号外EXTRA EDITION
1株1,000円、光通信など3社連合が非公開化へ
東証プライム 8848 / 2026年9月14日 発表 / 公開情報に基づく号外レポート
9月14日、レオパレス21は、株式会社K891による株式の公開買付け(TOB)に賛同し、株主に応募を勧めると発表しました。買付価格は1株1,000円。発表前営業日9月11日の終値657円に対し、52.21%の上乗せです。成立すればスクイーズアウトを経て上場廃止になります。 K891の背後にいるのは光通信だけではありません。取引が終わった時点で、K891の親会社の株式は光通信34.0%、MBKパートナーズ系ファンド33.0%、NECキャピタルソリューション系ファンド33.0%で持ち合う予定です。開示文が掲げる目的も、レオパレスを光通信の子会社ではなく関連会社にすること。光通信の単独買収と読むと構図を取り違えます。この号では、3社連合が組んだ仕組み、800円から始まった9か月の価格交渉、そして応募しない株主がどうなるかを、開示資料の記載にそって分解します。
公開買付価格(普通株式)
買付代金(上限を置かない場合の総額)
買付予定数の下限(所有割合)
01 ── THE DEAL
まず決まった条件を並べます。買付予定数の上限は置かれていません。応募が下限を超えれば、応募された株はすべて買われます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開買付者 | 株式会社K891(2026年3月4日設立・資本金100万円)。株式会社K892の完全子会社 |
| 買付価格 | 普通株式1株 1,000円/第2回・第3回・第4回・第6回新株予約権 1個 99,900円 |
| 買付期間 | 2026年9月15日(火)〜10月30日(金)、30営業日 |
| 買付予定数 | 267,668,014株(下限 158,716,000株・所有割合48.56%/上限なし) |
| 買付代金 | 267,668百万円 |
| 決済の開始日 | 2026年11月9日(月) |
| 公開買付代理人 | SBI証券 |
| 資金 | K892からの出資と、みずほ銀行・SBI新生銀行・ドイツ銀行東京支店からの借入れ |
| 応募する約束 | 千鳥合同会社(第2位株主・50,507,600株・15.45%)、HCMA(100株) |
| 応募しない約束 | UH Partners 2 LPS(15.48%)、光通信KK(1.43%)、光通信KK LPS(1.21%) |
| レオパレスの意見 | 賛同し、株主と新株予約権者に応募を推奨(9月14日取締役会決議) |
応募を約束した千鳥合同会社は、レオパレスの第2位株主で、同社にとっての「その他の関係会社」にあたります。光通信グループの18.11%は応募されず、TOBの外に残ります。つまり買付代金2,676.7億円は、光通信グループ以外の株式すべてに1,000円を払った場合の金額です。
同じ日に、配当予想も修正されました。2026年9月30日を基準日とする中間配当は行わず、2027年3月31日を基準日とする期末配当も、TOBが成立すれば行いません。2026年4月10日に3社が出した提案の時点で、すでに無配を前提とした価格だと明記されています。
02 ── THE STRUCTURE
見出しだけ追うと「光通信がレオパレスを買う」話に見えます。開示文の図解を読むと、形はもう少し入り組んでいます。
レオパレス21の株主構成と、取引後の親会社の持ち分
単位:% / 上段=現在のレオパレス21、下段=取引後にレオパレス21を100%保有するK891の親会社(K892)の普通株式
MBKパートナーズは日本・韓国・中国を中心に投資するプライベート・エクイティ・ファンドの運営会社で、NECキャピタルソリューションはNECグループの東証プライム上場リース会社です。開示文によれば、光通信は2025年11月から複数の金融機関やファンドに共同投資を持ちかけ、11月17日にNECキャピタルソリューション、12月3日にMBKパートナーズへ打診しています。NECキャピタルソリューションは機器リースや不動産ファイナンスを出せる余地を、MBKパートナーズは資金に加えて経営支援を担える点を、それぞれ参画の理由に挙げました。
この取引で目を引くのは、光通信グループ自身の株の扱いです。応募しなかった光通信グループの株は、その大半を株式併合の前後にレオパレス自身が自己株式として買い取ります。その価格は1株962円。一般株主が受け取る1,000円より38円低く置かれています。
2026年9月15日〜10月30日
一般株主と千鳥合同会社の株を1株1,000円で買う。光通信グループの18.11%は応募しない。
2026年11月6日(予定)
成立が条件。光通信の連結子会社インシュラントグループへ5,000万円で。
2026年11月9日〜11月
K892が光通信・MBKP・NECCSの持ち合いに。光通信側のファンドの株をHTIOと光通信KKへ集約。
2027年1月頃(予定)
直前に光通信KKの株を962円で自己株式取得。併合後の株主はK891とHTIOだけに。
2027年1月(予定)
光通信が無議決権種類株でレオパレスに出資し、減資もしたうえで、HTIOの株を962円相当で自己株式取得。
その後
光通信グループがK891の無議決権種類株を引き受け、光通信持ちの種類株をK891へ移す。吸収合併は時期未定。
962円の根拠も開示文に書かれています。借入れの貸し手であるみずほ銀行とSBI新生銀行は、K891に対し、光通信グループから約570億円の追加出資を入れるよう求めました。スクイーズアウトと2回の自己株式取得で光通信グループの持ち株を買い取る代金の合計が約570億円になるよう962円を置き、その代金を追加出資の原資に回す設計です。
962円を下げれば、追加出資の原資が減る。追加出資が減れば借りられる額が減り、一般株主向けの1,000円も下がりうる。
開示文はこの関係を明記したうえで、962円は一般株主の利益の最大化に資すると述べています。光通信が自分の株を割り引いて差し出し、その分を買収資金の厚みに回した、という読み方ができる構造です。
03 ── THE NEGOTIATION
光通信がレオパレスに最初の意向を伝えたのは2025年10月28日。そこから開示までの約10か月半、価格は4段階で上がりました。
提案価格と、各提案の前営業日終値
単位:円 / 下段の%は前営業日終値に対するプレミアム(開示資料の記載値)
1,000円が最初に出たのは2026年7月6日です。特別委員会は7月13日に「なお十分ではない」と返し、3社は7月31日に1,000円が最大かつ最終の価格だと回答しました。そこから先は同じやり取りの繰り返しです。特別委員会は8月7日、8月19日、8月28日と再提案を求め、3社は8月17日、8月26日、9月9日に、いずれも1,000円据え置きの書面を出しています。
| 時期 | レオパレス(特別委員会)の回答 | 3社側の提示 |
|---|---|---|
| 2026年5月15日 | 本源的価値を下回り、同種事案のプレミアム水準からも不十分 | 5/28 900円以上 |
| 5月29日 | 依然として十分な水準とは認められない | 6/5 950円以上 |
| 6月8日 | 同上。追加の意向表明書を求める | 7/6 1,000円 |
| 7月13日 | 同上。7月31日を期限に再提案を求める | 7/31 1,000円(最大かつ最終) |
| 8月7日 | 株主利益の最大化の観点から依然不十分 | 8/17 1,000円 |
| 8月19日 | 株主の利益保護の観点から再提案を求める | 8/26 1,000円 |
| 8月28日 | 株主利益の最大化の観点から依然不十分 | 9/9 1,000円 |
| 9月10日 | 特別委員会の答申を踏まえ、提案を応諾 | 9/14 公表 |
1,000円が出てから、特別委員会は4回、据え置きを突き返したことになります。価格は最後まで1円も動いていません。レオパレスが最終的に応じた理由として取締役会が挙げたのは、2つの算定で1,000円が市場株価法の上限を超えDCF法の範囲に入っていること、プルータスのフェアネス・オピニオン、そして同種事案76件のプレミアム中央値(前営業日終値に対し47.38%)を上回っていることなどです。
04 ── THE VALUATION
3つの算定機関が出した1株あたり株式価値のレンジを、1本の軸に並べます。
3つの算定機関による1株あたり株式価値のレンジ
単位:円 / 縦の破線=買付価格1,000円、点線=9月11日終値657円
レオパレス側の2つの算定では、1,000円はDCF法のレンジの内側、それも下の方に位置します。みずほ証券のDCF法は945円から1,806円、プルータスは955円から1,568円。上限との開きは大きく、1,000円は「下限をかろうじて超えた」水準です。
そして買い手側のSBI証券。DCF法のレンジは1,134円から1,322円で、買付価格1,000円はその下限にも届いていません。類似会社比較法(比較対象は大東建託と東建コーポレーション)でも917円から936円です。この算定は、デュー・ディリジェンスを踏まえて買い手が調整した2027年3月期から2030年3月期の財務予測にもとづくもので、2028年3月期に営業利益が前年比116.61億円増える前提が含まれています。
開示文には、SBI証券のDCF法の結果が1,000円を上回ることについて、直接の説明はありません。書かれているのは、公開買付者が算定結果を「踏まえ」、事業と財務を多面的に分析し、レオパレスとの協議を経て1,000円に決めた、という経緯だけです。SBI証券からフェアネス・オピニオンは取得していません。前節で見た962円と約570億円の追加出資のように、借入れの枠が価格の上限を決める設計になっていることは読み取れますが、それが1,000円で止まった理由のすべてかどうかは、この開示からは判断できません。
マジョリティ・オブ・マイノリティ条件(光通信グループなど利害関係者を除いた株主の過半の応募を成立条件にする仕組み)は設定されていません。公開買付者は、設定すると成立を不安定にし、売却を望む一般株主の利益にかえって資さない可能性があると説明しています。特別委員会は、応募を約束した千鳥合同会社を買い手と利害関係のない投資者とみなせば、下限158,716,000株は光通信が間接保有する株を除いた発行済株式の過半数にあたるとして、一般株主の意思を相当程度尊重した設定だと評価しています。その代わりに挙げているのが、特別委員会の設置、独自の算定機関とフェアネス・オピニオン、30営業日という長めの買付期間です。
05 ── THE SIDE DEALS
タイトルにある「特定子会社の異動を伴う株式譲渡」は、TOBとは別の取引です。
レオパレスは完全子会社のあすか少額短期保険について、普通株式1万株を議決権のあるA種株式746株と議決権のないB種株式9,254株に転換し、A種株式373株(議決権の50.0%)を光通信の連結子会社インシュラントグループへ5,000万円で譲ります。譲渡日は2026年11月6日の予定で、TOBの成立と、少額短期保険業者の主要株主としての承認取得が条件です。
| あすか少額短期保険(百万円) | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,510 | 5,968 | 5,685 |
| 経常利益 | 176 | 173 | 199 |
| 当期純利益 | 133 | 127 | 179 |
| 純資産 | 1,273 | 1,280 | 1,339 |
| 総資産 | 3,096 | 2,989 | 3,044 |
純資産13.39億円の会社の議決権の半分が5,000万円、という数字だけを見ると安く映ります。ただし譲るのは議決権株式だけで、議決権のないB種株式9,254株はレオパレスの手元に残ります。A種とB種で配当や残余財産の権利がどう違うかは開示されていないため、株数だけで経済的な持ち分は測れません。それでも、純資産の半分を5,000万円で売ったと読むのは早計です。開示文は、光通信グループの代理店開拓の知見であすか少短の販売力を強化することを目的に挙げ、2027年3月期の業績への影響は精査中としています。
もう1件、有料老人ホームやグループホームを運営するアズ・ライフケアとアズ・レジデンスの全株式を、日本革新投資がサービスを提供するファンドを株主とするSPCへ譲る基本合意も、同じ日に結ばれました。特別損失の計上と業績予想の修正を見込むとされていますが、譲渡額や損失の規模は別の開示に記載されており、本号の対象資料には含まれていません。
06 ── FOR SHAREHOLDERS
いまレオパレス株を持っている人にとっての実務を、開示文の記載に限って整理します。
1つは配当です。2026年9月30日基準の中間配当は行わず、2027年3月31日基準の期末配当もTOBが成立すれば行わないと決まりました。9月末まで持っていても中間配当は受け取れません。もう1つは税金です。応募した場合と株式併合で清算された場合の税務上の扱いについて、開示文は株主自身が税理士などの専門家に確認するよう求めています。
市場の株価がTOB発表後にどう動いたかは、この開示には含まれていません。一般に、成立の見込みが高いTOBでは株価が買付価格の近くに張り付きやすいとされますが、実際の水準は当日の株価で確かめる必要があります。
07 ── SUMMARY
2018年の施工不備問題のあと、光通信が純投資としてレオパレス株を買い始めたのは2022年4月でした。4年半を経て、その投資は3社連合による非公開化という形で出口を迎えようとしています。次に数字が確定するのは10月30日の買付期間終了です。そこで応募が158,716,000株に届くかどうかが、この取引の最初の関門になります。