EARNINGS REVIEW
2026年12月期 第2四半期(中間期) 決算レビュー
証券コード 319A(東証グロース) / 対象期間 2026年1月〜6月 / 決算発表 2026年8月14日
上期の売上高は134億8,600万円で前年同期の2.4倍。営業利益は21億4,000万円と4.2倍になった。数字だけ見れば異常な伸びだが、この会社の場合、驚くところはそこではない。伸びのほとんどは前期に買った7社が丸半年ぶん乗ったことによる、いわば買ってきた成長だからだ。 中小製造業を次々に譲り受け、決して売らない。技術承継機構は日本ではまだ数の少ない連続買収企業で、設立から現在までに20社を傘下に収めている。今期も1月に堀越精機、3月に大崎電業社、7月に三晃技研工業と、すでに3社を加えた。 読みどころは二つある。ひとつは販管費率が18.4%から14.4%へ4.0ポイント下がったこと。会社数が倍近くに増えても本部を太らせない、という方針が数字に出た。もうひとつは通期予想を据え置いたこと。調整後EBITDAの進捗はすでに74.8%に達しているのに、会社は8月14日時点で予想を動かしていない。
売上高(中間期)
営業利益
調整後EBITDA
親会社株主帰属 中間純利益
01 ── PERFORMANCE
売上高134億8,600万円は前年同期の56億1,900万円から78億6,700万円の増加。営業利益は5億1,200万円から21億4,000万円へ、16億2,800万円増えた。経常利益20億8,600万円、親会社株主に帰属する中間純利益15億7,300万円。1株当たり中間純利益は33円47銭から177円81銭になった。
伸びの正体は会社自身が説明している。前期の第2四半期以降に譲り受けた7グループ、つまりミヤサカ工業、サンテック産業、神田鉄工所、アルファーシステム、山泰製作所と山泰鋳工所、多賀製作所、アドバンス。これらが今期は丸半年ぶん寄与した。加えて既存のグループ会社にも好調なところが複数あった、としている。会社は買収による寄与分と既存事業の伸びを分けて開示していないので、どこまでが自力の成長かは決算資料からは分からない。ここは押さえておきたい。
売上高と調整後EBITDA ── 前年同期との比較
単位:百万円 / 2025年1-6月 vs 2026年1-6月
利益が売上を上回って伸びた理由は、二段階に分けて見ると分かりやすい。売上総利益率は27.5%から30.3%へ2.8ポイント上がった(いずれも算出)。譲り受ける会社を高収益企業に限っている方針が効いている部分だ。だが効き方がもっと大きいのは販管費のほうで、販管費は10億3,200万円から19億4,700万円へ+88.7%(算出)。売上が+140.0%伸びるなかで販管費は倍にも届かず、売上に対する比率が18.4%から14.4%へ4.0ポイント下がった。
この4.0ポイントは、Q&Aで会社が語っている方針とぴたり重なる。譲受数が増えても大幅な人員増は想定していない、参考にしているLifcoやIndutradeも本部をリーンなまま成長させている、という説明だ。グループ会社は増やすが管理部門は増やさない。その設計が上期の損益計算書に、はっきりした形で出た。
収益性の3指標 ── 前年同期との比較
単位:% / 売上高に対する比率(いずれも算出)
| 連結(2026年1-6月) | 前年同期 | 当中間期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,619百万円 | 13,486百万円 | +140.0% |
| 売上原価 | 4,075百万円 | 9,400百万円 | +130.7%(算出) |
| 売上総利益 | 1,545百万円 | 4,086百万円 | +164.5%(算出) |
| 売上総利益率 | 27.5% | 30.3% | +2.8pt(算出) |
| 販売費及び一般管理費 | 1,032百万円 | 1,947百万円 | +88.7%(算出) |
| 販管費比率 | 18.4% | 14.4% | △4.0pt(算出) |
| 営業利益 | 512百万円 | 2,140百万円 | +317.5% |
| 営業利益率 | 9.1% | 15.9% | +6.8pt(算出) |
| 経常利益 | 522百万円 | 2,086百万円 | +299.8% |
| 特別利益 | 9百万円 | 635百万円 | ─ |
| 特別損失 | 0百万円 | 250百万円 | ─ |
| 税金等調整前中間純利益 | 531百万円 | 2,471百万円 | +365.3%(算出) |
| 法人税等合計 | 242百万円 | 898百万円 | +271.1%(算出) |
| 親会社株主帰属中間純利益 | 289百万円 | 1,573百万円 | +444.9% |
| 1株当たり中間純利益 | 33円47銭 | 177円81銭 | +431.3%(算出) |
| 中間包括利益 | 294百万円 | 1,639百万円 | +456.7% |
決算短信より。営業利益と経常利益の差は営業外損益で、営業外収益1億5,900万円(投資事業組合運用益6,900万円、違約金収入3,500万円ほか)と営業外費用2億1,300万円(支払利息1億1,800万円ほか)。前年同期の営業外費用には上場関連費用2,300万円が含まれる。
02 ── QUALITY OF EARNINGS
この会社の決算は、営業利益をそのまま読むと本業の実力を取り違える。M&Aを繰り返す構造上、買った瞬間に出る費用と、買ったせいで毎期出る費用が損益計算書に混ざっているからだ。会社が調整後EBITDAを本命の指標に据えているのは、そこを均すためになる。
営業利益から調整後EBITDAへ ── 足し戻された8億5,100万円の中身
単位:百万円 / 2026年12月期 中間期
足し戻しの4項目のうち、性質が違うものが混ざっている点に気をつけたい。減価償却費5億2,700万円は機械や設備の費用で、製造業を20社抱えていれば当然出るし、いずれ設備の更新投資としてキャッシュが出ていく。のれん償却費1億5,700万円は買収の対価が相手の純資産を上回った分の期間配分で、現金は動かない。取得関連費用1億6,100万円は、その期に案件を実行したから出た現金支出だ。足し戻しても消えるわけではないものと、会計上のルールに由来するものが同居している。
特別利益6億3,500万円のうち、負ののれん発生益が4億5,000万円、投資有価証券売却益が1億8,000万円。負ののれん発生益は、純資産より安く会社を買えたときに差額がその期の利益になるもので、現金は入ってこない。会社は貸借対照表の説明で「純資産が薄い会社もあったことが原因であり、譲受時バリュエーションには変化なし」と述べている。調整後中間純利益14億4,800万円は、この4億5,000万円を差し引いて計算されている。会計上の純利益15億7,300万円より小さくなっているのはそのためで、こちらのほうが実力に近い。
| 純利益から調整後中間純利益へ | 前年同期 | 当中間期 |
|---|---|---|
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 289百万円 | 1,573百万円 |
| + のれん償却費 | 49百万円 | 157百万円 |
| + のれん減損損失 | ─ | ─ |
| - 負ののれん発生益 | ─ | △450百万円 |
| + 取得関連費用 | 173百万円 | 161百万円 |
| + 株式報酬関連費用 | ─ | 6百万円 |
| 調整後中間純利益 | 510百万円 | 1,448百万円 |
当上期は減損損失2億2,400万円を特別損失に計上している。前年同期はゼロだった。決算短信に内訳の説明はないが、上の表のとおり調整後中間純利益の計算では「のれん減損損失」の行が前年・当期とも空欄になっている。つまりこの2億2,400万円はのれんの減損ではなく、固定資産など別の資産に対する減損だと読める。だから足し戻しの対象にもなっていない。買った会社そのものの価値を切り下げた、という話ではない点は押さえておきたい。
03 ── GUIDANCE
2026年12月期の通期予想は売上高230億円、調整後EBITDA40億円、調整後当期純利益20億円。2026年2月13日に公表した数字から変更はない。中間期を終えた時点の進捗は売上58.6%、調整後EBITDA74.8%、調整後当期純利益72.4%。会社は「季節性はございません」と明言しているので、50%が素直な目安になる。調整後EBITDAは目安を25ポイント近く上回っている。
通期ガイダンスに対する上期の進捗
2026年12月期 通期予想を100%としたときの中間期実績
ではなぜ据え置いたのか。Q&Aの回答が答えになっている。会社はこのガイダンスを「保守的なもの」と説明したうえで、1月に譲り受けた堀越精機、3月の大崎電業社、7月の三晃技研工業を含んでいない数値だと明記している。つまり分母には今期3社ぶんが入っていないのに、分子の実績にはそのうち2社が入っている。進捗率が前倒しに見えるのは、ある意味で当然なのだ。
そのうえで「通期の見通しが明瞭になったタイミングで必要なアナウンスを行う予定」としている。上方修正の可能性を否定していない書き方だ。ただし修正の時期も幅も示されていないので、期待だけ先に置くのは危うい。
04 ── BALANCE SHEET
総資産は359億6,900万円で前期末から51億4,300万円増えた。増加の中身は現金及び預金16億5,600万円、売掛金7億7,000万円、そしてのれん14億3,200万円。負債は251億1,400万円で34億9,800万円の増加、うち長期借入金が13億6,900万円を占める。純資産は108億5,500万円になり、自己資本比率は29.6%から29.9%へ0.3ポイント上がった。
のれん・有利子負債・現預金等 ── 前期末との比較
単位:百万円 / 2025年12月末 vs 2026年6月末
のれんが44億4,000万円まで積み上がった。自己資本107億4,900万円の41.3%(算出)に当たる規模だ。日本基準ではこれを毎期償却していくので、当上期のように1億5,700万円ずつ会計上の利益を削り続ける。買収を続ける限りこの残高は増え、償却負担も重くなる。会計上の営業利益と、会社の言う調整後EBITDAの差が年々開いていく構造だと理解しておくといい。
有利子負債は180億3,600万円へ18億900万円増えた。ただし現預金等も15億7,000万円増えたので、差引のNet Debtは2億3,900万円しか増えていない。会社が管理指標に置くNet Debt / 調整後EBITDAは1.27倍から1.33倍へ。適正水準とする3〜4倍にはまだ距離がある、というのが会社の見方だ。ここには注釈が要る。分母の40億円は実績ではなく通期ガイダンスの数値で、前期末の1.27倍も同じ40億円で割っている。
営業活動によるキャッシュ・フローは17億7,900万円。前年同期の1億9,400万円から9倍以上になった。投資活動では14億500万円が出ていき、その中身は子会社株式の取得による支出17億2,500万円が大半を占める。定期預金の払戻6億6,400万円が一部を戻した形だ。財務活動では長期借入れで27億900万円を調達し、返済に13億5,000万円を充てて差引14億3,700万円のプラス。
稼いだ17億円と借りた27億円で、買収に17億円を払い、借金を13億円返した。残った現金は89億5,800万円から108億900万円へ18億5,100万円増えている。営業キャッシュ・フローと借入で次の買収を賄い、なお手元が厚くなる。会社が「現状はキャッシュが順調に積み上がっております」と述べている状態が、そのまま数字に出ている。
| 財政状態・キャッシュ・フロー | 前期末/前年同期 | 当中間期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 総資産 | 30,826百万円 | 35,969百万円 | +5,143百万円 |
| のれん | 3,008百万円 | 4,440百万円 | +1,432百万円 |
| 純資産 | 9,211百万円 | 10,855百万円 | +1,644百万円 |
| 自己資本 | 9,111百万円 | 10,749百万円 | +1,638百万円 |
| 自己資本比率 | 29.6% | 29.9% | +0.3pt |
| 有利子負債 | 16,227百万円 | 18,036百万円 | +1,809百万円 |
| Net Debt | 5,097百万円 | 5,336百万円 | +239百万円 |
| Net Debt / 調整後EBITDA | 1.27倍 | 1.33倍 | 分母は通期予想40億円 |
| 営業活動によるCF | 194百万円 | 1,779百万円 | +1,585百万円(算出) |
| 投資活動によるCF | ─ | △1,405百万円 | うち子会社取得 △1,725 |
| 財務活動によるCF | ─ | 1,437百万円 | 長期借入 +2,709 |
| 現金及び現金同等物 期末残高 | 8,958百万円 | 10,809百万円 | +1,851百万円 |
財政状態の比較対象は2025年12月末、キャッシュ・フローの比較対象は前年同期(2025年1-6月)。前年同期の投資・財務キャッシュ・フローは開示表の読み取り精度を優先して掲載を控えた。
05 ── BUSINESS MODEL
技術承継機構は自社の株価指標を決算説明資料に載せている。2026年8月13日時点でEV/EBITDAが47.3倍、PERが92.0倍。一方で譲受の対象クライテリアには「企業価値/EBITDA倍率により算定」「規律の利いた水準」と書かれ、具体的な倍率は開示されていない。中小製造業の事業承継案件で使われる倍率は一般に一桁前半とされる。安く買って、高く評価されている会社の中に組み込む。連続買収企業の利益の源泉はここにある。
この仕組みは、買った会社の利益がグループの利益として素直に積み上がる限り回り続ける。逆に言えば、市場が付ける倍率が下がるか、譲受の倍率が上がるかのどちらかで、成長の効率は落ちる。Q&Aで会社が「株式の希薄化を避けたい」「増資も株式交換も現時点では想定していない」と繰り返しているのは、この構造を守るためだ。参考にしているLifcoやIndutradeも増資と株式交換をほとんど使わずに成長した、と会社は述べている。
ソーシングは350社を超えるM&Aアドバイザー、金融機関、公的機関、税理士・会計士、そして自社ネットワークから。設立から2026年6月までの累計検討案件数は2,751件で、足元は年間約500件を検討している。上場からの1年半でどう変わったかについて、会社は「信用・知名度向上により利益額及び利益率の高い案件が増加」「譲受企業における採用力強化にもつながっている」と回答している。2,751件を検討して20社。採用率にすると0.7%(算出)で、高収益企業のみをスクリーニングし再生案件は扱わないという方針が、この数字に表れている。
買った後の型も持っている。NGP(NGTG Growth Program)と呼ぶバリューアップのマニュアルで、米国Danaher社のDanaher Business Systemを手本に仕組み化したものだ。譲受直後から半年で全社員面談と現状把握、ITツール導入や組織体制の見直しといった着手しやすい施策から入り、半年から2年で事業計画の実行、3年目以降に海外展開や更なるM&Aへ進む。成功例と失敗例をもとに週次でアップデートしているという。豊島製作所では、冷間鍛造というキーワードでの検索順位を3ページ目から1ページ目へ引き上げるウェブサイト刷新や、FileMakerで自作した生産管理システムの導入、3Dプリンターで筐体を作ったIoT現場管理システムまで手掛けている。
顧客業界は超伝導・電池・研究機関・自動車から、FA機器、通信、光学フィルム、鉄道、半導体、防災、福祉まで広がる。会社はQ&Aで「特定の業界の影響を受けすぎないようグループ内での事業分散を意識しております」と説明している。ニッチでシェアの高いビジネスを選ぶ方針と合わせて、1社の不振がグループ全体を揺らさない構成を作りにいっている。ただし全社が製造業と製造業関連事業である以上、日本の製造業全体に効く波(設備投資の循環、為替、原材料価格)からは逃げられない。中東情勢と原材料高については、グループ内での調達情報の共有と各社の価格転嫁体制で「現時点では課題は顕在化しておりません」との回答だった。
06 ── RISK
低金利で長期・原則財務コベナンツなしの借入を、企業価値に対して高いレバレッジで引く。これがこの会社の資金調達の型だ。案件ごとにSPCを組成しノンリコースローンで調達する。裏を返せば、日本の金利水準が上がっていけば、モデルの前提そのものが揺れる。
Q&Aでの回答はこうだ。今年も日銀の利上げがあったが、他国と比べて日本の金利水準が低いこと、地方金融機関に優良な貸出先が少ないことは変わっていない。既存の譲受企業の過半は固定金利で調達している。加えて譲り受ける会社は利益率が高いため、今後数度の利上げがあっても利払いは問題ない、としている。当上期の支払利息は1億1,800万円で、営業利益21億4,000万円に対して5.5%(算出)。この水準なら、たしかに当面の余裕はある。
もうひとつ、株主還元は現時点でない。配当は2025年12月期・2026年12月期とも年間0円で、自社株買いの予定もない。理由は明快で、新規譲受案件の持込が増えており一定のエクイティ拠出が必要になるケースもあるため、そのチャンスを逃さないようキャッシュを蓄えておく、というものだ。この会社に投じられた資金は、配当ではなく次の会社を買うために使われる。持つ側にとっては、株価の上昇だけがリターンになる設計だと理解しておく必要がある。
07 ── SUMMARY
売上2.4倍という数字だけを取り出せば、それは会社を買った結果でしかない。連続買収企業の決算で本当に見るべきなのは、買ったものが利益として定着しているかどうかだ。上期の技術承継機構は、そこに数字で答えた。販管費率18.4%→14.4%、営業利益率9.1%→15.9%。グループ会社を20社に増やしながら本部を膨らませなかったから、増えた売上の多くが利益として残った。
気をつけたい点も同じくらいはっきりしている。純利益15億7,300万円のうち4億5,000万円は負ののれん発生益という一度きりの会計上の利益で、会社自身がそれを外した14億4,800万円を実力値として示している。のれん44億4,000万円は買収を続ける限り増え、会計上の利益を毎期削り続ける。Net Debt / 調整後EBITDA 1.33倍という余裕を示す数字も、分母は実績ではなく通期予想だ。
通期予想の据え置きは、上方修正の含みを残した判断に見える。ガイダンスに今期3社が入っていない以上、通期の着地はガイダンスより上振れる可能性が高い。ただし会社はその時期も幅も示していない。次に見る数字は、第3四半期の販管費率だろう。20社を超えても本部が太らないなら、この会社の設計は本物だという話になる。