EARNINGS REVIEW
2026年 第2四半期 決算レビュー
NASDAQ GOOG / GOOGL / 対象期間 2026年4月〜6月 / 決算発表 2026年7月22日(米国時間)
売上高は1,198億ドル(約19.5兆円)、前年同期比+24%。2桁成長はこれで12四半期連続です。 主役はGoogle Cloudで、売上が+82%へ一段と加速しました。 一方、見出しに躍る「純利益4倍」には注意が要ります。増加分の大半は本業のもうけではなく、保有株式の評価益980億ドルだからです。 このレビューでは、①Cloudの加速、②純利益の中身の分解、③四半期449億ドルに達したAI投資、の3つの軸でこの決算を読み解きます。
売上高
営業利益
Google Cloud 売上
希薄化EPS
01 ── PERFORMANCE
前年同期の増収率は+14%でしたから、成長はむしろ加速しています。売上高1,198億ドルに対し、営業利益は408億ドルで+30%。売上の伸びが費用の伸びを上回り、営業利益率は32%から34%へ2ポイント改善しました。研究開発費が+32%(AI人材の報酬が主因)と大きく増えても、なお利益率が上がる。トップラインの強さが費用増を吸収した形です。
売上高と営業利益 ── 前年同期との比較
単位:億ドル / 2025年4-6月期 vs 2026年4-6月期
| 連結(2026年4-6月) | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,198億ドル | +24%(為替一定 +23%) |
| 営業利益 | 408億ドル | +30%(利益率 32%→34%) |
| 純利益(普通株主帰属) | 1,121億ドル | +298% ※評価益を含む |
| 希薄化EPS | $9.11 | +294% ※うち評価益 +$6.26 |
02 ── DECOMPOSITION
純利益1,121億ドルは前年同期の約4倍ですが、そのうち771億ドル(税引後)は保有株式の評価益によるものです。リリースの注記によれば、株式の評価益990億ドルがEPSを$6.26押し上げました。CFOのアシュケナジ氏も説明会で「純利益とEPSの大幅な増加は、主として評価益によるもの」と明言しています。
純利益 1,121億ドルの内訳
単位:億ドル / 評価益の税引後影響(771億ドル)を分離した算出値
評価益を除いて計算し直すと、純利益はおよそ351億ドル、前年同期比+24%。EPSは$9.11から評価益分$6.26を引いた$2.85前後が「実力」で、前年の$2.31に対して+23%になります。増収+24%・営業増益+30%と平仄が合う、十分に強い数字です。つまりこの決算は「4倍儲かった」のではなく、本業が2割強伸びた決算に、持ち株の値上がりが上乗せされたものとして読むのが正確です。
リリース自身が「投資の価値は市場動向に左右され、今後の期間で損益の変動要因になり得る」と注記しています。株式市場が調整すれば、同じ仕組みで純利益が大きく目減りする四半期も来る。見出しのEPSではなく営業利益の伸びを基準に据えておくと、その時に慌てずに済みます。
03 ── SEGMENTS
事業別に見ると、成長の主役が二段構えになっていることが分かります。祖業の検索広告(Search & other)は633億ドルで+17%。AIによる回答表示(AI Overviews/AI Mode)を統合した新しい検索体験がクエリ数を押し上げ、説明会では「ワールドカップ期間中に検索利用が過去最高を記録した」と紹介されました。YouTube広告も+13%。リリースによれば、W杯関連動画は期間中に17億人のユニーク視聴者を集めています。
事業別の増収率 ── 2026年4-6月期・前年同期比
単位:% / Google Cloudを強調表示
Cloudの売上248億ドルは、前年同期の136億ドルから+82%。伸び率はこれまでの30%前後から一気に加速しました。牽引したのは企業向けAIインフラとAIソリューション。営業利益は28億ドルから88億ドルへ3倍になり、利益率は20.7%から35.6%へ跳ね上がっています。契約済みで未計上の受注残は5,140億ドルまで積み上がり、Gemini EnterpriseはFortune 100企業の約9割が利用。今四半期からは自社開発AIチップ「TPU」システムの外部販売も始まりました(売上計上の大半は2027年になる見込み)。
| セグメント(2026年4-6月) | 売上高 | 前年比 | 営業損益 |
|---|---|---|---|
| Google Services(広告・YouTube・サブスク等) | 945億ドル | +15% | 395億ドル(利益率 41.8%) |
| Google Cloud | 248億ドル | +82% | 88億ドル(利益率 35.6%) |
| Other Bets(Waymo等の新規事業) | 4億ドル | +2% | ▲18億ドル |
| Alphabet共通(AI基礎研究開発など) | — | — | ▲58億ドル |
目を引くのは共通部門の費用です。Geminiなど汎用AIモデルの研究開発を担う「Alphabet共通」の費用は34億ドルから58億ドルへ+72%。個別事業に割り当てられないAIの基礎投資が、全社利益の押し下げ要因として急拡大しています。それでも全社の営業利益率が改善しているところに、本業の勢いが表れています。
04 ── INVESTMENT
この決算のもうひとつの主役は投資の規模です。4〜6月の設備投資(CAPEX)は449億ドル、約7.3兆円。1年前(224億ドル)のちょうど2倍です。説明会によれば投資の大半はAI向け技術インフラで、うち約6割がサーバー、約4割がデータセンターとネットワーク機器。この結果、営業キャッシュフローは391億ドルと潤沢だったにもかかわらず、フリーキャッシュフローは▲59億ドルのマイナスに沈みました。
四半期CAPEXの推移 ── 1年で倍増
単位:億ドル / 通期計画は1,950〜2,050億ドルへ引き上げ
通期のCAPEX計画も引き上げられました。従来の1,800〜1,900億ドルから1,950〜2,050億ドル(約32〜33兆円)へ。CFOは「需要の伸びに応えるための供給能力の前倒し」を理由に挙げ、さらに「2027年は大幅に増加する」と予告しています。日本の国家予算の一般会計(約115兆円)の3割弱に当たる金額を、一企業が1年のインフラ投資に充てる計算です。
この投資を賄うため、財務の姿も変わりました。6月に普通株と強制転換優先株の発行で正味496億ドルを調達し、社債でも203億ドルを調達。長期負債は半年で465億ドルから982億ドルへほぼ倍増しました。一方、前年同期に132億ドルあった自社株買いは、この四半期はゼロ。総資産は半年で5,953億ドルから9,220億ドル(約150兆円)へ55%膨らんでいます。株主還元より成長投資へ、資本配分の優先順位がはっきり切り替わった決算です。
受注残5,140億ドルという「需要の証拠」がある以上、投資先行の判断自体は合理的です。ただし、FCFのマイナスは当面続くとCFO自身が述べており、減価償却費の増加(今四半期+42%)は今後の利益率の重しになります。TPU外販の売上寄与も本格化は2027年。巨額投資が利益として返ってくるかを確認できるのは、少なくとも数四半期先です。
05 ── OUTLOOK
決算説明会(YouTubeでライブ配信)では、CFOのアナット・アシュケナジ氏が下期の見通しに触れました。ポイントは3つあります。
第一に、7〜9月期は為替がわずかに逆風に転じる見込みであること(4〜6月期は+1ポイントの追い風でした)。第二に、検索広告は前年の加速局面と比較される時期に入るため、伸び率の見た目が落ち着く可能性があること。第三に、Cloudの旺盛な需要に自前のデータセンター建設が追いつかず、第三者のデータセンター容量を「つなぎ」として借りるため、短期的にCloudの利益率に軽い圧力がかかることです。
一方、AI製品の勢いを示す数字も次々と披露されました。ピチャイCEOによれば、GeminiアプリのMAU(月間利用者)は9.5億人。Geminiモデルが処理するAPIトークンは毎分220億に達し、直近ではセキュリティ特化の新モデル「Gemini 3.5 Flash Cyber」も投入。AIが検索クエリを増やし、CloudがそのAIインフラを外販するという、AIを軸にした好循環を強調する内容でした。
06 ── SUMMARY
本業は文句のない強さでした。検索もCloudも加速し、営業利益率まで改善している。一方で、投資も資金調達も過去に例のない規模に膨らみ、手元の現金創出は一時的にマイナスへ沈みました。この決算が示すのは、AIの需要が本物であることと、その需要を取りにいくコストがかつてなく重いことの両方です。見出しの「純利益4倍」に飛びつかず、営業利益の+30%を軸に、投資が回収に変わる速度を次の四半期以降で確かめていく。それがこの銘柄との正しい付き合い方だと思います。