号外EXTRA EDITION
政策保有のUACJ株を全売却、中間純利益を155億円上方修正
東証プライム 5801 / 2026年9月24日・25日開示 / 投資有価証券の売却と業績予想の修正に基づく号外レポート
2日続けて、2枚の開示が出ました。24日に「売る予定と、業績予想の修正」。25日に「売った」。売った相手はUACJ、古河電工が源流の一社として長く株を持ってきたアルミ大手です。保有していた全1,274万6,000株を約283億円で手放し、約217億円の売却益を今期の第2四半期に特別利益として計上します。これで2026年4〜9月期の中間純利益の予想は425億円から580億円へ、155億円引き上がりました。ただし、売上高も営業利益も経常利益も、予想は1円も動いていません。動いたのは純利益だけです。数字の中身と、なぜ今このタイミングで売ったのかを読みます。
投資有価証券売却益(特別利益・2Qに計上)
中間純利益予想(親会社株主に帰属)
売却したUACJ株
01 ── WHAT HAPPENED
9月24日の開示は、これから起きることの予告でした。保有する上場株の一部を売って投資有価証券売却益を計上する見込みだと伝え、同時に8月6日に出していた中間期の業績予想を修正しています。売却の対象はUACJ1銘柄、売却時期は翌25日の予定、見込みの売却金額は約286億円、売却益は約220億円としていました。
翌9月25日の開示は、その実行報告です。同日に売却を実行し、金額は約283億円、売却益は約217億円で確定しました。見込みから数億円ずつ下振れしていますが、これは売却時の株価による誤差の範囲です。売却日は9月25日。24日に予告した内容を、翌日そのまま実行した形になります。
UACJは、2013年10月に古河電工傘下だった古河スカイと住友軽金属工業が合併して発足したアルミニウム総合メーカーです。古河電工はその源流の一社として、発足以来ながく株を保有してきました。今回の全株売却で、10年余り続いた両社の資本関係が解消されます。報道では、これまでに人事を巡る対立もあったと伝えられています(日本経済新聞)。
02 ── THE NUMBERS
修正の中身を1枚の表で見ると、性格がはっきりします。売上高720,000百万円、営業利益49,500百万円、経常利益60,500百万円は、前回予想からまったく動いていません。変わったのは中間純利益で、42,500百万円から58,000百万円へ155億円(+36.5%)の引き上げです。1株当たり中間純利益も60.41円から82.45円へ上がりました。
| 2027年3月期 中間期(連結・百万円) | 前回予想 (A) | 今回予想 (B) | 増減 (B−A) | 増減率 | 前年中間実績 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 720,000 | 720,000 | 0 | 0.0% | 610,658 |
| 営業利益 | 49,500 | 49,500 | 0 | 0.0% | 19,134 |
| 経常利益 | 60,500 | 60,500 | 0 | 0.0% | 20,279 |
| 中間純利益 | 42,500 | 58,000 | +15,500 | +36.5% | 12,852 |
| 1株当たり中間純利益 | 60.41円 | 82.45円 | +22.04円 | ── | 18.25円 |
中間純利益(親会社株主に帰属・億円)
前回予想は8月6日開示、今回予想は9月24日開示。前年中間実績は企業結合の暫定処理の確定を反映後
なぜ純利益だけが動くのか。売却益は本業とは無関係の一過性のもうけ(特別利益)だからです。本業のもうけである営業利益と、財務損益まで含めた経常利益には入らないため、会社は本業の見通しを変えていません。中間期の営業利益予想は495億円のまま。つまり「本業の計画はそのまま、株の売却益だけが最終利益に上乗せされた」という修正です。
税引前の売却益は約217億円。ここから法人税などを差し引いた残りが、中間純利益の増加額155億円にほぼ対応します(算出)。差額の約60億円が税負担にあたる計算です(算出)。営業利益や経常利益の予想が動いていないので、純利益の増加分155億円は、この売却益だけで説明できます。
前年の中間実績と比べると、売上高は+17.9%、営業利益は+158.7%、中間純利益は+351.3%と大きく伸びて見えます(いずれも算出)。ただし前年の数字は、企業結合の暫定的な会計処理を確定させた後の低い基準です。伸び率の大きさは「今期がとりわけ好調」というより「前年の中間期が低かった」ことの裏返しでもある点は、割り引いて見ておく必要があります。
03 ── WHY NOW
会社が挙げた売却目的は「政策保有株式の削減と成長資金の確保」です。取引や関係維持のために持ち続けてきた株を現金に換え、その資金を本業の成長投資へ振り向ける——近年、多くの企業が進めている資本効率改善の流れに沿った動きです。古河電工は電線・銅・光ファイバーを軸に、AIデータセンター向けの需要で業績を伸ばしており、2026年5月には2030年度の営業利益を大きく引き上げる新しい経営方針も掲げています。売った資金の使い道は、その成長戦略の側にあります。
会社によれば、当初この売却益は2027年3月期の第3四半期以降に計上する予定でした。それを、市場環境や株価の動きを総合的に勘案して売却時期を前倒しし、第2四半期に計上することにしたと説明しています。中間期の純利益予想が動いたのはこのためで、通期の業績予想は修正していません。年間で見れば、もともと想定していた売却益の計上タイミングが前にずれた、という整理になります。
155億円の上乗せは、あくまで株を1回売って得た利益です。来期の同じ中間期には、この売却益は乗りません。純利益の水準だけを見て「稼ぐ力が4割増えた」と読むと誤ります。本業がどれだけ伸びているかは、予想が据え置かれた営業利益(中間495億円)で追うのが正しい見方です。今回の号外は、あくまで「持っていた株を売って現金化した」という財務イベントとして受け止めるのが妥当です。
04 ── SUMMARY
古河電工にとってUACJは、自ら源流の一社となって生み出し、10年余り株を持ち続けてきた会社です。その株を全部手放すのは、単なる株式売却というより、長く続いた資本関係にひと区切りをつける決断でした。得た約217億円の益は、政策保有株の削減という時代の要請に応えつつ、電線・データセンターという伸びる本業へ資金を回すためのものです。純利益の数字は派手に動きましたが、会社が本当に変えたのは本業の予想ではなく、バランスシートの中身です。見るべきは、この現金化がこの先の成長投資にどう効いてくるか。それが表に出るのは、次の決算からです。