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シリコンウエハーのマクロ撮影イメージ

EARNINGS REVIEW

ディスコ

2027年3月期 第1四半期 決算レビュー

証券コード 6146(東証プライム)/ 対象期間 2026年4月〜6月 / 決算発表 2026年7月23日

売上高1,143億円、前年同期比+27.1%。営業利益は490億円で+42.2%と、売上の伸びを大きく上回る増益になりました。 牽引役は生成AIです。データセンタ向け投資の継続で、先端ロジックやAI用メモリHBM向けの高性能半導体需要が高水準に推移し、それを削り・磨く同社の装置と消耗品がフル回転しました。 そして特筆すべきは利益率。売上総利益率は71.3%、営業利益率は42.9%に達します。製造業で「売上の4割が営業利益」という、この会社の特異な収益構造がいっそう際立った四半期です。

売上高

1,143億円
+27.1%前年同期比

営業利益

490億円
+42.2%利益率 42.9%

純利益

342億円
+44.0%純利益率 29.9%

1株当たり純利益

315円51銭
+43.9%前年 219円23銭
ディスコとは ── 半導体を「切る・削る・磨く」世界大手
シリコンウエハーからチップを切り出すダイサ、ウエハーを髪の毛より薄く削るグラインダなどの精密加工装置で世界シェア首位級のメーカーです。装置に加えて、加工に使う砥石の刃(精密加工ツール)を消耗品として継続販売しており、顧客工場が稼働するほどツールが売れる二段構えの収益構造を持ちます。事業は単一セグメントで、本社は東京・大森。決算期は3月です。
HBMとは ── AIサーバーの記憶を支える「積層メモリ」
High Bandwidth Memory(高帯域幅メモリ)の略で、メモリチップを何層にも積み重ねて超高速のデータのやり取りを実現した、生成AI向け半導体の中核部品です。チップを積み重ねるには1枚1枚を極限まで薄く削る必要があり、ここでディスコのグラインダと薄化技術が使われます。AIサーバー投資が増えるほどHBMが増え、HBMが増えるほど「削る」工程の需要が増える、という関係です。
契約負債とは ── 先にもらった代金は「これからの仕事」の印
顧客から代金の一部を前受けしたものの、まだ製品を納めていない(売上に計上していない)金額です。装置ビジネスでは受注時に前受金を受け取ることが多く、契約負債の増加は受注が積み上がっているサインとして読めます。ディスコの契約負債はこの3か月で500億円から730億円へ230億円増えました。
業績予想が「1四半期先まで」しかない理由
半導体業界は顧客の投資意欲が短期間で激変するため、ディスコは通期予想を出さず、1四半期先(今回は上期累計まで)だけを開示する方針を採っています。予想が「弱気」なのではなく、そもそも遠くまで約束しない主義です。同じ理由で配当も業績連動で、半期ごとに決まります。予想を読むときはこの流儀を前提にしてください。

01 ── PERFORMANCE

増収+27%に対して増益+42%。伸びの質が良い

売上高1,143億円は第1四半期として過去最高水準です。前年同期の増収率+8.6%から+27.1%へ再加速しました。装置の検収(顧客側での据付・確認完了=売上計上)が順調に進んだことに加え、出荷額も1,359億円と前年同期比+22.3%で伸びています。売上より出荷が大きいということは、これから売上に変わる装置がまだ手前に積まれているということでもあります。

売上高と営業利益 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 2026年3月期1Q vs 2027年3月期1Q

1,200 600 0 899 1,143 345 490 売上高 営業利益
2025年4-6月 2026年4-6月
決算短信の百万円単位の開示値を億円に丸めて表示(売上高89,914→114,308百万円、営業利益34,480→49,033百万円)。
連結(2026年4-6月)実績前年同期比
出荷額(参考指標)1,359億円+22.3%
売上高1,143億円+27.1%
営業利益490億円+42.2%(利益率 42.9%)
経常利益484億円+42.5%
純利益(親会社株主帰属)342億円+44.0%

02 ── PROFITABILITY

粗利率71.3%、営業利益率42.9%という異次元の収益性

この決算の主役は利益率です。売上総利益率(粗利率)は前年同期の68.1%から71.3%へ上昇。短信は要因として為替の影響と、高付加価値製品の構成比上昇を挙げています。HBMや先端ロジック向けの難易度が高い加工ほど、高く売れる。人件費や研究開発費の増加で販管費は325億円へ21.4%増えましたが、粗利の伸びがそれを丸ごと吸収し、営業利益率は38.3%から42.9%へ4.6ポイント改善しました。

利益率の改善 ── 前年同期との比較

単位:% / 売上総利益率と営業利益率

80 40 0 68.1 71.3 38.3 42.9 売上総利益率 営業利益率
2025年4-6月 2026年4-6月
開示数値からの算出(粗利率=売上総利益÷売上高、営業利益率=営業利益÷売上高)。

なぜここまで稼げるのか ── 装置と「刃」の二段構え

ディスコの収益構造は、装置を売って終わりではありません。切断・研削に使う砥石の刃は消耗品で、顧客の工場が動き続ける限り繰り返し売れます。今四半期も消耗品の出荷は顧客の設備稼働率に連動して高水準でした。装置で市場を押さえ、消耗品で刈り取る。世界シェア首位級の加工技術に裏打ちされた価格決定力が、この利益率の土台にあります。

03 ── DEMAND

契約負債+230億円 ── 需要はまだ手前に積まれている

貸借対照表には、需要の強さを示すサインが2つ出ています。ひとつは契約負債(前受金)で、3か月で500億円から730億円へ46%増えました。装置の注文時に受け取る前受けが積み上がっている形です。もうひとつは棚卸資産で、完成品(商品及び製品)が390億円から478億円へ増加。これから顧客に納める装置の在庫が厚くなっていると読めます。出荷額(1,359億円)が売上高(1,143億円)を上回っていることとも整合的です。

財務基盤は引き続き盤石です。総資産7,511億円に対して自己資本比率77.3%、現金及び預金は2,838億円。純資産が前期末から56億円減っていますが、これは3月期末配当(1株376円・総額約408億円)の支払いが今四半期の利益342億円をわずかに上回ったためで、業績悪化によるものではありません。

04 ── GUIDANCE

上期は営業利益+33%を計画。中間配当は171円へ

これまで未開示だった上期(4〜9月累計)の業績予想が今回開示されました。売上高2,428億円(前年同期比+24.8%)、営業利益1,049億円(+33.0%)、純利益738億円(+32.0%)。第1四半期の実績はこの上期計画に対して売上で47%、営業利益で47%の進捗にあたり、半分の折り返しにほぼ乗っています。上期の出荷額は2,769億円を想定し、7〜9月期の前提為替レートは1ドル159円です。

上期予想に対する第1四半期の進捗率

単位:% / 点線=上期の半分(50%)

50%(上期の半分) 売上高 営業利益 純利益 47.1% 46.7% 46.4%
第1四半期実績÷上期(中間期)予想の算出値。同社は通期予想を開示しないため、進捗は上期予想に対して測っている。

配当も動きました。未定だった中間配当の予想が1株171円と開示され、前年の中間配当129円から+32.6%。同社の配当は業績連動なので、この増配は上期の増益計画をそのまま映した数字です。なお第1四半期の実績は期初の会社予想から上振れており、予想値と実績値の差異について同日付で別途開示が出ています。

「1四半期先まで」の視界であることは忘れずに

上期計画は力強い一方、下期(10月以降)の予想はまだ存在しません。半導体の設備投資は変動が激しく、同社自身が「需要予測は困難」と明言して1四半期先までしか約束しない方針です。7〜9月の前提レート159円/ドルより円高に振れれば利益は目減りしますし、AI投資の一服が来れば装置の検収時期は動きます。好調な決算ほど、視界の短さとセットで受け取るのが、この銘柄の正しい読み方です。

05 ── SUMMARY

評価できる点と、見ておきたい点

評価できる点

  • 増収+27.1%に対し営業増益+42.2%。伸びの質が高い。
  • 粗利率71.3%・営業利益率42.9%と収益性がさらに改善。
  • 契約負債+230億円・出荷額>売上高と、需要の先行指標が強い。
  • 上期計画+33%増益・中間配当171円(前年比+33%)を新規開示。
  • 自己資本比率77.3%・現金2,838億円と財務は盤石

見ておきたい点

  • 業績予想は上期まで。下期・通期の視界はまだない。
  • 生成AI・HBM向けへの依存度が高まる構図。AI投資の変調が直撃するリスク。
  • 7-9月の前提は1ドル159円。円高への振れは利益の下押し要因。
  • 装置売上は検収のタイミングで四半期ごとにぶれやすい。

総括 ── AIブームの「砥石」を握る会社

生成AIの主役はGPUやHBMですが、そのチップは1枚残らず「切って、削って、磨いて」作られます。その工程を世界規模で押さえているのがディスコです。今回の決算は、AI投資の恩恵が装置と消耗品の両輪に波及し、もともと高い利益率がさらに切り上がったことを示しました。注目すべきは派手な増収率よりも、契約負債と出荷額が示す「まだ手前に積まれた需要」と、1四半期ごとにしか先を約束しない同社の流儀です。次の開示で下期の視界がどう示されるかが、最初の確認ポイントになります。

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