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EARNINGS REVIEW

キオクシア

2027年3月期 第2四半期(中間期) 決算レビュー

キオクシアホールディングス/証券コード 285A(東証プライム)
対象期間 2026年4月〜9月 / 決算発表 2026年10月30日

中間期(4〜9月)の売上収益は4兆2,472億円、営業利益は3兆2,647億円。前年同期はそれぞれ7,911億円と1,308億円だったから、売上は前年同期比+436.8%(5.4倍)、営業利益は25.0倍になった。営業利益率は16.5%から76.9%へ。1,000円売って769円が営業利益として残る計算で、製造業の半期としては見慣れない水準が並んでいる。 勢いは第1四半期からさらに加速した。第2四半期単独の売上収益2兆4,800億円は、前年度(2026年3月期)の通期売上2兆3,376億円を1四半期で上回っている。そして同じ10月30日、会社は上場後はじめての配当となる中間配当90円(初配)と、累進配当を軸にした新しい株主還元方針を発表した。

売上収益(中間期)

4兆2,472億円
+436.8%前年同期比

営業利益(中間期)

3兆2,647億円
前年の25.0倍利益率 76.9%

親会社帰属中間利益

2兆1,979億円
前年の37.3倍利益率 51.7%

中間配当(初配)

90円
分割後換算 30円前期 無配
IFRSとは ── キオクシアが使う国際会計基準。「経常利益」の欄がない
国際財務報告基準のことで、日本基準と並ぶ決算のルールです。日本基準にある経常利益という区分がなく、営業利益の次は税引前利益になります。売上も売上高ではなく売上収益と呼びます。海外売上比率の高い企業や海外投資家の多い企業が採用することが多く、キオクシアもIFRSで開示しています。
Non-GAAP指標とは ── 一過性の損益を除いた、会社独自の「本来の実力」の数字
IFRSの数値から、買収に伴うPPA影響額や訴訟損失引当金といった一過性の項目、株式報酬費用のような企業間で比較しにくい項目を除いた社内指標です。当中間期は、PPA影響額等2億円、株式報酬費用130億円、訴訟損失引当金繰入額366億円を除いたNon-GAAP営業利益が3兆3,145億円で、IFRSの営業利益3兆2,647億円を498億円上回ります。監査法人のレビュー対象外である点は会社自身が注記しています。
平均販売単価(ASP)とは ── メモリ1個あたりの売値。メモリ業界の損益を決める最大の変数
製品1単位あたりの販売価格です。フラッシュメモリは仕様が標準化されているため価格が市況で大きく振れ、同じ数量を売っても単価次第で売上も利益も何倍にも変わります。当中間期の増収は、この平均販売単価の大幅な上昇が主因だと短信に明記されています。会社の説明資料では第2四半期の平均販売単価は前四半期比で20%台半ばの上昇、出荷量(記憶容量ベース)は10%台前半の増加でした。裏を返せば、単価が下げに転じたときの振れ幅も同じだけ大きくなります。
中間配当・累進配当とは ── 今回はじめての配当と、減らさないことを基本にする方針
中間配当は、1年の折り返し(第2四半期末)を基準日に支払う配当です。キオクシアは上場後これまで無配でしたが、今回はじめて1株90円の中間配当(初配)を決めました。あわせて公表した株主還元方針では、累進配当(原則として1株配当を前期以上に保ち、減配しないことを基本とする考え方)と機動的な自己株式の取得を掲げ、成長投資などに充てたうえで中長期的に余剰キャッシュの100%を株主へ還元するとしています。
自己株式の取得とは ── 会社が自社株を買い戻すこと
会社が市場から自社の株式を買い戻すことです。買い戻した株式は市場に出回る株数を減らすため、1株当たり利益が増える方向に働きます。キオクシアは2026年8月に上限8,000億円の自己株式取得を実施済みで(買付開始から6営業日で満額終了)、当中間期の財務活動キャッシュ・フローにはこの取得による支出8,003億円が含まれています。期末の自己株式数は4,840万株(前期末483株)になりました。
株式分割とは ── 1株を複数株に分けて、1単元の投資金額を下げること
1株を3株に分ければ、株数は3倍になり1株の価格は理論上3分の1になります。会社の価値そのものは変わりませんが、最低投資金額が下がるため個人が買いやすくなります。キオクシアは2026年10月1日付で1株を3株に分割しました。今回の中間配当90円は基準日(9月30日)が分割前のため分割前ベースの金額で、分割後に換算すると1株30円に相当します。中間期の1株当たり利益は、分割が期首にあったものと仮定して算定されています。
親会社所有者帰属持分比率とは ── IFRSでの自己資本比率
総資産のうち、返済の要らない自己資本が占める割合です。日本基準の自己資本比率にあたります。高いほど負債への依存が小さく、財務の安全性が高いとされます。当中間期末は49.8%で、前期末の37.9%から11.9ポイント上がりました。

01 ── PERFORMANCE

売上5.4倍、営業利益25.0倍。粗利率は24.4%から80.8%へ跳ねた

中間期の売上収益は前年同期の7,911億円から4兆2,472億円へ、+436.8%増えた。注目したいのは、その裏で売上原価が5,978億円から8,139億円、+36.1%(算出)しか増えていないことだ。売上が5.4倍になっても原価は1.4倍にとどまった。差はそのまま売上総利益に乗り、1,933億円から3兆4,332億円へ17.8倍(算出)になっている。売上総利益率は24.4%から80.8%(いずれも算出)へ。

販管費は661億円から1,287億円へ増えたが、売上に対する比率では8.4%から3.0%(算出)に下がった。この結果、営業利益は1,308億円から3兆2,647億円へ。親会社の所有者に帰属する中間利益は590億円から2兆1,979億円になり、1株当たり中間利益(株式分割後ベース)は36円42銭から1,349円33銭へ1,312円91銭(算出)増えている。

売上収益と営業利益 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 2026年3月期中間期 vs 2027年3月期中間期

48,000 24,000 0 7,911 42,472 1,308 32,647 売上収益 営業利益
2025年4-9月 2026年4-9月
決算短信の百万円単位の開示値を億円に丸めて表示(売上収益791,145→4,247,152百万円、営業利益130,820→3,264,727百万円)。前年同期の営業利益1,308億円は、当中間期の棒に対して細い帯にしかならない。
連結損益(単位:百万円)当中間期前中間期前年同期比
売上収益4,247,152791,145+436.8%
売上原価813,923597,828+36.1%(算出)
売上総利益3,433,229193,31717.8倍(算出)
販売費及び一般管理費128,71466,082+94.8%(算出)
その他の収益2,1395,490△61.0%(算出)
その他の費用41,9271,905費用が増加
営業利益3,264,727130,82025.0倍(算出)
Non-GAAP営業利益3,314,530132,37725.0倍(算出)
金融収益7,3411,9963.7倍(算出)
金融費用68,76348,962+40.4%(算出)
税引前中間利益3,203,39084,01038.1倍(算出)
法人所得税費用1,005,51525,06740.1倍(算出)
親会社帰属中間利益2,197,87158,94637.3倍(算出)
中間包括利益2,324,72680,29829.0倍(算出)
基本的1株当たり中間利益1,349円33銭36円42銭+1,312円91銭

増減率が1,000%以上になる項目は短信では「-」と表記される。この表では読みやすさを優先し、算出した倍率を記載した。1株当たり中間利益は2026年10月1日の1対3株式分割を期首に遡って反映した分割後ベース。

第2四半期単独で、前年度の通期売上を上回った

この半期の数字は、第1四半期からさらに加速している。第1四半期の売上収益1兆7,671億円に対し、第2四半期は2兆4,800億円(前四半期比+40.3%、算出)。営業利益も1兆2,700億円から1兆9,947億円へ+57.1%(算出)伸びた。会社資料は第2四半期の性格を「QoQで売上約1.4倍、OP約1.5倍」とまとめている。注目すべきは、この第2四半期単独の売上収益が、前年度(2026年3月期)の通期売上2兆3,376億円を1四半期だけで超えたことだ。米ドルの平均為替レートは第1四半期の160円に対し第2四半期は161円で、円安も1円分だけ追い風になった。

02 ── PROFIT ENGINE

増えた売上3兆4,560億円のうち、3兆1,339億円が営業利益になった

増収額に対してどれだけ利益が増えたかを見ると、この決算の性格がはっきりする。売上収益の増加額3兆4,560億円に対し、営業利益の増加額は3兆1,339億円。増えた売上の90.7%(算出)がそのまま営業利益として残った。増えた売上のほとんどが利益になるのは、増収の中身が数量ではなく単価だからだ。会社資料によれば第2四半期の平均販売単価は前四半期比で20%台半ば上昇し、出荷量(記憶容量ベース)の増加は10%台前半にとどまる。

単価が上がったぶんの売上には、それに対応する材料費も加工費もほとんど乗らない。同じものを同じだけ作って高く売れた分は、コストを経由せずに利益へ直行する。売上が5.4倍でも売上原価が1.4倍にとどまった理由はここにある。設備を大きく増やして稼いだのではなく、既存の生産能力で作ったものが高く売れた半期だった。中間期末の有形固定資産は1兆1,097億円で、前期末の1兆553億円から545億円の増加にとどまっている。

利益率の変化 ── 前年同期との比較

単位:% / 売上総利益率・営業利益率・純利益率

100 50 0 24.4 80.8 16.5 76.9 7.5 51.7 売上総利益率 営業利益率 純利益率
2025年4-9月 2026年4-9月
開示数値からの算出。純利益率は親会社の所有者に帰属する中間利益を売上収益で割ったもの。売上原価率は75.6%から19.2%へ、販管費率は8.4%から3.0%へ、それぞれ下がっている。

営業利益の下に乗った、498億円の一過性項目

この半期の営業利益には、性格の違う費用が含まれている。買収に伴うPPA影響額等が2億円、株式報酬費用が130億円、そして訴訟損失引当金繰入額が366億円。これらを除いたNon-GAAP営業利益は3兆3,145億円で、IFRSの営業利益を498億円上回る。訴訟損失引当金の366億円は第1四半期に計上されたもので、第2四半期には新たな繰入はなかった。短信は引当の中身までは説明していない。

税負担も大きい。法人所得税費用は1兆55億円で、税引前中間利益に対する比率は31.4%(算出)。前年同期の29.8%(算出)からやや上がったものの、この規模の利益が出ても税率そのものは3割前後で動いていない。利益水準が二桁の倍率で跳ねたぶん、税額の絶対値も前年同期の251億円から40.1倍(算出)になっている。

03 ── APPLICATION

SSD&ストレージが全体の65%。けん引役は、データセンターとスマホの両方だ

キオクシアはメモリ事業の単一セグメントで、セグメント別の利益は開示されない。代わりに売上収益を用途別に3つに分けている。PC・データセンター・エンタープライズ向けのSSD&ストレージ、スマートフォンやタブレット、車載・産業機器向けの組み込み式メモリを含むスマートデバイス、SDメモリカードやUSBメモリなどのその他だ。第2四半期は3区分すべてで四半期売上が過去最高を更新した。

最大の柱であるSSD&ストレージは、第1四半期の1兆1,747億円から第2四半期は1兆6,160億円へ+37.6%(前四半期比)。生成AIサーバー向けの需要を受けて物量が増え、販売単価も上がった。会社は第2四半期のデータセンター・エンタープライズ向けが売上構成比で60%台半ば、PC向け等が30%台半ばと説明している。一方、伸び率が最も大きかったのはスマートデバイスで、5,257億円から7,889億円へ+50.1%(前四半期比)。スマートフォン等の組み込みメモリでも販売単価が大幅に上がり、当四半期の増収の大半を牽引した。フラッシュメモリの需給は用途をまたいでつながっている。

アプリケーション別の売上収益 ── 第1四半期と第2四半期

単位:億円 / 2027年3月期 Q1 vs Q2(前四半期比)

SSD&ストレージ スマートデバイス その他 11,747 16,160 5,257 7,889 667 752 +37.6% +50.1% +12.6%
第1四半期(4-6月) 第2四半期(7-9月)
会社説明資料のアプリケーション別販売実績から。%は前四半期比。第2四半期はいずれも過去最高を更新した。
アプリケーション別売上収益(中間期)当中間期
(億円)
構成比うちQ1うちQ2Q2の前年同期比
SSD&ストレージ27,90765.7%11,74716,160+560.8%
スマートデバイス13,14630.9%5,2577,889+401.5%
その他1,4193.3%667752+61.7%
合計42,472100.0%17,67124,800─

構成比では、その他が3.3%まで縮んだ。金額そのものは中間期で1,419億円と前年を上回っているが、第2四半期の前年同期比+61.7%は、5倍前後に膨らんだ2区分の陰に隠れた形だ。その他にはSDメモリカードやUSBメモリといったリテール向け製品と、製造合弁会社3社を経由して計上されるSandiskグループ向けの売上が含まれる。ここが相対的に伸びていないという事実は、今回の増収がリテール市場ではなく、法人向けの需給逼迫によるものだと裏側から示している。

04 ── GUIDANCE

第3四半期は高原状態の見通し。4四半期連続の最高益を見込む

会社が示した第3四半期(2026年10〜12月)単独の見通しは、売上収益2兆5,000億円、営業利益1兆9,950億円。第2四半期実績に対してそれぞれ+0.8%、ほぼ横ばいである。データセンター向けの需要が引き続き旺盛に推移する一方、為替の悪化(円高)を見込むため、第2四半期と同水準の業績になるという見立てだ。想定為替は1ドル157円で、第2四半期の161円より4円円高に置いている。会社はこの為替影響のマイナス約550億円を吸収して、Non-GAAP営業利益が4四半期連続で過去最高になる見通しだとしている。

2027年3月期 第3四半期(単独)の見通しQ2実績Q3見通し前四半期比
売上収益2兆4,800億円2兆5,000億円+0.8%
Non-GAAP営業利益1兆9,883億円2兆0,000億円+0.6%
営業利益1兆9,947億円1兆9,950億円±0.0%
Non-GAAP税引前四半期利益1兆9,612億円1兆9,850億円+1.2%
親会社帰属四半期利益1兆3,557億円1兆3,600億円+0.3%
1株当たり四半期利益(分割後)833円94銭854円24銭+20円30銭
米ドル平均為替レート161円157円△4円(円高)

売上収益の四半期推移 ── Q1・Q2実績とQ3見通し

単位:億円 / 破線の棒は会社見通し(実績ではない)。点線=前年度(2026年3月期)の通期売上

30,000 15,000 0 前年度 通期売上 23,376億円 17,671 24,800 25,000 2026年4-6月 2026年7-9月 2026年10-12月(予)
Q1・Q2は決算短信の前四半期比較表から、Q3は連結業績の見通しから。前年度通期売上は2026年3月期(23,376億円)。第2四半期単独の売上が前年度の通期を上回っている。

市場の見通し ── 需給のタイトさは2027年まで続く、と会社は見ている

会社の説明資料は、データセンター向けのAI需要を背景にNAND市場のタイトな需給環境が続くとしている。市場のビット伸長率(数量の伸び)は2026暦年で10%台後半、2027暦年で20%台前半を見込み、キオクシア自身のビット成長率も市場並みを想定する。AIによるデータ量の爆発的な増加を受けてQLC大容量SSDの採用が進むこと、複数年の長期供給契約(LTA)で2028暦年の出荷量カバー率が50%を大きく上回ることも挙げている。供給面では最先端のBiCS FLASHの生産拡大を進め、岩手・北上のK2棟の立ち上げとK3棟の段階的な拡張で市場成長に合わせるとしている。

通期予想が出ない理由は、短信に書いてある

キオクシアは通期の業績予想を開示していない。短信は「当社グループが属する半導体メモリ業界では事業環境が短期間に大きく変化する特徴等があることから、年度計画値及び当該達成状況に係る記載は省略しています」と説明する。示されるのは翌四半期の見通しまで。強い数字が並ぶ一方で、会社自身が1年先を約束できる業界ではないと言っていることになる。

05 ── BALANCE SHEET

自己資本比率が37.9%から49.8%へ。8,000億円の自社株買いを挟んでも財務は厚くなった

半期で2兆1,979億円の利益が出たことは、財務諸表の姿を大きく変えた。総資産は3兆6,901億円から5兆8,839億円へ2兆1,938億円増加。資本合計は1兆3,991億円から2兆9,291億円へ、1兆5,300億円積み上がった。親会社所有者帰属持分比率は37.9%から49.8%へ、11.9ポイント上昇している。この間に8,003億円の自己株式取得を実行してもなお、自己資本比率はほぼ50%まで高まった。

資産側で増えたのは、営業債権及びその他の債権が9,878億円、現金及び現金同等物が9,266億円。負債側では未払法人所得税が8,702億円増えた。利益に対する税金の支払いがこれから本格化することを映している。有形固定資産は1兆553億円から1兆1,097億円へ545億円の増加にとどまり、この半期の資産増加は設備ではなく、稼いだ現金と売掛債権によるものだ。

連結財政状態(単位:百万円)当中間期末
2026年9月30日
前期末
2026年3月31日
増減
現金及び現金同等物1,397,333470,707+926,626
棚卸資産446,026412,612+33,414
有形固定資産1,109,7241,055,255+54,469
資産合計5,883,8853,690,071+2,193,814
未払法人所得税974,689104,516+870,173
負債合計2,954,7692,290,992+663,777
親会社の所有者に帰属する持分2,928,9641,398,929+1,530,035
資本合計2,929,1161,399,079+1,530,037
親会社所有者帰属持分比率49.8%37.9%+11.9pt

キャッシュ・フロー3区分 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 営業活動・投資活動・財務活動によるCF

24,000 0 △16,000 1,752 23,796 △1,069 △1,930 △20 △12,574 営業活動 投資活動 財務活動
2025年4-9月 2026年4-9月
決算短信の億円単位の開示値から。営業CFは前年同期の1,752億円から2兆3,796億円へ。財務CFの△1兆2,574億円には自己株式取得8,003億円と長期借入金の返済5,231億円が含まれる。

営業活動によるCFは1,752億円から2兆3,796億円へ。税引前中間利益3兆2,034億円を計上した一方、営業債権及びその他の債権の増加で1兆144億円が出ていった。売った分の代金がまだ回収されていない状態で、売上が急増する局面ではこうなる。投資活動によるCFは△1,930億円で、Nanya Technology Corporationの株式取得に伴う支出782億円と有形固定資産の取得1,353億円が主な中身。営業CFから投資CFを差し引いたフリーキャッシュ・フローは2兆1,866億円(算出)になる。

財務活動によるCFは△1兆2,574億円と支出が膨らんだ。8月の自己株式取得で8,003億円、長期借入金の繰上返済などで5,231億円を払い出したためだ。稼いだ現金を株主還元と借入返済に回した半期で、その結果として現金及び現金同等物の残高は1兆3,973億円になっている。

未払法人所得税9,747億円 ── 税金の支払いはこれから来る

営業CFが2兆3,796億円まで伸びた背景には、税金の支払いがまだ本格化していないという事情もある。未払法人所得税は前期末の1,045億円から9,747億円へ、8,702億円増えた。この半期に計上した法人所得税費用1兆55億円の多くは、支払いが先送りになっている状態だ。来期以降、この分はキャッシュとして出ていく。

06 ── CAPITAL RETURN

上場後はじめての配当。90円の中間配当と、累進配当を軸にした新方針

決算と同じ10月30日、会社は株主還元について2つの発表をした。1つは中間配当の実施だ。2026年9月30日を基準日に、1株当たり90円00銭の中間配当を支払う。配当金の総額は479億円、効力発生日は12月8日、原資は利益剰余金。キオクシアは上場以来これまで無配だったため、これが初配(はじめての配当)にあたる。基準日が株式分割(10月1日)の前のため金額は分割前ベースで、分割後に換算すると1株30円に相当する。

もう1つが、株主還元の基本方針そのものの新設だ。会社は、AI関連需要の拡大で業績とキャッシュ・フローが大きく改善し財務健全性が高まったことを背景に、成長投資を続けながら株主還元を実施できる環境が整ったと判断したと説明する。設備投資・研究開発・人的資本・戦略投資(M&A等)といった必要支出をまかなったうえで、ネット・キャッシュポジション(現金が有利子負債を上回る状態)を維持し、中長期的に余剰となった資金の100%を株主還元に充てる。その手段として、機動的な自己株式の取得と、累進配当(減配しないことを基本とする配当)を基本方針に据えた。

株主還元の内容詳細
中間配当(初配)1株90円00銭(分割前基準)/分割後換算 約30円
配当金総額479億3,700万円
基準日/効力発生日2026年9月30日 / 2026年12月8日
前期(2026年3月期)実績0円(無配)
自己株式取得(実施済み)上限8,000億円を2026年8月に満額取得(6営業日で終了)
株主還元方針余剰キャッシュの100%を還元/累進配当+機動的な自社株買い
株式分割2026年10月1日付で1株→3株(期末自己株式数 4,840万株)

この半期、キオクシアは8月に上限8,000億円の自己株式取得を6営業日で終え、10月に初配を決めた。還元の順番は、まず機動的な自社株買いで、そこに定期的な配当が加わった形だ。配当総額479億円は、半期で稼いだ親会社帰属利益2兆1,979億円に対しては2.2%(算出)にとどまる。還元の主役はなお自社株買いで、配当は「減らさない」約束として土台に据えられた、という読み方ができる。無配から一気に高配当へ振るのではなく、累進の起点を低めに置いた初配である点は、業績が単価次第で振れる事業の性格とも整合する。

07 ── SUMMARY

強みと留意点

評価できる点

  • 中間期で売上5.4倍、営業利益25.0倍。営業利益率76.9%、第2四半期単独では約80%。
  • 増収額3兆4,560億円のうち90.7%(算出)が営業利益に転化。単価上昇型の増収。
  • 第2四半期単独の売上2兆4,800億円が前年度の通期売上を超えた。
  • 有形固定資産はほぼ横ばい。既存の生産能力で稼いだ半期。
  • 8,000億円の自社株買いを挟んでも自己資本比率37.9%→49.8%。
  • 営業CF 1,752億円→2兆3,796億円、フリーCF 2兆1,866億円(算出)。
  • 上場後はじめての中間配当90円と累進配当を軸にした還元方針を新設。
  • Q3見通しは横ばいでも4四半期連続の最高益を会社は見込む。

見ておきたい点

  • 増収の主因は平均販売単価の上昇。市況が反転すれば同じ勢いで逆回転する。
  • 通期予想は非開示。会社自身が1年先を見通せない業界だと注記している。
  • メモリ事業の単一セグメント。事業の分散による緩衝材がない。
  • 訴訟損失引当金366億円を計上。短信に中身の説明はない。
  • 未払法人所得税が9,747億円まで積み上がり、税の支払いは来期以降に来る。
  • 営業債権が9,878億円増加。売上の伸びがまだ現金になりきっていない。
  • Q3想定為替は1ドル157円と円高方向。会社は△550億円の影響を見込む。
  • 配当総額は半期利益の2.2%(算出)。還元はなお自社株買いが主役。

総括 ── 単価が作った利益と、株主還元のスイッチが入った半期

この半期の数字は、フラッシュメモリの需給が極端に締まった局面をそのまま映している。売上が5.4倍になっても原価は1.4倍、設備も有形固定資産もほとんど増えていない。増収の9割が利益として残るのは、そういう構造の裏返しだ。強さの正体が単価である以上、同じ構造は下り坂でも同じ倍率で働く。会社が通期予想を出さないのも、第3四半期の見通しを横ばいに置いたのも、そこに理由がある。

第1四半期との最大の違いは、株主還元のスイッチが入ったことだ。8月に8,000億円の自社株買いを終え、10月には無配から初配へ踏み切り、累進配当を基本方針に据えた。会社は「余剰キャッシュの100%を還元する」と明言しつつ、ネット・キャッシュの維持を前提に置いた。好況で稼いだ現金を、成長投資と財務健全性を確保したうえで株主に返す枠組みを、この決算で初めて示したことになる。次の確認ポイントは、第3四半期の為替と単価がこの高原をどこまで保つか、そして累進配当の起点がどう育っていくかだ。

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