物差しで、物差しの目盛りを均すために銘柄が入れ替わっている。この順序を取り違えないほうがいいと思います。
06 ── THE SPLITS
同じ発表文には、もう1つの変更が書かれています。株式分割を予定している10銘柄について、9月29日の算出から株価換算係数を変えるというものです。分割で株価が10分の1になれば、そのままでは指数への重みも10分の1になってしまう。それを防ぐために係数を10倍する。指数の水準は動きません。
| 銘柄 | コード | 株価換算係数 | 分割比率 |
|---|---|---|---|
| 大和ハウス工業 | 1925 | 1 → 2 | 1:2 |
| 日本ハム | 2282 | 0.5 → 1.5 | 1:3 |
| キオクシアホールディングス | 285A | 0.7 → 2.1 | 1:3 |
| 三越伊勢丹ホールディングス | 3099 | 1 → 2 | 1:2 |
| イビデン | 4062 | 2 → 4 | 1:2 |
| 三井金属 | 5706 | 0.1 → 1 | 1:10 |
| TOPPANホールディングス | 7911 | 0.5 → 1 | 1:2 |
| 東京エレクトロン | 8035 | 3 → 15 | 1:5 |
| 三井住友フィナンシャルグループ | 8316 | 0.3 → 0.6 | 1:2 |
| 東京海上ホールディングス | 8766 | 1.5 → 22.5 | 1:15 |
この表には、当ジャーナルで扱ってきた銘柄が3社入っています。8月25日号で取り上げた東京海上ホールディングスの1対15分割は、係数が1.5から22.5へ。キオクシアホールディングスは1対3で0.7から2.1に、東京エレクトロンは1対5で3から15になります。係数の変化率と分割比率は必ず一致します。表の各行で掛け算を確かめてみると、この調整が何をしているのかが体感できます。
ここは混同しやすいところです。株式分割は、株価が下がったぶんを係数が引き上げるので、みなし株価は変わりません。だから除数も指数も動かない。一方、銘柄の入れ替えはみなし株価の合計そのものが変わるので、除数を付け替えて指数の連続性を保ちます。9月29日の係数変更は指数に中立、10月1日の入れ替えは除数を動かす。同じ発表文に並んでいますが、性質は別物です。
07 ── SUMMARY
見出しだけを追うと「3銘柄が入れ替わった」で終わります。ただ、開けてみると入る側が541.8ポイント、出る側が70.2ポイント。日経平均という物差しは、この差を除数で吸収して何事もなかったように連続します。指数の値が滑らかであることと、中身が滑らかに変わっていることは、別の話です。 今回いちばん学びになるのはARCHIONだと思います。時価総額7,227億円で、除外される3社のなかでは最大。それでも株価280円では9.4ポイントしか持てず、半年で席を明け渡すことになった。会社の大きさと、指数のなかでの重さは違う。日経平均を見て「日本株が上がった」と言うとき、その値動きの多くは株価の高い数銘柄が作っています。今回の入れ替えは、その仕組みが表に出てきた場面でした。