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ダークウォールナットの机に置かれた3本のボールペンとノート。右側は暗い余白になっている

EARNINGS REVIEW

三菱鉛筆

2026年12月期 第2四半期 決算レビュー

証券コード 7976(東証プライム)対象期間 2026年1月〜6月決算発表 2026年7月30日

売上高477億5,700万円、営業利益61億7,000万円。売上は前年同期比+10.4%で半期として過去最高、営業利益は+28.6%、親会社株主に帰属する中間純利益は42億5,900万円で+35.5%になった。伸びたのは海外だ。海外筆記具事業の売上は277億6,100万円(+14.2%)、地域別では米国が+22.8%、アジアが+16.8%、欧州が+14.7%。前年に米国で取引先の信用不安から出荷を絞った反動と、1ドル148.98円から158.28円への円安が重なった。 同じ日に会社は通期見通しを上方修正し、年間配当を57円(前期52円)へ、自社株買いを約400万株・99億8,100万円で実施したと開示した。8月下旬には「9年ぶり高値」と報じられ、好業績を評価する買いが続いている。ただし通期予想を上期実績から逆算すると、下期の営業利益は前年比+8.9%(算出)と、上期の+28.6%からはっきり減速する前提になっている。

売上高

478億円
+10.4%半期として過去最高

営業利益

61.7億円
+28.6%営業利益率 12.9%

経常利益

66.5億円
+34.2%為替差益へ転換

親会社株主帰属 中間純利益

42.6億円
+35.5%EPS 80円49銭
12月決算の「第2四半期」 ── 1〜6月の半期。進捗の目安は50%
三菱鉛筆は12月決算です。第2四半期(中間期)の数字は2026年1月1日〜6月30日の累計で、通期の半分にあたります。3月決算の会社の「第1四半期」と違って、通期予想に対する進捗率は50%が目安になります。当期の進捗率は売上高50.0%、営業利益53.7%、経常利益55.4%、純利益53.2%(決算説明資料の開示値)で、すべて半分を超えて折り返しました。なお中間期の税金費用は年間の見積実効税率で計算する簡便法が使われており、通期の税率とは差が出ることがあります。
営業利益が+28.6%伸びた理由 ── 売上増と、前年の米国貸倒引当金の消滅
売上総利益は222億6,700万円から240億1,600万円へ+17億4,900万円増えました。うち売上増による販売差益の増加が+18億6,400万円、原材料や減価償却費などの原価上昇が△9,400万円、連結修正が△2,200万円です。一方、販売費及び一般管理費は174億6,700万円から178億4,600万円へ+3億7,900万円(+2.2%)にとどまりました。人的投資や販促強化、海外子会社の為替影響で8億3,000万円増えた反面、前年に米国で計上した貸倒引当金繰入4億5,200万円がなくなったためです。売上が+10.4%伸びて販管費が+2.2%しか増えなかったので、販管費比率は40.4%から37.4%へ3.0ポイント下がり(算出)、営業利益率は11.1%から12.9%に改善しました。
為替の影響 ── 1ドル9.30円、1ユーロ22.10円の円安
当期の平均レートは1ドル158.28円(前年148.98円)、1ユーロ184.70円(前年162.60円)でした。売上の59.1%が海外なので、円安は円換算の売上と利益を押し上げます。営業外でも、前年同期は為替差損1億9,300万円を計上していたのが、当期は為替差益6,400万円に転じ、この振れだけで経常利益を2億5,700万円押し上げました(算出)。経常利益の+34.2%が営業利益の+28.6%より高いのは主にこのためです。会社は通期の想定レートを1ドル150円→158円、1ユーロ175円→184円に見直し、これが今回の上方修正の理由になっています。
2つの区分 ── 決算短信の「報告セグメント」と説明資料の「事業別」
決算短信の報告セグメントは「筆記具及び筆記具周辺商品事業」(売上464億4,900万円・セグメント利益60億4,600万円)と「その他の事業」(粘着テープ・手工芸品、売上13億800万円・利益1億600万円)の2区分だけです。決算説明資料はこれとは別に、売上を国内筆記具事業・海外筆記具事業・非筆記具事業(化粧品・産業資材)の3つに分けて開示しています。本レポートの事業別・地域別・製品別の数字は説明資料の区分によるもので、利益は事業別には開示されていません。
累進配当・配当性向・PBR ── 株主還元の物差し
累進配当は「減配しない」方針のことで、三菱鉛筆は2026年12月期で24年連続の累進配当を予定しています。配当性向は純利益のうち配当に回す割合で、会社は連結配当性向40%を目標に掲げ、2026年12月期予想は36.7%です。PBR(株価純資産倍率)は株価÷1株当たり純資産で、1倍を下回ると「会社の純資産より株価が安い」状態です。三菱鉛筆のPBRは2025年12月末に0.85倍でしたが、2026年6月末には0.98倍まで戻りました(株価2,699円÷1株当たり純資産2,747円50銭)。会社は「ROE 8%以上・PBR 1倍以上」を目標にしており、2025年のROEは4.7%でした。

01 ── PERFORMANCE

売上+45億円に対して販管費増は+3.8億円。営業利益は13億7,000万円積み上がった

売上高は432億4,500万円から477億5,700万円へ45億1,100万円の増加。売上原価は209億7,700万円から237億4,000万円へ27億6,300万円増え、売上総利益率は51.5%から50.3%へ1.2ポイント下がった。原材料価格の上昇や減価償却費の増加を、価格改定で吸収しきれていない。それでも売上の伸びが大きいため売上総利益は+17億4,900万円(+7.9%)増え、販売費及び一般管理費の増加を+3億7,900万円(+2.2%)に抑えたことで、営業利益は47億9,900万円から61億7,000万円になった。

営業利益率は11.1%から12.9%へ1.8ポイント改善。粗利率が下がって営業利益率が上がるという組み合わせは、販管費の抑制と前年の一時費用(米国の貸倒引当金)の消滅で説明がつく。四半期単体で見ると、4〜6月の売上は206億5,600万円から230億4,700万円で+11.5%と、1〜3月より伸びが加速している。

営業利益の増減要因 ── 前年同期47億9,900万円から当期61億7,000万円へ

単位:百万円 / 会社開示の要因分解

7,000 5,250 3,500 1,750 0 4,799 +1,864 △116 △830 +452 6,170 前年同期 売上要因 売上原価・ 連結修正 販管費 貸倒引当金 (前年分の消滅) 当期
決算説明資料P.9の要因分解(百万円)。売上原価△94と連結修正(原価)△22をまとめて表示。販管費△830は人的投資・販促活動強化・海外子会社の為替影響、+452は前年に米国で計上した貸倒引当金繰入がなくなった分。
連結(2026年1-6月)前年同期実績増減額増減率
売上高43,245百万円47,757百万円+4,511+10.4%
売上総利益22,267百万円24,016百万円+1,749+7.9%
売上総利益率51.5%50.3%△1.2pt
販売費及び一般管理費17,467百万円17,846百万円+379+2.2%
営業利益4,799百万円6,170百万円+1,370+28.6%
営業利益率11.1%12.9%+1.8pt
経常利益4,957百万円6,650百万円+1,693+34.2%
親会社株主帰属中間純利益3,144百万円4,259百万円+1,115+35.5%
1株当たり中間純利益57円28銭80円49銭+23円21銭+40.5%(算出)
中間包括利益4,039百万円10,069百万円+6,030+149.3%

利益率は算出。減価償却費は前年2,407百万円→当期2,399百万円。EPSの伸び(+40.5%)が純利益の伸び(+35.5%)を上回るのは、5月の自社株買いで期中平均株式数が減ったため。

包括利益が2.5倍になった理由 ── 保有株式の含み益

中間包括利益は40億3,900万円から100億6,900万円へ+149.3%。中間純利益43億5,400万円に、その他有価証券評価差額金+50億2,200万円と為替換算調整勘定+8億1,400万円が加わった。保有する投資有価証券の時価が320億2,400万円から395億8,100万円へ膨らんだことが主因で、本業の稼ぎではない。ただし純資産の厚みという意味では、自社株買い99億8,100万円を吸収してなお自己資本1,374億円を維持できた背景になっている。

02 ── BUSINESS

海外筆記具+14.2%が牽引。国内は+3.8%、非筆記具は電池材料で+12.0%

売上の増加45億1,100万円のうち、34億6,500万円が海外筆記具事業だ。海外筆記具の売上は242億9,600万円から277億6,100万円(+14.2%)へ伸び、売上構成比は58.1%に達した。米国では「uniball ZENTO」と「JETSTREAM」が好調だったことに加え、前年1〜3月に取引先の信用不安で出荷を止めた反動が乗った。欧州はLAMYブランドが順調、アジアは韓国で「JETSTREAM」が伸び、中国ではブランド訴求店を拡大した。

国内筆記具事業は151億3,300万円から157億1,900万円(+3.8%)。「JETSTREAM」「uniball ZENTO」に加え、LAMYとクルトガの技術を融合した新製品「LAMY safari KURUTOGA inside」(2月発売)が堅調だった。非筆記具事業は38億1,500万円から42億7,600万円(+12.0%)で、産業資材のカーボン材料と二次電池材料が伸びた。筆記具の分散技術を電池材料に転用する事業で、規模は全体の9%だが、伸び率では海外筆記具に次ぐ。

事業別売上高 ── 前年同期との比較

単位:百万円 / 決算説明資料の事業区分

30,000 22,500 15,000 7,500 0 15,133 15,719 24,296 27,761 3,815 4,276 国内筆記具 海外筆記具 非筆記具 +3.8% +14.2% +12.0%
2025年12月期2Q累計 2026年12月期2Q累計
決算説明資料P.16より。3事業の合計47,757百万円が連結売上高に一致する。非筆記具事業は化粧品事業と産業資材事業(カーボン材料・二次電池材料)。

地域別売上の構成 ── 海外比率は56.7%から59.1%へ

単位:% / 前年同期と当期

2025年12月期2Q累計 2026年12月期2Q累計 43.3% 12.5% 18.3% 19.2% 6.7% 40.9% 13.9% 19.4% 19.9% 5.9%
日本 米国 アジア 欧州 その他
決算説明資料P.7の構成比。金額(百万円)は日本18,742→19,550、米国5,402→6,637、アジア7,912→9,248、欧州8,284→9,506、その他2,903→2,815。
売上高の内訳(百万円)前年同期当期増減額増減率4-6月単体の増減率
日本18,74219,550+808+4.3%+0.7%
米国5,4026,637+1,235+22.8%+9.9%
アジア7,9129,248+1,336+16.8%+27.9%
欧州8,2849,506+1,222+14.7%+16.0%
その他2,9032,815△88△3.0%+20.5%
ボールペン18,20020,850+2,650+14.5%+18.0%
シャープ・替芯5,9736,857+884+14.7%+6.9%
サインペン10,90411,260+356+3.2%+1.6%
鉛筆1,6821,839+157+9.3%+14.8%
その他製品6,4846,949+465+7.1%+14.4%
合計43,24547,757+4,511+10.4%+11.5%

決算説明資料P.16より。ボールペンが売上の43.6%を占め、伸び率でも全体を上回る。米国の4-6月単体が+9.9%に鈍るのは、前年の出荷調整の反動が1-3月に集中したため。アジアの4-6月単体+27.9%は中国のブランド強化と韓国の伸長による。

報告セグメントで見ると ── 筆記具の利益+27.6%、その他+51.4%

決算短信の2区分では、筆記具及び筆記具周辺商品事業が外部売上464億4,900万円(+10.6%)・セグメント利益60億4,600万円(前年47億3,700万円、+27.6%・算出)。その他の事業(粘着テープ・手工芸品)は外部売上13億800万円(+6.1%)・利益1億600万円(前年7,000万円、+51.4%・算出)。粘着テープは食品向けと衛生用品向けが堅調だった。連結営業利益61億7,000万円との差1,600万円はセグメント間取引の消去による調整額。

03 ── CAPITAL

5月にアドバンテッジパートナーズと提携し、社債100億円・借入50億円を調達して自社株を99.8億円買った

この半期の財務面でいちばん大きな動きは、5月のアドバンテッジパートナーズとの事業提携契約と資金調達だ。キャッシュ・フロー計算書には社債の発行による収入100億2,300万円と長期借入れによる収入50億円が立ち、同じ期に自己株式の取得で99億8,100万円を支出している。自己株式数は595万1,757株から1,003万3,357株へ約408万株増え、発行済株式6,004万2,592株の16.7%を自己株式が占める(算出)。

結果として負債は425億7,300万円から617億3,100万円へ191億5,800万円増え、自己資本比率は75.7%から68.4%へ7.3ポイント下がった。もともと財務レバレッジが1.3倍前後と低く、ROEが4.7%にとどまっていた会社が、借りて自社株を買うという資本効率の改善に踏み込んだ形だ。説明資料では、提携の重点領域として「海外成長の加速」「LAMY強化」「グローバルサプライチェーン最適化」「グローバル経営体制への転換」の4つから取り組みを始めたとしている。

キャッシュ・フロー(百万円)前年同期当期
営業活動CF56610,124
投資活動CF△2,292△669
財務活動CF△4,5492,416
 うち社債発行10,023
 うち長期借入5,000
 うち自己株式取得△2,386△9,981
 うち配当支払△1,372△1,405
現金及び現金同等物(期末)32,96544,965
中期経営計画のキャッシュ配分3年計画2025年〜2026年2Q
営業CF320億円以上125億円
成長・基盤投資108億円
株主還元(配当+自社株買い)163億円
研究開発費90億円以上62億円
ROE目標8%以上(2025年実績 4.7%)
PBR目標1倍以上(2026年6月末 0.98倍)

キャッシュ・フローは決算短信、中期経営計画の配分は決算説明資料P.19より。営業CFの大幅増は利益の積み上げに加え、売上債権の減少と仕入債務の増加による。株主還元163億円は営業CF125億円を上回り、外部資金で補った。

提携の中身は、今回の資料だけでは分からない

決算短信と説明資料には、アドバンテッジパートナーズとの提携が「事業提携契約の締結と資金調達」であること、重点取組領域が6つ(うち4つに着手)であることは書かれているが、出資形態や調達の条件、投資ファンド側の関与の度合いは記載がない。貸借対照表に新株予約権0百万円が新たに計上されているが、これが今回の調達に伴うものかは資料からは確認できない。詳細は5月公表の提携リリースを別途確認する必要がある。

04 ── GUIDANCE

通期を上方修正。ただし理由は為替で、下期の営業利益は+8.9%へ減速する前提

2026年12月期の通期見通しは、2月12日公表の売上高940億円・営業利益105億円から、売上高955億円(前期比+6.3%)・営業利益115億円(+18.6%)・経常利益120億円(+19.7%)・純利益80億円(+28.3%)へ引き上げられた。1株当たり当期純利益は142円35銭から155円44銭になる。会社が挙げた修正理由は「想定レートの見直し」の一点で、1ドル150円→158円、1ユーロ175円→184円に置き直した。修正幅は海外筆記具事業の売上+15億円だけで、国内筆記具(306億円)と非筆記具(81億円)の計画は据え置きだ。

上期実績を差し引くと、下期の計画は売上477億4,300万円(前年下期比+2.5%)、営業利益53億3,000万円(+8.9%)になる(いずれも算出)。上期が売上+10.4%、営業利益+28.6%だったのと比べると、明らかに減速を見込んだ数字だ。米国の出荷調整の反動が下期にはなくなること、前年の貸倒引当金という一時要因が消えること、そして中東情勢による原材料と物流コストの不確実性が背景にある。上期の勢いがそのまま続けば通期予想は上振れる余地があり、逆にコスト上昇が本格化すれば下期は計画どおりの減速になる。

通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率

単位:% / 点線=半期の目安(50%)

50%(半期の目安) 売上高 営業利益 経常利益 親会社株主帰属利益 50.0% 53.7% 55.4% 53.2%
決算説明資料P.15の進捗率(修正後の通期予想に対する第2四半期累計)。売上47,757÷95,500、営業利益6,170÷11,500、経常利益6,650÷12,000、親会社株主帰属利益4,259÷8,000(百万円)。事業別では国内筆記具51.4%、海外筆記具48.9%、非筆記具52.8%。
2026年12月期(百万円)前期実績前回予想(2月)今回予想前期比上期実績下期の含意(算出)
売上高89,81494,00095,500+6.3%47,75747,743(+2.5%)
 国内筆記具事業30,49930,60030,600+0.3%15,71914,881
 海外筆記具事業51,00055,30056,800+11.4%27,76129,039
 非筆記具事業8,3168,1008,100△2.6%4,2763,824
営業利益9,69210,50011,500+18.6%6,1705,330(+8.9%)
営業利益率10.8%11.2%12.0%+1.2pt12.9%11.2%
経常利益10,02811,00012,000+19.7%6,6505,350
親会社株主帰属当期純利益6,2357,7008,000+28.3%4,2593,741
1株当たり当期純利益114円27銭142円35銭155円44銭+36.0%80円49銭

決算短信および決算説明資料P.13より。事業別の前期比と「下期の含意」は通期予想から上期実績を差し引いた算出値。前年下期は売上46,569百万円・営業利益4,893百万円(2025年通期から2025年2Q累計を差し引いて算出)。想定レートは1ドル158円・1ユーロ184円。

05 ── BALANCE SHEET & DIVIDEND

年間配当57円で24年連続累進。自社株買いと合わせた株主還元は上期だけで純利益の2倍を超える

年間配当予想は当初計画の55円から2円増額され、中間28.5円・期末28.5円の57円になった。前期の52円から5円の増配で、24年連続の累進配当となる。28.5円の内訳は普通配当26.5円に特別配当1円と創業140年記念配当1円を加えたもので、記念配当は今期限りの上乗せである点は押さえておきたい。通期予想EPS155円44銭に対する配当性向は36.7%で、会社目標の40%にはまだ届かない。

配当の支払額は上期で14億500万円。これに自社株買い99億8,100万円を足すと、上期の株主還元は113億8,600万円となり、中間純利益42億5,900万円の2.7倍にあたる(算出)。借入と社債で賄った分が大きく、毎期続けられる水準ではないが、「機動的な自己株式の取得」を明記した資本政策が言葉どおり実行されたことは確認できる。加えて、200株以上を1年以上保有する株主を対象とする株主優待制度を導入した(初回基準日は2026年12月末)。

財政状態2025年12月末2026年6月末
総資産1,830億円2,009億円
現金及び預金371億円482億円
投資有価証券320億円396億円
のれん58億円56億円
社債100億円
長期借入金132億円173億円
自己株式△60億円△158億円
純資産1,404億円1,391億円
1株当たり純資産2,560円99銭2,747円50銭
自己資本比率75.7%68.4%
配当・株主還元2025年12月期2026年12月期(予想)
中間配当26円00銭28円50銭
期末配当26円00銭28円50銭
年間配当52円00銭57円00銭
 うち特別・記念配当2円4円
増配額+6円+5円
連結配当性向45.5%36.7%
自社株買い(2026年5月)約400万株・99.8億円
累進配当24年連続予定・配当性向40%目標
株主優待200株以上・1年以上保有(初回2026年12月末)

財政状態は決算短信の中間連結貸借対照表より億円に丸めて表示。配当は決算短信「配当の状況」および決算説明資料P.14より。2025年12月期の中間・期末各26円には特別配当1円ずつを含む。2026年12月期の中間・期末各28.5円には特別配当1円・創業140年記念配当1円ずつを含む。

株価とPBR ── 9年ぶり高値の位置

決算説明資料によると、株価(期末終値)は2022年12月末1,432円、2023年末2,086円、2024年末2,302円、2025年末2,177円、2026年6月末2,699円。1株当たり純資産が2,747円50銭なので、6月末のPBRは0.98倍で、2025年末の0.85倍から回復した。8月下旬には会社四季報オンラインが「9年ぶり高値、好業績評価の小口買い続く」と報じており、決算発表後もPBR1倍の壁に向けた買いが続いている。会社が掲げる「PBR 1倍以上」は、株価の側からは目前まで来ている。残るのはROEで、2025年の4.7%を8%に引き上げるには、純利益で見て2倍近い水準が要る。今期予想の純利益80億円と自社株買い後の自己資本1,374億円で計算すると、ROEは5.8%程度になる(算出・単純計算)。

06 ── SUMMARY

海外で稼ぎ、借りて買った半期。下期の減速前提と、提携の中身が次の論点

評価できる点

  • 売上高477億円は半期として過去最高。営業利益+28.6%、純利益+35.5%の増益。
  • 海外筆記具事業+14.2%。米国+22.8%、アジア+16.8%、欧州+14.7%と主要地域すべてで増収、海外比率は59.1%へ。
  • 販管費の増加を+2.2%に抑え、営業利益率は11.1%から12.9%に改善。
  • 通期を上方修正。営業利益115億円は前期比+18.6%。
  • 年間配当57円で24年連続累進、自社株買い99.8億円、株主優待の新設。PBRは0.98倍まで回復。
  • 営業CFが5億6,600万円から101億2,400万円へ大幅増。

留意しておきたい点

  • 売上総利益率は51.5%から50.3%へ低下。原材料・減価償却費の上昇を価格に転嫁しきれていない。
  • 増収の一部は前年の米国出荷調整の反動と円安。米国の4-6月単体は+9.9%に鈍化。
  • 上方修正の理由は為替のみ。下期の営業利益は+8.9%の減速前提(算出)。
  • 社債100億円と借入50億円で自社株を買い、自己資本比率は75.7%から68.4%へ7.3pt低下。
  • アドバンテッジパートナーズとの提携条件は、決算資料だけでは分からない。
  • 中東情勢による樹脂原料の高騰、中東向け出荷の遅延、インフレの加速が会社の挙げるリスク。

この半期の三菱鉛筆は、国内の筆記具市場が構造的に縮む中で、海外で売上を作ってみせた。ボールペンの売上が+14.5%、その中でも「uniball ZENTO」と「JETSTREAM」が米国の大手小売で売り場を広げ、LAMYが欧州で伸び、韓国と中国でも「JETSTREAM」が動いた。前年の出荷調整の反動と円安を差し引いても、主要地域すべてで増収という結果は、ブランドが海外で通用していることの証拠になる。

もう1つの顔は、資本政策だ。自己資本比率75%台という重い財務を、社債と借入で自社株を買うことで動かした。ROE 4.7%、PBR 0.85倍という数字を放置しなかったこと自体が、株価の「9年ぶり高値」につながっている。ただし、借りて買う手法は毎期繰り返せるものではなく、ROE 8%に届くには本業の利益をあと3〜4割積む必要がある。アドバンテッジパートナーズとの提携がその利益成長にどう効くかは、今回の資料には書かれていない。

確認したい点は2つ。7〜12月の営業利益が、会社の置いた53億3,000万円(+8.9%)をどれだけ上回って着地するか。そして、粗利率の低下が止まるか。価格改定を実行したと会社は言う。それが数字に出るのは下期だ。

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