SAKURA CAFE ・ 決算分析← レポート一覧
暗いデータセンターの通路で、青緑の光を通す光ファイバケーブルの束がラックのコネクタから伸びている

EARNINGS REVIEW

フジクラ

2027年3月期 第1四半期 決算レビュー

証券コード 5803(東証プライム)対象期間 2026年4月〜6月決算発表 2026年8月7日

営業利益1,048億円。前年同期の411億円から2.55倍になった。売上・営業・経常・純利益のすべてが第1四半期として過去最高で、会社は同じ日に通期の営業利益見通しを3,100億円から4,320億円へ1,220億円引き上げている。6月18日に上方修正したばかりの数字を、2か月足らずでもう一度書き換えたことになる。 ただしこの決算には、はっきりした主語がある。フジクラという会社ではなく、情報通信という1つのセグメントだ。営業利益1,048億円のうち980億円がそこから出ている。増益637億円に対して情報通信の増益は640億円。残る4事業を全部足すと、前年より3億円減っている(算出)。

売上高

4,020億円
+50.1%前年同期比

営業利益

1,048億円
+155.1%利益率 26.1%

親会社株主帰属 四半期純利益

804億円
+156.8%EPS 48円58銭

通期 営業利益見通し

4,320億円
+1,220億円6月18日公表から上方修正
光コンポーネント製品とは ── この四半期の主語になっている製品
光ファイバを機器やケーブル同士につなぐための部品群です。ファイバの端を高精度に整列させて接続するコネクタ、複数の心線を一括で融着するための部材、配線を束ねて分岐させるモジュールなどが含まれます。データセンターの中では、サーバー間・ラック間・棟間を結ぶ配線が電気から光へ置き換わるほど、この接続部品が数量として必要になります。フジクラはここに主力を置いており、今1Qは米国以外の新規データセンタ案件として光コンポーネント製品の大量受注があったと説明しています。表紙に写っているコネクタとファイバの束が、およそこの領域にあたります。
データセンタ向けエンジニアリング事業とは ── 部品を売るだけではない部分
光ファイバやコンポーネントを納めるだけでなく、データセンターの敷地内・建屋内の光配線を設計し、敷設し、接続して開通させるところまで請け負う事業です。部材の売上だけでなく工事・施工の役務収入が乗るため、案件が大型化するほど売上が積み上がります。会社は今1Qについて、光コンポーネント製品・光ケーブルと並べてこのエンジニアリング事業の受注が堅調だったことを増収の理由に挙げています。世界的に光ファイバそのものが逼迫しているなかで、ファイバの生産量に左右されにくい領域にリソースを振り向けた、というのが会社の説明です。
市場環境要因と実力要因 ── 会社が増益を2つに割っている理由
フジクラは営業利益の増減を、自社ではどうにもならない要因と、自社の活動が生んだ要因に分けて開示しています。前者が市場環境要因で、円安による為替影響、銅の価格変動、関税の還付が入ります。後者が実力要因で、売上が増えたことによる限界利益の増加、固定費の増減、値上げと品種構成の良化が入ります。今1Qの増益637億円は、市場環境要因が141億円、実力要因が496億円という内訳でした。比率にすると22.1%と77.9%(算出)。増益の4分の3以上を、外の風ではない部分が作ったことになります。
IEEPA関税還付とは ── 増益要因に1行だけ出てくる38億円
IEEPAは国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)の略で、米国が緊急時に経済制裁や輸入制限を発動する根拠になる法律です。この法律に基づいて課された関税について、いったん納めた分が戻ってきたのが関税の還付で、今1Qの営業利益に38億円が乗りました。会社は通期見通しでも、上期に62億円の還付を織り込むと明記しています。1Qで38億円が入っているので、残り24億円が2Qに入る計算です(算出)。一方で、通商法301条に基づく新しい関税の影響も見通しに織り込まれています。
水素の供給制約と光ファイバ逼迫 ── 増産を止めかねなかった2つのボトルネック
光ファイバ用のガラス母材を作る工程では、原料を高温で反応させるために大量の水素を使います。この水素の調達が足りなくなると、需要があっても増産できません。会社は期初にこのリスクを懸念材料として挙げていましたが、1Qは在庫の活用で業績への影響は限定的だったと説明しています。加えて使用量の削減、調達先の多様化、自社生産の一部前倒しにより、6月18日時点の想定より制約は緩んだとしています。もう1つが世界的な光ファイバの逼迫で、こちらには複数サプライヤーからの外部調達で供給能力を補い、国内の光ケーブル新工場の生産性改善を進めるという対応が取られています。
1株6株の分割 ── 配当225円が38円に見える理由
フジクラは2026年4月1日付で、普通株式1株を6株に分割しました。株数が6倍になるので、1株あたりの金額はすべて6分の1の水準に置き換わります。前期(2026年3月期)の年間配当225円は分割前の実額で、これを分割後のものさしに直すと37円50銭(算出)。今期予想の38円は、そこからほぼ横ばいということになります。1株当たり四半期純利益48円58銭も、前年同期の18.92円と比べられるように、前期の期首に分割があったものとして計算し直された数字です。減配や急増益に見える部分があっても、まず分割を挟んで見る必要があります。

01 ── PERFORMANCE

売上+50.1%に対して営業利益+155.1%。利益率が15.3%から26.1%へ10.8ポイント動いた

売上高4,020億円は前年同期の2,679億円から1,341億円の増加。営業利益は411億円から1,048億円へ637億円増え、営業利益率は15.3%から26.1%になった。四半期の利益率が1年で10.8ポイント動くのは、この規模の電線・素材系メーカーではめずらしい。

費用の側を見ると、動いたのは原価率のほうだ。売上原価率は72.6%から62.9%へ9.7ポイント下がり、売上総利益率は27.4%から37.1%へ上がった(いずれも算出)。販売費及び一般管理費は323億円から441億円へ118億円増えているが、売上比では12.1%から11.0%に下がっている(算出)。売った物の中身が変わり、そのぶん1つ売るごとに残る利益が厚くなった、という形の増益である。

売上高と営業利益 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 2026年3月期1Q vs 2027年3月期1Q

4,500 3,000 1,500 0 2,679 4,020 411 1,048 売上高 営業利益
2025年4-6月 2026年4-6月
決算短信の百万円単位の開示値を億円に丸めて表示(売上高267,908→402,009百万円、営業利益41,086→104,828百万円)。両者を同じ軸で描いているため、営業利益の棒は小さく見える。
連結(2026年4-6月)前年同期実績増減率
売上高2,679億円4,020億円+50.1%
売上総利益734億円1,490億円+103.0%(算出)
販売費及び一般管理費323億円441億円+36.6%(算出)
営業利益411億円1,048億円+155.1%
うち持分法による投資利益20億円53億円+170.0%(算出)
経常利益418億円1,115億円+166.8%
税金等調整前四半期純利益437億円1,114億円+155.0%(算出)
親会社株主帰属四半期純利益313億円804億円+156.8%
1株当たり四半期純利益18円92銭48円58銭+156.8%(算出)
四半期包括利益297億円863億円+190.5%

持分法による投資利益は営業外収益に含まれる項目で、営業利益の外側にある。1株当たり四半期純利益は、2026年4月1日付の1株→6株の分割が前期首にあったものとして両期とも算定されている。

経常利益が営業利益を67億円上回った理由

経常利益1,115億円は営業利益1,048億円を67億円上回っている。前年同期は418億円と411億円で、差は7億円しかなかった。広がった分の中身は持分法による投資利益で、20億円から53億円へ33億円増えている。会社は通期でもこの項目を100億円から227億円へ127億円引き上げており、経常利益の上方修正1,370億円のうち、営業利益の増額1,220億円を超える部分はここで説明がつく。

あわせて、今期から為替予約等の会計処理が変わっている。従来の振当処理をやめ、期末に時価評価する方法に改めた。会社は過去の期間への影響が軽微なため遡及適用はしていないとしており、この変更が損益に与えた金額は開示されていない。

02 ── BRIDGE

増益637億円のうち、外の風が運んだのは141億円。残り496億円は事業側が作った

会社は営業利益の増減を6つの要因に割って開示している。前年1Qの411億円が出発点。ここに為替影響+94億円、銅価の影響+9億円、IEEPA関税の還付+38億円が乗り、売上増加に伴う限界利益の増加が+361億円、固定費の増減が▲99億円、値上げおよび品種構成の良化等が+234億円で1,048億円に着地する。

会社自身の区分では、前の3つが市場環境要因の141億円、後の3つが実力要因の496億円。比率にすると22.1%と77.9%(算出)だ。円安と銅高で嵩上げされた決算ではない、という点はこの1枚から読み取れる。とくに値上げおよび品種構成の良化等の+234億円は、同じ物をより高く売れたか、利益率の高い品目の構成が増えたかのどちらかを意味する。売上総利益率が9.7ポイント上がったことと、この234億円は同じ現象を別の角度から見ている。

営業利益の増減分析 ── 411億円から1,048億円まで

単位:億円 / 会社開示の要因分解(2026年度第1四半期決算説明資料 P.7)

1,200 900 600 300 0 411 +94 +9 +38 +361 ▲99 +234 1,048 25年度1Q実績 為替影響 銅価の影響 IEEPA関税還付 売上増による限界利益増 固定費増減 値上げ・品種構成良化等 26年度1Q実績 市場環境要因 +141 実力要因 +496
会社開示の増減分析をそのまま図示。411+94+9+38+361-99+234=1,048億円で一致する。IEEPA関税還付は国際緊急経済権限法に基づく関税の還付額。

売上のほうも同じ形をしている

増収1,341億円の分解も会社が出している。為替影響が+326億円、銅価の影響が+87億円、残る+929億円が実力値。円安と銅高で説明できるのは413億円、全体の30.8%で、7割近くは数量と単価が作った増収になる(算出)。為替の期中平均は1ドル144円60銭から159円57銭へ14円97銭の円安、銅ベースは1トン142万4千円から222万円へ上がっている。どちらも決算をよく見せる方向に効いた期ではあるが、それだけでは1,341億円の増収にはならない。

03 ── SEGMENT

営業利益の93.5%が情報通信から出ている。残る4事業の合計は68億円

報告セグメントは情報通信・エレクトロニクス・自動車・エネルギー・不動産の5つ。今1Qの営業利益を並べると、情報通信が980億円で、連結1,048億円の93.5%を占める(算出)。前年同期は340億円で82.7%だったので、10.8ポイント集中が進んだ計算になる。

情報通信を除いた4事業とその他を足すと68億円。前年の71億円から3億円減っている(算出)。つまり増益637億円は、情報通信の増益640億円がそのまま出てきて、他がわずかに削った結果である。会社全体の決算というより、1つの事業の決算を見ていると考えたほうが実態に近い。

セグメント別の営業利益 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 同じ軸で描いているため、情報通信以外の棒はほとんど見えない

1,000 750 500 250 0 340 980 17 4 14 12 33 53 14 13 情報通信 エレクトロニクス 自動車 エネルギー 不動産 利益率 37.0% 1.3% 2.1% 12.1% 47.0%
2025年4-6月 2026年4-6月
決算説明資料の億円表示による。このほか「その他」が▲6→▲13億円で、合計が連結営業利益411→1,048億円になる。利益率は2026年4-6月の値。
セグメント(2026年4-6月)売上高前年比営業利益前年比利益率
情報通信2,644億円+83.9%980億円+188.3%37.0%
エレクトロニクス353億円△10.3%4億円△73.5%1.3%
自動車550億円+24.7%12億円△2億円2.1%
エネルギー436億円+23.1%53億円+59.2%12.1%
不動産28億円+0.6%13億円△2.7%47.0%
その他8億円△13億円
合計4,020億円+50.1%1,048億円+155.1%26.1%

売上高は外部顧客への売上高。増減率は決算短信の記載値。利益率は営業利益÷売上高(算出)。不動産の売上28億円は旧深川工場跡地の再開発事業「深川ギャザリア」の賃貸収入等が中心。

情報通信 ── 四半期の営業利益が、前年の3四半期分に並んだ

売上2,644億円で+83.9%、営業利益980億円で+188.3%。利益率は23.6%から37.0%へ13.4ポイント上がった。前年度の情報通信は1Qから4Qまで340億円・399億円・404億円・385億円と、四半期あたり400億円前後で推移していた。今1Qの980億円は、その2.4倍から2.9倍にあたる(算出)。

会社が挙げている理由は3つある。米国内外でのデータセンター投資の拡大を背景に旺盛な需要が続いたこと、光コンポーネント製品・光ケーブル・データセンタ向けエンジニアリング事業で受注が堅調だったこと、そして値上げと品種構成の良化。加えて、光ファイバの生産量に大きく左右されない領域へリソースを振り向けた結果として、米国以外の新規データセンタ案件で光コンポーネント製品を大量受注したことが売上と利益の両方を押し上げた。

エレクトロニクスの減収は、半分が事業の付け替えによる

売上353億円で前年比▲41億円、営業利益は17億円から4億円へ▲13億円。数字だけ見ると崩れているが、今期から収益基盤の再構築を目的に、電子部品・コネクタ事業と自動車事業の再編が行われている。一部の製品群がエレクトロニクスから自動車へ移っており、その規模は今1Qで売上39億円。これを戻して比べると392億円となり、前年の394億円とほぼ変わらない(算出)。

利益が減ったほうは付け替えでは説明できない。会社はスマートフォン向け製品の品種構成の変化と材料費の高騰を挙げている。一方でHDD向けはデータセンター需要の拡大を背景に堅調とされており、この事業のなかでも向きが分かれている。自動車は欧州での増産で売上550億円(+109億円)となったが、移管分39億円を除くと実質の増収は70億円(算出)。営業利益は12億円で、前年の14億円から2億円減った。

04 ── GEOGRAPHY

情報通信のアジア向けが6.5倍。「米国以外の新規データセンタ案件」の輪郭は地域別売上に出ている

会社が繰り返し触れている「米国以外の新規データセンタ案件」がどこなのかは明示されていない。ただ、決算短信の収益認識注記にある地域別の内訳を前年と並べると、動いた場所ははっきりする。情報通信のアジア(日本を除く)向けが105億円から680億円へ、6.5倍になっている(算出)。

金額の絶対値でいちばん大きいのは依然として北米で、1,097億円から1,564億円へ467億円増えた(+42.6%・算出)。ただ増加額ではアジアが575億円で北米を上回る。欧州も123億円から185億円へ、その他地域も65億円から166億円へ伸びており、情報通信の増収1,206億円は北米一本足ではなくなった。日本国内向けは48億円から49億円でほぼ横ばいである。

情報通信セグメントの地域別売上2025年4-6月2026年4-6月増減倍率
北米1,097億円1,564億円+467億円1.43倍
アジア(日本を除く)105億円680億円+575億円6.46倍
欧州123億円185億円+61億円1.49倍
その他65億円166億円+101億円2.57倍
日本48億円49億円+1億円1.03倍
情報通信 合計1,438億円2,644億円+1,206億円1.84倍

決算短信の収益認識注記(顧客との契約から生じる収益を分解した情報)より。百万円単位の開示値を億円に丸めて表示しているため、内訳の合計と合計欄は一致しない場合がある。増減額と倍率は算出値。

連結全体で見ても、伸びの中心はアジアに移っている

全社ベースの地域別売上は、北米が1,364億円から1,803億円(+439億円)、アジア(日本を除く)が319億円から901億円(+583億円)、日本が562億円から660億円(+98億円)、欧州が312億円から417億円(+105億円)、その他が123億円から239億円(+116億円)。増加額の43.4%をアジアが占める(算出)。情報通信の増加分575億円が、そのほぼ全部を作っている。

05 ── GUIDANCE

通期を2か月で二度書き換えた。営業利益3,100億円→4,320億円、上げ幅の96%は情報通信

会社は6月18日に上期・通期の業績予想を上方修正したばかりだった。今回の8月7日はその再修正になる。売上高1兆4,620億円→1兆7,550億円(+2,930億円)、営業利益3,100億円→4,320億円(+1,220億円)、経常利益3,160億円→4,530億円(+1,370億円)、親会社株主に帰属する当期純利益2,290億円→3,260億円(+970億円)。前期実績と並べると、売上+48.4%、営業利益+128.9%、純利益+107.4%になる。

2度目の修正の理由を、会社は「下期においても大型案件の受注の確度が高まったと判断した」ためと説明している。6月18日の修正では上期の受注分だけを反映していたので、今回はその先を織り込んだ形だ。セグメント別に見ると営業利益の上方修正1,220億円のうち情報通信が1,175億円で、96.3%を占める(算出)。エネルギーが+46億円、エレクトロニクスが+15億円、自動車が▲17億円。

通期営業利益 ── 前期実績と2度の見通し

単位:億円 / 情報通信とそれ以外の内訳を積み上げ

4,500 3,000 1,500 0 1,887 3,100 4,320 1,527 2,843 4,018 2025年度 実績 2026年度 見通し 2026年度 見通し (前期) 6月18日公表 8月7日公表
情報通信 その他5区分の合計
白抜きの数字が情報通信の営業利益。その他5区分の合計は前期360億円、6月18日公表257億円、8月7日公表302億円(いずれも算出)。情報通信の構成比は前期80.9%から8月7日公表で93.0%へ上がる(算出)。
2026年度(2027年3月期)通期前期実績6月18日公表8月7日修正修正幅
売上高11,824億円14,620億円17,550億円+2,930億円
営業利益1,887億円3,100億円4,320億円+1,220億円
営業利益率16.0%(算出)21.2%24.6%+3.4pt
持分法投資損益100億円227億円+127億円
経常利益3,160億円4,530億円+1,370億円
親会社株主帰属当期純利益2,290億円3,260億円+970億円
1株当たり当期純利益138円31銭196円88銭+58円57銭
自己資本利益率(ROE)47.1%
前提為替レート150円/USD160円/USD10円 円安
前提銅ベース170万円/t224.8万円/t+54.8万円/t

前期実績の営業利益率は1,887÷11,824の算出値。前期の経常利益・当期純利益は決算説明資料に記載がないため「─」とした。1株当たり当期純利益は株式分割後のベース。

ただし2Qは1Qより減益で置かれている

上方修正の中身を四半期に開き直すと、少し違う顔が出てくる。会社の上期見通しは売上8,210億円・営業利益1,980億円。1Qの実績が4,020億円・1,048億円なので、差し引きの2Q想定は売上4,190億円・営業利益932億円になる(算出)。1Qより116億円少ない。情報通信だけで見ても、上期見込1,837億円から1Q実績980億円を引いた857億円で、1Qを123億円下回る(算出)。

そのうえで下期は営業利益2,340億円、四半期あたりに直すと1,170億円で置かれている(算出)。つまり会社の計画は、1Qがいったんピークになり2Qで少し落ち、下期に大型案件が乗って再加速するという形をしている。上期に62億円のIEEPA関税還付を織り込んでいることを踏まえると、2Qに残る還付は24億円(算出)。それを差し引いても、2Qを保守的に置いていることに変わりはない。

営業利益の四半期推移 ── 実績と会社見通し

単位:億円 / 2026年度2Qと下期は上期・通期見通しからの逆算(算出)

2,400 1,600 800 0 411 491 520 465 1,048 932 2,340 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 下期 2025年度 実績 2026年度(1Qのみ実績)
2025年度 実績 2026年度 1Q実績 2026年度 見通し(算出)
2025年度の四半期実績は決算説明資料Appendixより。2026年度2Qの932億円は上期見込1,980億円から1Q実績1,048億円を引いた算出値、下期の2,340億円は年度見込4,320億円から上期見込を引いた算出値(会社開示のAppendixとも一致)。下期の棒は2四半期分をまとめて描いている。

進捗率は4指標とも25%前後に収まっている

1Qの実績を修正後の通期見通しで割ると、売上高22.9%、営業利益24.3%、経常利益24.6%、親会社株主帰属当期純利益24.7%(いずれも算出)。1年の4分の1という目安に対して、驚くほど素直な数字が並ぶ。会社が通期見通しを1Qの4倍で置いた、という見方もできるが、実際には上期と下期で1,980億円と2,340億円に分けられており、下期偏重の形になっている。

通期見通しに対する第1四半期の進捗率

単位:% / 点線=1年の1/4(25%)

25%(1年の1/4) 売上高 営業利益 経常利益 親会社株主帰属利益 22.9% 24.3% 24.6% 24.7%
第1四半期実績÷通期見通し(8月7日修正後)の算出値。売上4,020÷17,550、営業利益1,048÷4,320、経常利益1,115÷4,530、親会社株主帰属利益804÷3,260。

見通しが前提にしているもの

  • 為替160円/USD。2Q以降をこの水準で置いている。1Qの実績平均は159円57銭なので、ほぼ横ばいの前提になる。
  • 感応度は1円で約27億円。仮に155円まで円高が進めば、営業利益は年間で135億円削られる計算になる(算出)。
  • IEEPA関税の還付62億円を上期に織り込み。1Qで38億円が計上済みなので、2Qに残るのは24億円(算出)。
  • 通商法301条に基づく新関税の影響も織り込み済み。金額は開示されていない。
  • 水素の供給制約は使用量削減・調達多様化・自社生産の一部前倒しで、6月18日公表時の想定より緩和したとされる。解消したとは書かれていない。
  • 下期の大型案件は受注の確度が高まったという判断に基づく織り込みで、契約完了を意味しない。

06 ── BALANCE SHEET

運転資本が878億円ふくらみ、ネットキャッシュは962億円から764億円へ減った

6月末の総資産は1兆707億円で、3月末から1,012億円の増加。増えた中身はほぼ運転資本だ。受取債権が2,526億円から3,145億円へ619億円、棚卸資産が1,838億円から2,097億円へ259億円。合わせて878億円の増加になる(算出)。会社は為替換算の影響を受取債権+30億円、棚卸資産+17億円と開示しており、これを除いた実質の増加は589億円と242億円である。

売上が5割増える局面で債権と在庫がふくらむのは自然な動きだが、資金は先に出ていく。有利子負債は850億円から1,159億円へ309億円増え、現金及び預金の増加111億円を差し引いたネットキャッシュは962億円から764億円へ198億円減った(算出)。自己資本比率は57.8%から56.8%へ1.0ポイント下がっている。純資産は804億円の四半期純利益で積み上がる一方、配当の支払いで一部が相殺された。

財政状態3月末6月末
総資産9,695億円10,707億円
現金及び預金1,812億円1,923億円
受取債権2,526億円3,145億円
棚卸資産1,838億円2,097億円
有利子負債850億円1,159億円
ネットキャッシュ962億円764億円
純資産5,932億円6,416億円
自己資本比率57.8%56.8%
その他の主要数値前年1Q当1Q
減価償却費55億円64億円
のれん償却額4.0億円4.4億円
研究開発費48億円
設備投資(1Q)87億円
為替(期中平均)144円60銭159円57銭
銅ベース142.4万円/t222.0万円/t
コミットメントライン未使用枠600億円600億円

財政状態は決算説明資料P.13・P.14、その他の数値は決算短信の注記より。ネットキャッシュは現金及び預金から有利子負債を差し引いた会社開示値。設備投資87億円は固定資産の増減要因として開示されたもの。

配当は年38円のまま据え置き。判断は2Q決算に持ち越された

2027年3月期の年間配当予想は中間19円・期末19円の合計38円で、6月18日公表から変更されていない。前期は225円だったが、2026年4月1日付で1株を6株に分割しているため、分割後のものさしに直すと37円50銭(算出)。実質はほぼ据え置きということになる。

気になるのは、会社が「28中期基本方針(2026〜2028)に基づき、配当性向40%を目安に株主還元を実施する」と明記していることだ。修正後の1株当たり当期純利益196円88銭に40%を掛けると78円75銭になる(算出)。現行の38円予想は配当性向19.3%で、目安の半分にも届かない(算出)。会社はこの点について「26年度配当予想の修正については、第2四半期決算を踏まえ決定」としており、判断を先送りしている。業績予想を2度書き換えながら配当だけが動いていないのは、そういう理由による。

9月に中国の合弁を手放す

2026年7月10日の取締役会で、光ファイバ用母材の研究開発・製造・販売を手がける中国の合弁会社、藤倉烽火光電材料科技有限公司の出資持分60%全部を、合弁相手の烽火通信科技股份有限公司へ譲渡することが決議された。譲渡価額は5億0,024万人民元、実行は2026年9月下旬の予定で、会社は譲渡損益の影響を軽微としている。両社が「当該合弁事業は一定の役割を終えた」という共通認識に至ったため、というのが理由だ。光ファイバの母材を中国で作る枠組みを畳む一方、光コンポーネントとエンジニアリングに寄せていく今の重心の置き方とは、方向として揃っている。

07 ── SUMMARY

増益の中身は良い。問われるのは、1つのセグメントに93.5%を預けた状態がどこまで続くか

評価できる点

  • 営業利益1,048億円で前年の2.55倍。売上・営業・経常・純利益のすべてが1Qとして過去最高。
  • 増益637億円のうち496億円(77.9%・算出)が実力要因。円安と銅高で作った決算ではない。
  • 売上総利益率が27.4%から37.1%へ(算出)。値上げと品種構成の良化が234億円効いた。
  • 情報通信の営業利益率が23.6%から37.0%へ13.4ポイント上昇。
  • アジア向けが6.5倍(算出)。北米一本足だった需要地が広がった。
  • 通期営業利益を4,320億円へ。前期1,887億円からの上げ幅は2,433億円。
  • 自己資本比率56.8%、ネットキャッシュ764億円。増産局面でも財務に余裕がある。

留意しておきたい点

  • 営業利益の93.5%が情報通信(算出)。残る4事業の合計68億円は前年より3億円減。
  • 通期の上方修正1,220億円のうち1,175億円(96.3%・算出)が情報通信
  • 会社の計画では2Qは932億円と1Qより116億円減益(算出)。回復は下期前提。
  • 為替は1円で27億円動く。160円前提が155円になれば年間135億円の減(算出)。
  • エレクトロニクスの営業利益は17億円から4億円へ。材料費高騰の影響が残る。
  • 運転資本が878億円増加(算出)。ネットキャッシュは962億円から764億円へ。
  • 配当性向は19.3%(算出)で、方針の40%目安に届いていない。判断は2Qへ。
  • 水素の供給制約は「緩和」であって解消ではない。光ファイバ逼迫も続いている。

この四半期のフジクラは、AIデータセンターの配線を握っている会社として決算を出した。光コンポーネント、光ケーブル、そして敷設まで引き受けるエンジニアリング。世界的に光ファイバそのものが足りないなかで、ファイバの生産量に縛られない領域へリソースを移し、そこで米国以外の新規案件を大量に取った。営業利益率37.0%という数字は、その判断が当たったことを示している。

ただ、同じ数字は別のことも示している。連結営業利益の93.5%が1つのセグメントから出ていて、通期見通しではその比率が93.0%で据わったままだ。エレクトロニクスは4億円、自動車は12億円、エネルギーは53億円。5つあるセグメントのうち4つは、全社の利益にほとんど影響しない規模になっている。データセンター投資が続くかぎりこの構図は強みとして働くが、逆を向いたときに受け止める場所が、いまの損益計算書には見当たらない。

次の確認点は2つある。1つは2Qの実績が、会社が置いた932億円をどう超えるか。もう1つは、期末に向けて配当性向40%の目安がどこで実現されるか。どちらも11月の第2四半期決算で答えが出る。

レポート一覧へ戻る →