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EARNINGS REVIEW

ASML

2026年 第2四半期 決算レビュー

オランダ・半導体露光装置(アムステルダム/ナスダック上場)/ 対象期間 2026年3月30日〜6月28日/ US GAAP・ユーロ建て

第2四半期は増収増益で、利益の伸びが売上を上回りました。四半期の売上高は93.3億ユーロ(日本円でおよそ1.6兆円規模)と前年同期を21.3%上回り、 本業のもうけを示す営業利益は29.7%増。粗利率は54.0%と直近5四半期で最も高く、増収を利益へ効率よく変換した四半期でした。 ASMLは最先端半導体の製造に欠かせないEUV(極端紫外線)露光装置を独占的に供給する企業で、AI向け半導体投資の拡大が需要の追い風になっています。

売上高

93.3億ユーロ
+21.3%前年 76.9億ユーロ

営業利益

34.6億ユーロ
+29.7%前年 26.6億ユーロ

純利益

29.2億ユーロ
+27.4%前年 22.9億ユーロ
そもそもASMLとは ── 半導体の「心臓部」をつくる会社
ASMLはオランダに本社を置く半導体製造装置メーカーです。半導体チップは、シリコンの上に微細な回路を「光で焼き付ける」露光(リソグラフィ)という工程で作られます。ASMLはこの露光装置の世界最大手で、なかでも最先端チップに必須のEUV(極端紫外線)露光装置を量産できる唯一の企業です。スマートフォンからAI用の高性能チップまで、先端半導体の製造ラインはASMLの装置なしに成り立ちません。決算はユーロ建て・米国会計基準(US GAAP)で開示されます。
決算でよく使う「利益の4段階」を押さえておく
利益は上から順に費用を差し引きながら段階的に示されます。売上高から製造原価を引いたものが売上総利益(粗利)。そこから研究開発費や販売管理費を引くと営業利益(本業のもうけ)。さらに金利など本業以外の損益を加減し、税金を差し引いて最終的に残るのが純利益です。下の段ほど「実際に会社へ残る利益」に近づきます。粗利率は売上に占める粗利の割合で、製品の稼ぐ力を測る代表的な指標です。
売上は「装置」と「サービス」の2本立て
ASMLの売上は大きく2種類です。ひとつは露光装置そのものを販売するシステム販売。もうひとつは、納入後の保守・アップグレード・部品供給などから継続的に得るサービス・フィールドオプション売上です。前者は大型受注で変動しやすい一方、後者は積み上がった設置台数に応じて安定的に入る収益で、業績の底堅さを支えます。

01 ── PERFORMANCE

増収を上回るペースで利益が伸びた

売上総利益・営業利益・純利益はいずれも前年同期を2割超で上回りました。とりわけ営業利益は+29.7%と、増収率(+21.3%)を大きく超えて伸びています。売上の増加が費用の増加を上回り、もうけの効率そのものが改善したことを示しています。

利益の前年同期比較

単位:億ユーロ / 前年同期(2025年4〜6月)と当期(2026年4〜6月)の比較

50億 25億 0 41.3 26.6 22.9 +21.9% 50.4 +29.7% 34.6 +27.4% 29.2 売上総利益 営業利益 純利益
前年同期 当期
売上高は前年76.9億ユーロ→当期93.3億ユーロ(+21.3%)。上図は利益3指標を同一スケールで比較したもの(売上高はスケールが異なるため割愛)。1株当たり利益(希薄化後)は5.90ユーロ→7.58ユーロ(+28.5%)。

02 ── DRIVERS

なぜ利益がここまで伸びたのか

要因は「装置とサービスの両輪で売上を伸ばし、その増収を高い利益率で取り込んだ」ことにあります。売上が21.3%伸びる一方、研究開発費と販売管理費の合計の増加は約7.5%にとどまり、その差が利益に直結しました。

① 装置販売とサービスがそろって拡大した

売上の柱である露光装置の販売(システム販売)は56.0億→65.6億ユーロと前年同期比+17.3%。露光装置の出荷台数は91台と、前年の76台から15台増えました。加えて、納入済み装置の保守・アップグレードから得るサービス・フィールドオプション売上が21.0億→27.6億ユーロと+31.8%で伸び、装置販売を上回るペースで拡大しています。

② 粗利率が改善し、営業レバレッジが効いた

売上に占める粗利の割合(粗利率)は前年の53.7%から54.0%へ改善し、直近5四半期で最も高い水準となりました。売上規模が拡大するなかで固定的な費用の比率が下がり、営業利益率は34.6%から37.1%へ上昇。これが増収率を超える利益の伸びを生みました。

売上100に対し、本業で37が残る

売上に対して本業で残る利益(営業利益率)は、前年の34.6%から当期は37.1%へ。売上を1つ積み上げるごとに残る利益が厚くなっており、単なる増収ではなく「稼ぐ効率」の伴った四半期であったことがわかります。

03 ── REVENUE MIX & TREND

装置が7割、サービスが3割

四半期売上93.3億ユーロの内訳は、装置販売が約7割、サービス・フィールドオプションが約3割です。装置は大型受注で振れやすい一方、サービスは設置台数の積み上がりに応じて安定的に入る収益で、両者の組み合わせが業績を支えています。

売上の内訳(当期・種類別)

当期売上高 93.3億ユーロの内訳

システム販売 70% 30%
システム販売 65.6億ユーロ(70.4%) サービス・フィールドオプション 27.6億ユーロ(29.6%)

四半期ごとの推移で見ると、当期の売上93.3億ユーロは直近5四半期で2番目に高い水準です。装置の出荷計画によって四半期ごとの売上は上下しますが、粗利率は51〜54%のレンジで底堅く推移し、当期は54.0%と最も高い水準に達しました。

四半期売上高の推移(直近5四半期)

単位:億ユーロ / 棒の下は各四半期の粗利率

100億 50億 0 76.9 75.2 97.2 87.7 93.3 25年4-6月 25年7-9月 25年10-12月 26年1-3月 26年4-6月 粗利53.7% 粗利51.6% 粗利52.2% 粗利53.0% 粗利54.0%
直近の四半期(2026年4〜6月=当期)を強調色で表示。売上は装置の出荷計画で四半期ごとに変動する一方、粗利率は50%台前半で安定的に推移している。

04 ── HALF-YEAR & CASH FLOW

上期累計も二桁増、ただし現金の動きには注意

上期(1〜6月の6か月累計)でも増収増益が続いています。売上高は180.9億ユーロ(+17.2%)、営業利益は66.1億ユーロ(+22.4%)、純利益は56.7億ユーロ(+22.2%)と、いずれも前年を2割前後上回りました。

上期累計(6か月)当期前年同期増減率
売上高180.9億ユーロ154.3億ユーロ+17.2%
営業利益66.1億ユーロ54.0億ユーロ+22.4%
純利益56.7億ユーロ46.5億ユーロ+22.2%

一方で、現金の入り方には利益とは異なる動きが出ています。当第2四半期単体の営業キャッシュフローは+17.0億ユーロと堅調でしたが、上期累計ではマイナス4.8億ユーロと純利益(56.7億ユーロ)から大きく乖離しました。理由は運転資本の増加です。受取債権が前期末の30.2億ユーロから当四半期末72.5億ユーロへ膨らみ、在庫を含む資産・負債の変動が上期で67.7億ユーロの資金流出要因となりました。

「利益は出ているのに現金が減る」の正体

装置ビジネスは製造から代金回収までのリードタイムが長く、売上が伸びる局面では受取債権や在庫(当四半期末で117.4億ユーロ)に資金が先に寝ます。これは事業縮小ではなく成長にともなう運転資本の先行投下で、代金が回収される次以降の四半期でキャッシュとして戻ってくる性質のものです。当第2四半期単体では営業キャッシュフローが黒字(+17.0億ユーロ)に転じている点も、その裏付けといえます。

05 ── BALANCE SHEET

財務は一段と強固、株主還元も積極的

総資産は前期末並みの502.1億ユーロ。純資産(自己資本)は218.3億ユーロと前年同期から23.9%増え、自己資本比率は39.3%から43.5%へ上昇しました。財務の健全性はむしろ高まっています。

自己資本比率 43.5%

総資産に占める返済不要の自己資本の割合。前年同期の39.3%から改善し、財務基盤は着実に厚くなっています。利益の積み上がりが自己資本を押し上げました。

株主還元 当四半期 約21億ユーロ

配当10.4億ユーロと自社株買い10.8億ユーロを合わせ、四半期で約21.2億ユーロを株主に還元。上期累計では配当16.6億+自社株買い20.8億で約37.3億ユーロにのぼります。

現金及び現金同等物は前期末の129.2億ユーロから当四半期末66.7億ユーロへと大きく減りました。減少の主因は事業悪化ではなく、上期の配当・自社株買い(合計約37.3億ユーロ)と、6.9億ユーロの借入返済です。稼いだ利益を運転資本・株主還元・債務返済に振り向けた結果であり、財務内容の健全性を損なうものではありません。

財政状態(主要項目)当四半期末前期末
総資産502.1億ユーロ505.7億ユーロ
棚卸資産117.4億ユーロ114.3億ユーロ
現金及び現金同等物66.7億ユーロ129.2億ユーロ
純資産(自己資本)218.3億ユーロ196.1億ユーロ
前期末=2025年12月31日、当四半期末=2026年6月28日。自己資本比率の前年同期比較(39.3%→43.5%)は前年同四半期末(2025年6月29日)との対比。

06 ── SUMMARY

評価と、見ておくべき論点

評価できる点

  • 売上は直近5四半期で2番目、粗利率54.0%は最高水準。
  • 増収率(+21.3%)を超える営業利益+29.7%の高い効率。
  • 継続収益のサービス売上が+31.8%と装置以上に伸長。
  • 自己資本比率43.5%と財務は強固、還元も積極的

留意すべき点

  • 上期の営業キャッシュフローはマイナス(運転資本の増加)。
  • 現金残高は前期末から約半分に減少
  • 本資料はUS GAAP財務諸表で、受注残・地域別・通期見通しは非開示
  • 輸出規制・関税・地政学など外部環境リスクは継続。

背景にあるのはAI向け半導体投資

ASML自身の将来見通し(フォワードルッキング記載)では、AIの普及と技術進展が半導体需要を押し上げ、自社の装置需要を支える見方が示されています。ただし本資料は財務諸表であり、受注動向や通期の数値目標は含まれません。四半期の勢いが今後も続くかは、別途公表されるプレスリリースの受注・ガイダンスと合わせて確認する必要があります。

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