EARNINGS REVIEW
2027年3月期 第1四半期 決算レビュー
証券コード 1379(東証プライム) / 対象期間 2026年4月〜6月 / 決算発表 2026年8月12日
売上高193億円、営業利益4億1,800万円。営業利益は前年同期の1億7,600万円から2.4倍になり、期初の計画(3,100万円の営業赤字)を4億5,000万円近く上回った。きのこは夏が閑散期で、ホクトの第1四半期はもともと利益がほとんど出ない。その四半期で黒字幅を広げたのは、国内きのこの販売単価がブナシメジで前年比102.8%、エリンギで108.5%、マイタケで107.5%と、全品目で上がったからだ。 一方で、純利益は4億5,200万円で△66.7%。前年同期に火災の保険金18億9,600万円が特別利益として入っていた反動で、事業の悪化ではない。海外は米国の大口顧客の入札を落として営業赤字に転じ、海外きのこ事業のセグメント利益は△64.2%。国内の好調と海外の足踏みが、同じ四半期に並んだ。
売上高
営業利益
経常利益
親会社株主帰属 四半期純利益
01 ── PERFORMANCE
売上高は185億2,400万円から193億4,300万円へ8億1,800万円の増加。売上原価は141億5,600万円から146億9,700万円へ5億4,100万円増えたが、売上の伸びのほうが大きく、売上総利益率は23.6%から24.0%へ0.4ポイント改善した。販売費及び一般管理費は41億9,100万円から42億2,700万円へ3,500万円増(+0.9%)にとどまり、営業利益率は1.0%から2.2%に上がった。
会社が示した営業利益の増減要因は次のとおり。売上増で+8億1,800万円、労務費で△2億800万円、その他の売上原価で△3億3,300万円、販促・広告費で+3,900万円、人件費で△1,000万円、その他販管費で△6,400万円。中東情勢の影響でエネルギーや資材のコストは上がったが、きのこの単価上昇と化成品の価格改定でそれを吸収した形だ。
営業利益の増減要因 ── 前年同期1億7,600万円から当期4億1,800万円へ
単位:百万円 / 会社開示の要因分解
| 連結(2026年4-6月) | 前年同期 | 実績 | 増減率 | 期初計画 | 計画比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 18,524百万円 | 19,343百万円 | +4.4% | 19,141 | +1.1% |
| 売上総利益 | 4,368百万円 | 4,645百万円 | +6.4% | 4,475 | +3.8% |
| 売上総利益率 | 23.6% | 24.0% | +0.4pt | 23.4% | +0.6pt |
| 販売費及び一般管理費 | 4,191百万円 | 4,227百万円 | +0.9% | 4,506 | △6.2% |
| 営業利益 | 176百万円 | 418百万円 | +136.8% | △31 | +449 |
| 営業利益率 | 1.0% | 2.2% | +1.2pt | △0.2% | +2.4pt |
| 経常利益 | 147百万円 | 777百万円 | +426.1% | 146 | +432.7% |
| 親会社株主帰属四半期純利益 | 1,358百万円 | 452百万円 | △66.7% | ─ | ─ |
| 1株当たり四半期純利益 | 43円43銭 | 14円44銭 | △66.8%(算出) | ─ | ─ |
| 四半期包括利益 | 2,108百万円 | 973百万円 | △53.8% | ─ | ─ |
期初計画と計画比は決算説明資料P.12の開示値。営業利益の計画比は金額差(百万円)で表示。減価償却費は前年1,341百万円→当期1,295百万円。
損益計算書を下までたどると、前年同期は経常利益1億4,700万円に対して税金等調整前四半期純利益が19億8,900万円ある。差の大半が受取保険金18億9,600万円だ。当期は特別利益・特別損失ともに200万円で、税金等調整前利益7億8,000万円はほぼ経常利益そのものになる。純利益の前年比△66.7%は、この一時要因が剥げ落ちたことで説明がつく。営業利益の+136.8%、経常利益の+426.1%のほうが事業の姿に近い。
02 ── SEGMENT
4セグメントのうち3つが増益、しかもいずれも大幅な増益率だ。国内きのこ事業は売上120億9,500万円(+2.6%)、セグメント利益6億7,300万円(+47.7%)。期初計画の2億5,000万円に対して2.7倍になった。化成品事業は売上36億4,700万円(+12.7%)、利益1億8,800万円(+74.5%)。加工品事業は売上17億7,900万円(+6.3%)、利益3,900万円(+138.4%)。
海外きのこ事業は売上18億2,000万円(△0.1%)、利益8,200万円(△64.2%)。計画は売上20億6,900万円・利益2億900万円だったので、売上で12.0%、利益で60.4%の未達になる。全社費用を引く前のセグメント利益合計は8億1,200万円から9億8,400万円へ1億7,200万円増え、全社費用の縮小(△6億3,500万円→△5億6,600万円)が残りの増益分を作った。
セグメント利益 ── 前年同期との比較
単位:百万円 / 全社費用を配分する前のセグメント利益
| セグメント | 外部売上(前年) | 外部売上(当期) | 前年比 | 利益(前年) | 利益(当期) | 前年比 | 利益の計画比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 国内きのこ事業 | 11,790 | 12,095 | +2.6% | 456 | 673 | +47.7% | +168.9% |
| 海外きのこ事業 | 1,822 | 1,820 | △0.1% | 231 | 82 | △64.2% | △60.4% |
| 加工品事業 | 1,674 | 1,779 | +6.3% | 16 | 39 | +138.4% | +863.9% |
| 化成品事業 | 3,237 | 3,647 | +12.7% | 107 | 188 | +74.5% | +54.4% |
| 調整額(全社費用等) | ─ | ─ | ─ | △635 | △566 | ─ | ─ |
| 連結 | 18,524 | 19,343 | +4.4% | 176 | 418 | +136.8% | ─ |
単位:百万円。外部売上と利益は決算短信のセグメント注記、利益の計画比は決算説明資料P.13より。化成品事業にはセグメント間売上474百万円(前年304百万円)が別にある。
外部顧客向け売上の構成 ── 国内きのこが6割、化成品が2割
単位:% / 前年同期と当期
03 ── DOMESTIC
国内きのこ事業の増益は、量ではなく価格で作られている。主要3品目の生産量(連結ベース)は、ブナシメジ10,695トン(△1.0%)、エリンギ3,877トン(△5.9%)、マイタケ3,516トン(△4.9%)と、すべて前年を下回った。一方で平均販売単価は、ブナシメジ102.8%、エリンギ108.5%、マイタケ107.5%、霜降りひらたけ105.7%。計画に対しても全品目が上回っている。
会社は「需要予測に基づく生産調整とエリア戦略の推進により、生産量を維持しつつ安定的な単価向上を実現」と説明する。加えて、ゴールデンウィーク明けに天候不順で野菜相場が堅調だったことが、きのこの価格を下支えした。市場データでも、東京都中央卸売市場のブナシメジ5月の取引価格は1kgあたり445円で、前年の446円とほぼ同水準。市場全体が値崩れしなかった中で、ホクトは自社の単価を前年比2.8%上げた。
| 平均販売単価 | 前年比 | 計画比 |
|---|---|---|
| ブナシメジ(ブナピー含む) | 102.8% | 101.8% |
| エリンギ | 108.5% | 102.8% |
| マイタケ | 107.5% | 105.0% |
| 霜降りひらたけ | 105.7% | 103.9% |
| 生産量 | 前年比 | 計画比 |
|---|---|---|
| ブナシメジ(ブナピー含む) | 99.4% | 100.2% |
| エリンギ | 93.9% | 97.6% |
| マイタケ | 94.9% | 100.3% |
| 霜降りひらたけ | 110.7% | 101.2% |
決算説明資料P.31・32より。国内シェア(2025年3月期・国内総生産量に対する当社生産量)はブナシメジ35.8%、エリンギ46.3%、マイタケ26.5%。
2026年5月、ホクトは有限会社舟形マッシュルーム(山形県)を子会社化した。会社の説明では国内マッシュルーム業界の生産量3番手にあたる。ブナシメジ・エリンギ・マイタケ・霜降りひらたけに次ぐ品目を外から取り込んだ格好で、「近年の日本国内におけるマッシュルーム需要の高まり」を理由に挙げている。1Qの数字への寄与はまだ見えないが、国内33拠点の生産網に新しい品目が1つ加わる。
04 ── OVERSEAS
海外の足踏みの中心は米国だ。現地法人HOKTO KINOKO COMPANYの売上は708万ドルから607万ドルへ△14.2%、営業利益は89万ドルの黒字から△25万ドルの赤字に転じた。中東情勢でガソリン代が上がり消費が鈍ったことに加えて、一部の安定顧客が入札方式に切り替え、これを落札できなかった。販売量は維持したが単価が下がっている。
台湾は売上1億3,500万台湾ドル(+0.8%)、営業利益1,800万台湾ドル(△0.3%)で前年並み。ただし計画比では売上△15.7%、利益△44.2%で、大手顧客の大型特売がキャンセルされ、野菜相場の暴落で在庫過多に陥った。マレーシアは売上336万リンギ(△3.8%)、営業損失△85万リンギ(前年△69万リンギ)。損失は広がったが、計画の△117万リンギよりは31万リンギ縮小している。
米国の手当ては2つある。1つは新規開拓で、米最大手の一角であるKrogerグループとの取引を一部エリアで開始した。もう1つは第2工場で、計画は順調に進捗と説明している。会社は中期経営計画で海外事業の売上154億円・営業利益27億円を掲げ、米国の売上を2027年3月期の約44億円から、新工場がフル稼働する2032年3月期に163億円まで伸ばすロードマップを示した(為替前提1ドル160円)。
| 海外現地法人(現地通貨) | 前年同期 | 当期 | 前年比 | 期初計画 | 計画比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 米国 売上高 | 708万$ | 607万$ | △14.2% | 720万$ | △15.6% |
| 米国 営業利益 | 89万$ | △25万$ | 赤字転落 | 36万$ | △62万$ |
| 台湾 売上高 | 134百万NT$ | 135百万NT$ | +0.8% | 160百万NT$ | △15.7% |
| 台湾 営業利益 | 18百万NT$ | 18百万NT$ | △0.3% | 32百万NT$ | △44.2% |
| マレーシア 売上高 | 349万RM | 336万RM | △3.8% | 360万RM | △6.6% |
| マレーシア 営業利益 | △69万RM | △85万RM | △16万RM | △117万RM | +31万RM |
決算説明資料P.10・14より。換算レートは1米ドル144.81円→162.39円、1台湾ドル4.96円→5.10円、1リンギ34.26円→40.09円。円安で円換算の売上は底上げされており、海外セグメントの円建て売上△0.1%は現地通貨ベースより良く見えている。
05 ── PROCESSED & CHEMICAL
化成品事業(ホクト産業)は、包装資材・工業資材・農業資材のいずれも中東情勢の混乱でメーカー各社の出荷制限が起きた。その中で安定供給を優先しつつ、仕入コストの上昇分を価格改定で転嫁した結果、売上36億4,700万円(+12.7%)、セグメント利益1億8,800万円(+74.5%)。計画比でも売上+9.9%、利益+54.4%で、全社の増益要因として国内きのこと並ぶ「+4億円」を会社は挙げている。
加工品事業は売上17億7,900万円(+6.3%)、利益3,900万円(+138.4%)。外食向けとデリカ・中食向けの商材が牽引し、コンビニ向けも復調した。通販はEC運営と広告運用を見直し、乾燥きのこに加えてレトルト食品が大幅に伸び、健康食品の定期顧客も増えている。レトルト製造子会社のアーデンは4〜5月の受注不振を6月に取り戻し、売上は計画に届かなかったが生産量と営業利益は計画を超えた。
06 ── GUIDANCE
2027年3月期の通期見通しは、5月15日公表の売上高881億円(+2.5%)、営業利益72億6,000万円(+3.3%)、経常利益76億5,000万円(△6.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益52億5,000万円(△25.1%)から変更なし。経常と純利益が減益見通しなのは、前期に一時的な利益があった反動と読むのが自然だ。
1Qの進捗率は売上22.0%、営業利益5.8%、経常利益10.2%、純利益8.6%(いずれも算出)。数字だけ見ると遅れているようだが、会社は第2四半期累計の営業利益を1億1,000万円、純利益を△9,400万円の赤字と置いている。つまり上期はほぼ利益が出ない前提で、通期の営業利益のほとんどが下期に乗る。1Qの営業利益4億1,800万円は、すでに2Q累計計画の3.8倍に達しており(算出)、このペースなら上期は計画を上回って通過する公算が大きい。
通期見通しに対する第1四半期の進捗率
単位:% / 点線=1年の1/4(25%)
| 2027年3月期 | 2Q累計予想 | 通期予想 | 通期の前期比 | 1Q進捗率(算出) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 38,900 | 88,100 | +2.5% | 22.0% |
| 営業利益 | 110 | 7,260 | +3.3% | 5.8% |
| 経常利益 | 330 | 7,650 | △6.6% | 10.2% |
| 親会社株主帰属当期純利益 | △94 | 5,250 | △25.1% | 8.6% |
| 1株当たり当期純利益 | △3円00銭 | 167円22銭 | ─ | ─ |
単位:百万円(1株当たりを除く)。決算短信より。2Q累計予想の前年同期比は売上+2.2%、営業利益+89.3%、経常利益+7.2%。中期経営計画は2029年3月期に売上1,000億円・営業利益100億円(2026年3月期実績は売上859億円・営業利益70億円)。
07 ── BALANCE SHEET
6月末の総資産は1,157億2,900万円で、3月末から20億300万円増えた。流動資産は415億1,400万円(+9億8,400万円)、固定資産は742億1,500万円(+10億1,800万円)。現金及び預金は187億4,000万円から219億7,900万円へ32億円積み上がった一方、受取手形及び売掛金は59億7,700万円から40億7,700万円へ19億円減っている。年度末に膨らんだ売掛金を回収した形だ。
負債は512億2,500万円で24億2,300万円の増加。中身は短期借入金が40億300万円増え、未払法人税等が24億3,800万円減った。3月決算の法人税納付と前期の期末配当(1株52円)の支払いが重なる四半期で、手元資金を厚くしながら短期で借りた、という資金繰りに見える(配当支払いは推定)。純資産は645億400万円で4億1,900万円の減少。四半期純利益4億5,200万円と為替換算調整勘定などのプラスを、配当の支払いが上回った。自己資本比率は57.1%から55.7%へ1.4ポイント下がったが、財務の安全性を揺るがす水準ではない。
| 財政状態 | 3月末 | 6月末 |
|---|---|---|
| 総資産 | 1,137億円 | 1,157億円 |
| 現金及び預金 | 187億円 | 220億円 |
| 受取手形及び売掛金 | 60億円 | 41億円 |
| 有形固定資産 | 574億円 | 581億円 |
| 短期借入金 | 56億円 | 96億円 |
| 長期借入金・新株予約権付社債 | 207億円 | 200億円 |
| 純資産 | 649億円 | 645億円 |
| 自己資本比率 | 57.1% | 55.7% |
| 配当・その他 | 前期 | 今期(予想) |
|---|---|---|
| 中間配当 | 10円00銭 | 10円00銭 |
| 期末配当 | 45円00銭 | 52円00銭 |
| 年間配当 | 55円00銭 | 62円00銭 |
| 増配額 | ─ | +7円 |
| DOE目標 | 2029年3月期に3.5% | |
| 減価償却費(1Q) | 1,341百万円 | 1,295百万円 |
| 期中平均株式数(1Q) | 3,127万株 | 3,135万株 |
| 時価総額(6月末) | ─ | 609億円 |
財政状態は決算短信の四半期連結貸借対照表より億円に丸めて表示。有形固定資産は純額。配当は決算短信の「配当の状況」、DOE目標と時価総額は決算説明資料P.15・33より。配当予想の修正はなし。
08 ── SUMMARY
この四半期のホクトは、いちばん利益が出ない季節に、値段で利益を作って見せた。生産量はブナシメジ△1.0%、エリンギ△5.9%、マイタケ△4.9%と絞り、単価は102.8%、108.5%、107.5%。需要予測に合わせて作る量を決め、エリアごとの営業で値崩れを防ぐという中期経営計画の方針が、数字に出始めている。化成品の価格改定も含めて、コスト上昇を価格に乗せられる立場にいることが確認できた。
一方で、海外は中期経営計画の成長ドライバーに据えている事業だ。米国第2工場と売上163億円のロードマップが示された同じ資料で、足元の米国は入札を落として赤字に転じている。売り場がないから売れていないという調査結果は、裏を返せば売り場を取れれば伸びるという話でもある。Krogerとの取引がどこまで広がるかは、次の四半期で最初の答えが見える。
確認したい点は2つ。第2四半期累計の営業利益が、会社の置いた1億1,000万円をどれだけ上回って通過するか。そして、10月以降のきのこ単価が前年を超えて推移するか。通期72億6,000万円の行方は、ほぼ後者で決まる。