EARNINGS REVIEW
2027年3月期 第1四半期 決算レビュー
証券コード 5016(東証プライム) / 対象期間 2026年4月〜6月 / 決算発表 2026年8月6日
営業利益814億円。前年同期の296億円から2.75倍になった。同じ日に通期の営業利益見通しも1,900億円から2,320億円へ420億円引き上げている。数字だけ並べれば、文句のつけようがない四半期に見える。 ところが株価は、決算が出た8月6日の15時24分時点で4,121円、前日比△5.26%で終えている。増益518億円の中身を分解すると、その理由がだいたい見えてくる。チリの銅鉱山権益を売った一回きりの利益が191億円、円安と銅価の上昇が運んできた分が265億円。会社が成長の軸に据える半導体材料と情報通信材料——「フォーカス事業」の増益は、113億円だ。
売上高
営業利益
親会社所有者帰属 四半期利益
通期 営業利益見通し
01 ── PERFORMANCE
売上高2,606億円は前年同期の1,913億円から693億円の増加。円安と銅価上昇による増収効果に、半導体用スパッタリングターゲットと圧延銅箔の増販が乗った。利益の伸び方は増収の比ではない。営業利益は296億円から814億円へ518億円増え、営業利益率は15.5%から31.3%へ15.8ポイント上がった(算出)。
ここまで利益率が動いた理由は、費用の側にはない。売上原価率は78.0%から77.5%へほぼ横ばい、販売費及び一般管理費も259億円から289億円へ30億円増えただけだ(算出)。跳ねたのは営業利益の内側にある2つの項目である。持分法による投資利益が136億円から329億円へ、その他の収益が14億円から207億円へ。この2つで385億円の増加になり、518億円の増益の4分の3を占める(算出)。
売上高と営業利益 ── 前年同期との比較
単位:億円 / 2026年3月期1Q vs 2027年3月期1Q
| 連結(2026年4-6月) | 前年同期 | 実績 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,913億円 | 2,606億円 | +36.2% |
| 売上総利益 | 420億円 | 587億円 | +39.9%(算出) |
| うち持分法による投資利益 | 136億円 | 329億円 | +140.8%(算出) |
| うちその他の収益 | 14億円 | 207億円 | +193億円(算出) |
| 営業利益 | 296億円 | 814億円 | +175.5% |
| 税引前四半期利益 | 285億円 | 796億円 | +179.9% |
| 四半期利益 | 232億円 | 604億円 | +160.0% |
| 親会社所有者帰属四半期利益 | 189億円 | 531億円 | +181.3% |
| 基本的1株当たり四半期利益 | 20円35銭 | 56円80銭 | +179.1%(算出) |
| 四半期包括利益 | 126億円 | 764億円 | +506.7% |
持分法による投資利益とその他の収益は、いずれも営業利益を算出する過程に含まれる項目。売上総利益は売上高から売上原価を引いた金額で、この2項目は含まない。
会社は決算説明資料で、今1Qの一過性要因として「カセロネス一部権益売却益 +190億円」を挙げている。2026年4月に実施したSCM Minera Lumina Copper Chile株式の一部譲渡によるものだ。損益計算書の「その他の収益」の増加額193億円とほぼ一致する(算出)ので、この一過性利益はここに乗っていると読める。四半期利益604億円のうち、この190億円は来期には繰り返されない。
02 ── BRIDGE
会社は営業利益の増減を要因ごとに開示している。前年1Qの296億円が出発点。ここに一過性のカセロネス売却益が191億円、為替と銅価などの市況要因が265億円、フォーカス事業の数量増が78億円積み上がり、ベース事業の数量減で32億円落ち、コスト差等で16億円戻して814億円に着地した。
この並びの意味は、はっきりしている。増益518億円のうち、一過性の売却益と市況で456億円、率にして88.0%(算出)。残る数量差とコスト差、つまり事業活動が生んだ増益は、フォーカス事業の数量増78億円とコスト差等16億円からベース事業の数量減32億円を引いて差し引き62億円。全体の12.0%(算出)にとどまる。
営業利益の増減分析 ── 296億円から814億円まで
単位:億円 / 会社開示の要因分解(2027年3月期第1四半期決算説明資料 P.11)
円の対米ドル相場は期初1ドル159円で始まり、期末には162円。期中平均は前年同期比14円安の159円になった。銅のLME価格は期初557セントで始まり、5月13日に史上最高値の639セントをつけ、期末は605セント。期中平均は前年同期比172セント高の604セントである。会社の感応度に照らせば、この2つが揃って動いた効果が265億円という数字になる。
裏を返すと、この265億円は来期も同じだけ出るとは限らない。会社が通期見通しの前提に置いているのは為替157円(7月以降160円、10月以降155円)、銅価586セント(7月以降580セント)。1Qの実績である159円・604セントより、どちらも保守的な水準だ。
03 ── SEGMENT
報告セグメントは半導体材料・情報通信材料・基礎材料の3つ。今1Qの営業利益を並べると、基礎材料が568億円で、連結814億円の69.8%を占める(算出)。前年同期の146億円から422億円増えて、増益518億円の8割強がここから出た計算になる。
ただしこの568億円には、カセロネスの売却益190億円が入っている。これを除いた378億円が、銅の製錬・リサイクルと資源事業が四半期で稼いだ実力ということになる(算出)。それでも前年の146億円の2.6倍だ。銅価172セント高の効きが、いかに大きいかがわかる。
セグメント別の営業利益 ── 前年同期との比較
単位:億円 / 半導体材料と情報通信材料がフォーカス事業、基礎材料がベース事業
| セグメント(2026年4-6月) | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 半導体材料 | 521億円 | +34% | 144億円 | +69% | 27.6% |
| 情報通信材料 | 931億円 | +19% | 131億円 | +70% | 14.1% |
| 基礎材料 | 1,237億円 | +65% | 568億円 | +289% | 45.9% |
| その他・事業共通費用等 | △83億円 | ─ | △29億円 | ─ | ─ |
| 合計 | 2,606億円 | +36% | 814億円 | +175% | 31.3% |
増減率は会社開示。利益率は営業利益÷売上高(算出)。基礎材料の利益率45.9%は売却益190億円を含む値で、これを除くと30.6%(算出)。
3セグメントのなかで、内容がいちばん素直なのはここだ。売上521億円で+34%、営業利益144億円で+69%。利益率27.6%(算出)は3セグメントで基礎材料に次ぐ水準だが、こちらには一過性の売却益が入っていない。
会社の差異分析では、増益59億円の内訳は為替+8億円、数量差+54億円、コスト差等△3億円。数量が91.5%を作っている(算出)。事業別に開くと、薄膜材料(半導体用ターゲット、磁性材ターゲット、InP基板など)が売上325→456億円、営業利益84→153億円と伸びた一方、タンタル・ニオブは営業利益3億円から11億円の赤字へ転落している。キャパシタ向けタンタル粉末の販売数量は+89%だったが、ユーロ高の影響で採算が悪化した。
売上931億円で+19%、営業利益131億円で+70%。事業別には、機能材料(圧延銅箔、チタン銅、超微粉ニッケルなど)が営業利益57→89億円、東邦チタニウム・タツタ電線などが20→42億円。後者は前年比で2.1倍になっており、増益54億円の4割がここから出ている(算出)。
東邦チタニウムは株式交換により2026年6月から100%子会社になった。スポンジチタン、半導体用ターゲット向けの高純度チタン、MLCC(積層セラミックコンデンサ)向けの超微粉ニッケルを手がける会社で、AIサーバ向けMLCC市場の成長率は年20〜40%(当社推定、2025〜2035年のCAGR)と見込まれている。タツタ電線は2024年11月から100%子会社。AIサーバ・データセンター向けの漏水センサが急伸しており、2026年8月に2025年度比3割増の能力増強を決めた。
04 ── PRODUCTS
数量の伸びを製品別に見ると、この会社のどこにAI投資が当たっているかがはっきりする。半導体用ターゲットが+26%、キャパシタ向けタンタル粉末が+89%、AIサーバ向けの高機能銅合金であるチタン銅が+42%。一方で、スマートフォン向けが主戦場の圧延銅箔は+3%と穏やかだ。伸びているのは、データセンターの側にある製品である。
| 主な製品の販売数量(前年同期比) | セグメント | 1Q実績 | 通期見通し(8月公表) |
|---|---|---|---|
| 半導体用ターゲット | 半導体材料 | +26% | +21%(5月公表 +19%) |
| 磁性材ターゲット | 半導体材料 | +8% | +8%(5月公表 +7%) |
| インジウムリン(InP)基板 | 半導体材料 | +8% | +16%(5月公表 +13%) |
| キャパシタ向けタンタル粉末 | 半導体材料 | +89% | ─ |
| 圧延銅箔 | 情報通信材料 | +3% | +5%(5月公表 +5%) |
| チタン銅 | 情報通信材料 | +42% | +33%(5月公表 +32%) |
決算説明資料P.5より。会社は半導体用ターゲット・磁性材ターゲット・InP基板・チタン銅の通期見通しを5月公表から引き上げた。タンタル粉末は低収益品の減販を織り込むため、通期の数量見通しは1Qの伸びと連動しない。
通期の投融資見通しは5月公表の1,140億円から1,350億円へ、210億円引き上げられた。会社は理由を「生産能力増強投資を反映」としている。1Qの投融資実績は256億円。増産の現金支出は、ここから本格化する。
能力増強計画のなかで倍率が突出しているのがインジウムリン(InP)基板だ。光通信用の受発光素子に使われる単結晶基板で、データセンター内の配線が電気から光へ置き換わるほど需要が増える。会社は、AIサーバの世代が進むにつれて通信接続距離が長くなり、ラック内・ラック間・データセンター間と光通信の適用範囲が広がることで、光トランシーバーの使用数量そのものが増えると説明している。今1Qの数量は+8%だが、通期見通しは+16%へ引き上げられた。増産が効いてくるのは2026年度下期からだ。
05 ── GUIDANCE
同日に出た業績予想の修正は、金額としては大きい。売上高9,300億円→1兆250億円(+950億円、+10.2%)、営業利益1,900億円→2,320億円(+420億円、+22.1%)、親会社所有者帰属当期利益1,140億円→1,410億円(+270億円、+23.7%)。前期実績と比べれば、売上+15.9%、営業利益+32.6%、当期利益+34.7%になる。
問題は中身だ。会社の差異分析によれば、営業利益の増額420億円のうち為替・銅価等が402億円。率にして95.7%(算出)。前提を為替150円→157円、銅価520セント→586セントへ引き上げたことによる。事業要因はフォーカス事業の数量差+30億円と、販売単価改善などを含むコスト差等+81億円で、チリの天候不良による鉱山減産▲93億円がこれを打ち消している。
通期営業利益見通しの修正 ── 1,900億円から2,320億円まで
単位:億円 / 会社開示の要因分解(2026年5月11日公表 vs 2026年8月6日公表)
| 2027年3月期 通期見通し | 前期実績 | 5月11日公表 | 8月6日修正 | 修正率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,846億円 | 9,300億円 | 10,250億円 | +10.2% |
| 営業利益 | 1,750億円 | 1,900億円 | 2,320億円 | +22.1% |
| 税引前利益 | 1,691億円 | 1,780億円 | 2,210億円 | +24.2% |
| 親会社所有者帰属当期利益 | 1,046億円 | 1,140億円 | 1,410億円 | +23.7% |
| 基本的1株当たり当期利益 | 112円94銭 | 125円97銭 | 155円80銭 | +23.7% |
| うちフォーカス事業 営業利益 | 710億円 | 1,000億円 | 1,000億円 | ─ |
| うちベース事業 営業利益 | ─ | 1,240億円 | 1,470億円 | +18.5% |
| 前提為替レート(平均) | ─ | 150円/USD | 157円/USD | 7円 円安 |
| 前提LME銅価(平均) | ─ | 520¢/lb | 586¢/lb | +66¢/lb |
修正率は5月11日公表比。フォーカス事業の営業利益見通し1,000億円は5月公表から据え置き(内訳は半導体材料500→610億円、情報通信材料320→390億円へ引き上げ、その他・共通費用の変動で相殺)。前期実績のセグメント別営業利益はフォーカス事業のみ決算説明資料に記載。
1Qの実績を通期見通しで割ると、売上高25.4%に対して、営業利益35.1%、税引前利益36.0%、親会社所有者帰属利益37.6%(いずれも算出)。売上はきっちり4分の1なのに、利益だけが大きく先行している。
この差は上振れ余地とは限らない。1Qにカセロネス売却益190億円が集中しており、これを差し引いた営業利益624億円で計算し直すと進捗率は26.9%(算出)まで下がる。さらに通期見通しには、チリの天候不良による鉱山減産▲93億円が下期側に織り込まれている。会社が利益の進捗を4倍して考えていないことは、修正後の数字そのものが示している。
通期見通しに対する第1四半期の進捗率
単位:% / 点線=1年の1/4(25%)
会社は2027年度(2028年3月期)の目標として、連結営業利益率12〜17%、フォーカス事業の営業利益構成比67%以上、半導体材料セグメント45%以上、ROE10%以上を掲げている。2026年度見通しベースの実績値は、連結営業利益率22.6%、ROE19.8%と、この2つはすでに目標を大きく超える。一方でフォーカス事業の営業利益構成比は40%、半導体材料は25%。構成比の目標には距離がある。
営業利益の推移 ── 連結とフォーカス事業
単位:億円 / 2026年度は8月6日修正後の見通し
06 ── MARKET VIEW
8月6日15時24分時点の株価は4,121円、前日比△229円で△5.26%。前日8月5日の終値は4,350円だった。営業利益を420億円引き上げた日の反応としては、素直ではない。
手がかりのひとつが、通期のコンセンサス予想との比較にある。株予報Proが同日時点で掲載しているIFISコンセンサスは、売上高9,638億円、経常(税引前)利益2,263億円、当期利益1,516億円。会社の修正後の見通しは売上高1兆250億円、税引前利益2,210億円、親会社所有者帰属当期利益1,410億円。売上は市場予想を6.4%上回った一方、税引前利益は2.4%、当期利益は7.0%下回っている(いずれも算出)。市場はすでに、今回の修正と同等かそれ以上の利益を織り込んでいたことになる。
通期の税引前利益 ── 前期実績・会社見通し・市場予想
単位:億円 / 市場予想は株予報Pro掲載のIFISコンセンサス(2026年8月6日時点)
| 2027年3月期 通期 | 会社見通し(8/6修正) | 市場予想 | 差 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 10,250億円 | 9,638億円 | 会社が+612億円(+6.4%) |
| 税引前(経常)利益 | 2,210億円 | 2,263億円 | 会社が△53億円(△2.4%) |
| 当期利益 | 1,410億円 | 1,516億円 | 会社が△106億円(△7.0%) |
市場予想は株予報Pro掲載のIFISコンセンサス(2026年8月6日時点)。差の金額・率は算出値。株予報のレーティングは5段階で★★★★★。
参考までに、8月6日15時24分の株価4,121円と修正後の1株当たり当期利益155円80銭から計算した予想PERは26.4倍(算出)。6月末の1株当たり親会社所有者帰属持分675円53銭に対する実績PBRは6.1倍(算出)。年間配当予想20円での利回りは0.49%(算出)になる。素材メーカーの伝統的な評価尺度からは大きく離れた水準で、市場が払っているのは銅の値段ではなく、半導体材料の成長のほうだと読める。だからこそ、今回のように「増益の大半が銅と為替」という決算では、上方修正の額そのものが評価されにくい。
07 ── BALANCE SHEET
6月末の資産合計は1兆6,701億円で、3月末から1,648億円の増加。増えたのは現金及び現金同等物で、663億円から2,190億円へ1,527億円積み上がった。負債合計も6,671億円から9,447億円へ2,776億円増えている。転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行によるものだ。
目を引くのは資本の側だ。資本合計は8,383億円から7,254億円へ1,128億円減り、親会社所有者帰属持分比率は48.3%から38.5%へ9.8ポイント下がった。減益でも損失でもない四半期に、自己資本比率がこれだけ落ちるのは普通ではない。
会社は普通株式57,300,112株、金額にして1,949億円の自己株式公開買付け(TOB)を実施した。ただし2026年6月30日時点では決済が完了しておらず、自己株式を購入する義務を「その他の金融負債」として負債に計上し、対応する金額を「その他の資本の構成要素(その他)」として資本から控除している。決済そのものは2026年7月9日に完了した。
つまり6月末の貸借対照表は、負債に1,949億円が乗り、資本から1,949億円が抜けた状態で写っている。自己資本比率9.8ポイントの低下は、その大半がこの処理で説明がつく。事業が傷んだわけではない。
| 財政状態 | 3月末 | 6月末 |
|---|---|---|
| 資産合計 | 15,053億円 | 16,701億円 |
| 現金及び現金同等物 | 663億円 | 2,190億円 |
| 棚卸資産 | 3,451億円 | 3,660億円 |
| 有利子負債 | 3,243億円 | 4,366億円 |
| ネット有利子負債 | 2,579億円 | 2,176億円 |
| 親会社所有者帰属持分 | 7,265億円 | 6,424億円 |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 48.3% | 38.5% |
| キャッシュ・フロー | 1Q実績 | 通期見通し |
|---|---|---|
| 営業活動 | +132億円 | +1,350億円 |
| 投資活動 | +79億円 | △950億円 |
| フリーCF | +211億円 | +400億円 |
| 財務活動 | +1,309億円 | △240億円 |
| 投融資 | 256億円 | 1,350億円 |
| 減価償却費 | 126億円 | ─ |
| 研究開発費 | 53億円 | ─ |
決算説明資料P.15・P.22より。1Qの投資キャッシュ・フローがプラスなのは、カセロネス一部権益の譲渡代金が入ったため。ネット有利子負債が403億円減ったのは、自己株TOBに充てる予定のCB調達資金が6月末時点で手元に残っていたことによる一時的なもので、会社は2027年3月末のネット有利子負債を4,140億円と見込んでいる。
2027年3月期の年間配当予想は中間10円・期末10円の合計20円。前期の31円(中間6円・期末25円)から11円の減配になる。配当性向は13%(会社開示)で、方針として掲げる「連結配当性向25%程度」を下回る。
これは業績の悪化によるものではない。会社は2026年5月11日に株主還元方針を変更しており、「大規模な自己株式取得を行う場合は総還元性向も考慮して別途検討する」としたうえで、今期は1,949億円の自己株取得を実施するため配当を下限の20円に置いた、と説明している。自己株取得を含めた総還元性向は約151%。当期利益を上回る額を株主に返す計算になる。減配という見出しと、還元の実額は逆を向いている。
08 ── SUMMARY
この決算を一言でまとめるなら、外部環境が最大限に味方した四半期だった。銅は史上最高値をつけ、為替は14円の円安。そこにチリの鉱山権益を売った190億円が重なり、営業利益は2.75倍になった。数字としては申し分ない。ただしこの3つは、いずれも会社の技術力とは関係のないところで決まっている。
そのうえで、この号で見ておきたい数字は3つある。半導体材料の数量差+54億円、フォーカス事業の営業利益構成比40%、そして通期上方修正に占める為替・銅価の割合95.7%。1つ目は、この会社の本命がちゃんと伸びていることを示す。2つ目は、その本命がまだ全体の4割にしか届いていないことを示す。3つ目は、残りの6割がどれだけ外の風で動くかを示す。
会社は2027年度にフォーカス事業で営業利益の67%以上を稼ぐと宣言している。今回の1Qは、その目標に対して逆向きの数字が出た四半期だった。InP基板7〜10倍、半導体用ターゲット1.3倍という増産が動き出すのは2026年度下期から2027年度にかけて。この会社を見るときの次の分岐点は、その能力増強が数量に、そして構成比に、いつ表れてくるかにある。