EARNINGS REVIEW
2027年3月期 第2四半期(中間期) 決算レビュー
証券コード 6857(東証プライム)/ 対象期間 2026年4月〜9月 / 決算発表 2026年10月28日
上期(4〜9月)の売上高は8,452億円、前年同期比+60.5%。営業利益は4,568億円で+96.5%と、ほぼ倍増しました。売上高・営業利益・税引前利益・中間利益のすべてが、中間期として過去最高です。 原動力は、AI向け半導体の「検査」需要です。GPUに加えてカスタムASIC・CPU・高性能メモリの生産が増え、チップが複雑になるほど検査の工程も増える。その検査装置(テスタ)を世界首位級で供給する同社に、設備投資が集中しました。対ドルの円安も追い風です。 ただし税引前+121.3%・中間利益+116.8%という伸びには、本業とは別の金融収益570億円(投資有価証券の評価益)が乗っています。本業の実力に近い営業利益は+96.5%。この差の中身まで、順に見ていきます。
売上高(上期累計)
営業利益(上期累計)
中間純利益
1株当たり中間利益
01 ── PERFORMANCE
上期(4〜9月累計)の売上高8,452億円は、前年同期の5,267億円から+60.5%。中間期として過去最高です。注目は利益の伸び方で、営業利益は2,324億円から4,568億円へ+96.5%と、売上の伸びをさらに上回りました。増収に加えて、利益率の高いハイエンドSoC向けの構成比が上がる「売上ミックスの良化」が効いたためです。税引前中間利益は5,102億円(+121.3%)、中間利益は3,681億円(+116.8%)で、こちらも過去最高を更新しました。
売上高と営業利益 ── 前年同期(上期累計)との比較
単位:億円 / 2026年3月期 上期 vs 2027年3月期 上期
| 連結(2026年4-9月累計・IFRS) | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8,452億円 | +60.5% |
| 営業利益 | 4,568億円 | +96.5%(利益率 54.0%) |
| 税引前中間利益 | 5,102億円 | +121.3% |
| 中間利益(親会社所有者帰属) | 3,681億円 | +116.8% |
| 1株当たり中間利益(基本的) | 508円99銭 | +119.2% |
同社の売上の99.4%は海外向けで、ドル建て取引が中心です。上期の平均為替レートは1ドル160円(前年同期は146円)、1ユーロ185円(同166円)と円安が進み、これも業績を押し上げました。会社の見積りでは、通期ベースで1ドルあたり1円の円安が営業利益を約58億円増やす計算です。好調の中身には、本業の強さと為替の追い風が同居しています。
02 ── PROFITABILITY
この決算の読みどころは、利益の「質」です。本業の稼ぐ力を示す営業利益率は、前年同期の44.1%から54.0%へ9.9ポイント改善しました。売上総利益率(粗利率)も63.7%から70.4%へ上昇。収益性の高いハイエンドSoC向けテスタの販売が伸び、売上ミックスが良くなったことが主因です。製造業で営業利益率5割超は、きわめて高い水準です。
一方で、税引前利益(+121.3%)が営業利益(+96.5%)より大きく伸びているのは、本業の外側に金融収益570億円が乗っているためです。これは主に、保有する投資有価証券の期末時点での評価益で、現金が入るわけではなく、時価次第で増減します。利益倍増の派手さの一部は、この評価益が支えている。そう切り分けて見ると、本決算の実力は「本業の営業利益がほぼ倍増」という一点に集約されます。
利益率の改善 ── 前年同期(上期累計)との比較
単位:% / 売上総利益率と営業利益率
金融収益の計上は第1四半期に続き、第2四半期単独でも147億円と、2四半期連続です。背景には、同社が「包括的なソリューション・プロバイダ」への進化を掲げて進めている戦略投資があります。上期は投資有価証券が3,647億円増えて4,326億円に膨らみました。本業の成長投資とは別軸の動きなので、利益の読み方としては分けて捉えるのが安全です。
03 ── SEGMENTS
事業は「テストシステム事業部門」と「サービス他部門」の2つ。上期の売上8,452億円のうち、テストシステム事業が7,702億円(+61.2%)と91%を占めます。その中核がSoCテストシステムで、AI関連SoC半導体の生産数量増加と複雑化を背景に大きく伸びました。メモリテストシステムも、データセンタ投資を背景にDRAM向け・不揮発性メモリ向けがそろって増加しています。サービス他部門は750億円(+53.7%)で、テスタの設置台数が増えるほど伸びるサポート・サービスや、テスト用インタフェースボードなどの消耗品販売が寄与しました。
上期売上高の構成 ── テストシステムが9割
2027年3月期 上期(4〜9月累計)/ 単位:億円
| セグメント(上期累計) | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| テストシステム事業部門 | 7,702億円 | +61.2% | 4,556億円 | +89.4% |
| サービス他部門 | 750億円 | +53.7% | 209億円 | +584.6% |
サービス他部門のセグメント利益が+584.6%と跳ねているのは、利益の母数がもともと小さかった(前年同期30億円→当期209億円)ためです。なお前年同期の利益には事業の一部譲渡による譲渡益(約25億円)が含まれており、裏を返せば今期はその一時益なしでこの水準まで伸びています。金額の規模としてはテストシステム事業が圧倒的で、ここがそのまま全社の損益を決めます。
04 ── MOMENTUM
上期を四半期に分けると、勢いの加速がはっきりします。第1四半期(4〜6月)の売上3,675億円・営業利益1,900億円(利益率51.7%)に対し、第2四半期(7〜9月)は売上4,777億円・営業利益2,668億円(利益率55.9%)。売上・利益・利益率のすべてで第1四半期を上回り、四半期として過去最高を更新しました。第2四半期はSoCテストシステムの売上が3,533億円、メモリテストシステムが534億円。収益性の高いハイエンドSoC向けが伸び、売上総利益率は70%を超えています。
四半期の売上高と営業利益 ── 2027年3月期
単位:億円 / 第1四半期(4〜6月) vs 第2四半期(7〜9月)
05 ── BALANCE & RETURNS
総資産は前期末から5,603億円増えて1兆7,321億円になりました。増加の内訳は、投資有価証券+3,647億円、棚卸資産+1,207億円、現金及び現金同等物+618億円。親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率にあたる)は67.9%から66.1%へ1.8ポイント下がりましたが、これは財務が弱ったからではなく、利益を上回るペースで資産が膨らんだためです。負債側は社債の発行(+895億円、転換社債型新株予約権付社債1,000億円の発行を含む)や、利益拡大に伴う未払法人所得税の増加が中心でした。
キャッシュを稼ぐ力も強まりました。上期の営業キャッシュ・フローは3,070億円の収入(前年同期は1,399億円)。一方、投資キャッシュ・フローは2,109億円の支出と大きく振れていますが、これは戦略投資としての負債性金融商品の取得(△1,844億円)が主因で、設備や事業への純投資とは性格が異なります。手元の現金及び現金同等物は4,018億円まで積み上がりました。
株主還元も強化されました。中間配当は1株49円で、前年の29円から+20円の増配です。同社は第3期中期経営計画の3年間合計で総還元性向50%以上を目安に掲げており、その方針に沿った動きです。あわせて、取得上限最大2,800億円・最大1,100万株の自己株式取得(2026年10月29日〜2027年3月24日)も決議しました。なお期末・通期の配当は現時点で未定とされています。
中間配当の推移
単位:円 / 1株当たり中間配当金
06 ── GUIDANCE
上期の好調と、下期の見通しを踏まえ、同社は7月時点の通期予想をすべて上方修正しました。売上高は1兆7,140億円から1兆8,630億円(前期比+65.1%)へ、営業利益は8,460億円から9,670億円(+93.7%)へ。SoCテストシステムの生産能力増強の加速が主因です。通期の営業利益率は51.9%、売上総利益率は68%程度を見込みます。下期だけでみても営業利益率は50%超(前回予想47.3%から約3ポイント上昇)の計画です。
| 通期連結業績予想(IFRS) | 7月予想 | 今回修正 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆7,140億円 | 1兆8,630億円 | +65.1% |
| 営業利益 | 8,460億円 | 9,670億円 | +93.7% |
| 税引前利益 | 8,910億円 | 1兆215億円 | +97.7% |
| 当期利益 | 6,600億円 | 7,415億円 | +97.5% |
通期予想に対する上期の進捗率
上期実績 ÷ 修正後の通期予想 / 点線は「半年=50%」の目安
同社は暦年2026年のテスタ市場見通しを7月から据え置き、SoCテスタ市場は予測レンジ上限に近い約115億米ドル、メモリテスタ市場は25〜30億米ドルのレンジ中央値を見込みます。AI向け半導体の複雑化でチップ1個あたりの検査量が増え続けるため、2027年もテスタ市場には良好な環境が続くとの見立てです。旺盛な需要に応えるため、SoCテスタは年間5,000台以上の生産能力をすでに達成し、年間1万台の目標も前倒しで目指すとしています。
下期の予想は1ドル150円・1ユーロ170円を前提に置いています。上期平均の160円より円高の設定なので、実勢がこれより円高に振れれば利益は目減りします(1ドル1円の円高で通期営業利益が約58億円減る計算)。また、利益を押し上げた金融収益は投資有価証券の時価次第で、下期に評価損へ反転する可能性もあります。好調な決算ほど、本業の勢い(営業利益)と、為替・時価という外部要因を分けて見るのが安全です。
07 ── SUMMARY
生成AIの主役はGPUやHBMですが、作られたチップは1個残らず「正しく動くか」を検査されてから出荷されます。その検査装置を世界首位級で供給するのがアドバンテストです。上期の決算は、AI向け半導体の複雑化・大量化がそのまま検査需要の拡大に直結し、本業の営業利益がほぼ倍増したことを示しました。評価すべきは、派手な「利益倍増」の数字よりも、営業利益率54%という本業の収益性そのものです。一方で、利益の一部は投資有価証券の評価益と円安という外部要因が上乗せしている点は、分けて受け取っておきたいところ。次の確認ポイントは、下期も本業の高い利益率が続くか、そして膨らんだ投資有価証券が時価変動にどう反応するか、の二点です。