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半導体テストシステムのイメージ

EARNINGS REVIEW

アドバンテスト

2027年3月期 第1四半期 決算レビュー

証券コード 6857(東証プライム)/ 対象期間 2026年4月〜6月 / 決算発表 2026年7月29日

売上高3,675億円、営業利益1,900億円、税引前利益2,341億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益1,748億円。アドバンテストは2027年3月期第1四半期で、主要4項目すべて四半期として過去最高を更新した。しかも同じ7月29日付で、通期の連結業績予想を大幅に引き上げている。 ただし、税引前利益の伸び+92.9%をそのまま「本業が2倍近く強くなった」と読むのは早い。この伸びには戦略投資に関連する金融商品の評価益411億円が乗っており、本業の実力に近い営業利益ベースでは+53.3%にとどまる。まずこの差の正体から見ていく。

売上高

3,675億円
+39.3%前年同期比

営業利益

1,900億円
+53.3%利益率 51.7%

税引前利益

2,341億円
+92.9%前年同期比

親会社の所有者に帰属する四半期利益

1,748億円
+93.8%前年同期比
IFRSの利益区分 ── 日本基準の「経常利益」にあたる段階がない
アドバンテストはIFRS(国際財務報告基準)を採用しており、日本基準でおなじみの経常利益にあたる段階がありません。並びは営業利益 → 税引前四半期利益 → 四半期利益で、営業利益の下に金融収益・金融費用が計上され、その合計が税引前四半期利益になります。今回、税引前利益の伸び率が営業利益の伸び率より大きいのは、この金融収益・費用の区分があるためです。
セグメント利益とは ── 株式報酬費用調整前の営業利益
事業別の業績を比較しやすくするため、開示上の「セグメント利益」は株式報酬費用を差し引く前の数字で計算されています。連結の営業利益にするには、ここから株式報酬費用(当1Qは14億円、前1Qは11億円)などの調整を差し引きます。
FVOCI金融資産とは ── 時価変動を損益計算書を通さず純資産に映す区分
「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産」の略称です。保有する株式などの時価変動を、四半期利益(損益計算書)には反映させず、直接その他の包括利益として純資産に積み上げる会計処理です。当1Qはこの評価差額が+1,202億円あり、投資有価証券の残高と自己資本を押し上げました。後述する金融収益内の評価益411億円とは別の勘定です。
転換社債型新株予約権付社債とは
あらかじめ定めた条件で株式に転換できる権利が付いた社債です。普通社債より低い金利で資金調達できる一方、転換されると発行済株式数が増え、1株当たり利益が薄まる可能性があります。アドバンテストは当1Qにこの社債で1,000億円を調達しました。
進捗率とは ── 通期予想に対する四半期実績の割合
四半期の実績を通期予想で単純に割った値です。4四半期が均等なら25%(1年の1/4)が一つの目安になりますが、事業には季節性があるため、25%を下回るからといって即座に計画未達を意味するわけではありません。今1Qの進捗率は売上高21.4%・営業利益22.5%で、この目安を下回っています。

01 ── PERFORMANCE

増収+39.3%を営業利益+53.3%が上回る。稼ぐ力そのものが強くなっている

売上高3,675億円は、前年同期の2,638億円から+39.3%。四半期として過去最高の水準だ。牽引したのは、AI・HPC向け高性能SoC半導体の生産数量拡大と、データセンタ投資を背景にした高性能DRAM向けメモリテストシステムの伸長である。テスタ需要の増加に連動して、テストハンドラやデバイスインタフェースといった周辺製品も増収に寄与した。

売上の伸びをさらに上回ったのが営業利益だ。1,900億円で+53.3%。売上原価の増加を粗利の伸びが上回り、売上総利益は2,556億円、売上総利益率は65.1%から69.5%へ4.5ポイント改善した。販管費は662億円で31.1%(算出)増えたが、売上高に対する比率(販管費率)はむしろ19.2%から18.0%へ下がっている。粗利の伸びが人件費など販管費の増加を吸収し切った形だ。

売上高と営業利益 ── 前年同期との比較

単位:億円 / 2026年3月期1Q vs 2027年3月期1Q

4,000 2,000 0 2,638 3,675 1,240 1,900 売上高 営業利益
2025年4-6月 2026年4-6月
決算短信の百万円単位の開示値を億円に丸めて表示(売上高263,776→367,473百万円、営業利益123,952→189,990百万円)。
連結(2026年4-6月)実績前年同期比
売上高3,675億円+39.3%
売上総利益2,556億円+48.9%(算出)
営業利益1,900億円+53.3%(利益率 51.7%)
税引前四半期利益2,341億円+92.9%
親会社所有者帰属四半期利益1,748億円+93.8%
基本的1株当たり四半期利益241円27銭+95.9%(算出)

損益の階段 ── 粗利率65.1%→69.5%、営業利益率47.0%→51.7%

起点は前年同期の65.1%で、これ自体がすでに高い。そこからさらに4.5ポイント積み増した。営業利益率51.7%は、売上高の半分を優に超える金額が営業利益として残る計算になる。短信が増益要因に挙げているのは増収と売上ミックスの良化で、高付加価値のテスタが売上構成の中で比重を増したことが利益率に表れた形だ。

利益率の改善 ── 前年同期との比較

単位:% / 売上総利益率と営業利益率

80 40 0 65.1 69.5 47.0 51.7 売上総利益率 営業利益率
2025年4-6月 2026年4-6月
開示数値からの算出(売上総利益率=売上総利益÷売上高、営業利益率=営業利益÷売上高)。

02 ── PROFIT QUALITY

税引前利益は+92.9%。ただし伸びの一部は評価益に支えられている

税引前四半期利益は2,341億円で、前年同期比+92.9%。営業利益の伸び+53.3%と比べると40ポイント近く大きい。差を作ったのは金融収益で、当1Qは447億円を計上した(前年同期はわずか7億円)。このうち411億円が、短信のセグメント注記に明記されている「戦略投資に関連する金融商品の評価益」である。保有資産を時価で評価し直した際の含み益が、税引前利益の段階で丸ごと乗っている。

この評価益411億円を除いて試算すると、税引前利益は1,930億円(算出)、伸び率は+59.0%(算出)にとどまる。それでも営業利益ベースの+53.3%は上回っており本業の勢い自体は強いが、公表されている+92.9%という見出しの数字を、そのまま本業の実力として受け取るのは正確ではない。評価益は時価が動けば次の四半期に縮む性質のものだ。

税引前利益の伸び ── 営業利益・評価益除く・実績の比較

単位:億円 / 2026年3月期1Q vs 2027年3月期1Q

2,400 1,200 0 1,240 1,900 1,214 1,930 1,214 2,341 営業利益 税引前利益 (評価益除く・算出) 税引前利益 (実績)
2025年4-6月 2026年4-6月
開示数値からの算出。「評価益除く」は税引前四半期利益234,082百万円から戦略投資関連の金融商品評価益41,075百万円を控除した試算値(193,007百万円)。

税引前利益2,341億円の内訳

営業利益1,900億円+金融収益447億円(前年同期7億円)-金融費用6億円(同33億円)=税引前利益2,341億円。金融収益447億円のうち411億円が戦略投資に関連する金融商品の評価益で、残りが受取利息など通常の金融収支にあたる。評価益は損益計算書を通って税引前利益に直接効く点で、次章で触れるその他の包括利益(FVOCI評価差額)とは別の勘定である。

03 ── SEGMENT

テストシステム事業がけん引。サービス他の伸び率は前年の特殊要因込み

売上高の9割を占めるテストシステム事業は3,336億円で+38.7%。AI・HPC向け高性能SoC半導体の生産数量拡大と、データセンタ投資を背景にした高性能DRAM向けメモリテストシステムの伸長が主因である。不揮発性メモリ向けも増加した。セグメント利益は1,907億円で+50.3%と、売上の伸びを上回った。

残る1割弱のサービス他事業は339億円で+46.0%、セグメント利益は86億円で表面上+216.4%という数字になる。ただしこれは、前年同期のセグメント利益27億円のうち25億円が事業の一部譲渡による譲渡益だったことが効いている。譲渡益を除いた実勢は前年同期がおよそ2億円、当1Qが86億円で、表面の伸び率だけを見るより、実態の改善幅はむしろ大きい。

外部売上高の構成 ── セグメント別

単位:構成比(%) / テストシステム事業とサービス他

2025年4-6月 2026年4-6月 91.2% 8.8% 90.8% 9.2%
テストシステム事業 サービス他
外部顧客への売上高の構成比(算出)。テストシステム事業240,554→333,562百万円、サービス他23,222→33,911百万円。
売上高前1Q当1Q前年比
テストシステム事業2,406億円3,336億円+38.7%
サービス他232億円339億円+46.0%
連結計2,638億円3,675億円+39.3%
セグメント利益前1Q当1Q前年比
テストシステム事業1,269億円1,907億円+50.3%
サービス他27億円86億円+216.4%

セグメント利益は消去又は全社(前1Q△46億円、当1Q△79億円)と株式報酬費用(前1Q△11億円、当1Q△14億円)の調整前。両者を差し引いた合計が連結の営業利益1,900億円になる。

04 ── GUIDANCE

通期予想を上方修正。それでも1Qの進捗率は25%を下回る

アドバンテストは4月27日に公表した通期予想を、決算発表と同じ7月29日付で引き上げた。売上高は1兆4,200億円から1兆7,140億円へ+20.7%、営業利益は6,275億円から8,460億円へ+34.8%、税引前利益は6,290億円から8,910億円へ+41.7%。売上の修正幅より利益の修正幅が大きいのが特徴だ。前期実績との対比では、売上+51.9%、営業利益+69.5%という大幅な伸びを見込む計画になる。

修正の理由として会社が挙げるのは、推論用AI半導体向けのテスト需要が2026年4月時点の想定を大きく上回っていることだ。暦年2026年の半導体市場はAI関連半導体の牽引で1兆ドルを超える規模になる見通しで、半導体テスタ市場も過去最大規模になるという。急増する需要にタイムリーに対応するため、生産能力の増強も前倒しで進めている。

通期(2027年3月期)前回予想
4/27公表
今回修正
7/29公表
増減率前期実績対前期
売上高1兆4,200億円1兆7,140億円+20.7%1兆1,286億円+51.9%
営業利益6,275億円8,460億円+34.8%4,991億円+69.5%
税引前利益6,290億円8,910億円+41.7%5,167億円+72.4%
当期利益(親会社所有者帰属)4,655億円6,600億円+41.8%3,754億円+75.8%
基本的1株当たり当期利益641円61銭911円64銭515円15銭

修正後の通期計画に対する1Q実績の進捗率は、売上高21.4%、営業利益22.5%、税引前利益26.3%、当期利益26.5%(いずれも算出)。4四半期が均等なら25%が目安だが、売上と営業利益はこれを下回っており、通期計画は下期に重心を置いた形になっている。逆算すると、残り9か月で必要な売上高は1兆3,465億円、四半期平均で約4,488億円(算出)。1Qの3,675億円を大きく上回るペースを、上期後半から下期にかけて積み上げる計画だ。営業利益も残り6,560億円、四半期平均約2,187億円(算出)で、1Qの1,900億円を上回る水準が前提になる。

通期予想(修正後)に対する第1四半期の進捗率

単位:% / 点線=1年の1/4(25%)

25%(1年の1/4) 売上高 営業利益 税引前利益 当期利益 21.4% 22.5% 26.3% 26.5%
第1四半期実績÷通期修正予想の算出値。売上高・営業利益は目安の25%に届いていない。

上方修正=即達成ではない

上方修正した計画自体、1Qの実績を大きく上回るペースを残り3四半期で積み上げる前提に立っている。会社はメモリ半導体などの主要部品の需要が引き続き供給を上回っているとしており、増産のボトルネックをどこまで解消できるかが、この計画の実現度を左右する。

05 ── CURRENCY

1Q実績は159円、通期前提は150円。円高方向に置かれたシナリオ

当1Qの平均為替レートは1ドル159円(前年同期146円)、1ユーロ185円(同162円)。短信は対米ドルでの円安進行も業績に寄与したと記している。海外売上比率は99.1%(前年同期98.6%)とほぼすべてが海外向けで、為替の感応度はきわめて高い。

一方、通期予想の前提としているのは第2四半期以降9か月について1ドル150円、1ユーロ170円。1Qの実績為替(159円)よりも円高側に置いた前提であり、今後もこのまま円安が続けば計画に対して上振れ余地がある一方、逆に円高が進めば減益要因として直接効いてくる。

為替レート当1Q平均前年同期通期前提(2Q以降)
米ドル159円146円150円
ユーロ185円162円170円

06 ── BALANCE SHEET

総資産1兆5,147億円へ拡大。中身の主役は投資有価証券

総資産は前期末の1兆1,718億円から1兆5,147億円へ、3,428億円増えた。伸びの主因は投資有価証券で、679億円から3,577億円へ+2,898億円。総資産に占める比率は23.6%(算出)に達する。背景にあるのは、保有する金融資産の時価変動をその他の包括利益を通じて反映するFVOCI区分で、当1Qは公正価値の評価差額だけで+1,202億円を計上した。この評価差額は前章で触れた金融収益内の評価益411億円とは別の勘定で、損益計算書を通らず直接純資産に積み上がる。四半期包括利益合計額が3,018億円、前年同期比+213.2%まで膨らんだのは、この評価差額が主因である。

自己資本にあたる親会社所有者帰属持分比率は68.8%で、前期末の67.9%から0.9ポイント上昇した。資金調達では転換社債型新株予約権付社債を1,000億円発行する一方、自己株式を422億円取得している。営業活動によるキャッシュフローは1,372億円の収入(前年同期469億円)で、税引前利益の拡大と前受金の増加が押し上げた。投資活動によるキャッシュフローは1,025億円の支出(同34億円)で、負債性・資本性金融商品の取得を中心に投資有価証券への資金投下が続く。財務活動によるキャッシュフローは350億円の収入(前年同期は310億円の支出)で、転換社債による調達額が自己株買いを上回った。現金及び現金同等物の期末残高は4,131億円、前期末より732億円増えている。

キャッシュ・フロー前1Q当1Q
営業活動によるCF469億円1,372億円
投資活動によるCF△34億円△1,025億円
財務活動によるCF△310億円+350億円
現金及び現金同等物 期末残高2,734億円4,131億円

配当については、通期予想欄はすべて「―」で未定のままだ(前回公表からの修正は無)。前期(2026年3月期)の年間配当実績は59.00円(中間29.00円・期末30.00円)で、当期の配当方針や再開時期に関する記載は短信にはない。

07 ── SUMMARY

強みと留意点

評価できる点

  • 売上高・営業利益・税引前利益・四半期利益の主要4項目すべてが四半期最高を更新。
  • 粗利率69.5%・営業利益率51.7%と、テスタ事業の価格決定力がさらに鮮明に。
  • 通期予想を売上+20.7%・営業利益+34.8%へ上方修正。需要は4月想定を上回るペース。
  • 営業CFの内訳に前受金+370億円(算出)の増加があり、旺盛な受注を裏付ける。
  • 自己資本比率68.8%、営業CF1,372億円と財務基盤は拡大が続く

見ておきたい点

  • 利益倍増の一部は金融商品の評価益(411億円)で、時価変動に左右される性質のもの。
  • 売上・営業利益の進捗率は25%割れ(21.4%/22.5%)で、下期偏重の計画。
  • 通期前提150円に対し1Q実績は159円。海外売上比率99.1%で円高進行時の感応度が高い。
  • 投資有価証券が総資産の約1/4(23.6%)を占め、株式市況が自己資本に直接効く構造。
  • 主要部品の需要が供給を上回るサプライチェーン制約が続く。
  • 配当予想は未定のまま。

総括 ── AI半導体の検査工程を押さえる会社の、質を伴った増益

今回の決算は、営業利益+53.3%という本業の伸びと、評価益込みで+92.9%まで膨らんだ税引前利益の伸びを、分けて見る必要がある四半期だった。会社は第3期中期経営計画に基づく施策を進めるとしており、通期予想の大幅な上方修正はAI関連半導体向けテスタ需要の強さを裏付けている。一方で、進捗率25%割れの計画は下期の実行力次第という側面が残り、投資有価証券の膨張は自己資本が株式市況に連動しやすくなったことも意味する。強気な数字ほど、その中身を分解して読む価値がある決算だ。

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