EARNINGS REVIEW
2027年3月期 第1四半期 決算レビュー
証券コード 8306(東証・名証) / 対象期間 2026年4月〜6月 / 決算発表 2026年8月3日
経常利益1兆1,179億円、前年同期比+57.8%。三菱UFJフィナンシャル・グループの2027年3月期第1四半期は、純利益8,094億円で通期目標2兆7,000億円の30.0%(算出)を3か月で積んだ。ROEは14.40%と、前年同期の10.78%から3.6ポイント上がっている。 ただし増益額4,094億円の中身は一様ではない。株式等関係損益と持分法による投資損益、この2項目の増加分だけで増益額の42.1%(算出)を占める。銀行本体の稼ぎである連結業務純益も+48.5%と伸びてはいるが、決算の強さがどこから来ているのかは分けて読んでおきたい。
経常収益
経常利益
親会社株主帰属四半期純利益
ROE(東証基準)
01 ── PERFORMANCE
経常収益3兆9,075億円は前年同期の3兆2,539億円から6,536億円の増加。中身を開くと、貸出金利息が9,682億円から1兆1,390億円へ17.6%増え、有価証券利息配当金も4,120億円から5,391億円へ30.9%伸びている。資金運用収益の合計は2兆3,366億円で+15.5%。一方で払う側の資金調達費用は1兆4,543億円と+9.2%にとどまった。受け取る利息の伸びが、払う利息の伸びを上回っている。
利益の伸び方はさらに大きい。経常利益は7,085億円から1兆1,179億円へ4,094億円、率にして57.8%の増加。親会社株主に帰属する四半期純利益も5,460億円から8,094億円へ48.2%増えた。1株当たり四半期純利益は47円55銭から71円77銭へ50.9%(算出)伸びており、純利益の伸び率を2.7ポイント上回る。期中平均株式数が114億8,429万株から112億7,879万株へ1.8%減ったためで、自己株式の取得が1株当たりの数字を押し上げている。
経常収益・経常利益・純利益 ── 前年同期との比較
単位:億円 / 2026年3月期1Q vs 2027年3月期1Q
| 連結(2026年4-6月) | 前1Q | 当1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 経常収益 | 3兆2,539億円 | 3兆9,075億円 | +20.1% |
| 資金運用収益 | 2兆225億円 | 2兆3,366億円 | +15.5%(算出) |
| うち貸出金利息 | 9,682億円 | 1兆1,390億円 | +17.6%(算出) |
| うち有価証券利息配当金 | 4,120億円 | 5,391億円 | +30.9%(算出) |
| 役務取引等収益 | 5,667億円 | 6,821億円 | +20.4%(算出) |
| 経常費用 | 2兆5,453億円 | 2兆7,896億円 | +9.6%(算出) |
| 資金調達費用 | 1兆3,318億円 | 1兆4,543億円 | +9.2%(算出) |
| うち預金利息 | 4,949億円 | 5,542億円 | +12.0%(算出) |
| 営業経費 | 7,967億円 | 9,005億円 | +13.0%(算出) |
| 経常利益 | 7,085億円 | 1兆1,179億円 | +57.8% |
| 親会社株主帰属四半期純利益 | 5,460億円 | 8,094億円 | +48.2% |
| 1株当たり四半期純利益 | 47円55銭 | 71円77銭 | +50.9%(算出) |
| 四半期包括利益 | 1,355億円 | 1兆1,407億円 | +741.3% |
決算短信に添付された説明資料には、銀行本体の稼ぎを取り出した数字が並んでいる。連結業務粗利益は1兆3,584億円から1兆7,360億円へ27.8%増加。内訳では資金利益が6,907億円から8,823億円へ27.7%、役務取引等利益が4,616億円から5,581億円へ20.9%、特定取引利益が427億円から1,327億円へ210.1%(いずれも算出)伸びた。営業費は8,154億円から9,270億円へ13.7%(算出)増えたものの、粗利益の伸びがそれを大きく上回っている。
結果として、経費を粗利益で割った経費率は60.0%から53.4%(算出)へ6.6ポイント改善した。一般貸倒引当金繰入前・信託勘定およびのれん償却前の連結業務純益は5,523億円から8,202億円へ48.5%(算出)の増加。銀行の本業が伸びていること自体は、この数字が示している。
連結業務粗利益の内訳 ── 前年同期との比較
単位:億円 / 資金利益・役務取引等利益・特定取引利益
三菱UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行を単純合算した国内業務部門の貸出金利回は、前年同期の1.06%から今1Qは1.45%へ0.39ポイント上昇した。一方で預金等利回の上昇は0.17%から0.30%への0.13ポイントにとどまる。差し引きの預貸金利回差は0.89%から1.14%へ0.25ポイント広がった。政府等向け貸出金を除いたベースでも0.95%から1.16%へ拡大している。貸出金の平均残高が116兆7,721億円から122兆8,640億円へ増えており、広がった利ざやに大きくなった残高が掛かった形になる。
02 ── EARNINGS QUALITY
決算短信のセグメント注記には、部門別の営業純益の合計から連結の経常利益までを橋渡しする表が載っている。この表が、今回の決算の性格をいちばん正直に語っている。
本業の営業純益は5,422億円から8,205億円へ2,783億円増えた。ここまでは銀行業務の伸びだ。そこに株式等関係損益が303億円から989億円へ、持分法による投資損益が1,580億円から2,616億円へ乗ってくる。この2項目の合計は前年1,883億円から3,605億円へ1,722億円増えており、経常利益の増益額4,094億円に対して42.1%(算出)を占める。当1Qの経常利益に占める比率でも32.2%(算出)と、前年の26.6%から5.6ポイント上がった。
| 営業純益から経常利益への橋渡し | 前1Q | 当1Q | 増減 |
|---|---|---|---|
| 報告セグメント計(営業純益) | 5,422億円 | 8,205億円 | +2,783億円 |
| 報告セグメント対象外の連結子会社 | △1億円 | △17億円 | △16億円 |
| 一般貸倒引当金繰入額 | +134億円 | +59億円 | △75億円 |
| 与信関係費用 | △836億円 | △1,032億円 | △196億円 |
| 償却債権取立益 | +233億円 | +253億円 | +20億円 |
| 株式等関係損益 | +303億円 | +989億円 | +686億円 |
| 持分法による投資損益 | +1,580億円 | +2,616億円 | +1,036億円 |
| その他 | +251億円 | +106億円 | △145億円 |
| 経常利益 | 7,085億円 | 1兆1,179億円 | +4,094億円 |
決算短信「セグメント情報等の注記」の差異調整表より。億円未満を四捨五入しているため、内訳の合計と経常利益は一致しない場合がある。
この項目は保有株式の売却損益と評価損の合計だ。内訳を見ると株式等売却益が1,067億円、売却損が33億円、償却が45億円。前年同期の売却益402億円と比べて2.7倍(算出)に膨らんでいる。政策保有株式の削減を進めれば、その分だけ売却益がこの欄に立つ。売る株がなくなれば止まる性質の利益でもある。
持分法による投資損益2,616億円は、出資先の会社が稼いだ利益を持ち分に応じて取り込んだ会計上の数字で、こちらは前年から65.6%(算出)増えた。この2つを足した3,605億円は、今1Qの純利益8,094億円の44.5%(算出)に相当する規模になる。
貸出のリスクに備える費用は前年の836億円から1,032億円へ23.4%(算出)増えた。戻し益や償却債権取立益まで含めた与信関係費用総額でも469億円から720億円へ拡大している。利益の規模に対しては小さいものの、増益局面のなかで方向が逆を向いている項目として押さえておきたい。なお短信は追加情報として、中東情勢を含む地政学的な状況を踏まえた将来見込みによる引当の上乗せ額が284億円(前期末244億円)にのぼると開示している。
03 ── SEGMENT
事業本部別の営業純益は、7つの区分すべてで前年同期を上回った。合計は5,422億円から8,205億円へ51.3%(算出)の増加。顧客部門6区分の小計が5,340億円から7,398億円へ38.5%(算出)伸び、市場事業本部が809億円から1,486億円へ83.7%(算出)と最も高い伸び率になった。
金額でいちばん大きいのはコーポレートバンキング事業本部の2,019億円で、前年の1,474億円から37.0%(算出)の増加。次いでグローバルCIB事業本部が1,094億円から1,802億円へ64.8%(算出)伸び、金額でも2番手に上がった。法人・ウェルスマネジメント事業本部は869億円から1,332億円へ53.3%(算出)。一方でグローバルコマーシャルバンキング事業本部は+13.6%、受託財産事業本部は+8.9%(いずれも算出)と、伸びは相対的に控えめだった。
事業本部別の営業純益 ── 前年同期との比較
単位:億円 / 7区分すべてが増益
| 事業本部(2026年4-6月) | 粗利益 | 経費 | 営業純益 | 営業純益 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| リテール・デジタル事業本部 | 2,941億円 | 2,088億円 | 852億円 | +28.4% |
| 法人・ウェルスマネジメント事業本部 | 2,553億円 | 1,221億円 | 1,332億円 | +53.3% |
| コーポレートバンキング事業本部 | 3,090億円 | 1,071億円 | 2,019億円 | +37.0% |
| グローバルコマーシャルバンキング事業本部 | 2,253億円 | 1,263億円 | 990億円 | +13.6% |
| 受託財産事業本部 | 1,575億円 | 1,173億円 | 402億円 | +8.9% |
| グローバルCIB事業本部 | 3,064億円 | 1,262億円 | 1,802億円 | +64.8% |
| 顧客部門 小計 | 1兆5,479億円 | 8,081億円 | 7,398億円 | +38.5% |
| 市場事業本部 | 2,360億円 | 874億円 | 1,486億円 | +83.7% |
| その他 | △215億円 | 462億円 | △679億円 | 赤字縮小 |
| 合計 | 1兆7,624億円 | 9,418億円 | 8,205億円 | +51.3% |
粗利益は一般企業の売上高に代わる指標で、資金運用収支・信託報酬・役務取引等収支・特定取引収支・その他業務収支の合計。経費は人件費と物件費。前年比は開示値からの算出。当1Qより事業本部間の粗利益・経費の配賦方法が変更されており、前年同期の数値も変更後の方法に組み替えられている。
市場事業本部は国債や外国債券、為替、デリバティブなどの運用・トレーディングを担う部門で、粗利益が1,602億円から2,360億円へ47.4%(算出)伸びた。相場環境の影響を最も受けやすい部門でもある。この四半期の粗利益の13.4%(算出)を市場事業本部が稼いだことになり、前年の11.7%から比重が上がった。金利や為替の水準が変われば、伸び率は同じ幅で逆方向にも振れる。
04 ── BALANCE SHEET
6月末の総資産は433兆9,134億円で、3月末の431兆7,315億円から2兆1,819億円の増加。貸出金は133兆7,994億円から134兆4,543億円へ0.5%(算出)増え、有価証券は85兆7,147億円から88兆1,327億円へ2.8%(算出)増えた。一方で預金は239兆4,392億円から236兆9,373億円へ1.0%(算出)減っている。純資産は23兆7,441億円から24兆1,820億円へ増加し、短信ベースの自己資本比率は5.2%で3月末と同水準だった。
この四半期の財務でいちばん動いたのは、保有する有価証券の含み損益だ。その他有価証券のうち株式の評価損益は3月末の+2兆8,183億円から6月末は+3兆1,911億円へ3,728億円拡大した。株価の上昇がそのまま含み益になっている。ところが債券は逆を向く。満期保有目的の債券の評価損益は3月末の△1兆1,193億円から△1兆2,569億円へ、含み損が1,376億円広がった。うち国債だけで△1兆1,689億円にのぼる。
有価証券の含み損益 ── 3月末と6月末の比較
単位:億円 / 右が含み益、左が含み損
満期保有目的の債券は満期まで持ち切る前提で取得原価のまま計上されるため、△1兆2,569億円の含み損は貸借対照表にも損益計算書にも表れない。満期を迎えれば額面で償還されるので、途中で売らない限り損失は実現しない。金利が上がれば既存の低い利率の債券の値段は下がる、という関係がそのまま数字になっているだけだ。ただし、含み損を抱えた債券を持ち続けるあいだは、より高い利率で運用する機会を逃していることにもなる。
| 財政状態 | 3月末 | 6月末 |
|---|---|---|
| 総資産 | 431兆7,315億円 | 433兆9,134億円 |
| 貸出金 | 133兆7,994億円 | 134兆4,543億円 |
| 有価証券 | 85兆7,147億円 | 88兆1,327億円 |
| 預金 | 239兆4,392億円 | 236兆9,373億円 |
| 純資産 | 23兆7,441億円 | 24兆1,820億円 |
| 自己資本比率(短信ベース) | 5.2% | 5.2% |
| 銀行法・再生法に基づく債権 | 3月末 | 6月末 |
|---|---|---|
| 破産更生債権等 | 3,037億円 | 2,745億円 |
| 危険債権 | 6,670億円 | 6,449億円 |
| 要管理債権 | 4,899億円 | 3,184億円 |
| 小計 | 1兆4,607億円 | 1兆2,380億円 |
| 正常債権 | 150兆2,127億円 | 152兆1,090億円 |
| 不良債権比率 | 0.96% | 0.80% |
いずれも部分直接償却後・連結ベース。債権合計は3月末151兆6,734億円、6月末153兆3,470億円。不良債権比率は小計÷債権合計で、短信記載の開示値。
2027年3月期の配当予想は中間48円・期末48円の年96円で、5月に公表した予想からの修正はない。前期の年86円(中間35円・期末51円)から10円、率にして11.6%(算出)の増配になる。期末に集中していた配分を中間と期末で均等に置き直した点も変わった。
自己株式は3月末の5億8,010万株から6月末は6億1,194万株へ3,184万株増えた。発行済株式総数118億6,771万株は変わっていないので、市場から買い戻して保有している株が増えたことになる。期中平均株式数は前年同期比1.8%(算出)の減少。1株当たり利益が純利益の伸びを上回った理由がここにある。
05 ── GUIDANCE
三菱UFJフィナンシャル・グループは、業績予想を出さない。経済情勢や相場環境に起因する不確実性が大きいという理由で、通期については「親会社株主に帰属する当期純利益の目標値」だけを示す形をとっている。今回示された目標は2兆7,000億円で、5月15日に公表した数字から変更はなかった。
1Qの純利益8,094億円をこの目標で割ると進捗率は30.0%(算出)。4四半期が均等なら25%が目安なので、5ポイント上回るペースになる。経常利益と経常収益については会社が目標を示していないため、市場予想を分母に置いて進捗を見ると経常利益28.2%、経常収益24.0%(いずれも算出)だった。
通期に対する第1四半期の進捗率
単位:% / 点線=1年の1/4(25%)
1Qの利益には株式等関係損益989億円と持分法による投資損益2,616億円が乗っている。前者は保有株の売却タイミング次第、後者は出資先の四半期業績次第で、四半期ごとに大きく振れる。市場事業本部の営業純益1,486億円も相場環境に左右される。残り9か月で目標との差1兆8,906億円(算出)を積む必要があり、四半期平均に直すと6,302億円。1Q実績の8,094億円を下回る水準ではあるが、今1Qを押し上げた項目が同じペースで続くかどうかは別の話になる。
06 ── MARKET VIEW
株価が見ているのは前年比ではなく、アナリストの平均予想だ。株予報Proが集計する市場予想は、2027年3月期の当期利益を2兆7,755億円としている。会社が示した目標2兆7,000億円に対して755億円、率にして2.8%(算出)高い水準だ。会社が目標を据え置いたのに対し、市場はそれを超えてくると見ていることになる。
経常収益は16兆2,622億円(前年比+11.2%)、経常利益は3兆9,705億円(同+16.4%)が市場予想。1Qの経常利益1兆1,179億円をこの分母で割った進捗率28.2%(算出)は25%を上回っており、少なくとも出だしは市場予想を超えるペースにある。
| 2027年3月期 通期 | 会社 | 市場予想 | 1Q実績 | 進捗率(算出) |
|---|---|---|---|---|
| 経常収益 | 目標なし | 16兆2,622億円 | 3兆9,075億円 | 24.0% |
| 経常利益 | 目標なし | 3兆9,705億円 | 1兆1,179億円 | 28.2% |
| 親会社株主帰属当期純利益 | 2兆7,000億円 | 2兆7,755億円 | 8,094億円 | 30.0%/29.2% |
市場予想は株予報Pro掲載のIFISコンセンサス(2026年8月3日時点)。純利益の進捗率は会社目標比30.0%/市場予想比29.2%。会社は通期の経常収益・経常利益の目標を公表していない。
アナリストの目標株価の平均は3,912円で、株価との乖離率は9.67%。ここから逆算すると株価は約3,567円(算出)になる。レーティングは5段階平均で4.70と、強気寄りの評価が並んでいる。前週からの変化は0.00で、決算発表を織り込んだ改訂はこれから進む段階にある。
07 ── SUMMARY
この四半期を一言でまとめるなら、金利のある世界が数字になって出てきた決算だ。貸出金利回が1.06%から1.45%へ上がり、預金に払う利率の上昇はその3分の1で済んだ。差し引きの利ざやが0.25ポイント広がり、そこに122兆円の貸出残高が掛かって資金利益が1,916億円増えた。銀行が長く待っていた構図が、そのまま損益計算書に表れている。
そのうえで、この号で見ておきたい数字は3つある。増益額の42.1%を占めた株式等関係損益と持分法投資損益、営業純益の18.1%を稼いだ市場事業本部、そして1兆2,569億円まで膨らんだ債券の含み損。1つ目は利益の持続性を、2つ目は相場への依存度を、3つ目は同じ金利上昇が資産側に与えている副作用を示している。会社が通期の目標を据え置き、上方修正に踏み込まなかった理由も、このあたりに読み取れる。