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夜明け前の濡れた陸上トラックに置かれたランニングシューズ。右側は暗い余白になっている

EARNINGS REVIEW

アシックス

2026年12月期 第2四半期(中間期) 決算レビュー

証券コード 7936(東証プライム)対象期間 2026年1月〜6月決算発表 2026年8月14日

上期の売上高は5,344億円、営業利益は1,204億円。半期としてどちらも過去最高で、売上が中間期で初めて5,000億円を超えた。営業利益率22.5%はスポーツ用品の世界大手と比べても高い部類に入る。会社は同じ日に通期予想を引き上げ、売上高1兆500億円・営業利益1,950億円とした。売上1兆円と純利益1,000億円は、いずれもこの会社が踏んだことのない水準になる。 伸びの中身も悪くない。円安の追い風を外した「為替影響除く」でも売上は+22.0%、営業利益は+37.7%。牽引したのはスポーツスタイル(+83.0%)とオニツカタイガー(+35.9%)で、ランニングの会社という説明ではもう足りなくなっている。 ただし読むべき場所は、上期そのものより下期の置き方のほうにある。通期予想に対する上期の進捗は営業利益で61.8%、純利益で68.5%(いずれも算出)。会社が想定している下期の純利益は、前年の下期を下回る。

売上高(中間期)

5,344億円
+32.7%為替除く +22.0%

営業利益

1,204億円
+48.5%営業利益率 22.5%

親会社株主帰属 中間純利益

821億円
+53.3%EPS 115円93銭

通期営業利益(上方修正後)

1,950億円
+36.8%2月予想から +240億円
「為替影響を除く増減率」とは ── アシックスの決算で最初に見る数字
アシックスは売上のおよそ8割を日本の外で稼ぎます。海外子会社の売上や利益は現地通貨で発生し、決算では円に換算されるため、円安が進んだ期は事業が変わらなくても円建ての数字が膨らみます。そこで会社は、前年と同じ為替レートで換算し直した増減率を併記しています。今回でいえば売上高は円建て+32.7%に対して為替影響を除くと+22.0%。差の10.7ポイント分(算出)が円安による見かけの上乗せです。上期の平均レートは1米ドル148.98円→158.23円、1ユーロ162.54円→184.65円と、主要通貨がそろって円安に振れました。実力を見るときは為替影響を除いた数字、株主の取り分を見るときは円建ての数字、と使い分けるのが実際的です。
カテゴリー利益とカテゴリー外コスト ── 営業利益との関係
アシックスは商品カテゴリー別に売上と利益を開示しています。この「カテゴリー利益」は、そのカテゴリーに直接ひもづく原価と費用を引いた後の利益で、本社機能の人件費や全社の減価償却費などは含みません。含まれない分はカテゴリー外コストとしてまとめて開示され、6カテゴリーの利益合計からこれを差し引いたものが連結営業利益になります。当上期のカテゴリー外コストは287億円で前年同期比+25.5%。増収率の+32.7%より小さく収まっており、固定費が売上の伸びに追い越されていない状態です。
WSとDTC ── 卸で売るか、自分で売るか
WS(ホールセール)はスポーツ専門店や量販店に卸す売り方、DTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)は自社店舗と自社ECで直接消費者に売る売り方です。会社の開示によると上期のWSは粗利益率49.5%・販管費率27.2%で営業利益率22.3%、DTCは粗利益率69.2%・販管費率45.2%で営業利益率23.9%。粗利益率は20ポイント近く違うのに、営業利益率はほぼ同じになります。卸は安く売る代わりに店舗の家賃も人件費も相手持ちだからです。今期はWS比率の高いスポーツスタイルが急成長したためWS比率が57.6%から59.3%へ上がり、連結の粗利益率を押し下げました。粗利益率の低下=採算悪化とは限らない、という読み方が要る場面です。
中間期の進捗率は50%が目安 ── 上期・下期のならし方
通期予想に対して、上期の実績がどこまで来ているかを示すのが進捗率です。1年の半分が終わった中間期なので、単純にならせば50%が基準になります。ただし季節性のある事業では上下期の重みが違うため、50%を割っている=遅れているとは言い切れません。アシックスの場合、当上期の進捗は売上50.9%、営業利益61.8%、純利益68.5%(いずれも算出)。利益がこれだけ前倒しで積み上がっているのは、下期に広告宣伝費と人件費を厚く置いているためです。会社は通期の販管費を前期比882億円増の4,063億円と見込んでいます。
オニツカタイガーの分社化 ── 2027年1月に別会社へ
2026年6月10日、アシックスはオニツカタイガー事業を分割し、2027年1月1日付で株式会社OT GROUPへ承継すると発表しました。各国の地域事業会社が持つオニツカタイガー事業も分社してOT GROUPの子会社に再編します。狙いは意思決定を速くすること、そしてラグジュアリー寄りのライフスタイルブランドとして位置づけを固めることです。研究開発・デジタル・知的財産といったグループ共通の機能は引き続き共有します。オニツカタイガーは上期の売上895億円・カテゴリー利益率39.7%と、6カテゴリーで最も利益率が高い事業です。2027年には米国市場へ再進出し、ロサンゼルスへの出店を予定しています。
転身支援等費用67億円 ── 上期の特別損失で最も大きい項目
当上期の特別損失80億7,900万円のうち、67億1,700万円が「転身支援等費用」です。前年同期はゼロでした。決算短信に内訳の説明はありませんが、この科目名は一般に、早期退職の募集や配置転換の支援にかかる一時費用を指します。ほかに減損損失5億5,900万円、子会社清算損3億7,300万円が計上されています。いずれも営業利益より下の段で処理されるため、営業利益1,204億円には影響しません。営業利益+48.5%に対して中間純利益が+53.3%とさらに伸びているのは、前年同期の税負担が相対的に重かったためで、税引前中間純利益に対する法人税等の比率は前年の33.5%から当期は26.3%へ下がっています(いずれも算出)。

01 ── PERFORMANCE

売上+32.7%に対して営業利益+48.5%。差を作ったのは粗利益率ではなく、販管費のほうだった

売上高5,344億8,300万円は前年同期の4,027億9,800万円から1,316億円の増加。営業利益は811億3,200万円から1,204億8,600万円へ393億円増えた。経常利益1,165億9,800万円、親会社株主に帰属する中間純利益821億7,100万円。いずれも中間期として過去最高になる。

利益が売上を上回って伸びた理由は、二段階に分かれる。売上総利益率は56.7%から57.3%へ0.6ポイント上がった。これは効いているが、この程度の改善では+48.5%は出ない。効いたのは販管費のほうだ。販管費は1,473億円から1,857億円へ+26.1%(算出)。増収率の+32.7%を6.6ポイント下回ったため、売上に対する販管費比率が36.6%から34.8%へ1.8ポイント下がった。粗利で+0.6、販管費で+1.8。合わせて営業利益率が20.1%から22.5%へ、2.4ポイント上がっている。

売上高と営業利益 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 2025年1-6月 vs 2026年1-6月

6,000 4,000 2,000 0 4,027 5,344 811 1,204 売上高 +32.7% 営業利益 +48.5%
2025年12月期 中間期 2026年12月期 中間期
決算短信の百万円単位の開示値を億円に丸めて表示(売上高402,798→534,483百万円、営業利益81,132→120,486百万円)。同じ軸で描いているため、営業利益の棒は小さく見える。為替影響を除く増減率は売上+22.0%、営業利益+37.7%。
連結(2026年1-6月)前年同期当中間期増減率
売上高402,798百万円534,483百万円+32.7%
売上総利益228,442百万円306,281百万円+34.1%
売上総利益率56.7%57.3%+0.6pt
販売費及び一般管理費147,310百万円185,794百万円+26.1%(算出)
販管費比率36.6%34.8%△1.8pt(算出)
営業利益81,132百万円120,486百万円+48.5%
営業利益率20.1%22.5%+2.4pt
経常利益78,626百万円116,598百万円+48.3%
特別損失200百万円8,079百万円
税金等調整前中間純利益80,731百万円111,666百万円+38.3%(算出)
法人税等27,048百万円29,397百万円+8.7%(算出)
親会社株主帰属中間純利益53,606百万円82,171百万円+53.3%
1株当たり中間純利益75円00銭115円93銭+54.6%(算出)
中間包括利益34,138百万円97,293百万円+185.0%

決算短信より。営業利益と経常利益の差39億円は営業外損益で、内訳は営業外収益23億5,700万円(受取利息17億7,800万円ほか)と営業外費用62億4,600万円(支払利息29億4,000万円、海外事業関連損失25億1,100万円ほか)。特別損失80億7,900万円のうち67億1,700万円が転身支援等費用。

包括利益が+185.0%と跳ねた理由

中間純利益822億円に対して、包括利益は972億円。前年の341億円から3倍近くに増えている。差を作ったのは為替換算調整勘定で、前年の△191億円から当期は+150億円へ341億円動いた。海外子会社の資産と負債を円に換算し直すときに出る差額で、損益計算書の利益とは別枠で純資産に積まれる。円安が進んだ期に膨らむ性質のもので、事業が急によくなったという話ではない。純資産が前期末比+31.9%と大きく増えたのは、中間純利益822億円とこの換算差額の両方が効いている。

02 ── MARGIN

粗利益率+0.6ポイントの中身。関税で0.9落ち、還付で0.8戻した

売上総利益率56.7%→57.3%という0.6ポイントの改善は、いくつかの逆向きの力が打ち消し合った結果だ。会社が開示している要素分解を追うと、押し上げたのはプロダクトミックスの+1.2ポイント。高価格帯の商品構成を厚くし、値引きを絞ったことが効いている。押し下げたのは米国の追加関税で△0.9ポイント、チャネルミックスで△0.3ポイント、仕入為替で△0.1ポイント。

そこに、上期だけの特殊要因がひとつ乗っている。2026年2月24日から適用された追加関税のうち、2月23日までの支払い分について米国政府から約2,800万米ドルの還付を受け、これが入金済みになった。この分が粗利益率を+0.8ポイント押し上げている。裏を返せば、還付を除いた地力の粗利益率は56.5%程度(算出)で、前年をわずかに下回る計算になる。

売上総利益率の増減要素 ── 56.7%から57.3%へ

単位:ポイント / 会社開示の要素別分析

58.0 57.5 57.0 56.5 56.0 55.5 56.7% +1.2 △0.3 △0.1 △0.9 +0.8 △0.1 57.3% 前年同期 プロダクトミックス チャネルミックス 仕入為替 米国追加関税 関税の還付 その他 当中間期
決算説明資料P.14の開示値。関税の還付分(+0.8ポイント)は2026年2月23日までの支払いに対する約2,800万米ドルの還付によるもので、上期に固有の要因。

米国関税は、想定より軽くなった

2026年2月の開示時点で、会社は通年で約20%の追加関税を前提に6,700万米ドルの利益影響を見込んでいた。その後の適用税制の変更を受け、8月時点の見通しは4,800万米ドルへ縮小している。適用率は2月24日から約20%、7月25日からはベトナム12.5%・インドネシアほか10%へ下がった。四半期別の影響額はQ1が△1,800万米ドル、Q2が△1,200万米ドル、Q3以降が合わせて△1,800万米ドルの想定。なお米国には約3.5か月分の在庫があり、関税を払うタイミング(通関時)と損益に出るタイミング(販売時)はずれる。7月の引き下げが数字に効いてくるのは、上期ではなく下期になる。

チャネル構成が変わると、粗利益率と営業利益率は別々の動きをする

チャネル別に見ると、卸売のWSが前年同期比+36.9%(為替影響を除くと+24.9%)で最も伸び、構成比は57.6%から59.3%へ上がった。WSは卸値で売るので粗利益率が49.5%と低く、これが連結の粗利益率を0.3ポイント押し下げている。ただしWSは店舗の固定費を負わないため販管費率も27.2%と低く、営業利益率はDTCの23.9%に対して22.3%とほぼ並ぶ。WS比率の上昇は、粗利益率には効くが営業利益率にはほとんど効かない。粗利益率だけを見て採算を判断すると読み違える構造になっている。

チャネル別売上高 ── 卸売が構成比を上げた

単位:億円 / ( )内は為替影響を除く増減率

3,600 2,700 1,800 900 0 2,320 3,175 886 1,152 758 939 63 78 ホールセール リテール EC ランニング +36.9%(+24.9%) +30.0%(+21.8%) +23.9%(+13.7%) +22.5%(+17.7%)
2025年12月期 中間期 2026年12月期 中間期
決算説明資料P.33の開示値。自社ECサイトとマーケットプレイスはECに含み、ホールセールEリテーラーはホールセールに含まれる。ECは戦略的な絞り込みを行った北米を除くと+23.1%。構成比はWS 57.6%→59.3%、リテール22.0%→21.6%、EC 18.8%→17.6%、ランニングサービス1.6%→1.5%。

03 ── CATEGORY

6カテゴリーすべて増収増益。伸びの4割強はスポーツスタイル1つが持ってきた

売上の増加額1,316億円のうち、558億円がスポーツスタイル。前年同期比+83.0%で、為替影響を除いても+65.6%になる。GEL-1130、GEL-NYC、GEL-KAYANO 14といった主力に加え、GEL-CUMULUS 16とGEL-NYC 2.0が新たな柱として立ち上がった。北米で約90%、欧州で100%超の増収。カテゴリー利益率も30.7%から34.0%へ3.3ポイント上がっている。

次に大きいのがパフォーマンスランニングの+357億円(+19.3%)。BOUNCEシリーズが続伸し、6月発売のGEL-KAYANO 33が順調に立ち上がった。米国のランニング専門店向け売上は為替影響を除いて+24.2%。ただし為替影響を除いた成長率は+8.2%で、6カテゴリーのうち最も低い。円安の寄与を外すと、この中核事業は1桁成長にとどまっている。

オニツカタイガーは895億円(+35.9%)でカテゴリー利益率39.7%。全カテゴリーで最も高い。粗利益率は74.6%(前年同期比+0.4ポイント)で、原価構造がそもそも違う。日本のインバウンドが引き続き効いており、Q2の3か月だけで日本のインバウンド売上は155億円、四半期として過去最高になった。

カテゴリー別売上高 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 下段は為替影響を除く増減率

2,400 1,800 1,200 600 0 1,849 2,206 441 551 200 256 673 1,231 658 895 78 86 ランニング コアスポーツ アパレル スポーツスタイル オニツカタイガー ウォーキング +19.3% +24.9% +28.1% +83.0% +35.9% +9.8%
2025年12月期 中間期 2026年12月期 中間期
決算短信のカテゴリー別注記(百万円)を億円に丸めて表示。当中間期からカテゴリー名称を一部見直し、従来「アパレル・エクィップメント」としていたカテゴリーは「アパレル」へ変更。従来は非開示だったウォーキングを独立したカテゴリーとして掲記している。6カテゴリーの合計と連結売上高の差(119億円)はその他。
カテゴリー売上(前年)売上(当期)増減率為替除く利益(当期)利益率前年からの変化
パフォーマンスランニング184,964220,652+19.3%+8.2%58,08226.3%+1.1pt
コアパフォーマンススポーツ44,11855,111+24.9%+15.5%13,10923.8%+2.6pt
アパレル20,00325,629+28.1%+17.1%4,29816.8%+1.4pt
スポーツスタイル67,314123,186+83.0%+65.6%41,92334.0%+3.3pt
オニツカタイガー65,87689,533+35.9%+29.4%35,57839.7%+0.6pt
ウォーキング7,8828,657+9.8%+9.8%1,50217.4%+9.5pt
カテゴリー外コスト△28,700+25.5%
連結402,798534,483+32.7%+22.0%120,48622.5%+2.4pt

単位:百万円。売上・利益・増減率は決算短信のカテゴリー別注記、カテゴリー利益率とその変化は決算説明資料の開示値(アパレルの利益率のみ算出)。カテゴリー外コストは決算説明資料P.20の億円表示(287億円)を百万円換算した概数。カテゴリー利益の合計からカテゴリー外コストを差し引いたものが連結営業利益になる。

ウォーキングの利益率が7.9%から17.4%へ跳ねた

売上は79億円から86億円へ+9.8%と6カテゴリーで最も小さいが、カテゴリー利益は6億円から15億円へ+141.4%。粗利益率の改善が効いた。会社はこの事業を「ASICS Walking」というプレミアムブランドとして立て直す方針を示し、2026年後半から中華圏などで海外展開を始める。ただし通期予想では売上158億円(前期比△3.9%)と減収を置いている。上期に+9.8%で来ているので、下期は大きめの反動を織り込んでいる形になる。ブランドの作り直しにあたって国内の販路や品揃えを整理する局面と読める。

04 ── REGION

7地域すべて増収増益。欧州が単独で売上の3割を占め、増加額の4割を作った

地域別で最も大きいのは欧州で、売上1,666億円(+46.4%、為替影響を除くと+29.7%)。連結売上の31.2%を占め、増加額528億円は全体の1,316億円の4割にあたる。スポーツスタイルが+100.3%、オニツカタイガーが+66.5%と、この2つが同時に効いた。販管費のコントロールも進み、営業利益率は20.8%(+2.1ポイント)。

伸び率で目立つのは北米だ。売上947億円(+28.1%、為替影響を除くと+19.6%)に対して、セグメント利益は102億円から191億円へ+86.0%。営業利益率は13.9%から20.1%へ、6.2ポイント上がった。スポーツスタイルが約90%増えたことと、粗利益率の改善が重なっている。ECは戦略的に絞り込んでおり、数を追わずに単価と採算を取りにいく形になっている。

日本地域は売上1,061億円で+6.9%と、7地域で最も低い。ただしこれには事情がある。日本地域にはアシックス商事やニシスポーツなど、主要5カテゴリー以外を扱う会社が含まれる。会社が別建てで開示しているアシックスジャパン単体では+23.8%、営業利益率33.4%(+3.4ポイント)で、全地域で最も高い利益率になっている。押し上げているのはオニツカタイガーのインバウンドで、上期のインバウンド売上は216億円から308億円へ増えた。

セグメント(地域)別売上高 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 下段は円建ての増減率

1,800 1,350 900 450 0 992 1,060 739 946 1,137 1,666 620 810 214 289 235 314 246 322 日本 北米 欧州 中華圏 オセアニア 東南・南アジア その他 +6.9% +28.1% +46.4% +30.7% +35.0% +33.9% +30.7%
2025年12月期 中間期 2026年12月期 中間期
決算短信の報告セグメント注記(百万円)を億円に切り捨てて表示。7セグメントの単純合計は連結売上高を上回るが、これはセグメント間取引の消去前のため。日本地域にはアシックスジャパンのほか、アシックス商事・ニシスポーツなど主要5カテゴリー以外を扱う会社が含まれる。
セグメント売上(前年)売上(当期)増減率為替除く利益(前年)利益(当期)増減率
日本地域99,263106,094+6.9%21,63528,595+32.2%
北米地域73,91494,696+28.1%+19.6%10,25819,079+86.0%
欧州地域113,769166,600+46.4%+29.7%21,26534,693+63.1%
中華圏地域62,03281,048+30.7%+17.6%14,99419,797+32.0%
オセアニア地域21,44728,964+35.0%+15.3%3,3553,830+14.2%
東南・南アジア地域23,51431,492+33.9%+25.9%5,4357,630+40.4%
その他地域24,69832,271+30.7%+17.5%4,3575,665+30.0%

単位:百万円。決算短信の報告セグメント注記および補足情報より。オセアニア地域のセグメント利益は、円建てでは+14.2%だが為替影響を除くと△3.2%で、7地域で唯一の減益になる。顧客の所在地を基礎にした地域別売上では、日本956億円、北米973億円(うち米国809億円)、欧州1,525億円、中華圏810億円(うち中国677億円)、その他1,078億円。

7月単月は+14.4%まで減速した ── そして月次開示は今回で終わる

説明資料には7月の速報が載っている。連結売上1,003億円、前年同月比+22.8%、為替影響を除くと+14.4%。上期の+22.0%からは8ポイント近く落ちる。地域別では東南・南アジア+28.6%、アシックスジャパン+23.4%、北米+21.7%と続く一方、中華圏は+6.1%、欧州は+10.9%(いずれも為替影響を除く)。会社は、WS比率が上がったことで卸先への売上計上のタイミングが単月の数字を大きく振らすようになり、前年同月比が成長の実態を映さない場合があると説明し、月次売上の開示は今回を最後にすると明記した。次に単月の動きが分かるのは11月13日の第3四半期決算になる。

05 ── GUIDANCE

通期は1兆500億円へ上方修正。ただし下期に置かれた営業利益は745億円で、上期より459億円小さい

会社は2月に示していた通期予想を引き上げた。売上高は9,500億円から1兆500億円(+10.5%)、営業利益は1,710億円から1,950億円(+14.0%)、当期純利益は1,100億円から1,200億円(+9.1%)。前期比では売上+29.5%、営業利益+36.8%、営業利益率は17.6%から18.6%へ1.0ポイント上がる想定になる。売上1兆円と純利益1,000億円は、どちらもこの会社が初めて踏む水準だ。

2月予想からの上振れ240億円の内訳も開示されている。押し上げたのは販売増+240億円、為替+89億円、追加関税の影響が軽くなった分+68億円(適用税制の変更で+23億円、還付で+45億円)。押し下げたのは変動費増△105億円とその他販管費増△52億円。関税の想定影響額は、2月開示の100億円から77億円へ縮んでいる。為替の前提は1米ドル160円・1ユーロ180円・1人民元23円で、前期実績(150.32円・169.09円・20.93円)より円安に置き直された。

ここからが本題になる。上期の実績を通期予想で割った進捗率は、売上50.9%、営業利益61.8%、経常利益61.7%、純利益68.5%(いずれも算出)。1年の半分が終わった時点で、利益は3分の2近くまで来ている。

通期予想に対する中間期の進捗率

単位:% / 点線=1年の半分(50%)

50%(1年の半分) 売上高 営業利益 経常利益 親会社株主帰属利益 50.9% 61.8% 61.7% 68.5%
中間期実績÷通期予想の算出値。売上高534,483÷1,050,000、営業利益120,486÷195,000、経常利益116,598÷189,000、親会社株主帰属利益82,171÷120,000(いずれも百万円)。

会社の通期予想から上期の実績を引くと、下期に置かれている数字が出る。売上5,155億円、営業利益745億円、純利益378億円(いずれも算出)。前年の下期と比べると、売上は+26.3%、営業利益は+21.4%だが、純利益は451億円から378億円へ△16.1%になる(いずれも算出)。上期に営業利益+48.5%・純利益+53.3%で走ってきた会社が、下期は一段ギアを落とす前提を置いた形だ。

営業利益の上期・下期 ── 下期は会社予想からの逆算

単位:億円 / 下期=通期予想(実績)− 上期

1,400 1,050 700 350 0 811 1,204 614 745 上期(1-6月) +48.5% 下期(7-12月) +21.4%
2025年12月期(実績) 2026年12月期(上期実績+下期は予想からの逆算)
前期の下期は通期実績1,425億円−上期811億円=614億円、今期の下期は通期予想1,950億円−上期1,204億円=745億円で、いずれも算出値。下期の伸び率+21.4%も算出。

下期が重くなる理由は、費用の置き方にある

会社は通期の販管費を前期比882億円増の4,063億円と見込んでいる。増加の中身は人件費+188億円、広告宣伝費+172億円、販売手数料+233億円などで、人的資本への投資とブランド投資が柱になる。上期の販管費が1,857億円なので、下期には2,205億円が置かれている計算(算出)。上期より347億円多い。9月・10月に愛知・名古屋で開かれるアジア大会にはアシックスがサポートする選手が約200名出場予定で、第5回アジアパラ競技大会ともパートナーシップを結んでいる。下期はイベントと広告が重なる期になる。

2026年12月期前期実績2月予想今回予想前期比2月予想比
売上高8,109億円9,500億円10,500億円+29.5%+10.5%
営業利益1,425億円1,710億円1,950億円+36.8%+14.0%
営業利益率17.6%18.0%18.6%+1.0pt+0.6pt
経常利益1,392億円1,890億円+35.7%
親会社株主帰属当期純利益987億円1,100億円1,200億円+21.6%+9.1%
1株当たり当期純利益169円30銭
販管費3,181億円3,710億円4,063億円+882億円+353億円
年間配当28円00銭38円00銭44円00銭+16円+6円

決算短信および決算説明資料P.2・P.41・P.47より。為替影響を除く増減率は売上+22.6%、営業利益+30.0%。前提為替は1米ドル160円・1ユーロ180円・1人民元23円(前期実績150.32円・169.09円・20.93円)。カテゴリー別の通期予想では、スポーツスタイルが売上2,420億円(+71.2%)と最も伸び、オニツカタイガーは1,800億円(+31.8%)ながらカテゴリー利益率は37.7%から35.0%へ2.7ポイント下がる想定。

06 ── BALANCE SHEET

自己資本比率が46.3%から52.8%へ。増収のなかで在庫を減らし、営業キャッシュ・フローは588億円

6月末の総資産は6,793億円で前期末比+15.8%。増えたのは現金及び預金(1,122億円→1,414億円)と売上債権で、事業の伸びをそのまま映している。純資産は3,604億円で+31.9%。中間純利益822億円と為替換算調整勘定の増加が積み上がり、自己資本比率は46.3%から52.8%へ6.5ポイント上がった。負債合計は3,189億円で+1.9%にとどまる。

目を引くのは在庫だ。売上が+32.7%伸びるなかで、棚卸資産は前期末比42億円の減少(為替影響を除くと83億円の減少)。棚卸資産回転期間(DIO)は150日で、前期末から2日短くなった。前年同期比では3日長いが、増収の規模を考えると管理は効いている。売上債権の増加430億円と法人税の支払い328億円を吸収して、営業キャッシュ・フローは588億円(前年同期比+124億円)と中間期として過去最高になった。

株主還元も引き上げられた。中間配当は前回予想比2円増の20円で決定、期末配当は4円増の24円を見込む。年間44円は前期の28円から+57.1%(算出)。予想EPS169円30銭に対する配当性向は26.0%(算出)で、増配後もまだ余裕のある水準になる。

財政状態前期末6月末
総資産5,864億円6,793億円
流動資産4,099億円4,917億円
現金及び現金同等物1,122億円1,414億円
負債合計3,131億円3,189億円
純資産2,733億円3,604億円
自己資本2,715億円3,586億円
自己資本比率46.3%52.8%
キャッシュ・在庫・配当前年同期当期
営業キャッシュ・フロー464億円588億円
投資キャッシュ・フロー△143億円△140億円
財務キャッシュ・フロー△368億円△174億円
減価償却費111億円157億円
棚卸資産回転期間(DIO)147日150日
キャッシュ・コンバージョン・サイクル127日133日
年間配当(予想)28円00銭44円00銭

決算短信および決算説明資料P.36〜P.38より。営業キャッシュ・フローの主な内訳は、収入側が税金等調整前中間純利益1,116億円・減価償却費157億円、支出側が売上債権の増加430億円・法人税等の支払い328億円。投資では有形固定資産の取得82億円、無形固定資産の取得68億円に対し、有形固定資産の売却で59億円の収入。財務では配当金の支払い113億円、リース債務の返済84億円。CCCは133日で前年同期比6日の悪化。

07 ── STRATEGY

上期に決まったこと ── オニツカタイガーの分社化、欧州の研究拠点、そしてアジア

数字の外側で、この半年に3つの構えが決まった。

1つ目はオニツカタイガーの分社化。2027年1月1日付で事業を株式会社OT GROUPへ承継し、各国の地域事業会社が持つオニツカタイガー事業もその傘下へ再編する。上期のカテゴリー利益率39.7%という、グループで最も高い収益源を切り出して独立性を持たせる判断だ。7月に東京・新宿へ世界最大の旗艦店「Onitsuka Tiger 新宿」、8月に名古屋へ旗艦店を開き、2027年には米国市場へ再進出してロサンゼルスに出店する。ただし通期予想ではこのカテゴリーの利益率を37.7%から35.0%へ下げて置いており、再編と出店の負担が下期に乗ってくる想定になっている。

2つ目は研究開発のグローバル化。6月、欧州統括会社が「ASICS Institute of Sport Science Europe」を設置した。2025年12月の北米に続く2拠点目で、1985年のスポーツ工学研究所の発足から約40年、日本だけだった研究拠点が3極になる。テニスをはじめとするコアパフォーマンススポーツで現地アスリートのテストを行い、神戸の研究機能を補う役割を担う。

3つ目はアジア。会社は2026年を「Year of ASIA」と位置づけ、9月・10月の愛知・名古屋2026には約200名のサポート選手が出場する予定。第5回アジアパラ競技大会とはスポーツアパレルのオフィシャルパートナー契約を結んだ。東南・南アジア地域は上期に売上+33.9%・営業利益率24.2%と、規模の割に採算のよい市場に育っている。

外部評価

  • 経済産業省と東京証券取引所が共同で選ぶ「SX銘柄2026」に2年連続で選定。
  • 国際NPO・CDPの「サプライヤーエンゲージメント評価」で2年連続のAリスト。約22,100社のうち上位約9%に入る「サプライヤーエンゲージメントリーダー」に選出。

08 ── SUMMARY

ランニングの会社が、スニーカーの会社としても稼ぎ始めた。次の焦点は下期の費用

評価できる点

  • 売上5,344億円・営業利益1,204億円・中間純利益822億円で、いずれも中間期として過去最高。売上は初めて5,000億円を超えた。
  • 円安を外した為替影響除きでも売上+22.0%、営業利益+37.7%。見かけだけの伸びではない。
  • 営業利益率22.5%(+2.4ポイント)。押し上げたのは粗利より販管費比率の1.8ポイント低下で、固定費が売上に追い越されていない。
  • 6カテゴリー・7地域がすべて増収増益。スポーツスタイル+83.0%、オニツカタイガー+35.9%と、収益性の高い2つが同時に伸びた。
  • 北米のセグメント利益が+86.0%、営業利益率は13.9%から20.1%へ。
  • 増収のなかで棚卸資産は前期末比42億円の減少。営業キャッシュ・フロー588億円は中間期として過去最高。
  • 自己資本比率46.3%→52.8%。年間配当は28円から44円へ増配、配当性向は26.0%(算出)。

留意しておきたい点

  • 通期進捗は営業利益61.8%・純利益68.5%(算出)。下期の純利益は378億円で、前年の下期451億円を下回る置き方になっている(算出)。
  • 下期の販管費は2,205億円(算出)で上期より347億円多い。利益は上期に前倒しで出ている。
  • 粗利益率+0.6ポイントには、上期限りの関税還付+0.8ポイントが含まれる。これを除くと前年をわずかに下回る(算出)。
  • 7月単月は為替影響を除くと+14.4%まで減速。中華圏+6.1%、欧州+10.9%と主要市場が鈍い。
  • その月次売上の開示は今回で終了。次に単月の動きが見えるのは11月13日の第3四半期決算。
  • 中核のパフォーマンスランニングは、為替影響を除くと+8.2%と1桁成長。
  • オセアニアのセグメント利益は為替影響を除くと△3.2%で、7地域で唯一の減益。
  • 特別損失80億円のうち67億円が転身支援等費用。オニツカタイガー分社化に伴う費用も下期以降に出てくる可能性がある。

この半期のアシックスは、収益の柱が2本になったことを数字で示した。売上増1,316億円のうち558億円がスポーツスタイル、237億円がオニツカタイガー。合わせて795億円で、増加額の6割にあたる。どちらも粗利益率が高く、スポーツスタイルは利益率を3.3ポイント、オニツカタイガーは74.6%という粗利益率をさらに0.4ポイント上げた。中核のパフォーマンスランニングは為替を外すと+8.2%だったが、それでも全体が+22.0%で走れたのは、この2本があったからだ。ランニングシューズの技術で積んだブランドを、ストリートとラグジュアリーの側で換金する回路ができている。

一方で、この決算は上期に利益が寄った決算でもある。関税の還付2,800万米ドルが粗利に0.8ポイント乗り、広告と人件費の多くは下期に置かれた。会社が自ら示した下期の姿は、売上+26.3%に対して営業利益+21.4%、純利益は前年割れ(いずれも算出)。上期の勢いをそのまま延長した絵にはなっていない。7月の単月が為替影響を除いて+14.4%まで落ちたことも、その慎重さと符合する。

見るべき点は3つある。下期の販管費2,205億円が計画どおりに収まるか。中華圏(7月+6.1%)と欧州(同+10.9%)の減速が一時的なものか。そして、2027年1月に分社するオニツカタイガーの再編費用がどこまで出るか。月次の開示がなくなった以上、答えが出るのは11月13日の第3四半期決算になる。

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