IPO REVIEW
東証スタンダード上場
2026年12月期 中間決算レビュー
証券コード 627A(東証スタンダード) / 上場日 2026年9月18日 / 対象期間 2026年1月1日〜6月30日
9月18日、駐車場の予約サービス「アキッパ」を運営するakippa株式会社が東証スタンダードに上場した。上場と同じ日に会社が出した中間決算(2026年1月〜6月)は、売上高19億1,500万円、営業利益1億1,900万円、中間純利益1億400万円。営業利益率は6.2%で、前期通期の5.2%を上回っている。 会社は2026年12月期の通期を売上高43億円(+12.3%)・営業利益3億4,000万円(+69.1%)と置く。6月末時点の営業利益は社内計画を77.9%上回っており、それでも上方修正はしていない。8月と9月が1年でいちばん稼ぐ月で、天候ひとつで結果が動くからだ。 黒字化して間もない会社である。利益剰余金は6月末でまだ13億7,000万円のマイナス、配当は無配。掲載駐車場5万8,870台という国内最大の在庫と、その裏側にある累積損失。この2つを同じ画面に置いて読むのが、上場初号のこのレポートの読み方になる。
売上高(中間期)
営業利益(中間期)
経常利益(中間期)
中間純利益
01 ── PERFORMANCE
中間期の損益計算書は、売上高19億1,562万円、売上原価9億1,517万円、売上総利益10億44万円。販売費及び一般管理費8億8,110万円を引いて営業利益1億1,934万円。営業外では補助金収入521万円と受取利息72万円が乗り、固定資産圧縮損208万円が引かれて経常利益1億2,392万円。特別損益は無く、法人税等1,926万円を差し引いた中間純利益が1億465万円となる。売上から純利益まで、短信の各段の数字は端数1千円の範囲で一致する(検算済み)。
前年同期の数字が無いので、比較は前期通期との率で見る。前期(2025年12月期)の営業利益率は5.2%、経常利益率5.3%。中間期はそれぞれ6.2%、6.5%で、1ポイントずつ上に来ている。売上総利益率は前期の50.4%(会社の通期予想から逆算)に対して中間期52.2%(算出)。販管費の売上比率は45.1%から46.0%へむしろ上がっているが、粗利率の改善がそれを上回った。中間期は繁忙期を含まない前半戦である。会社が通期で置く営業利益率7.9%は、8〜9月の繁忙期で販管費率が薄まる前提で見るとつじつまが合う。
売上高の推移 ── 4年で2.1倍、年平均+22.5%
単位:百万円 / 2026年12月期は会社予想(9月18日発表)
| 個別(百万円) | 2025年12月期 通期実績 | 2026年12月期 中間期実績 | 中間期 売上比(算出) | 2026年12月期 通期予想 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,828 | 1,915 | 100% | 4,300 |
| 売上原価 | 1,900(逆算) | 915 | 47.8% | 2,107 |
| 売上総利益 | 1,928(逆算) | 1,000 | 52.2% | 2,192 |
| 販売費及び一般管理費 | 1,726(逆算) | 881 | 46.0% | 1,852 |
| 営業利益 | 201 | 119 | 6.2% | 340 |
| 経常利益 | 204 | 123 | 6.5% | 341 |
| 当期(中間)純利益 | 223 | 104 | 5.5% | 302 |
| 1株当たり純利益 | 54円22銭 | 22円03銭 | ─ | 55円71銭/56円90銭 |
2025年12月期の売上原価・売上総利益・販管費は、決算短信の通期予想に記された前期比(売上原価+10.9%、売上総利益+13.7%、販管費+7.3%)から逆算した概数で、短信本表の値ではない。中間期の売上比は算出。2026年12月期予想の1株当たり純利益は資料間で数値が異なるため併記。
2025年12月期は、経常利益2億400万円に対して当期純利益が2億2,300万円と、税引後のほうが大きい。上場前で繰越欠損金の控除が効き、法人税等の支払いがほぼ発生しないうえ、繰延税金資産の計上で法人税等調整額がマイナスになっていたためだ。中間期はすでに法人税等1,926万円を負担しており、通期予想の純利益3億200万円は経常利益3億4,100万円を下回る。純利益の伸び率(+35.5%)が営業利益の伸び率(+69.1%)より小さいのは、事業が鈍ったのではなく税負担が普通の会社に近づいたからである。
02 ── KPI
この会社の売上は、掲載駐車場の数と、1台あたりの稼ぎの掛け算でほぼ説明がつく。掲載駐車場数は2022年12月の3万5,601台から2025年12月の5万5,020台へ、年平均+15.6%。2026年6月には5万8,870台で、前年同月比+8.7%。年間予約件数は205万件から350万件(年平均+19.6%)、年間の利用ユニークユーザーは55万人から99万人(年平均+21.6%)。2026年中間期の利用UUは60万6,000人で前年同期比+11.8%だった。会員登録数は2025年12月末で累計500万人を超えている。
台あたりの単価も動いている。会社は通期予想の前提で、台あたり売上高を前期の5,059円から5,178円へ置いた(+2.4%、算出)。駐車場の車室数は自社営業とパートナー開拓のチャネルで前期比+8.8%、そのうち東京都は+19.6%を見込む。大型イベント駐車場の売上は+22.7%成長の計画だ。売上原価は前期の原価率の平均値を売上計画に掛けて算出しており、原価率が急に良くなる前提は置いていない。
掲載駐車場数の推移 ── 3年で1.5倍、2026年6月は5万8,870台
単位:台 / 各年12月の月平均。2026年6月のみ月次値
売上高の利用目的別構成 ── イベント・スポーツ観戦が3分の1
単位:% / 2025年12月期実績
| 年間KPI | 2022年 | 2025年 | 年平均 |
|---|---|---|---|
| 予約件数(千件) | 2,051 | 3,508 | +19.6% |
| 利用UU(千人) | 552 | 993 | +21.6% |
| 掲載駐車場(台・12月) | 35,601 | 55,020 | +15.6% |
| 売上高(百万円) | 2,082 | 3,828 | +22.5% |
| 掲載駐車場の内訳(2025年12月) | 構成比 |
|---|---|
| 首都圏(東京・神奈川・埼玉) | 28% |
| 関西圏(大阪・京都・兵庫) | 25% |
| 主要都市(福岡・愛知・北海道) | 13% |
| 地方(上記以外) | 34% |
| 種別:月極28%・個人宅26%・店舗18%・時間貸し13%・その他15% | ─ |
会社説明資料より。年平均成長率は会社記載値(売上高のみ2026年12月期予想までを含む)。掲載駐車場のうち個人宅が26%を占める点が、コインパーキング事業者との違いになる。
03 ── GUIDANCE
2026年12月期の会社予想は、売上高43億円(+12.3%)、営業利益3億4,000万円(+69.1%)、経常利益3億4,100万円(+67.0%)、当期純利益3億200万円(+35.5%)。営業利益率は5.2%から7.9%へ2.7ポイント上がる計画で、売上が1割強しか伸びない中で利益が7割増える。理由は費用側にある。売上原価は前期の原価率をそのまま掛けて+10.9%、販管費は+7.3%に抑える。販管費のうち売上に連動する決済手数料やパートナー手数料は+4,700万円、人件費と開発外注費は人員数に定期昇給率を掛けて積む。売上の伸びより費用の伸びを小さく置いた分が、そのまま営業利益の増加になる構造だ。
中間期の進捗は、売上高44.5%、営業利益35.0%、経常利益36.1%、純利益34.4%(いずれも算出)。半年で35%は一見物足りないが、社内の中間計画に対しては営業利益で+77.9%の上振れである。つまり会社はもともと上期の利益を通期の2割程度にしか置いていなかったことになる(算出:35.0÷1.779=19.7%)。8月と9月に稼ぐ商売だから、上期の計画が小さいのは当然で、進捗35%は計画より大幅に前倒しで進んでいる状態を表している。
通期予想に対する中間期の進捗 ── 上期が軽い会社の35%
単位:% / 中間期実績÷2026年12月期通期予想(算出)。点線は「1年の半分=50%」
| 2026年12月期 業績予想(百万円) | 2025年12月期実績 | 2026年12月期予想 | 前期比 | 売上比(予想) |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,828 | 4,300 | +12.3% | 100% |
| 営業利益 | 201 | 340 | +69.1% | 7.9% |
| 経常利益 | 204 | 341 | +67.0% | 7.9% |
| 当期純利益 | 223 | 302 | +35.5% | 7.0% |
| 1株当たり当期純利益 | 54円22銭 | 55円71銭/56円90銭 | ─ | ─ |
| 1株当たり配当金 | 0円 | 0円 | 無配継続 | ─ |
上場に伴う決算情報等のお知らせおよび決算短信より。1株当たり当期純利益は公募による新株式発行予定378,000株を考慮していない。上場で調達する資金はプロダクト開発とシステム投資に充て、関連費用は予想に織り込み済み。M&Aの影響は含まない。
中間期の社内計画比は、売上高が+3.5%にとどまるのに対し、営業利益は+77.9%。売上が計画通りで利益だけが大きく上振れたということは、費用が計画より使われていないか、粗利率が想定より高かったかのどちらかだ。中間期の販管費率46.0%は前期通期の45.1%より高く、削った形跡は薄い。粗利率52.2%が前期の50.4%を上回った分が効いた可能性が高い。ただし通期予想は前期の原価率をそのまま掛けており、下期にこの改善が続く前提は置いていない。8〜9月の実績が出たときに、粗利率が52%台を保っているかが、上方修正の有無を分ける。
04 ── BALANCE SHEET
6月末の総資産は11億2,655万円、前期末から7,634万円増えた。増えた中身は現金及び預金の3,491万円と、無形固定資産の2,417万円。負債は5億2,564万円から4億9,733万円へ減り、純資産は中間純利益の分だけ増えて6億2,923万円。自己資本比率は49.9%から55.9%へ6ポイント上がった。有利子負債は長期借入金だけで、1年内返済分を含めても5,866万円。現預金7億1,444万円との差し引きで、実質は6億5,000万円ほどの現金超過(算出)である。上場前の時点で、財務に借金の重さは無い。
キャッシュ・フローは、営業活動で+7,177万円。税引前中間純利益1億2,393万円が入り、未払金の減少3,132万円と未払費用の減少497万円が出ていった。投資活動は無形固定資産の取得で△2,581万円、財務活動は借入金の返済で△1,106万円。三つを足すと+3,491万円で、現預金の増加額と1千円の差で一致する。会社はサービスの新規開発費用を資産計上せず期間費用で落としているため、無形固定資産の取得2,613万円が投資の全体像ということになる。
| 財政状態(千円) | 2025年12月末 | 2026年6月末 |
|---|---|---|
| 流動資産 | 897,794 | 949,546 |
| うち現金及び預金 | 679,529 | 714,438 |
| 固定資産 | 152,419 | 177,009 |
| 総資産 | 1,050,213 | 1,126,555 |
| 負債合計 | 525,643 | 497,326 |
| うち長期借入金(1年内含む) | 69,720 | 58,660 |
| 純資産 | 524,570 | 629,229 |
| うち利益剰余金 | △1,475,480 | △1,370,821 |
| 自己資本比率 | 49.9% | 55.9% |
| キャッシュ・フロー(千円) | 2026年12月期中間期 |
|---|---|
| 営業活動CF | +71,774 |
| 税引前中間純利益 | 123,927 |
| 未払金の減少 | △31,315 |
| 投資活動CF | △25,805 |
| 無形固定資産の取得 | △26,130 |
| 財務活動CF | △11,060 |
| 長期借入金の返済 | △11,060 |
| 現金及び現金同等物の増減 | +34,908 |
| 現金及び現金同等物(期末) | 714,438 |
決算短信の中間貸借対照表およびキャッシュ・フローの説明より。長期借入金は1年内返済予定(18,960千円)と長期(39,700千円)の合計で算出。前期は中間財務諸表を作成していないため、前年同期のキャッシュ・フローは無い。
純資産6億2,923万円の中身は、資本金1億円と資本剰余金19億5万円の合計20億5万円から、利益剰余金の△13億7,082万円を引いたものだ。過去に払い込まれた資本の3分の2を、これまでの赤字が消している。2022年12月期は経常段階で赤字だったと会社説明資料のグラフは示しており、黒字が定着したのは2023年以降になる。上場に伴い繰越欠損金の控除上限が所得の50%に制限されるので、今後は税引前利益の半分には課税が始まる。それでも純利益がプラスで積み上がる限り、利益剰余金のマイナスは年に3億円前後のペースで縮む計算になる。配当が議論の対象になるのは、その先だ。
05 ── STRATEGY & RISK
会社説明資料は、長期ビジョンとして「Boost500」、国内で売上高500億円を掲げる。今期予想の43億円に対して11.6倍である(算出)。到達の道筋は3段階で、まずマーケットプレイスの拡張、次にスマートパーキング市場での成長、最後にグローバル化の基盤構築。数値目標に年限は示されていない。上場時に示された具体的な打ち手は4つある。
1つ目は使い方の拡張。今のアキッパは事前予約が基本だが、着いてすぐ使える「ドロップイン」を実証実験中、月単位・週単位の「サブスク」は年内リリース予定、チケット販売とEV充電も実証段階にある。2つ目は駐車場の集め方。2025年4月に始めた「オーナーモード」はAI審査で最短当日に掲載でき、掲載駐車場に占める比率を2026年12月末の計画10%から2028年12月末に30%へ上げる目標を置く。2026年6月からは不動産管理会社とのシステム連携で、月極駐車場の空き区画を自動で掲載する仕組みも動き始めた。3つ目はAI活用で、コールセンターでは問い合わせの98%が定型対応可能になり、有人チャットの対応件数を75%、外注コストを60%減らしたとしている。4つ目がM&A。後継者問題や再投資の課題を抱えるコインパーキング・月極駐車場の事業者を対象に、銀行借入や株式交換を使って買う構想で、通期予想にはまだ入っていない。
| 市場の大きさ(会社説明資料) | 月極駐車場 | コインパーキング | 遊休地(一軒家・店舗) |
|---|---|---|---|
| TAM(全国) | 7,264万台以上 | 約164万台 | 約3,875万台 |
| SAM(東京都+政令指定都市のある都道府県) | 2,163万台以上 | 約110万台 | ─ |
| SOM(東京都・大阪府・愛知県) | 1,179万台以上 | 約60万台 | ─ |
| アキッパの掲載駐車場(2026年6月) | 58,870台 | ||
会社説明資料「Smart Parkingへの道」より。決算短信は別途、国内駐車場市場を約1兆1,458億円(総務省の家計調査による1世帯あたり月間駐車場借料1,558円×全国約6,129万世帯)と置いている。掲載5万8,870台は、月極駐車場の全国台数に対して0.08%(算出)にあたる。
06 ── SUMMARY
上場初日の会社を、決算の数字だけで判断するのは難しい。akippaの場合はなおさらで、前年同期の数字が無く、公開価格も短信には載っていない。それでも今回の資料から動かない事実が3つ拾える。半年で1億1,900万円の営業利益を出したこと。借金がほぼ無いこと。そして、過去の赤字が13億7,000万円ぶん、まだ帳簿に残っていること。会社はこの3つを隠さず、上場と同じ日に出した。
数字の読みどころは季節にある。営業利益の進捗35%を「半年で半分に届いていない」と読むと、この会社を見誤る。社内計画に対する上振れ77.9%から逆算すれば、会社は上期の利益を通期の2割程度にしか置いていなかった。1年の山は8月と9月にあり、お盆と秋のイベントで稼ぐ。だから会社は3割以上の上振れを手にしたまま、修正を9月以降の取締役会まで持ち越した。台風が来れば消える利益を、先に数字にしない。上場したての会社としては慎重な態度で、ここは評価してよい。
次に確かめたいのは3つ。第3四半期の決算で、8〜9月の売上が計画に対してどう着地したか。中間期に52.2%まで上がった売上総利益率が繁忙期でも保てたか。そして、通期予想にまだ入っていないM&Aが、いつ、どの規模で最初の1件になるか。500億円という長期目標と43億円という今期予想の間には、まだ埋まっていない距離がある。その距離をどう詰めるかの最初の答えが、11月の第3四半期決算に出る。