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シリコンウエハーのダイシング(切断)工程のマクロ撮影イメージ

EARNINGS REVIEW

ディスコ

2027年3月期 第2四半期(中間期) 決算レビュー

証券コード 6146(東証プライム)/ 対象期間 2026年4月〜9月 / 決算発表 2026年10月22日

上期(4〜9月)の売上高は2,571億円、前年同期比+32.1%。営業利益は1,166億円で+47.9%と、売上の伸びをさらに上回る増益でした。 牽引役は生成AIです。データセンタ向け投資の継続で、先端ロジックやAI用メモリHBM向けの高性能半導体需要が高水準に推移し、それを切り・削る同社の装置と消耗品がフル回転しました。 利益率はさらに切り上がり、売上総利益率71.5%、営業利益率は45.4%。7〜9月単独でみれば出荷額1,486億円・営業利益率47.4%といずれも過去最高を更新しています。中間配当も業績連動で186円へ増やしました。

売上高(上期累計)

2,571億円
+32.1%前年同期比

営業利益(上期累計)

1,166億円
+47.9%利益率 45.4%

中間純利益

804億円
+43.7%純利益率 31.3%

1株当たり中間純利益

740円84銭
+43.7%前年 515円70銭
ディスコとは ── 半導体を「切る・削る・磨く」世界大手
シリコンウエハーからチップを切り出すダイサ、ウエハーを髪の毛より薄く削るグラインダなどの精密加工装置で世界シェア首位級のメーカーです。装置に加えて、加工に使う砥石の刃(精密加工ツール)を消耗品として継続販売しており、顧客工場が稼働するほどツールが売れる二段構えの収益構造を持ちます。事業は単一セグメントで、本社は東京・大森。決算期は3月です。
HBMとは ── AIサーバーの記憶を支える「積層メモリ」
High Bandwidth Memory(高帯域幅メモリ)の略で、メモリチップを何層にも積み重ねて超高速のデータのやり取りを実現した、生成AI向け半導体の中核部品です。チップを積み重ねるには1枚1枚を極限まで薄く削る必要があり、ここでディスコのグラインダと薄化技術が使われます。AIサーバー投資が増えるほどHBMが増え、HBMが増えるほど「削る」工程の需要が増える、という関係です。
出荷額と売上高の違い ── 「作って出した」と「売上に立った」
出荷額は同社が工場から顧客へ出荷した金額、売上高は顧客側での据付・検収(確認完了)が済んで会計上の売上に計上された金額です。装置の売上は検収のタイミングで立つため、出荷額が売上高を上回っているときは、これから売上に変わる装置がまだ手前に積まれていると読めます。上期は出荷額2,846億円に対し売上高2,571億円でした。
業績予想が「1四半期先まで」しかない理由
半導体業界は顧客の投資意欲が短期間で激変するため、ディスコは通期予想を出さず、直近の1四半期先までだけを開示する方針を採っています。今回も通期(来年3月まで)ではなく、4〜12月(9か月)の累計予想だけが開示されました。予想が「弱気」なのではなく、そもそも遠くまで約束しない主義です。同じ理由で配当も業績連動で、半期ごとに決まります。

01 ── PERFORMANCE

増収+32%に対して増益+48%。伸びの質がさらに良い

上期(4〜9月累計)の売上高2,571億円は中間期として過去最高です。前年同期の増収率+8.7%から+32.1%へ大きく再加速しました。装置の検収(顧客側での据付・確認完了=売上計上)が順調に進んだことに加え、出荷額は2,846億円と前年同期比+37.2%で伸びています。売上より出荷が大きいということは、これから売上に変わる装置がまだ手前に積まれているということでもあります。

売上高と営業利益 ── 前年同期(上期累計)との比較

単位:億円 / 2026年3月期 上期 vs 2027年3月期 上期

2,600 1,300 0 1,945 2,571 789 1,166 売上高 営業利益
2026年3月期 上期 2027年3月期 上期
決算短信の百万円単位の開示値を億円に丸めて表示(売上高194,537→257,058百万円、営業利益78,871→116,639百万円)。
連結(2026年4-9月累計)実績前年同期比
出荷額(参考指標)2,846億円+37.2%
売上高2,571億円+32.1%
営業利益1,166億円+47.9%(利益率 45.4%)
経常利益1,144億円+44.0%
中間純利益(親会社株主帰属)804億円+43.7%

02 ── PROFITABILITY

粗利率71.5%、営業利益率45.4%という異次元の収益性

この決算の主役は利益率です。売上総利益率(粗利率)は前年同期の68.9%から71.5%へ上昇。短信は要因として為替の影響と、高付加価値製品の構成比上昇を挙げています。HBMや先端ロジック向けの難易度が高い加工ほど、高く売れる。人件費や研究開発費の増加で販管費は673億円へ22.0%増えましたが、粗利の伸びがそれを丸ごと吸収し、営業利益率は40.5%から45.4%へ4.9ポイント改善しました。「売上の4割超が営業利益」という製造業離れした収益構造が、いっそう際立っています。

利益率の改善 ── 前年同期(上期累計)との比較

単位:% / 売上総利益率と営業利益率

80 40 0 68.9 71.5 40.5 45.4 売上総利益率 営業利益率
2026年3月期 上期 2027年3月期 上期
開示数値からの算出(粗利率=売上総利益÷売上高、営業利益率=営業利益÷売上高)。前年同期の営業利益率は78,871÷194,537=40.5%。

なぜここまで稼げるのか ── 装置と「刃」の二段構え

ディスコの収益構造は、装置を売って終わりではありません。切断・研削に使う砥石の刃は消耗品で、顧客の工場が動き続ける限り繰り返し売れます。上期は消耗品である精密加工ツールの出荷も顧客の設備稼働率に連動して過去最高を更新しました。装置で市場を押さえ、消耗品で刈り取る。世界シェア首位級の加工技術に裏打ちされた価格決定力が、この利益率の土台にあります。

03 ── MOMENTUM

7〜9月単独で過去最高。出荷は1,486億円へ

上期の数字を四半期に割ると、勢いがさらにはっきりします。7〜9月単独(第2四半期)の売上高は1,428億円で、4〜6月の1,143億円から25%伸びました。営業利益は676億円・営業利益率47.4%、出荷額は1,486億円で、いずれも四半期として過去最高です。生成AI向けを中心としたIC(集積回路)向けの需要がダイサ・グラインダの両輪を押し上げ、加えてCPO(光と電気を同じパッケージに載せる次世代実装)に関連した光半導体・光部品向けも伸びました。

売上高の四半期推移 ── 右肩上がりが続く

単位:億円 / FY25=2026年3月期、FY26=2027年3月期。3Qは会社予想

1,500 750 0 899 1,046 1,093 1,331 1,143 1,428 1,324 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q予 FY25(2026年3月期) FY26(2027年3月期)
過去実績 当第2四半期(過去最高) 第3四半期 会社予想
同社決算説明資料の四半期推移(億円)に基づく。FY25各四半期・FY26第1〜第2四半期は実績、第3四半期は会社予想。

何が売れているのか ── 製品・用途・地域の中身

出荷額を製品別にみると、装置(精密加工装置)が63%、消耗品の精密加工ツールが23%、残りがその他です。用途別では、切断装置ダイサ・研削装置グラインダともにIC向けが7割超を占め、生成AI関連が全体を牽引する構図がはっきりしています。地域別(検収ベース)では海外が89.7%を占め、なかでもアジア向けが78%と中心です。

出荷額・検収額の構成比(2027年3月期 第2四半期)

上=製品別(出荷額ベース)/下=地域別(検収ベース)

製品別 精密加工装置 63% ツール 23% 14% 地域別 アジア 78% 日本10% 欧州7% 米5%
精密加工装置 / 日本 精密加工ツール / アジア アメリカ その他 / ヨーロッパ
同社決算説明資料の構成比に基づく。製品別は出荷額ベース、地域別は検収ベース。海外売上高比率は89.7%。

04 ── BALANCE & DIVIDEND

財務は盤石のまま、中間配当は186円へ増配

財務基盤は引き続き強固です。総資産は前期末から812億円増えて8,246億円、純資産は409億円増えて6,290億円。自己資本比率は76.1%と高水準を保っています。前期末の78.9%から2.8ポイント下がっていますが、これは利益を上回るペースで総資産が膨らんだためで、負債の中心は契約負債(出荷時に受け取る前受金)と未払法人税の増加です。いずれも事業が活況であることの裏返しで、借金が増えたわけではありません。手元の現金及び現金同等物は2,006億円まで積み上がりました。

キャッシュの稼ぐ力も強まりました。上期の営業キャッシュ・フローは1,117億円の収入と前年同期比+181.5%。設備投資などの投資キャッシュ・フロー548億円の支出を差し引いても、フリー・キャッシュ・フローは569億円のプラスです。この潤沢なキャッシュが、業績連動の配当方針を支えています。

配当も動きました。同社は半期の連結純利益の25%を配当する方針で、上期の増益を受けて中間配当は1株186円に決まりました。前年の中間配当129円から+44.2%の増配です。期末配当は未定で、これも「年2回・半期ごとに業績に連動して決める」という同社の流儀どおりです。

中間配当の推移

単位:円 / 1株当たり中間配当金

129円 186円 2026年3月期 中間 2027年3月期 中間
前年同期比+44.2%。配当方針は「連結半期純利益の25%を配当」で、業績連動により増配。期末配当は未定。

05 ── GUIDANCE

4〜12月の予想を新規開示。でも通期は、まだ出さない

これまで未開示だった4〜12月(9か月累計)の業績予想が今回開示されました。売上高3,895億円(前年同期比+28.2%)、営業利益1,747億円(+38.4%)、純利益1,219億円(+31.6%)。この9か月予想から上期実績を差し引くと、10〜12月単独(第3四半期)は売上高1,324億円・営業利益581億円の計画になります。上期の勢いがほぼそのまま続く見立てです。4〜12月の出荷額は4,342億円を想定しています。

連結業績予想4〜12月累計前年同期比うち10-12月(単独)
売上高3,895億円+28.2%1,324億円
営業利益1,747億円+38.4%581億円
経常利益1,734億円+37.1%590億円
純利益1,219億円+31.6%415億円

7〜9月の前提為替レートに続き、10〜12月は1ドル151円・1ユーロ173円を前提に置いています。年換算の為替感応度は1ドルあたり約21億円で、想定より円高に振れれば利益は目減りします。

「1四半期先まで」の視界であることは忘れずに

9か月予想は力強い一方、来年1〜3月(第4四半期)と通期の予想はまだ存在しません。半導体の設備投資は変動が激しく、同社自身が通期を約束しない方針を続けています。想定レート151円/ドルより円高に振れれば利益は目減りしますし、AI投資の一服が来れば装置の検収時期は動きます。好調な決算ほど、視界の短さとセットで受け取るのが、この銘柄の正しい読み方です。

06 ── SUMMARY

評価できる点と、見ておきたい点

評価できる点

  • 上期は増収+32.1%に対し営業増益+47.9%。伸びの質が高い。
  • 粗利率71.5%・営業利益率45.4%と収益性がさらに改善。
  • 7〜9月単独で出荷額1,486億円・営業利益率47.4%と過去最高を更新。
  • 営業CF+181.5%・FCF569億円と現金創出力も強い。
  • 自己資本比率76.1%・現金2,006億円と財務は盤石。中間配当186円(+44%)。

見ておきたい点

  • 業績予想は4〜12月まで。第4四半期・通期の視界はまだない。
  • 生成AI・HBM向けへの依存度が高まる構図。AI投資の変調が直撃するリスク。
  • 10-12月の前提は1ドル151円。円高への振れは利益の下押し要因。
  • 装置売上は検収のタイミングで四半期ごとにぶれやすい。

総括 ── AIブームの「砥石」を握る会社

生成AIの主役はGPUやHBMですが、そのチップは1枚残らず「切って、削って、磨いて」作られます。その工程を世界規模で押さえているのがディスコです。上期の決算は、AI投資の恩恵が装置と消耗品の両輪に波及し、もともと高い利益率がさらに切り上がったことを示しました。注目すべきは派手な増収率よりも、出荷額が売上高を上回って示す「まだ手前に積まれた需要」と、1四半期ごとにしか先を約束しない同社の流儀です。次の開示で第4四半期の視界がどう示されるかが、最初の確認ポイントになります。

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